情緒不安定とは?よくある症状や理由と対策を解説

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イライラしていたかと思うと急に悲しくなったりして、「これって、情緒不安定?」と心配になることもありますよね。

この記事では、情緒不安定とは一体どういう症状のことを指すのか、その具体的な症状について紹介します。また情緒不安定になる原因や対処法もあわせて解説します。

情緒不安定かもしれないと不安に思っている方はぜひ参考にしてみてください。

情緒不安定とは?代表的な症状

情緒不安定とは診断名ではなく、感情の起伏が激しく安定的でない状態をいいます。とはいえ、感情の起伏は誰にでも普通に起きるため、具体的にどういう内容であれば情緒不安定というのか疑問に思うこともあるでしょう。情緒不安定とされる代表的な症状について解説します。

気分の浮き沈みが激しい

情緒不安定の症状としては、気分の浮き沈みが激しいことがまず挙げられます。

うれしかったり悲しかったりという感情の波は誰にでもあるものですが、情緒不安定の場合は、その感情の落差が激しい状態をいいます。

気分が晴れたと思ったら急激に落ち込んだりと気分の上下が激しく、心が安定せず、仕事がはかどらないなど生活に支障が出ることもあります。

落ち込んだり悲しくなる

特に理由もないのに、落ち込んだり悲しくなることも情緒不安定の症状のひとつです。

急に涙が出て止まらなくなったり、ふいに「もうダメだ」ととても悲観的な思いに襲われたりします。今までは気にしなかったようなささいなことでも憂うつな状態になり、なかなか立ち直れないこともあります。

イライラが止まらない

イライラが止まらないのも情緒不安定の代表的な症状です。

特に原因もないのに苛立ったり、ささいなことで怒りっぽくなる状態です。普段なら特に気にならないことでも、いらだつ感情が抑えられなくなります。

いらだつあまりに人や物に当たってしまったり、人に八つ当たりしたことで落ち込んでさらにイライラすることもあります。

情緒不安定の理由とは?

情緒不安定になる理由としては、さまざまな要因が考えられます。また理由はひとつでなく、複数の要因が重なって起きるともいわれています。それらの理由について、「本人に関する要因」と「環境に関する要因」とに分けて解説します。

本人に関する要因

本人に関する要因はさらに「精神的な要因」と「身体的な要因」とに分けられます。精神的な要因と身体的な要因の代表的な例について具体的に解説します。

■精神的な要因の代表例

情緒不安定になる精神的な要因の例としては、以下のものがあります。

  • ストレスが溜まっている
  • 不安を抱えている
  • 精神疾患の症状のひとつとして現れている

要因にはまず、仕事や日常生活、人間関係においてストレスが溜まっていることが考えられます。激務で休みが取れない、職場の人間関係がうまくいっていないといったストレスで情緒不安定になることがあります。

ストレス以外でも、仕事や私生活で何か大きな不安や心配事を抱えている場合も情緒不安定になりやすい傾向です。

また、うつ病や不安障害などの精神疾患を抱えている場合にも、症状のひとつとして情緒不安定になるケースがあります。

■身体的な要因の代表例

情緒不安定になる身体的な要因の例としては、以下のものがあります。

  • 睡眠不足
  • アルコールやカフェインの摂りすぎ
  • ホルモンバランスの乱れ

睡眠不足も情緒不安定になる要因のひとつです。睡眠は脳や体の疲労を回復させるのに必要であり、睡眠を十分に取れない状態が続くと心身の不調につながります。

また、アルコールやカフェインは交感神経を興奮させる働きがあるため、摂りすぎると自律神経を乱れさせたり、睡眠の質を下げたりすることがあります。結果として、情緒不安定につながりやすくなります。

さらに、女性の場合、月経に伴うホルモン変動が情緒面に影響している方がおり、月経前不快症候群のような診断のつく方もいます。また、妊娠や出産は、気分を落ち着かせる作用が本来はあるのですが、一方で情緒の変動が大きい方がいます。

