【シリーズ・ギフテッド】2Eの子供たち

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我が国において発達障害*¹とは、

●自閉スペクトラム症
●学習障害*²
●注意欠如多動症

この3つが言われている。明らかにそのような認知特性があったときに、社会の中でいろいろな物事を行うことが障害になっているということで、平成16年にこのような定義が日本では行われた。平成14年に文部科学省により、通常の学級に存在する、発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童はどれぐらいいるかという調査が行われ、一応5%という数字が出ている。その10年前は6.3%と言われていた。

二重に特別な子供=2E

ギフテッドの部分と発達障害の2つを持っているお子さんたちをアメリカなどでは2Eという言葉で概念化している。2Eとは何かというと、ギフテッドプラス発達障害でTwice-Exceptional、二重に特別なという意味である。こういう子どもたちは非常に似ていて、非同期的な発達をする。実際には社会性や書く速さは非常に低い。いわゆる発達障害だと言われても、知能検査をやると、語彙力、文章理解力、特定の能力が非常に高いので、この子どもたちは療育をしたり特別なことをしたりしなくてもよいのではないかと放置されているお子さんがほとんどである。私達はこの現状を知っていただきたいと思っている。

2Eの子供たちが困っていること

学校で困っていることとして、勝ち負けにこだわりたい、短距離で負けて怒るなど、どうでもいいようなことが挙がっている。声の大きさを制御しづらい、我慢することが苦手、手先が不器用、先生が全体に向かって話していることに対して、時に上の空、一方的になってしまったり勝手なことをやってしまう。そして、書く方が皆だめなので、小学1年生で漢字を10書けと言われても書けない。もう嫌になってしまう。それから、注意集中に偏りがある。行動はただ超マイペースで非常に自分勝手で、すごく明るくて前向き。対人関係には関心があるが、空気が読めなくて余計な一言もすぐ出てしまう。このような子どもたちである。

ギフテッドの子供たちの発達事例

5ヶ月でパパ・ママが言えた、2歳半で月の満ち欠けを説明した、3歳で全ての物は下に落ちるんだと重力を発見したわけです。4歳で両親が死んだ後の遺産が心配で、自分はどうしたらいいかと泣き出した。本を見ていたけれども文字を書くことは嫌がって、小学校入学後も文字が書けず、忘れ物が多い、宿題を出さないことから繰り返し体罰を受けています。家庭でしゃべらなくなり、情動が鈍化して、フラッシュバック、思い出してギャーッとなるというようなことが夜中に起きてしまう。外出すると場所、場所で過去の怖い出来事が完全に再現される。こういうお子さんも時々いる。

我々のクリニックを受診したお子さんの例では、以下のような事例がある。
表情もなく、反応が悪いということで、質問にもほとんど答えない。病歴からは自閉症の傾向があり、叱責と友達のいじめからのトラウマと考えて、登校停止し、親教育を行いながら認知行動療法、薬物療法等を続けた。
1年後、改善を認められ、知的には深いのだが支援学級に行き始めた。他の子どもとのコミュニケーションを学んだと本人は言っている。学習は予備校の上位クラスで学んだ。小学4年生からは通常学級に復帰し、外来は途切れた。あまりの変わりように知能検査を行ったところ、VIQが128、PIQ129。通常は5程度は誤差範囲なので125からにしているが、現在受験を目指して勉強を始めており、支援学級がどれだけ自分の救いであったかを述べていた。その後国立大学付属の中学校に合格し、順調な中学校生活を送っている。この子はそのまま潰れていたと思うかもしれないが、結局今は全然問題ないレベルになっている。

※Kaienでは、職業訓練や求人紹介を通じて適職を一緒に探す「就労移行支援」や、自立に向けた基礎力を養う「自立訓練(生活訓練)」、学生向けの「ガクプロ」などを通じて、発達障害やグレーゾーンの就活や人生の伴走を行っています。今回テーマになっているギフテッドといわれる特徴がある方へも、専門性を活かした支援をご提供しています。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます


監修:宮尾益知(医学博士)
監修 : 宮尾 益知 (医学博士)

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