ADHDとASDの特徴や違いとは?発達障害の種類を解説

▽発達性協調運動障害 ▽チック障害・トゥレット症候群 ▽緘黙症・言語障害
公開: 2016.6.2更新: 2025.4.28

ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)という言葉を目にするものの、具体的にどういう障害なのか、どう違うのか、疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。

ADHDとASDは共通する特徴もあり、併存することもあるため、専門家でも見極めが難しいとされています。この記事では、そのADHDとASDのそれぞれの特徴と両者の違いについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

また、発達障害*にはADHDやASD以外にも様々な種類の障害があるため、それらの種類や特徴についても解説します。ADHDやASDかもしれない場合の相談先についても紹介しますので、お悩みを抱えている方は、最後まで目を通してみてください。

ADHDとASDの特徴や違いとは

ADHDは注意欠如多動症、ASDは自閉スペクトラム症といい、それぞれ発達障害の一つです。ADHDとASDは、発達障害の代表例としてよく挙げられるものの、違いがわからない方も少なくないでしょう。以下では、ADHDとASDのそれぞれの特徴と違いについて解説します。

ADHDの特徴

前述の通り、ADHDは注意欠如多動症といい、発達障害の一種です。

ADHDには、不注意・多動性・衝動性といった3つの特性が見られます。ADHDは、その特性の表れ方によって、次のような病型に分けられます。

【ADHDの3つの病型】

  • 不注意優勢型:注意力に乏しい、あるいは、注意の持続する時間が短いといった特性が強く表れる
  • 多動性・衝動性優勢型:年齢不相応に落ち着きがないといった特性が強く表れる
  • 混合型:不注意と多動性・衝動性の両方の特性が見られる

不注意優勢型では、活動に集中できない、気が散りやすい、忘れ物が多いといった特性が見られるのが特徴です。多動性・衝動性優勢型では、じっとしていられない、せっかちである、約束やルールを無視して衝動的に動くといった行動を取る傾向があります。

DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)によるADHDの診断基準では、9つの不注意症候と9つの多動性・衝動性症候が掲げられています。各グループの症候の6つ以上が6カ月以上認められるなどの条件を満たした場合に、ADHDと診断されます。

参考:MSDマニュアルプロフェッショナル版「注意欠如多動症(ADD,ADHD)」

ASDの特徴

ASDとは自閉スペクトラム症という発達障害の一つです。

ASDは、対人関係・コミュニケーションが苦手、こだわりが強いという特徴があります。ASDによく見られる特性をまとめると以下の通りです。

【ASDの特性】

  • 会話を始められない、会話に反応・共感できない
  • 人の表情や行動から感情を読み取れない
  • 表情やジェスチャー、アイコンタクトをうまく使えない
  • 繰り返し手をたたくなど反復的な動作が見られる
  • 関心事に強くこだわり、他のことに目がいかない
  • 特定のルールや規則通りに強い執着がある

DSM-5によるASDの診断基準では、社会的交流やコミュニケーションにおいて持続的な障害が見られること、また、限定的な反復する様式の行動、興味、活動の存在があることなどが基準として掲げられています。

参考:MSDマニュアルプロフェッショナル版「自閉スペクトラム症」

ADHDとASDの違い

前述のADHDとASDの特徴を踏まえると、以下のような違いがあるといえます。

【ADHDとASDの違い】

  • ADHDは、じっとしていられない、衝動的な感情を抑えられない、忘れ物が多いといった多動や不注意が見られる
  • ASDは、相手の感情を読み取ったり自分の感情を伝えたりすることが苦手で、自分の世界に閉じこもるなど、コミュニケーションの困難さが目立つ
  • ASDは、特定の事柄へのこだわりが強いため、特定の事柄についての集中力や記憶力が高い傾向がある

またADHDとASDは、それぞれの異なる特性であるにもかかわらず、表面的に似た表れ方をするケースがあります。

例えば、ADHDでは、不注意といった特性から、ミスが多い傾向が見られます。一方、ASDでは、特定の事柄にこだわりすぎるという特性から、他に目がいかずミスが多くなりがちです。

また、ADHDでは、不注意や衝動性がある点から空気が読めない行動を取りがちですが、ASDは他人の表情を読むのが難しい点から空気を読めないことがよくあります。

このようにADHDとASDでは、異なる特性から共通の行動を取っているケースがあります。

ADHDとASDは併存する可能性がある?

