アダルトチルドレンの特徴とは?共依存との関係や回復のためにできることを紹介

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アルコール依存症の親がいるなど、偏りのある家庭環境で育った人の中には、大人になってからも生きづらさや不安定さを抱え続ける、「アダルトチルドレン」になる人がいます。仕事や社会生活で大きな悩みに直面して、はじめてアダルトチルドレンだと自覚する人も少なくありません。

今回は、ご自身やご家族がアダルトチルドレンかもしれないと悩んでいる方に向けて、アダルトチルドレンの特徴、共依存や発達障害*などとの関係、回復のために利用できるカウンセリング、自助グループ、医療機関の情報を解説します。

この記事では、断りのない限りは医療や教育で定義をされたわけではない一般的に言われるアダルトチルドレンをこの記事なりに定義して解説しています。

アダルトチルドレンの対処法を知るきっかけとしてお役立てください。

アダルトチルドレンの特徴とは?

アダルトチルドレンとは、本来家族が果たすべき役割が働かない「機能不全家族」のもとで育ったために、精神的な影響を受け続ける大人です。ただ、アダルトチルドレンという用語は病名、診断名でないため、厳密な定義はありません。

もともとはアルコール依存症の養育者のもとで育ったために、心に深い傷を抱えている大人をアダルトチルドレンと呼んでいました。しかし、現在では意味が広がり、ギャンブル依存症や、過度に厳しい・甘い養育者など、子どもの成長に悪影響のある環境で育った影響が残る大人全般を、アダルトチルドレンと呼ぶようになっています。

アダルトチルドレンの症状は人によって違いますが、代表的な特徴は次のとおりです。

  • 自分のことよりも家事や家族のことを優先させてしまう
  • 自己評価が低く、常に罪悪感や孤独感を持っている
  • 自分に対して情け容赦がない
  • 他人と親密な関係が持てない
  • 衝動的な行動をとりやすい

アダルトチルドレンと共依存

アダルトチルドレンとその養育者は、「共依存」の関係にあるケースが多いのが特徴です。共依存とは、一人一人が自立しておらず、互いに依存し合う関係です。

例えば、アルコール依存症の親の場合、一人では家事や育児などがままならないため、子どもに頼るケースが少なくありません。一方、子どもは「自分なしでは生きられない無力な親」を世話することに、充実感を持つケースがあります。

つまり、外見的には支配する側とされる側ですが、実は互いに相手に依存し合う関係にあるわけです。この結果、「憎いのに離れられない」「嫌いだけど、いないと寂しい」といった状態になってしまいます。

この共依存の人間関係を、アダルトチルドレンの人は無意識に作ってしまうケースが少なくありません。例えば、アルコール依存症のパートナーを、イネイブラー(支え手)になって助け続ける人生を選ぶ人がいます。また、親が亡くなった後に目的を失い、自分自身がアルコール依存症になってしまうケースもあります。

アダルトチルドレンと発達障害

アダルトチルドレンと症状の出方が似ているものとして、発達障害、愛着障害があります。具体的には、次のような症状が似ています。

  • 他人目線がとりづらい、感情を共有しにくい
  • 衝動的で自分を抑えられないときがある
  • 不安感が強い、など

このため、アダルトチルドレンだと思い込んでいた人が、実は発達障害や愛着障害であるといったケースもあります。

しかし、アダルトチルドレンの原因が後天的な成育環境であるのに対して、発達障害の原因は先天的な脳の機能障害です。また、愛着障害の原因は主に乳幼児期の虐待やネグレクト(育児放棄)であり、物心が付いてから影響を受けるケースも多いアダルトチルドレンと違う面があります。

したがって、表面的な問題だけみて自己診断してしまうと、本当の問題に気付かない可能性があります。自分についてよりよく知りたい場合は、医療機関に相談し、医師に診断してもらうのが近道です。

アダルトチルドレンと精神疾患

アダルトチルドレン自体は診断名ではなく、精神疾患でもありません。しかし、アダルトチルドレンの特徴である不安感や傷つきやすさなどが、さまざまな精神疾患、障害につながるケースがあります。一例を以下に示します。

