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HOME宮尾医師 寄稿記事【医療従事者向け】学習障害「限局性学習症」(LD)の症状・診断と事例

【医療従事者向け】学習障害「限局性学習症」(LD)の症状・診断と事例

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Ⅰ.学習障害の合併

LDは単なる学習不振を表すのではありません。学習困難がありながらも、知的能力はそれほどの困難がないという場合を、LDとしています。

LDは主に、下記の3つを根底に持つとされます。

LDの3つの困難
ⅰ.読字の困難
ⅱ.書字の困難
ⅲ.算数の困難

実際には、学習不振・困難は、多様な病態や環境で起こりうる状態像であり、様々な要因がかかわっている可能性が高いものです。最低限、鑑別しなければいけない疾患や、環境因子を含めた包括的評価を進めなくてはなりません。また、他の疾患を合併している場合もあり、特に各種の発達障害が合併しているケースは多くみられます。複数の発達障害の特徴を持つ子供に対しては、表出された学習不振・困難に影響している原因を、正確に評価することで、より適切な介入を行うことができます。

(1) 知的水準

学習到達度は、知的水準によって考えなくてはなりません。知能検査は必須要件です。特にWechsler系検査は、とくに有用です。検査によって、子供の知的水準のみならず、認知面の得手不得手を知ることができるからです。

知的障害を有することもたちは、学習面のみならず、対人関係や遊びの中でのルール、生活するうえでのスキルなどにもつまずいている場合が多いため、多方面の支援が必要となります。

(2) 合併する区別しにくい障害

LDでは、LD以外の発達障害を合併することが多いため、学習困難を引き起こしている状況を包括的に判断しなければなりません。

2012年、文部科学省は、通常の学級に在籍する知的発達に遅れはないものの、発達障害の可能性のある児童生徒についての実態調査を行いました。

この調査は、「LDI-R-LD判断のための調査票」(教育現場、相談所、専門機関などでのLD判断のための資料)を用いており、公立小・中学校の通常学級に在籍する全国53882名の児童生徒が対象となる大規模な調査でした。

この報告では、児童を下記3群に分けてまとめています。

A群(LD):「学習面で著しい困難を示す」
B群(ADHD):「不注意」または「多動性ー衝動性」の問題を著しく示す
C群(ASD):「対人関係やこだわりなど」の問題を著しく示す

知的発達に遅れはないものの学習・行動面で著しい困難を示すとされた割合は全体で6.5%でした。A群はLD、B群はADHD、C群はASDを想定していると考えられます。各群の割合が、A群4.5%、B群3.1%、C群1.1%でした。医師や専門家による調査・報告ではない点に留意が必要でありますが、LDから見ると、3人に一人はADHDを合併、約9人に一人はASDを合併、逆にADHD,ASDの約半数に学習の困難を抱えている可能性があるといえます。

Ⅱ.LDの具体的症状と診断・検査の実際
(1) 読字・書字障害

発達性ディスレキシアは、学習障害の中核となる障害であり、読みの問題だけではなく「文字や単語の読み書きに障害がある」のが特徴です。

 発達性ディスレキシアの特徴
「正確かつ/または流ちょうな単語認識の困難」
「綴りとデコーディング能力の弱さ」

具体的な特徴
・読み誤りが多い(正確性の障害)
・読むのに時間がかかってたどたどしい(流暢性の障害)
・文字記号の音声化であるデコーディング(読みの初期過程)と、音や単語への文字文字記号への変換(下記の初期過程)の両方において困難を認める

典型的には、ひらがなの習得からつまづきを認め、「就学前には文字に興味がなかった」と報告されることが多くあります。小学校2年生以降になっても、促音、拗音、長音、助詞などにおいて、音と文字の対応があいまいな状態の読み取り・書き取りがみられます。カタカナの場合でも同様です。また、多くの場合、漢字の読み書きにも困難を認めます。

発達性ディスレキシアだと認知されないままの場合、低学年では「音読が苦手」、高学年になり黙読で読むようになると内容理解の悪さにより「長文理解が苦手」と捉えられることがあります。

普段の学校の授業においては、板書も極めて負担の多い作業となります。

「黒板に書いてある字が読めない、または、読むのに時間がかかる」

「ノートに書くときに文字が想起できない」

と、二重に困難が生じるからです。

●読字に問題がなく、書字のみに問題を認める場合

読字に問題がなく、書字のみに問題を認める場合、ICDなどでは

ⅰ. 文法・句読点の誤りや文章表現法のまずさなどを特徴とする「書字表出性障害」
ⅱ. アルファベットのシークエンスを綴ることを特徴とする「つづり字障害」

の2点が想定されます。

一方、日本語においては、ⅰ、ⅱに加えて、

ⅲ.文字の書字そのものが困難な「書字障害」

が存在します。これは、「文字を想起して書く」ことの障害です。

原因としては、以下の可能性が考えられます。

・視覚記銘、視覚記憶の障害
・視覚認知の障害
・形而的記憶の障害
・視覚認知の障害
・構成能力の障害

 (2) 算数障害

算数障害には、計算障害と数学的推論障害があり、計算障害には数詞、数字の変換の誤りと数的事実、計算手続きの障害が含まれます。数学的推論の障害には、数概念の障害と数イメージの操作などが含まれます。