環境に関する要因

環境の変化が原因で、情緒不安定になることもあります。

例えば、下記のように環境が大きく変化するケースなどが考えられます。

  • 入学や就職
  • 転職や昇進
  • 結婚や出産
  • 季節の変わり目

入学や転職、結婚といった自身を取り巻く環境が大きく変わるときには、心身に大きなストレスがかかります。そうした負担がもとで、精神的に不安定になることが少なくありません。

また、季節の変化に敏感で、情緒不安定になる場合もあります。季節の変わり目の気温や気圧の急激な変化についていけず、心身の不調を招きやすくなります。あるいは「冬季うつ」のように、冬になると落ち込むといった特定の季節に情緒不安定になることもあります。

情緒不安定と関連性が強い症状や疾患

情緒不安定は誰にでも起きうることです。それでも、長く情緒不安定な状態が続くと疾患に発展する場合や、反対に疾患があって情緒不安定を引き起こしている場合もあります。以下では、情緒不安定と関連性が強い疾患やその症状について解説します。

不安症(不安障害)

不安障害とは、過度な不安を感じて日常生活に支障が出てしまう疾患のことです。

不安障害は、その症状の現れ方から下記のようなさまざまな種類に分けられます。

パニック症:理由もなく激しい不安に襲われ、心臓がドキドキする、呼吸が苦しくなるといったパニック発作を繰り返す
社交不安症:人に注目されたり、人と話すことが怖い、人が多くいる場所で強い苦痛を感じる
強迫症:不合理とわかっていてもしないではいられない「強迫行為」を繰り返す

不安障害では、上記のように発作的に過度な不安に襲われる、不安で同じ行動を繰り返すといった情緒不安定な症状が見られます。

うつ病

うつ病は、憂鬱な気分や様々なことへの意欲の低下が続く疾患で、言ってみれば脳のエネルギーが欠乏している状態でもあります。

気分障害のひとつで、一日中気分が落ち込んだり、何をしても楽しくないと感じたりするほか、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体的症状が現れることもあります。

うつ病と診断されていなくとも、こうした情緒不安定な症状が継続する場合は、うつ病の可能性があります。

また、うつ病の場合、気分の落ち込みという精神的な状態に気付く前に、下記のような身体的な不調が現れることもあります。

  • 性欲がない
  • 眠れない、あるいは過度に寝てしまう
  • 頭痛や肩こりがある
  • 動悸やめまいがある

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害も気分障害のひとつで、極度に気分が高まって活動的になる躁(そう)状態と、無気力なうつ状態との両極端な状態を繰り返す疾患のことです。

躁状態であるときは調子がよいため双極性障害と気づかず、うつ状態のときに病院に行き、うつ病と判断されることも珍しくありません。

躁状態でギャンブルや買い物で浪費をしてしまったり、尊大になって人間関係を壊してしまったりするなど日常生活や対人関係に支障をきたすことがあります。

双極性障害とうつ病は別の病気であり、治療法も異なります。誤った診断を受けると、治療をしてもなかなか症状が改善されないという状態になることがあります。

自律神経失調症

自律神経失調症とは、病名ではなく、心や体のストレスによって自律神経が正常に機能せずに起こるさまざまな症状のことです。

自律神経失調症は、症状から考えられうる他の病名に当てはまらない場合に、診断されます。

症状としては、動悸、息切れ、息苦しさ、頭痛、めまい、耳鳴り、寝汗、不眠などさまざまです。循環器系、消化器系、呼吸器系、泌尿生殖器系、耳鼻科系といった多岐にわたる症状があります。情緒不安定などの精神的な不調症状も含まれます。

不眠症(睡眠障害)

不眠症とは、寝つきが悪い、眠りが浅いなどの睡眠の問題があって、心身に不調をきたす神経症のことをいいます。

具体的な心身不調の症状としては、日中に倦怠感を生じたり、食欲や集中力が低下したりといったことが挙げられます。

不眠の原因には、ストレスのほか、心や体の疾患、薬の副作用などさまざまな要因が考えられています。悩みやストレスからくるイライラ、緊張といった情緒不安定な状態が続くことも、不眠を慢性化するため、不眠症の要因のひとつといわれています。

