朝起きられない病気はある?起きられない原因や対策についても解説

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朝、起きられず、仕事や学校に遅れてしまうなど社会生活を送るうえで困難を感じている方も多いのではないでしょうか。

朝起きられない原因には、生活習慣によるもののほか、身体的な疾患や精神的な疾患も考えられます。起きられない症状への対策を考える際には、まず起きられない原因が何かを把握することが大切です。

そこで、この記事では、朝起きられない場合に考えられる原因について紹介します。さらに改善のための対策も解説しますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

朝起きれない代表的な原因

朝起きれない代表的な原因としては「睡眠が不足している」「睡眠のリズムが乱れてる」「何らかの疾患が隠れている」の3つがあります。以下ではこの3つの原因について詳しく解説します。

睡眠が不足している

朝起きれない原因としてまず考えられるのは、睡眠が不足していることです。

夜遅くまで起きているなどして十分な睡眠時間を確保できない場合には、起きるべき時間に深い眠りに落ちていることも多く、簡単に起きることができません。

起きれない場合には、睡眠時間が足りているかどうか注意することが大切です。
なお、「令和3年社会生活基本調査」によると、日本人の睡眠時間は平均7時間54分です。最適な睡眠時間は個々人によって異なりますが、最近よく眠れていない、平均よりも極端に睡眠時間が短いといった場合は注意しましょう。

睡眠のリズムが乱れてる

睡眠時間は足りているものの、睡眠のリズムが乱れているために、朝起きれなくなることもあります。

通常、人は体内時計によって、朝自然に目が覚め、夜眠くなるというリズムで生活できるように調整されています。しかし、夜更かしをして夜に光刺激を受けるなどすると、この体内時計が遅れてしまい、生活リズムが乱れてしまうことが少なくありません。

体内時計が狂うと、夜に目がさえて眠れなくなる一方で、朝の起きなければならない時間に深い眠りに落ちて起きれないといったことが生じます。

何らかの疾患が隠れている

朝起きれない場合には、何らかの疾患が原因となっていることもあります。

例えば、睡眠障害、起立性調節障害、うつ病、適応障害といった病気を抱えている場合は、朝起きれないといった症状が起きることも少なくありません。

疾患が原因で起きれない場合には、自己の努力での改善は難しいため、医師の診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。

疾患で起きれないケースについては次章以降で詳しく解説しますので、参考にしてください。

発達障害と睡眠の関係

発達障害*の場合、「眠れない」「起きれない」「眠い」といった睡眠の問題を抱えやすいといわれています。

発達障害の方のうち、どれくらいの方がどのような睡眠の悩みを抱えているかについて調査したデータがあり、結果は下記の通りです。

  • 眠れない:54〜67%
  • 起きない/起きれない:43〜60%
  • 眠い:30〜50%

また、ADHD(注意欠如多動症)の方については、約47%が「日中眠くて仕方がない」という過眠症状を起こすというデータもあります。

このように発達障害の方は睡眠の悩みを抱えるケースが少なくありません。

ここで気を付けたいのは、発達障害だから睡眠の問題があっても仕方がないと安易に判断できない点です。

発達障害の方の場合、睡眠障害を併発していることがあり、その睡眠障害によって、眠れない・起きれないといった睡眠の問題を引き起こしていることがあります。

特にADHDの方は定型発達の方より睡眠障害を発症しやすいというデータもあります。下記は、定型発達とADHDとの間で、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害の発症率を比較したものです。

【睡眠障害の発症率の違い】

定型発達ADHD
睡眠時無呼吸症候群3%25〜30%
むずむず脚症候群2%25〜30%
周期性四肢運動1〜8%約30%

朝起きれない病気とは?代表例を紹介

朝起きれない代表的な原因としては「睡眠が不足している」「睡眠のリズムが乱れてる」「何らかの疾患が隠れている」の3つがあります。以下ではこの3つの原因について詳しく解説します。

睡眠障害

睡眠に関連するさまざまな病気をまとめて睡眠障害といいます。朝起きれない原因として考えられる睡眠障害としては、「不眠症」「概日リズム睡眠障害」「睡眠時無呼吸症候群」「過眠症」「むずむず脚症候群」「周期性四肢運動障害」などが挙げられます。詳細は次の通りです。

不眠症

不眠症とは、「寝つきが悪い」「眠りが浅く何度も目が覚める」「早く目覚めて二度寝できない」など睡眠に問題があり、日中に眠気や倦怠感、意欲低下などの症状が出ることです。不眠の原因はストレスや心の病気、体の病気、薬の副作用などさまざまです。