ADHDとASDの特徴やそれぞれの違いについてお伝えしましたが、ADHDとASDは併存する可能性があるとされています。

ADHDとASDについては、DSM-5でも併存を認めており、実際に、併存しているケースはよくあると見なされてきました。

例えば、発達障害と診断された成人838名のうち225名(26.8%)が、ADHDとASDを併発しているという研究結果もあります(※)。

そもそも、ADHDとASDに限らず、発達障害では一つの種類だけが表れる人もいれば、いくつかの種類が重なって表れる人も少なくありません。

一般的に、複数の発達障害の特性が重なっている場合、単独のケースより困りごとの数が多い傾向です。個々に合った対処法や支援がより必要だといえるでしょう。

※参考:厚生労働科学研究成果データベース「成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究」

関連記事:ASDとADHDは併発・併存する?特性の違いや特徴、診断基準について解説

ADHDとASD以外の発達障害

発達障害には、ADHDやASD以外にも様々な種類があります。ここでは、下記の5つの発達障害について、詳しく解説します。

  • 限局性学習症(SLD)
  • チック・トゥレット症候群
  • 吃音(流暢症)
  • 緘黙症
  • 発達性協調運動障害

限局性学習症(SLD)

限局性学習症(SLD)とは、知的な遅れはなく理解力に問題がないのに、読む・書く・計算する・聞く・話す・推論するといった特定の学習能力において困難がある発達障害です。

限局性学習症(SLD)は、DSM-5で用いられている現在の診断名で、以前は学習障害(LD)という診断名が使われていました。日本では、今も法律や行政の分野、また一般的にも学習障害(LD)という名称が使われています。

限界性学習症は、国語や算数という学問が苦手というわけではなく、文字が逆さまに見える、数字の順番が把握できないといった認知能力に困難がある状態です。

読むことに困難がある場合は「ディスレクシア(読字障害)」、書くことが困難な場合は「ディスグラフィア(書字表出障害)」、数字や計算が難しい場合は「ディスカリキュリア(算数障害)」といったタイプに分類されます。

特性の表れ方は一つの能力に困難があるケースや、複数の能力に困難を抱えるケースもあります。 

チック障害・トゥレット症候群

自分の意思に反して体の一部分(目、顔の一部、首、肩、手足)が急に動いてしまったり、無意識に声や咳が出てしまう状態をチックと言います。体が動くものを運動チック、音が出るものを音声チックと言い、両方が長期間続くものをトゥレット症候群と言います。

チックも自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群などと合併することが多い発達障害の一つです。原因は他の発達障害と同じくはっきりとはわかっていませんが、子育てや本人の努力不足で起こるものではありません。やはり脳の機能の障害が関与し、神経伝達物質に異常が起きているのではないかと言われています。

 チックは幼少期に発症することが多いですが、青年期以降も軽くはなりつつも継続することがあります。また精神的に不安定な状態ではチック症状が引き起こされやすくなります。チックが増えてきたときは大きなストレスにさらされている可能性が高いですので、環境を変えたり、休んだりするなど、対策が必要になります。

またチックの症状にはお薬が出ることも多いため、医療機関に定期的に相談することが良いでしょう。

吃音(流暢症)

吃音(流暢症)とは、流暢(りゅうちょう)に話すことができず、一般的に「どもる」と言われる話し方をする発達障害です。

チック障害における音声チックが、本人の意思とは関係のない突然の発声であるのに対し、吃音は、話す際に音節を繰り返したり、詰まらせたりする点が特徴です。

吃音では、以下のような症状のうち一つ以上が見られるとされています。

  • 反復:「お、お、おはよう」など単語の一部を繰り返す
  • 引き伸ばし:「おーーはよう」など単語の一部を伸ばす
  • ブロック:「‥‥っおはよう」など単語のはじめでつまる

2~7歳などの子どもの頃に発症する人が多いとされ、成人するまでに自然と治るケースも少なくありません。一方で、青年期や成人期まで症状が持続したり、青年期から症状が目立ったりするケースも見られます。

