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HOME宮尾医師 寄稿記事発達障害の夫を持つ妻の悩みー“カサンドラ”は病名ではない

発達障害の夫を持つ妻の悩みー“カサンドラ”は病名ではない

カサンドラ症候群パートナー子育て家族男女の違い発達障害

「カサンドラ」とは?

自閉症スペクトラム(アスペルガー)の特徴である「共感性の欠如」に日常的に接し続ける苦しさとそのことを他人に話しても理解してもらえない苦しさとで心身を病んでしまう状態。
(野波ツナ「旦那さんはアスペルガー 奥さんはカサンドラ」より)

“カサンドラ”は病名ではない あくまで「関係性の問題」

「カサンドラ症候群」という言葉を聞くようになってきました。
しかしこれは、病名ではありません。
あくまで、人と人の“関係性を主体にして考えて、なり得るもの”と考えます。
例えば、夫と妻がいて、夫からいじめられて、妻がウツになった。そうした場合、夫がいなければ、妻はウツになりません。いわば、妻に一番のゆがみが来た状態です。だとしたらこの妻だけにフォーカスして治療していくことは、根本的な解決にはつながりません。夫婦全体をある方向に動かすという「家族療法」が必要となるのです。
家族がうまくいかない場合、家族一人一人が全員病理(=病気の原因のこと)を持っている、といえます。
みんな病んでいるのだけど、ある人にだけ症状が「大きく」現れている、それが妻だということです。しかし、妻だけが悪いのでもないし、妻にたまたま現れただけなのです。
だとしたら、家族みんなに総合コミュニケーションと、思いやりがあれば、解決することなのです。
一人一人、個がしっかりすることも一つ。お互いを思いやり、一人一人考え方が違うことを、やはり理解しなくてはいけません。

妻が注意すべきこと 「察してほしい」という気持ちを強く持たない

発達障害の分野の第一人者である宮尾益知先生はこう話します。

「カサンドラ」に悩む家庭の話を聞いていると、どうも妻の「察してほしい」という気持ちが大きすぎる傾向にあると感じます。まず、「夫は察することが出来ない人だ」ということをしっかりと理解しないといけません。ある意味で言うと、「期待」なのでしょう。「自分の気持ちがわかってほしい」という。

おそらく、小さい時、自分が育った家庭や両親の像が影響しているのだと思うのですが、特に育ちが良かったりすると、父親とはこう、夫とはこう、という“幻想”をもって結婚してしまいます。当然、夫は自分のことを認めて、自分の気持ちを分かってくれると思っているので、自分からサインを出しても、全く反応されないとなると、期待を裏切られ大きなショックを受けてしまうのです。
もう一つ、日本では理想的な「父親」像はありますが、理想的な「夫」像は無い、ということがあげられます。
ご主人は、家の中では、「夫である時」と「父である時」の二役を演じなくてはいけません。休みの日に子どもを公園に連れて行ってくれるのは、「父親」です。これは、「夫」としての役割ではありません。
妻の話を聞いて、支えるといった「夫である時間」をきちんと作らないと、妻がウツになってしまうことがある、と宮尾先生はいいます。

日本では特に、結婚後の夫婦間の呼称が「お父さん」「お母さん」「パパ」「ママ」と家族を軸にしたものになっていくことも多いものです。家族の在り方の軸が、「親」にシフトしすぎてしまっているのかもしれません。
男性は特に、いろんなパターンを変えていくというのは難しい傾向にあります。「結婚する」ということは「新しい家族を作る」ということです。その展開がうまくいかない男性が多いようです。恋人同士から、新婚時代、そして、子供が産まれて・・・となった時、子供が自分の敵になるような人もいます。奥さんが子供をかわいがっていたら、子供にヤキモチをやいたりしてしまうのです。
「家族」は、子供が生まれたりして、変わっていくものなのです。その切り替えが全然うまくいかないという問題もあるのです。

夫が注意すべきこと “外の自分を家の中に持ち込まない”

まず、発達障害の夫が、注意すべきことが一つ。“外の自分を家の中に持ち込むな”ということです。
家族の中で奥さんが落ち込んでいるということは、「夫」にならなくてはいけないのです。会社では基本即決、だけど家じゃ即決してはいけません。
例えば外から帰ってきたら、妻が「今日はすごく大変だったの、あなた、聞いて」と言った時に、「うるさいな~、会社で疲れているのに。そんな話聞いていられるか」と夫が言ってしまうのです。
夫の立場になれば、とても忙しくて、会社でボロボロになって帰ってきた場合、そう言いたくなる気持ちは正しい訳です。
宮尾先生は、旦那さんからそういった相談があった時は、女性が「なんとかして」と言う時は、「なんとかして」という意味じゃなくて、「そうだったんだ、そんな大変だったんだ」と一回妻の気持ちを受けて、それから「わかったよ、苦労をかけてごめんね」と言った方がいいとアドバイスしているといいます。
家に帰って来たときには、こんな風に考えてみてください。
「あなたは家の中の経営は、奥さんに任せています。いわば個人商店。ということは、あなたは家に帰ってきたら、個人商店の一日の経営がどうだったか、必ず聞かなきゃいけません。それは義務です」と。
それは、義務とか法律のように、ある程度役割として理解することが大事です。

夫は「外の世界」仕事では、何でも即決で、冷静にやらなくてはいけません。儲けも考えなくてはいけない。そして、悪いことがあったら、時に非情に切り捨てることもしければならない。それが「外の世界」、「社会」です。
ところが「内の世界」、つまり、家庭の中では、そうではないのです。これをうまく切り替えられず、外の世界のまま、家の中で過ごしてしまうと、妻はストレスを感じ、問題が起きてしまうのですよね。

大切なことは、お互いが相手の立場になって考えること

お互い、相手の立場になって、「相手が言っていることは正しい」と理解することがまず、大事です。
例えば、妻は夫の立場になって、ずっと働いて、満員電車に乗って帰ってきて、まず少し休みたいと思う夫の気持ちを理解してあげましょう。自分も夫の立場になれば、時にイライラしてこれくらいのことを言ってしまうかもしれない、とある程度認めてあげるかもしれませんね。
そこは変換しないといけない。すると、家族の中は悪い人はだれもいない、みんな一生懸命生きている、と思えてくるはずです。
結局、家庭がうまくいっていない理由は、夫だけにあるわけではないので、解決法としては、家族みんなが人の気持ちを考えるということにつきます。

「どうして私だけ?」と悩むあなたへのメッセージ

夫が「アスペルガー」と診断をされたりすると、多くのクリニックでは「あなたが我慢して、旦那さんを認めてあげて下さい」って言われてしまうケースがほとんどです。でも、それは間違いで、それを常に出来るはずなどありません。
妻は夫をサポートするのではなく、妻は自分の世界をもって楽しむ時間が必要です。「一方的に家族のために尽くしているのに何で?」と悩んでいる人は、やり方がうまくいっていない証拠です。あなた自身だけの世界を持つことができれば、残りの時間はある程度我慢もできますし、ストレスもそんなにためずに過ごせるはずです。
結局、人は、「父」も「母」も「夫」も「妻」も、自分一人の時間を持つというのは、当然の権利なのです。その世界はお互いに大事にしなくてはいけませんね。

妻が独立して、自分の時間を持つということは、「逃げ場所」や「私の居場所」になるのです。例えば、仕事をもつことも一つの方法です。仕事をして、家族以外の人と接することで、女性としての誇りや独立性、自分自身の生き方を持つことができると思います。一人で抱え込まず、自分自身を大切にすることで、家族がもっとうまくいくようになりますよ。

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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