ひきこもりでも就職できる?原因や心理に寄り添う就労移行支援で社会復帰を目指そう

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家庭以外での、社会活動の機会が減ってしまうひきこもり。社会復帰を考えていても、何から始めてよいかわからず、困っている人も多いのではないでしょうか。

ひきこもりから社会復帰を目指す際におすすめなのが、就労移行支援サービスの利用です。就労移行支援事業所では、ひきこもりの人に対する就労サポートが受けられます。

本記事では、ひきこもりへの理解を深め、支援制度の内容や就労移行支援サービスの利用の流れについて解説します。ひきこもりから社会復帰を目指すために、ぜひお役立てください。

ひきこもりとはどんな状態?

ひきこもりとは、家庭外の活動をせずに家族以外との交流をほとんど行わない状態のことを言います。定義については、主に外出状況と外出をしなくなった期間で判断されます。

ただし、外出状況はかなり細分化されており、分類は以下の通りです。

  1. 遊び等で頻繁に外出する
  2. 仕事や学校で平日は毎日外出する
  3. 仕事や学校で週に3~4日外出する
  4. 人づきあいのためにときどき外出する
  5. 普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する
  6. 普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける
  7. 自室からは出るが、家からは出ない
  8. 自室からほとんど出ない

出典:内閣府 こども・若者の意識と生活に関する調査

上記の2~4までの方は、ひきこもり予備軍です。ここからさらに病気等の理由がなく、6ヶ月以上その状態が続いている5~8に該当する人を「広義のひきこもり」と定めています。

同調査によると、15歳~64歳のうち広義のひきこもりに該当する方は推定146万人、つまり50人に1人がひきこもりであることが分かりました。ひきこもりは、誰にでも起こり得る身近な問題と言えるでしょう。

また、ひきこもりは3年未満までが解決しやすいと言われており、それを過ぎると数十年単位で長期化する可能性があります。そのため、早めの段階での適切な支援や治療が重要です。

ひきこもりの原因

ひきこもりは、1つの原因だけでなく複数の要因が重なって、ひきこもりになるケースが多く見られます。

例えば、「いじめ」や「家族関係」、「病気」「精神障害」などが挙げられます。これらは複雑に関係している場合もあるため、どれが原因か特定するのは難しいでしょう。

2023年の同調査では、「退職」が最も多く、次いで「人間関係」や「新型コロナウイルスの流行」も大きな要因として挙げられています。

ひきこもりの年齢と性別

では同調査からもう少し、近年の広義のひきこもりの方の傾向を見ていきましょう。

まず15~39歳の割合は2.05%で、人口に換算すると約61.9万人です。

男女比は女性が増加傾向にありますが、年齢層による差異はほとんど見られませんでした。

外出状況は約80%が近所のコンビニに行ける程度の外出を可能としていますが、コロナ禍の影響があってか趣味の外出は減少しているようです。ひきこもり年数は1年未満が全体の約2割と一番多い反面、10~30年以上ひきこもっている方も約17%いるのが現状です。

また、3年未満のひきこもりの人数が2.5倍以上増加しているのも、コロナ禍が要因と考えてよいでしょう。

一方、40~64歳の割合は2.02%で、2018年の調査に比べて39%増加しています。

年齢層の差異がない15~39歳に比べ、中高年は年齢が上がるにつれてひきこもりの人数も増加しているのが特徴です。年代で言えば65~69歳が半数近くを占めています。

しかし90%以上がコンビニ程度の外出はできており、ひきこもりの深刻度でいえば中高年の方が割合は低くなっています。また、ひきこもりになった理由は退職やコロナ禍の影響が多く挙げられ、職業は専業主婦が圧倒的に多いです。

ただし、こうしたひきこもりの定義や分類は曖昧な部分も多いため、本人や家族が不安を抱えている場合には、早めに相談や支援を受けることをお勧めします。

ひきこもりに多い精神疾患

ひきこもりは病名ではありませんが、背景に精神疾患が関与している場合が多いと言われています。そのため、ひきこもりを理解するには、隠された精神疾患についても理解を深めることが大切です。

ひきこもりの大半はさまざまな精神疾患が関連しており、中でも発達障害*¹や神経症性障害、統合失調症などが多い傾向にあります。

発達障害とは、自閉スペクトラム症や学習障害*²(LD)、注意欠如多動症(ADHD)など、脳機能の発達に関係する障害です。精神保健福祉センターでの調査からも、ひきこもりの相談来談者の約30%に、発達障害の診断があるという報告もありました。

そのため、発達障害の特性が、少なからずひきこもりの要因に関与していると考えられます。ひきこもりの人の就労支援として、発達障害へのサポートプログラムは有効と言えそうです。

ひきこもりから就職など社会復帰できる?

