実行機能と発達障害

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実行機能とは

実行機能とは、目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳機能のことです。

ここでいう目標とは、「将来の目標」のような大きなものではなく、日常生活の中で自分のしたい/すべき行動すべてを指します。(例えば、着替えをする・料理をする・お風呂に入る・家から職場まで移動する・効率よく仕事をする…など)

実行機能が具体的にどのような要素を含んでいるのか、研究によってさまざまな見解があります。多くの場合、下記のような点が実行機能の要素として取り上げられています。

  • 見たり聞いたりしたことを少しの間記憶したり、記憶をもとに考えたりする力と関連があること(ワーキングメモリ)
  • 行動に必要な情報を整理して目標を立てること(共通実行機能)
  • 気持ちや行動を柔軟に切り替えること(シフティング)
  • 行動するために過去の経験を参照すること(情報の更新)
  • 目標には直接関係のない行動をしそうになっても我慢すること(抑制)

日常生活と実行機能

日常生活の場面に置き換えてみましょう。

1時間で部屋の掃除をする必要があるとします。この掃除にも少なくとも4つの実行機能が関連しています。

❶そのために、棚の上は15分、机の上は15分、床の上は10分…というように時間を決めたり、掃除に必要な道具を考えてそろえたり、掃除をする場所に優先順位をつけるなど、目標達成のための計画を立て、段取りを考えます

❷そして、別の行動(例えば、ソファに座ってテレビを見ている)から、お掃除モードに気持ちを切り替え、行動を開始します

❸お掃除中はほかに注意が向くもの(例えば、掃除中に出てきた面白い漫画)があっても、自分の目標である掃除に注意を向け続ける、あるいは一度漫画に向いた注意を掃除に切り替えるといった調整が必要です。

❹また、効率よく掃除をするためには過去に掃除をしたときの経験を思い出して対応することも必要でしょう。

このように、日常生活の様々な場面で実行機能が活躍しているのです。

実行機能と発達障害*

実行機能の障害は日常生活の様々な困難と関係します。例えば、以下のような苦手さがあげられます。これらの困りごと・苦手は、発達障害の方がもつ困りごとにも非常に良くあてはまります。とりわけADHDの困りごとに通じる部分が多く、よく取り上げられます。

  • 物事を計画立て、時間や労力の見通しを持ちながら取り組むことが苦手
  • 優先順位をつけて段取りよく取り組むことが苦手
  • 段取りよく効率的に物事を進めることの苦手さによって、日常生活に必要な行動や仕事に時間がかかる
  • すべきことに取り掛かるために気持ちや行動を切り替えることが苦手だったり、途中で別のことを始めてしまったりする
  • 予定外・想定外のことに柔軟に対応することが苦手
  • 衝動的に行動したり、発言したりしてしまう

特にこれまで経験したことがないような場面では、実行機能の障害によって物事を効率的に進める・達成することが難しいことがあります。

実行機能が関係する困りごとや苦手さへの対策

自分でできる対策(例)
  • 取り組むたびに手順を考えなくてもよいように、マニュアルを参照する(既存のものを活用する、自分で作成する)
  • 作業に集中できる環境を整える(作業に関係のないものを見える範囲に置かない、など)
  • すべきことや行動の順番を整理するために、ふせんやToDoリストアプリを活用する
  • 時間管理がしやすいようにリマインダー機能などを活用する
  • 衝動的な言動をとってしまった後にリカバリーできるようにする
環境調整や周囲の力を借りる対策(例)
  • 指示はなるべくひとつずつ、視覚的に確認できるかたちでわたしてもらう
  • いつ・どこで・何を・どのように取り組むべきかチェックリストを用意してもらう
  • すべきことの優先順位や作業マニュアルを用意してもらう

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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