ADD と ADHD の違いは?

注意欠如多動性障害でいわれる ADD と ADHD は同じ?違う?

「注意欠如多動症」の人の割合は米国の調査では11%ともいわれ、非常に一般的な症状になってきました。それとともに、「ADD」と「ADHD」の二つの言葉が頻繁に使われます。この両者はどちらも「注意欠如多動症」を指す同じ言葉なのでしょうか?考えるヒントになるのは「注意欠如多動症」には、「注意欠如」と「多動性」の二つの特徴が入っていること。ここが「ADHD」と「ADD」の違いのポイントです。(※なお新しい診断基準ではADDは正式な診断名ではなくなりました。)

「注意欠如」と「多動性」とは

「注意欠如多動症」という診断名には「注意欠如」と「多動性」の二つの言葉、意味が含まれています。先ずは、この注意欠如と多動性について説明します。

「注意欠如」とは

「注意欠如」というのは注意や関心を保つのが難しい人。あるいは注意関心が一つのものにはまりすぎるとそこから離れられなくなってしまう人です。例えば、朝の支度をするときにテレビ、食事、トイレ、化粧、などと段取り良くこなさないといけないのに、床のちょっとした汚れが気になって拭き掃除をしていたらいろいろ気になってしまい、いつの間に時間が経って会社に遅刻してしまうことが多いような状態です。あるいは、提出する資料に自分の名前を書かないといけないという注意を受けながら、実際に記入するときには他のことを考えてしまって名無しのまま抜け漏れた資料を提出してしまうことが多いことなどが具体例としてあげられます。注意欠如は、英語では “Attention Deficit”(注意 欠けている)となります。

注意関心の切り替えができずゲームやネット、スマホに中毒的にはまってしまう注意欠如多動性障害の人もいます。
注意関心の切り替えができずゲームやネット、スマホに中毒的にはまってしまう注意欠如多動症の人もいます。

「多動性」とは

「多動性」については先に英語訳を考えましょう。多動性は英語では “Hyperactivity” 。ハイパーアクティビティと読むと分かるように、「すごく動いちゃう」という意味となります。発達障害*¹のあるお子さんはじっとしていられない、椅子に座っていられない、衝動的に動いてしまう、というようなことがあり、そのような状態のことを多動性と呼びます。

「注意欠如」に比べると周囲の人が気づきやすく、このため子どもの時に診断された人はこの「多動性」を指摘されることが多くなります。例えば興味のあるものしか見えず、車道に飛び出してしまったり、授業中に座っていることができなかったりなどです。一方で年齢とともにある程度多動性は収まる人が多く、大人では顕著な例はあまり見られない特徴になります。ですので、大人の「注意欠如多動症」というのは、そもそも多動が認められない状態の事のほうが一般的ともいえます。

ただし大人になっても、ずっと座っていると体がムズムズする人や、手や指を動かしていないと落ち着かないなど、周囲からは「多動性」としては分かりづらいものの、「落ち着きの無さ」という印象を持たれる人はいるでしょう。

ADD と ADHD の違いは「多動性の有無」

上記において「注意欠如」と「多動性」について説明しましたが、「注意欠如多動症」でよく使われる ADD と ADHD の違いは、この「多動性」が認められるか認められないかの違いです。

ADD (Attention Deficit Disorder)注意欠如障害
ADHD (Attention Deficit Hyperactivity Disorder) 注意欠如多動症

最後に共通してついている “D” は “Disorder”(障害)を表しています。また「ADHD」を表記する場合、「AD/HD」と “D” と “H” の間にスラッシュを付ける人もいますが、これは、「注意欠如(AD)」の部分と「多動性(H)」の部分を分けるためです。”AD” と “H” の “Disorder” という意味とお考えください。

多動の人はじっとしているのが苦手。
多動の人はじっとしているのが苦手。

ADD と ADHD はどちらが多いの?

当社を利用する人たちの診断名を考えると ADHD のほうが圧倒的に多いでしょう。ただし、だからといって「多動性」が認められる人ばかりというわけではありません。ADHD のほうが診断名が多いのはいくつか理由があります。主なところを上げていきましょう。

ADHD のほうが一般的

医師が「ADD」という診断を出すケースが稀なのは、「ADHD」のほうが包括的(意味が広く)、一般的に使われているからでしょう。わざわざ「多動」が見られないことを証明することが難しいので、「ADD」という診断名を付けないということだと考えられます。とはいえ、大人の場合は、周囲がびっくりするような落ち着きの無さ(急に道に飛び出す、10分間も椅子に座っていられず歩き回る等)は無いことが通常です。実際上は「ADD」で、強い多動は認められないケースが多いでしょう。

「注意欠如」もとらえ方によっては「脳内の多動」

一方で、「注意欠如(AD)」の部分も「多動性(H)」で説明できるので、「ADHD」という診断にするということも考えられます。「注意欠如」は別の視点で考えてみると「脳内の多動」だからです。体に「多動」が出ると目立ち、「多動性障害」といわれるかもしれませんが、周囲からはすぐにわからなくても、「ミスが多い」、「いろいろなことが気になる」、という「注意欠如」の状態は、脳が上手に集中を保てておらず暴走してしまっている「多動」な状態とも考えられます。ですので、厳格に「注意欠如(AD)」の部分と「多動性(H)」の部分を区分けしづらいので、ADHD と言われることが多いと当社では考えています。また上述の通り、体がムズムズするや手や指などを動かしていないと落ち着かないなどの、落ち着きの無さという意味で体の多動が残る人もいるでしょう。

適職を探すというよりも、あっていない職種を理解するというアプローチのほうが現実的です。
女性はより多動性が少ない、つまりADDに当てはまるケースが多いのは確かです。

診断名は参考程度に

ここまで ADD と ADHD の違いをまとめてきたものの、ADD と ADHD の診断の違いは参考程度に考えてください。医者によってそもそも「注意欠如多動症」の定義・診断基準は異なるのが実際ですし、ADD や ADHD がピュアに見られるケースは少なく、他にも「LD(学習障害*²)」や「ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)」が重なっている場合が一般的と言えるからです。

つまり診断名は、自分の特徴を考える上での一助程度に頭の片隅に留めておくのが良いでしょう。必要なのは自分の状態を診断名にとらわれずに理解することと、その対策をすることです。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます


監修者コメント

ADDとADHDに関しては、事実上差は無いと考えて構いません。ADDと診断されたとしたなら、多動・衝動性部分はそれほど目立たないと判断されたんだな、と考えれば十分です。ADHDのほうも、よく不注意優勢型、多動・衝動性優勢型と分けたりもしますが、それも何か生物学的根拠があって、というわけではなく、あくまでも前面に出ている特性の強い部分に着目して分けているに過ぎません。特に幼少期とは前面に出てくる特性の強さが変わってくることも多いので、現在の状態を表す便宜上の違いといえます。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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