関連記事:「発達障害と睡眠障害 様々な症状とその対策」

更年期障害

更年期障害とは、男女問わず、40歳をすぎた頃から見られるさまざまな体や心の不調のことをいいます。

性ホルモン分泌量の低下が原因で、自律神経失調症のような症状が現れます。症状は個人差が大きく、ほとんど不調を感じない人も少なくありません。

体の症状としては具体的には、動悸や息切れ、異常な発汗、頭痛やめまい、耳鳴りといった症状があります。精神的な症状としては、興奮、イライラ、不安といった情緒不安定な状態や不眠などが挙げられます。また、更年期障害による身体の不調がストレスとなってさらに精神的不調を悪化させることも少なくありません。

情緒不安定への対策

情緒不安定は診断名ではないため、治療方法というものはないものの、改善のための対策がいくつかあります。以下ではそれらの情緒不安定への対策について紹介します。

なお、情緒不安定の症状から上記で紹介したような疾患が考えられる場合には、悪化を防ぐためにも、心療内科や精神科を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。

考え方・物事のとらえ方に関する対策

情緒不安定の原因となるストレスを軽減するためにも、考え方や物事のとらえ方を変える対策を取ることがおすすめです。

具体的には、認知行動療法という方法があります。認知行動療法とは、ストレスに反応するプロセスを、下記の4つに分け、意識的に変えられる「認知」と「行動」の部分を柔軟に変える方法です。

認知:起こった出来事をどのように認識するか
感情:認知したことから起こる気持ち
身体:認知したことから起きる体の反応
行動:最終的な振る舞い

例えば、テストで70点を取った場合、「認知」プロセスで「100点でなければダメだ」と認知してしまうとストレスが強くなり、「感情」面で落ち込んだり、「身体」面でおなかや頭が痛くなったりします。その結果、「行動」面で、テストを受けるのが怖くなって学校を休むかもしれません。

認知行動療法では、この「認知」の部分で、意識的に「平均点が50点なのに70点も取れた」などと柔軟に考えるようにします。そうすることによって「感情」や「身体」面でポジティブな反応が期待できます。さらに「行動」においても、前向きな選択をするように働きかけ、よい結果につながるようにします。

ただし、自分自身の力だけで「認知」の捉え方を変えることは難しいので、指導者などの第三者に協力してもらって行うのがよいでしょう。

生活習慣に関する対策

情緒不安定な状態は、生活習慣が原因で生じることもあります。以下では、情緒不安定にならないための生活習慣に関する対策を紹介します。

■十分な睡眠時間を確保する

十分な睡眠時間を確保することは、情緒不安定を避けるためにも大切です。睡眠が不十分だと心身の不調を招きやすくなります。夜更かしや不規則な生活を避けて、睡眠を十分に取るようにしましょう。

厚生労働省によると、日本の成人の標準的な睡眠時間は6時間以上8時間未満とされています。快適な睡眠時間には個人差があるものの、目安がわからない場合は、6~8時間を目安とするとよいでしょう。

関連記事:「夜更かしをやめるには? 無理なく続けるコツ」

■カフェインやアルコールを摂りすぎない

カフェインやアルコールを摂りすぎないことも、情緒不安定を避ける対策となります。

コーヒー、エナジードリンクやお酒などを好んで飲む人は多いでしょう。しかし、カフェインやアルコールを摂りすぎると自律神経が乱れたり、睡眠の質を低下させることがあります。

情緒不安定な状態を招きやすくなるため、カフェイン・アルコールを摂取しすぎないように注意しましょう。

■ストレスを溜めすぎない

ストレスを溜めないことも、情緒不安定な状態にならないためにも重要です。

ストレスが溜まって限界に達すると、気持ちが沈んだり、イライラして怒りっぽくなったりと心身に不調をきたすことがよくあります。

そのため、ストレスに耐えるのでなく、まめにストレスを発散するように心がけましょう。

時間がない場合でも自分を休めて癒すための時間を取ったり、運動やレジャーを楽しんだりと意識的にストレスを解消することが大切です。

情緒不安定になった際の対策

情緒不安定になってしまった際の対策を紹介します。

■マインドフルネス

マインドフルネスとは、瞑想などで心を落ち着けて、ストレス軽減や集中力アップを図るメンタルケアの方法です。

瞑想をして、今のことだけに集中することで、つい頭に浮かぶ日々の心配ごとや将来に対する不安などを排除できます。結果として、不安やストレスから解放され、心身のコンディションを整えられます。