この不眠症によって寝不足となり、朝起きれなくなることがあります。また、不眠症の治療のため、睡眠薬を処方されている場合には、睡眠薬の効果が長時間続いているために朝起きれないというケースも見られます。

概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害とは、体内時計の周期を1日24時間の周期に合わせられないことによって生じる睡眠の障害です。夜間の不眠、日中の眠気、倦怠感、食欲不振などの症状が出ます。

体内時計は、睡眠・覚醒リズムを維持するものですが、その周期は24時間より若干長いといわれています。

通常、この体内時計のずれは、日光を浴びたり、食事をしたりとさまざまな刺激を受けることにより、外界の周期に同調していきます。朝自然に目覚め、夜も自然に眠ることができるのは、この1時間のずれがきちんと24時間に同調・修正されるからです。

しかし、不規則な生活を続けることで、この体内時計と一日の周期との同調がうまく行かないと、起きたい時間に起きれないといった睡眠障害が起きることがあります。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まる疾患のことです。呼吸が止まって血液中の酸素濃度が低下すると再び目が覚めて呼吸を始め、眠るとまた呼吸が止まるといったことを繰り返します。

原因として考えられるのは、肥満や小さい顎、舌の根元が落ち込む舌根沈下、飲酒などです。

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸を繰り返して熟睡できないため、睡眠不足や睡眠の質の低下を招きます。このため、起きたい時間に起きれなくなるほか、日中強い眠気に襲われることがあります。

過眠症

過眠症とは、睡眠が十分であるにもかかわらず、日中に強い眠気に襲われ目覚めていられない症状のことです。寝ても寝ても眠く、朝起きれないことがあります。

過眠症を引き起こす病気はいくつかあり、そのうちの一つがナルコレプシーです。ナルコレプシーは、寝てはいけないような状況の中で突然の眠気で寝入ってしまう睡眠発作とも呼ばれる症状を持っています。

このナルコレプシーは、それ自体はとても珍しい疾患ですが、ADHDと併発していることは少なくありません。

ナルコレプシーには、びっくりしたときや大笑いしたときに全身や身体の一部の力が抜けてしまう「情動脱力発作」という症状があります。このナルコレプシーの脱力発作とADHDの関係を調べる調査では、下記のような結果が出ています。

  • ナルコレプシーで脱力発作がありADHDでもある率:19.7%
  • ナルコレプシーで脱力発作がなくADHDでもある率:35.3%

調査結果では、ナルコレプシーで脱力発作のある方の5人に1人、脱力発作のない方の3人に1人以上がADHDであるという結果となっています。

このように、睡眠障害と発達障害が併発している可能性があるため、発達障害で眠気に襲われる方は、睡眠障害がないか確認することが大切です。

むずむず脚症候群

むずむず脚症候群は、夜、下肢を中心に「むずむずする」「痛がゆい」といった異常な感覚が出現して不眠、過眠を引き起こす病気です。

夜寝ようとしても、むずがゆさで眠りにつくことができず、何とか寝つけたとしても、睡眠が浅く十分に眠れない傾向があります。なかなか眠れず、起きる時間になって深い眠りに落ちて起きれないことがあります。

原因は基本的には不明であることが多いのですが、その中でも中年以降で特に女性に多く、鉄欠乏性貧血や、腎不全による人工透析を受けている人によく見られるといわれています。また、時に薬の副作用で出現することがあります。症状は自ら訴えないと医師に把握してもらえないことが多いので、症状があるときは積極的に訴えましょう。

周期性四肢運動障害

周期性四肢運動障害とは、睡眠中に片足あるいは両足がピクピクするといった不随意運動が周期的に起こり、睡眠が妨げられる病気です。

鉄不足や脳神経機能の異常で脊髄の興奮を抑える働きが弱まるために起こるといわれています。

周期的な四肢の運動で、夜間の不眠や日中の過眠を招きます。なお、本人に自覚がない場合も多く、むずむず脚症候群と合併して起きることが少なくありません。

周期性四肢運動障害は、睡眠の質が下がりぐっすりと眠れていないため、朝起きるときになって深い眠りに落ち、起きれないことがあります。

起立性調節障害

起立性調節障害は、自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかず、立ち上がったときに血圧が低下したり心拍数が上がったりして、めまい、動悸、失神などが起きる疾患です。