  • うつ病:悲しい、つらい、無気力な状態が一日中、何週間も続く
  • 全般性不安障害:仕事や生活など、いろいろなことが極度に不安になる、イライラする状態が半年以上続く
  • パニック障害:急に心臓がドキドキする、呼吸が苦しくなる、めまいがするなどの症状が出る
  • 境界パーソナリティ障害:自分が見捨てられたり無視されたりしたときに、強い恐れや怒りを感じる
  • 摂食障害:極端に食欲不振になるケースと、むちゃ食いと体重増加を防ぐために吐く行動を繰り返すケースがある
  • 身体化障害:体に異常がないのに、頭痛や関節痛、下痢、嘔吐などの症状が出る
  • 統合失調症:幻覚や妄想、まとまりのない言動などを示す

ただし、上記の症状が出ても、アダルトチルドレンと関連しているとは限りません。疑いがある際は、医療機関で診断してもらうとよいでしょう。

アダルトチルドレンの回復のためにできること

アダルトチルドレンの人は、仕事や社会生活などの中で、日々生きづらさを感じています。どうすればストレスを減らしたり、自分らしさを取り戻したりできるのでしょうか。ここでは、カウンセリング、自助グループ、医療機関の3つの方法を紹介します。

認知行動療法などカウンセリングを受ける

カウンセリングとは、医師や資格を持ったカウンセラーなどから、相談や助言をもらうことです。医療行為と違って、病を治してもらうというより、自分の話を聞いてもらい、よい方向に進む方法を探せるのが特徴です。例えば、カウンセラーに自分の行動パターンを分析してもらったり、今抱えている問題を整理して考える手伝いをしてもらったりできます。

また、認知行動療法を受けられるカウンセリングもあります。認知行動療法とは、現在抱えている問題に対して、認知(頭に浮かぶ考え)、感情、体の反応、行動の変えやすい部分から少しずつ改めていき、問題解決を目指す心理療法です。

自助グループや当事者会に参加する

アダルトチルドレンの人たちと、その家族・知人が集まる自助グループや当事者会に参加する方法もあります。自助グループや当事者会の目的は、同じ悩みを抱える人同士で問題を分かち合い、支え合うことです。感情を吐き出したり、孤独感を減らしたりする効果を期待できるでしょう。

具体的には、ミーティングに参加して、自分の体験をメンバーに話したり、逆に他人の体験談を聞いたりします。集まりによって内容は違いますが、「匿名で参加できる」「メンバーが対等な関係」「言いっぱなし、聞きっぱなしが基本で、意見や批評をはさまない」スタイルで行われるのが一般的です。

心身に症状がある場合は医療機関で治療を行う

心身に症状が出ている際は、医療機関にかかる方法があります。アダルトチルドレンの場合、一般的には心療内科、精神科、メンタルクリニックなどにかかります。医療機関の主な治療方法としては、薬物療法と、先ほど紹介したカウンセリング、認知行動療法があります。

生きづらさを感じている方は医療機関等に相談してみよう

アダルトチルドレンは、成育に悪影響を与える家庭環境で育ったために、大人になった後も心に深い傷を残しています。現在、仕事や社会生活などで生きづらさを感じている根本的な原因は、子ども時代にあるのかもしれません。

この記事で解説してきたようなアダルトチルドレンの特徴や、他の病気との関係などを理解したうえで、セルフチェックしてみてはいかがでしょうか。

しかし、医学的な知識なしにアダルトチルドレンかどうかを判断するのは困難です。ましてストレスを緩和したり、治療したりするとなると、専門家の助けが必要です。心身に症状が出ている場合は、医療機関に相談することをおすすめします。また、カウンセリングや自助グループを利用するのもよいでしょう。

アダルトチルドレンは、状態を自覚し対処方法を知れば、よい方向に進める可能性があります。ありのままの自分を取り戻すために、遠慮なく助けを求めるとよいでしょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

アダルトチルドレンは本記事にある通り診断名ではありません。ただ、ある種の経験をした方が、そういった形で理解すると、今抱えている辛さの理解が深くできたり、今後に向けた動きをしやすいという意味で使うと良い概念だと私は考えています。自分がアダルトチルドレンかも、と考えたら、医療的な支援が役に立つ疾患や状態が隠れていることはありえますので、精神科/心療内科への受診を検討してください。医師はアダルトチルドレンという診断を下すことはありませんが、お話することで気持ちが整理されたり、治療を必要とする部分がはっきりするかもしれません。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。