ⅰ.計算障害…数詞、数字の変換の誤りと数的事実、計算手続きの障害など
ⅱ.数学的推論障害…数概念の障害と数イメージの操作など

●算数障害の有無の認知

算数という科目は、数概念の獲得を前提に学習が進みます。読み書きに比べて、習得度の個人差が大きい科目なので、特異的な困難さに気づかれるのは、かなり状態が悪化してからになるケースが多くあります。なお、幼児期は数概念の形成段階のため、問題に気付かれることはありません。

(3) 計算障害

計算障害では、桁が大きくなると、口頭で言われた数を数字に置き換えることが困難になります。また、「計算メカニズムの自動化の障害」もみられます。通常、学習の初期段階では、「1に3を足したら、全部で4」というように、数の増減を都度考えて答えを出します。しかし、こうした計算問題に何度も取り組むと、いちいち考えなくても、「1+3=4」と答えを出せるようになります。こうした「計算の自動化」がうまくいかない障害を、「計算メカニズムの自動化の障害」と呼びます。

(4) 数学的推論の障害

通常、文章問題は、下記の手順で回答するものです。

文章を読む

数量の変化や移動をイメージする

それを指揮に置き換える

計算する

答えを書く

「数学的推論」とは数量の変化や移動をイメージすることです。学校の授業は、「この段階はイメージできている」という前提で進んでいきます。

数学的推論の障害を持つ人にとって、数量の変化を数式にすることは、多くの困難を伴います。数の移動については、ある程度イメージできていても、それがどういう計算方法で導き出せるのかわからないからです。原因は、数概念が弱いまま計算を手順の記憶として習得したため、それぞれの計算が「どのような数量の変化をあらわすのか」わかっていないことによります。

また、計算障害と読字障害、書字障害とが合併することは比較的多く、ASD、ADHDとの合併が多いことも特徴です。

 Ⅲ.対応のポイント
(1) 小学校低学年

小学校入学後、ひらがな、カタカナ学習を終えると、漢字学習が始まります。1学年の終わりに、ひらがなの読み書きや特殊音節(促音、拗音、長音、助詞)が確立していなければ、ディスレキシアの可能性があります。

教育機関においては、学習で大きくつまづく前にリスクに気づき、支援することが重要です。対策としては、

ⅰ.学習達成度の評価をすべての子どもに行う。
ⅱ.学習のつまづきリスクがある子どもすべてを支援の対象とする。
ⅲ.認知パターンに応じた支援を構築する

などが必要です。

合併症を含めて、医療にしかなしえないことがあるのも、この分野の特徴です。医療と教育が連携して、医学的診断、鑑別疾患、併存障害などを判断し、治療と学習指導との協力体制を構築する必要があります。

(2) 小学校高学年

小学校高学年になると、文法、読解、深く掘り下げた作文など、複雑な言語スキルが必要とされるようになります。この頃までに適切な対応が取られていない場合には、学習の遅れが大きな遅れとなり、学校不適応から不登校状態になることも散見されます。家庭と学校との連携と、学習支援に対するアドバイス、そして、行動面、認知面、心理面の問題を的確に判断し、環境調整、薬物療法、心理療法などにつなげていく必要が出てきます。

Ⅳ.学習障害診断に必要な検査

検査は4カテゴリーに分けて考えていくとわかりやすい。

(1) 知的水準と認知パターンを評価する検査
WISCーⅣ知能検査、日本版K-ABCーⅡ、DN-CAS認知評価システム

(2) LDかどうかを診断する検査
特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン
小学生の読み書きスクリーニング検査―発達性読み書き障害検出のため

(3) LDの背景にある認知的な状態を把握するための検査
CARD包括的領域別読み能力検査
PVT-R絵画語彙検査
SCTAW標準抽象語理解力検査
J.COSS日本語理解検査
LCSA学齢版言語コミュニケーション発達スケール
TK式読み能力診断検査
ひらがな単語聴写テスト

(4) 学習の基礎的技能を評価するその他の検査
小学生の読み書きの理解
「見る力」を育てるビジョンアセスメント WAVES
近見・遠見数字視写検査
日本版感覚統合検査 感覚処理・行為機能検査
日本感覚インベントリー

Ⅴ.具体的取り組み事例 -どんぐり発達クリニック-

一例として、どんぐり発達クリニックでの取り組み例をご紹介します。

(1) 保護者からの問い合わせ

(2) 問診票送付

(3) 心理士によるWISCーⅣ

(4) 医師からの評価と診断

(5) SST、ペアレントトレーニング、言語聴覚士、作業療法士(感覚統合訓練、視機能訓練)による評価と指導

(6) 教育の専門家による学習支援(国語と算数)、漢字指導

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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