マインドフルネスの瞑想方法は何種類かありますが、呼吸に集中する「呼吸の瞑想」という代表的な方法を紹介します。

呼吸の瞑想方法は以下の通りです。

  1. 背筋を伸ばして座る。床にあぐらをかいても正座でも可。椅子に座るのもOK。 目は軽く閉じるか、伏し目がちに斜め前を見る。
  2. 自分にとって自然な呼吸をする。息を吸うときにおなかや胸が膨らみ、息を吐くときにおなかや胸が縮むのを確認する。
  3. 注意がそれたり雑念が浮かんでも、それを追わず呼吸に意識を戻す

マインドフルネスは、心の筋トレとして、毎日少しの時間だけでも続けることがよいとされています。

■腹式呼吸

腹式呼吸で深呼吸することで、情緒不安定な気持ちを和らげられることもあります。

腹式呼吸のやり方は以下の通りです。

  1. 鼻からゆっくり息を吸い込みます。おなかに手を当てて、丹田(おへその下)に空気を溜めるイメージでおなかをふくらませるようにしましょう。
  2. 吐くときは、息を吸うときの倍の時間をかけるつもりで、口からゆっくり息を吐き出します。おなかが凹むことを意識しながら、息をすべて出しきるようにしましょう。

深呼吸することで気軽にリラックスできるため、試してみましょう。

■筋弛緩法

筋弛緩法も情緒不安定から解放されるための有効な方法です。

筋弛緩法とは、体の筋肉に力を入れて緊張させた後、ストンと一気に緩めることを繰り返して、体の緊張をほぐす方法です。

イライラや不安を抱えていると身体が緊張でこわばっていることが少なくありません。そうした場合には、筋弛緩法で身体を緩めて解放することで、心のリラックスにつなげることができます。

筋弛緩法は、手や首、肩など好きな部位ごとに行うことができます。また、オフィスや電車などどこでも手軽に行えます。

基本的なやり方は、「10秒間力を入れる⇒一気に力を抜いて20秒間リラックス」を繰り返すだけです。例えば、肩の場合のやり方は下記の通りです。

  1. 両肩を上げて首をすぼめるように肩に10秒間力を入れる。
  2. 一気に力を抜いて20秒間脱力
  3. 1と2を繰り返す

力を入れるときも抜いたときにも、その感覚をじっくり味わうことがリラックスするためにも大切です。

情緒不安定の理由に応じた対処が大切

情緒不安定になっている場合は、まずはその理由を自分なりに把握して、その理由に応じた対処方法を取ることが大切です。

情緒不安定であること自体は疾患ではないものの、情緒不安定の要因に疾患が影響していたり、情緒不安定が疾患に発展したりすることもあります。疾患の可能性が考えられる場合は、自分一人で対処することは難しいため、医療機関を受診して相談するようにしましょう。

情緒不安定な状態を悪化させないためにも、事態を放置せずに対策を取るようにしましょう。情緒不安定な理由に応じた対策を取ることで、リラックスのできる平穏な日常を取り戻せるでしょう。


監修者コメント

数ある精神症状の中でも、情緒の不安定は本人にとって非常に辛く、また周囲の方にとっても辛かったり、見ていて心が痛むものの代表ですね。精神科医にとっても、治療目標としてまず目指すのは情緒の安定であることはよくあります。本文にある通り、原因や要因として考えられることも、また対策や治療も数多くあるので、環境を含め、情緒不安定の元になっていることを検討し、可能な範囲で様々な手段を講じていくことが必要です。
注意が必要なのは必ずしも精神(心もしくは脳と言っても)や環境だけではなくて、身体の状態が影響していることもあったりします。例えば甲状腺機能障害とか。総合的な対処が必要な状態、それが情緒不安定です。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。



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