緘黙症

緘黙(かんもく)はご家族など安心できる一部の人とは会話ができるものの、学校や知らない人がいる特定の環境では別人のように押し黙るような状態のことを言います。このような状態は正確には場面緘黙といわれ、まったくどこでも喋れない状態は全緘黙と言われます。場面緘黙であっても、家以外ではまったくしゃべらない状態の人もいますし、小声で単語をいくつか喋る程度はできる場合もあり、症状の出方は様々です。自閉スペクトラム症が基盤にない場合に診断することが一般的です。

喋ることを強要するとかえって状態が悪化し、引きこもりや抑うつなど二次障害をうむこともあります。対応も長期化することが多いですが、ご本人がストレスを感じにくいコミュニケーション手段(手紙やメールなど)を駆使しながら、徐々にできる範囲を増やしていくことが必要でしょう。なお、緘黙症も他の発達障害と重なることが多いのが特徴です。

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害では、協調運動のための脳の機能に問題があるため、運動や動作のぎこちなさや不器用さが見られるのが特徴の発達障害です。

協調運動とは、手足や目などの体の複数の部位を同時になめらかに動かすことです。協調運動はさらに下記の2つに分けられ、発達性協調運動障害ではこれらの運動を苦手とする特性が見られます。

粗大運動(そだいうんどう):運動神経の良さ悪さが関わる運動

微細運動(びさいうんどう):手先の器用・不器用さが関わる運動

粗大運動とは大きな動きを伴う運動で、歩く、立つ、座る、姿勢を保つ、ジャンプするなどといった日常生活の土台となる体の動きです。

微細運動は、手や指先などの小さな筋肉を使って行う運動で、箸を使う、文字を書く、ボタンをはめる、靴ひもを結ぶといった細やかな動きです。

発達性協調運動障害ではこうした粗大運動や微細運動に困難さを抱え、運動や体育が苦手、手先が不器用といった特徴が見られます。

ADHDやASDかもと感じたら?受診先や相談機関

ADHDやASDかもしれないと感じている場合、どこを受診したらいいのか、どこに相談すればいいのか迷うこともあるでしょう。以下では、ADHDあるいはASDの懸念がある場合の受診先や相談機関について紹介します。

精神科・心療内科

ADHD、ASDかもしれないと感じたら、精神科・心療内科を受診してみましょう。

ADHDやASDなどの発達障害について、診断ができるのは専門医だけです。診断を仰ぎたい場合は、精神科あるいは心療内科に相談しましょう。

精神科や心療内科でADHD、ASDと診断されると、カウンセリングや認知行動療法、薬物療法などを受けられる場合があります。病院での治療で症状を抑えられ、生きづらさの解消に役立ちます。そのため、ADHDあるいはASDかもしれないとお悩みの場合は、まずは受診がおすすめです。

なお、発達障害の診断ができる医療機関については、自治体のホームページで紹介されているケースもあります。どの病院に行けばいいかわからない場合には、自治体のホームページを確認してみるのもよいでしょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、ADHDやASDなどの発達障害の方やその家族の日常生活のサポートなど、総合的な支援を目的とした公的な機関です。都道府県・指定都市が実施主体となり、全国の都道府県および政令指定都市に設置されています。

同センターでは発達障害の診断は行っていませんが、発達障害に関する日常生活や仕事における困りごとなど、幅広い相談をすることが可能です。

同センターは、地域の福祉・医療・労働などの関係機関と連携しながら助言や支援を行っています。例えば、仕事・就労の相談をすると、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどと連携して情報提供などをしてくれます。

ただし、地域ごとに支援体制や内容が異なるため、支援内容については事前に問い合わせるようにしましょう。

障害者就業・地域生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者が自立して働いていけるように、就労と生活の両面について一体的な支援を行う機関です。運営主体は、都道府県知事が指定する社会福祉法人、特定非営利活動法人、民法法人などで、全国に設置されています。

ADHDやASDなどの発達障害と正式な診断を受けていない場合でも、社会生活に支障を感じている場合には相談が可能です。

仕事上の悩みの相談だけでなく、日常や地域生活における悩みの相談もできます。必要に応じて、医療機関や職場などの関係機関と連携してサポートしてもらえるほか、福祉サービスの利用方法についての情報提供を受けられます。

ADHDやASDなどで困りごとを抱えながらも、就労や自立した生活を目指したい方は利用してみると良いでしょう。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある人が自立した生活を送れるように、様々な生活上のスキルの維持・向上に向けた訓練を行う障害福祉サービスです。ADHDやASDの方はもちろん、ADHDやASDと正式に診断されないグレーゾーンの方も、医師の診断書や意見書があれば利用できる場合があります。