小学生から大人までなり得る疾患で、下記のような症状が出ます。

  • 朝起きれない
  • 寝つきが悪い
  • 倦怠感がある
  • 食が細くなる
  • 立ちくらみを起こしやすい
  • 集中力が続かない

症状は午前中に強く、午後以降は回復し、夜は逆に目がさえて眠れないといったことが起こります。このため、朝起きるのがつらかったり、夜眠れなかったりということがあります。

うつ病

うつ病は、精神的・身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態です。うつ病になると、食欲、睡眠欲、性欲などのさまざまな意欲の低下と憂うつな気分といった症状が続きます。

うつ病では、ストレスに対する拒否反応で、朝起きれなくなることが少なくありません。

また、うつ病は、不眠の症状を伴うことがよく知られていますが、過眠の症状が現れることもあります。過眠の症状が現れると、朝起きれず、昼すぎまで寝込んでしまうということが起こります。

適応障害

適応障害とは、日常における何らかのストレスが原因となって心身のバランスが崩れ、社会生活に支障が生じている状態をいいます。適応障害では、症状を引き起こすストレス原因が明確であり、ストレスから離れることで比較的回復しやすいことが特徴です。

症状としては、憂うつな気分や不安・倦怠感を感じたり、夜に眠れなくなったり、朝起きられなかったりします。

適応障害は原因となっているストレスから離れるようにすれば症状が改善しやすいため、朝起きれない場合は、ストレス軽減に努めることが大切です。

朝起きられない問題に対する対策

朝起きられない代表的な原因や代表的な病気についてお伝えしました。次に朝起きられない場合の対策について紹介します。

生活リズムを整える

朝起きられない場合には、生活リズムを整えるようにしましょう。

夜更かしなどの不規則な生活を続けていると、睡眠不足になったり、体内時計が狂ったりして朝起きれなくなることが少なくありません。生活リズムを整え、睡眠時間を十分にとり、睡眠リズムを整えることが重要です。

夜は遅くまで勉強やゲームをすることは控えてベッドに入るようにしましょう。また朝は光を浴びることが大切です。起きれない場合でも、起床時に強制的に朝日が部屋に入るようにするなどして、朝日を浴びるようにしましょう。朝日を浴びることで、体内時計が24 時間の周期に調整され、リズムが整ってきます。

ストレスを溜めすぎない

朝起きれない場合には、ストレスを溜めすぎないことも重要です。

ストレスで眠れなくなって睡眠不足となり、朝起きれなくなることが少なくありません。また、先述の通り、ストレスが原因で不眠症やうつ病、適応障害などを引き起こし、それらの疾患が原因となって朝起きれなくなることもあります。

睡眠不足、不眠症、うつ病などを引き起こさないためにもストレスは溜めすぎないようにしましょう。

病気の可能性が高い場合は医療機関を受診する

朝起きれない原因として、病気の可能性が高い場合は、早めに医療機関を受診し、治療を行うことが重要です。

朝起きれない原因として考えられる睡眠障害や、起立性調節障害、うつ病、適応障害といった病は自力で治すことができません。思い当たる症状がある場合は、まずは医療機関で診断を受けることが大切です。

原因をまず正しく把握し、適切な治療を受けるようにしましょう。

原因ごとの適切な対応が重要

朝起きれない場合の原因や病気、対策について紹介しました。

朝起きれない場合の原因の代表例としては以下のものがあります。

  • 睡眠が不足している
  • 睡眠のリズムが乱れてる
  • 何らかの疾患が隠れている

なお起きれない場合の原因として考えられる疾患には下記のようなものが挙げられます。

  • 睡眠障害(不眠症、概日リズム睡眠障害など)
  • 起立性調節障害
  • うつ病
  • 適応障害

朝、しっかりと起きれるようにするためには原因ごとの適切な対策が必要です。なお、朝起きれない原因が疾患である場合もあるため、改善しない場合は医療機関の受診も検討してみてください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。


監修者コメント

朝起きられないことは日常生活に多大な影響を与えますね。本文に挙げられているように、様々な疾患をベースに朝起きづらいということもあれば、これといった特定の原因も無く、いつからか朝起きるのが極端に苦手になる方もいます。

発達障害との絡みで言えば、ADHDの方に多い印象があります。生活習慣に要因がある場合もあれば、要因無く朝が苦手、という方も多く、ある意味特性の1つと言えるかもしれません。いずれにしても、朝が苦手な面には、疾患的にも、また対応的にも様々検討事項がありますので、きちんと相談してみることをお勧めします。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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