ASDの診断テストとは?セルフチェックの方法と診断基準

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ASDは社会でのコミュニケーションの難しさと、独特のこだわり・感覚が特徴の発達障害*です。現在、なぜか人間関係がうまくいかない、仕事に強いストレスを感じるなどの問題があり、「もしかしたらASDなのかもしれない」と疑っている人もいるのではないでしょうか。

このような人におすすめなのが、自宅で簡単に無料でできるASDの自己診断テストです。本記事はASDの症状と特性について解説した後、診断テストの内容や結果の見方、診断基準について解説します。

ASDの症状と特性

ASD(自閉スペクトラム症)は、社会でのコミュニケーションの難しさと、独特のこだわり・感覚を特徴とする障害です。ASDは先天的な脳機能障害が原因で起きる、発達障害の1つに分類されています。

ASDの症状を理解するには、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングが提唱した「ウィングの3つ組」がわかりやすいため、以下紹介します。

  1. 社会性の質の違い:人間関係を築き、維持するのが難しい
  2. コミュニケーションの質の違い:相手が何を言っているのか、感じているのか理解するのが難しい
  3. 想像力の質の違い:予想外の出来事を想像、納得するのが難しい。独特のこだわり・感覚があり、同じ行動を繰り返す傾向がある

具体例を挙げると、グループ活動が苦手で、周囲から「空気を読めない」「協調性がない」と言われる言動をとってしまう傾向があります。

また、独特の言葉使いがあったり、常識から外れた解釈をしてしまったりするなどして、コミュニケーションがうまくとれないケースもめずらしくありません。仕事においては、こだわりの強さから、業務マニュアルをそのとおり実行できない人もいます。

もっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など)とは

ASDをセルフチェックできる診断テストはある?

成人期のASDの場合の自己診断テストとしては、「成人期のASDの自己記入式症状チェックリスト(RAADS-14)」があります。また、ASDとADHDは似た症状があり、併せ持つ人も多いため、成人期のADHDの診断テストである「成人のADHDのチェック(ASRS-v1.1)」も試してみるとよいでしょう。ここでは「成人期のASDの自己記入式症状チェックリスト」の内容を紹介します。

成人期のASDの自己記入式症状チェックリストは、全14問の質問に4択で答えて点数を合計すると、ASDの疑い度がわかる仕組みになっています。内容は以下のとおりです。

 質問現在においても、過去(16歳以下)においてもあてはまる現在においてのみあてはまる過去(16歳以下)においてのみあてはまる現在も過去もあてはまらない
1他の人と話している時に、相手がどう感じているか理解することが難しい3点2点1点0点
2他の人が気にならないような普通の肌触りのものが非常に不快に感じることがある3点2点1点0点
3集団で働いたり、グループで活動をすることがとても難しい3点2点1点0点
4他の人が、どのようなことを自分に期待しているのか理解することが難しい3点2点1点0点
5社交的な場面で、どのように振る舞えばよいか分からないことがよくある3点2点1点0点
6他人と雑談したりおしゃべりすることができる3点2点1点0点
7自分の感覚に圧倒されるように感じる時は、落ち着くために一人になる必要がある3点2点1点0点
8どのように友達を作ったり人付き合いをするのかは、自分には不可解である3点2点1点0点
9他の人と話している時、いつ自分が話す番か、また聞く番かが分からなくなる3点2点1点0点
10耳障りな騒音(掃除機、大声や過度のおしゃべり等)をさえぎるため、耳をふさぐことが時々ある3点2点1点0点
11会話の最中に、相手の表情や、手や体の動きの意味を読み取ることがとても難しいことがある3点2点1点0点
12大まかな考えよりも細部に注目する3点2点1点0点
13物事を言葉通りに受け取って、他人が言わんすることに気がつかないことが多い3点2点1点0点
14自分の好きなやり方が突然変えられてしまうと、とても動揺する3点2点1点0点

出典:「うつと発達障害」青春出版社(岩波,2019)

質問に4択で回答したら、各点数の合計を出してみてください。合計が14点以上の人は、ASDの可能性があるとされています。なお、発達障害でない人の平均は5点です。

ただし、上記の自己診断テストは第三者のチェックがないため、信頼性に欠ける面があります。あくまで目安と考えて、詳しく知りたい場合は医師の診断を受けるとよいでしょう。

ASDの診断基準も知っておこう

アメリカ精神医学会が、明確な診断基準を定義することを目的に作成した「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)」によると、以下の4つの基準を満たすとASDとみなされます。専門的な表現をかみくだいて説明すると、以下のとおりです。

  1. コミュニケーションや対人関係にずっと問題を抱えている

例)場に合った行動をとれない、他人の表情・しぐさなどの意味を理解しづらい、感情を共有できない、など

  1. 興味が狭い範囲に限られ、強いこだわりがある。反復的な行動、会話がみられる

例)何かに没頭すると周りがみえなくなる、物事の手順に強いこだわりがある、ささいなことが気になって仕方がない、音・光・肌触りに敏感、など

  1. 1、2の症状が乳幼児(満1歳未満)または幼児期(満1歳半~6歳)の時期からみられる
  1. 職業、学業、社会生活に重大な問題が生じている

ただ、上記の基準があるものの、ASDの特徴がうっすらした人もいるため、医師が明確に診断できないケースもめずらしくありません。こうしたASDの症状がみられるものの診断できない人は、「ASDの傾向がある」「グレーゾーン」などと言われます。

いずれにしても、自分で診断するのは難しいので、専門家に相談してみることをおすすめします。

ASDかも?と思ったら医療機関に相談してみよう

ASDは、社会でのコミュニケーションの難しさと独特のこだわり・感覚を特徴とする発達障害です。ビジネスパーソンに求められる行動がどうしてもとれない人や、こだわりが強すぎて仕事に支障が出てしまう人などは、もしかするとASDかもしれません。本記事で自己診断テストを試してみてはいかがでしょうか。

しかし、診断テストはあくまで目安にすぎません。ASDの可能性が高い結果が出たとしても、診断を確定するには医療機関の受診が必要です。ASDの疑いがあり、日常に困りごとをお持ちの方は、医療機関に相談することをおすすめします。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

自分がASDかも?と思う人は増えていると思います。1つには、現代は高いコミュニケーション能力が要求される場面が多く、その中で人との違いや、自分なりに上手く行かないと思うことが増えてきているのではないでしょうか。そして、その要因として、最近話題の自閉スペクトラムとか、アスペルガーみたいなものが当てはまるのでは?と考えてネット情報を見ると、いかにも自分にぴったりくるという情報に当たるという。今回紹介の自己記入式チェックリストもその1つかと思います。

注意点としては、当てはまるASD的特性があること=障害ではないし、必ずしもASDと診断されるわけでもありません。ASDという診断には一定の留保、つまり(特性ゆえに)「職業、学業、社会生活に重大な問題が生じている」が必要です。単に当てはまるというのではなく、当てはまる性質が自分(もしくは家族)の問題として取り上げる必要を感じた時に、是非医療機関に頼ってみてください。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。



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