自立訓練(生活訓練)では、コミュニケーション力を高める方法や、感情をコントロールする方法など生活の基礎力を高める講習や訓練が受けられます。ADHDやASDの方が日頃抱えている困りごとを解消するのに役立つ訓練が受けられるため、利用がおすすめです。

自立訓練(生活訓練)などの障害福祉サービスについて詳しくは、下記の記事も参考にしてください。

関連記事:障害福祉サービスとは?種類や対象者、利用の流れを解説

ADHDやASDで就労に悩んでいる方が利用できるサービス

ADHDやASDの特性があって、就労や働き方について悩んでいる方が利用できるサービスがあります。以下では就労に関して利用できる3つのサービスについて解説します。

ハローワーク

ハローワークとは、就労相談や職業紹介を受けられる公的な職業紹介所です。全国に設置されている各ハローワークには、障害のある求職者に向けた専門窓口が設置されています。

特にADHDやASDなどの発達障害の方に対しては、発達障害者雇用トータルサポーターといった専門スタッフが、就職支援から求人紹介、職場定着まで一貫したサポートをしてくれます。

発達障害者雇用トータルサポーターは、精神保健福祉士や臨床心理士などの有資格者です。資格を保有した発達障害に深い理解のある専門スタッフへ、就労に関する相談ができます。

また、障害の状況に合ったスキルアップのための職業訓練を受けるのも可能です。さらに、ハローワークでは、一般的な転職エージェントと異なり、障害に理解のある企業の求人を多く紹介してもらえる利点もあります。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、ADHDやASDなどの発達障害の方をはじめとして障害のある方に対し、専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。ハローワークと連携してサポートを行っています。

障害者職業カウンセラーなどの専門家へ、就労に関する相談ができます。相談者のニーズや特性に応じて、職業評価や職業準備訓練などの専門性の高い職業リハビリテーションなどを受けることも可能です。

さらに職業リハビリテーションとして実作業による訓練や知識習得のための講習が受講でき、基本的な労働習慣を身につけられたり、コミュニケーション能力の向上を図れたりします。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業などでの就労を希望している障害のある方をサポートする障害福祉サービスです。ADHDやASDなどの発達障害の方も利用可能です。

就労移行支援を利用すると、就労前や就労後に必要となる知識やスキル向上のためのプログラムが受けられます。例えば、コミュニケーション力や自己管理能力を向上させるソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けたり、PCスキルやビジネスマナーを学んだりできます。

適性にあった就職先探しや、応募書類・面接対策、就労後のフォローアップといったサポートを受けることも可能です。

なお、Kaienは、ADHDやASDなど発達障害の方のサポートに豊富な実績があります。Kaienの就労移行支援では、発達障害の方の一人ひとりの特性に合わせた支援や、発達障害に理解のある企業の求人を紹介しています。

就労移行支援について詳しくは下記の記事も参考にしてください。

関連記事:就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

ADHDやASDの特性に悩む方はKaienへご相談を

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意・多動性・衝動性といった特性の見られる発達障害で、ASD(自閉スペクトラム症)は、コミュニケーションに困難を抱えやすい発達障害です。

ADHDやASDなどの発達障害は、一人ひとり特性の表れ方の濃淡は異なり、ADHDやASDの双方が併存するケースもあります。

そうしたADHDやASDの特性に悩んでいる方は、Kaienへご相談ください。

Kaienは、発達障害の方の支援に強みがあり、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などのサービスを提供しています。発達障害や精神障害に理解ある企業と連携し、Kaienならではの独自の求人紹介も行っています。

豊富な経験と実績に基づいたサポートが可能なため、ADHDやASDでお仕事や日常生活にお悩みの場合は、Kaienまでお気軽にお問い合わせ下さい。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

 


まずはお気軽に!見学・個別相談会へ!

見学したい・相談したい

予約専用ダイヤル 平日10~17時

東京: 03-5823-4960 神奈川: 045-594-7079 埼玉: 050-2018-2725 千葉: 050-2018-7832 大阪: 06-6147-6189

この記事を読んだあなたにおすすめの
Kaienのサービス