ひきこもりになっても、就職できるまで回復することは可能です。しかし、家族の見守りや励ましだけでの解決は難しいケースも多く、社会復帰する際にはさまざまな機関や支援サービスの活用をおすすめします。

ここでは、ひきこもりの人が社会復帰するまでのステップを順を追って解説します。

専門機関へ相談

病院への受診を迷っているときは、専門機関に相談してみましょう。ひきこもりから復帰するには、適切な支援を受けることが大切です。当事者や家族だけでは判断が難しい場合もあるため、第三者のサポートが必要になります。

どこに相談したらよいかわからないときは、まず「ひきこもり地域センター」を頼ってみましょう。センターにはひきこもり支援コーディネーターが在中しており、ひきこもりの人に必要な情報を提供してくれます。

クリニックの受診と治療

障害の診断や適切な治療のために、クリニックへの受診も必要です。グレーゾーンの場合や、大人になってから障害がわかるケースが多いため、自分の状態を知るためにも一度受診してみましょう。

クリニックには、総合病院や精神科、心療内科などがあります。障害の診断がおりれば、就労への対策が見えてくるほか、就労移行支援などのサービスも活用可能です。

適切な支援を受けるためにも、一度クリニックの受診を検討してみましょう。

支援制度の活用

社会との再会段階へ移行したら、支援機関を活用して社会復帰を目指しましょう。ひきこもりの支援機関はたくさんあるので、支援内容や通いやすさなどを考慮して、自分に合ったところを選ぶことが大切です。

支援機関には精神保健福祉センターなどの保健機関や、福祉事務所等の福祉機関、就労移行支援やハローワークといった就労支援機関などが挙げられます。ただしこれらの機関は、就労が具体目標となる段階での活用が望ましいため、ひきこもりの初期対応としては不適切である点に留意しましょう。

また、ひきこもりの人は生活習慣が乱れていたり、親任せで生活していたりするケースも多いです。そのため、周囲の力を借りずに自立した生活を目指す「自立訓練(生活訓練)」の利用を選択肢に入れてもよいでしょう。

働くためにはまず生活リズムを整え、身辺の自立が必要です。自立訓練(生活訓練)後は、就活や福祉就労、療養など将来への選択肢も広がるため、利用を検討してみましょう。

ひきこもりの方が利用できる就労移行支援とは

先述した支援機関の中で、就職を考えている場合は、就労移行支援サービスの利用がおすすめです。

就労移行支援サービスはサポートが手厚く、一般就労を目標として、個々に合わせた就職支援計画を作成します。自分に足りないスキルや困りごとへの対策を、職業訓練を通して学べます。求人紹介などの就活支援も行っているため、就職の選択肢も広がるでしょう。

また就労移行支援は、就職率の高さも強みです。厚生労働省の調査によると、就労移行支援を利用した2020年度の一般就労への移行割合は、54.7%でした。数にすると2万人を超え、毎年右肩上がりに上昇しています。一般就労を考えている場合は、就労移行支援を利用することが一番の近道だと言えるでしょう。

Kaienでも、発達障害に特化した就労移行支援をおこなっています。100職種を超える職業訓練や、50を超えるスキルアップ講座など、充実したプログラムを用いて個々に合わせた就労や就活をサポートしています。

就労移行支援の利用の流れ

就労移行支援サービスを選ぶときは、どのような事業所であるか知っておくと安心です。多くの事業所では、利用前の見学会や体験利用を実施しています。

Kaienでも、説明会や見学会、個別相談、体験利用を随時無料で行っています。ホームページから簡単に予約ができますので、ぜひお気軽にご利用ください。

ここからは、就労移行支援を利用する流れについて、Kaienを例にとり解説します。

説明会・見学会

事業所のサポート内容や雰囲気をつかむために、まずは説明会や見学会に参加してみましょう。直接見たり、話しを聞いたりすることで不安が払しょくされ、スムーズな利用につながります。

説明会・見学会に関する留意点は以下の通りです。

  • 本人だけでなく、家族の同席も可能
  • この段階では障害者手帳や障害福祉サービス受給者証を取得していなくてもOK
  • 障害の診断がなくても大丈夫
  • すぐに個別相談を受けたい場合は、説明会はスキップ可

Kaienでは、支援プログラムの説明はもちろん、質疑応答の時間も多くとっています。お悩みやお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。

個別相談

サービス利用への不安が強い人や、支援員に伝えておきたいことがある場合は、利用を前提とした個別相談も受け付けています。個別相談では、相談者一人ひとりの状況をアセスメントし、就活の仕方や職場定着のコツなどをアドバイスします。

また、平日の日中であれば実際のセッションの様子も見学可能です。自分が受けたい職業訓練が決まっていない場合でも、就労のイメージが湧きやすくなるでしょう。

Kaienの個別相談の概要は以下の通りです。事業所の見学と同日開催もできます。

  • 対象者:本人(手帳・診断の有無は不問)
  • 日時:1回あたり30分
  • 場所:Kaienの各事業所
  • 予約方法:オンラインフォームから予約可能

体験セッション

個別相談が終わった後は、実際にサービス利用できる体験セッションがあります。職業体験やスキルアップ講座などのプログラムを実際体験することで、自立や就活へのモチベーションも高まるでしょう。

就労移行支援は、事業所が自分に合っているかが重要です。説明会・見学会、個別相談、体験セッションの3つの段階を経たうえで、相性や通いやすさなどを見極めて利用するか判断しましょう。

就労移行支援の利用で無理のない社会復帰を

ひきこもりになる原因はさまざまです。社会復帰を希望する場合は、本人や家族だけでなんとかしようとせず、専門の支援機関を頼りましょう。専門機関に相談していない場合は、早めに相談して対応策を知ることが大切です。

本人に就労意欲が出てきたら、就労移行支援を活用しましょう。就労移行支援の事業所選びは、相性が重要です。説明会や見学会、個別相談、体験セッションなどを利用して、雰囲気やサポート内容がマッチする事業所を検討しましょう。

Kaienでも、就労に向けた職業訓練や、特性に合わせた多種多様な求人紹介を実施しています。まずはお気軽に、随時無料で開催されているご利用説明会や見学会にお越しください。*1 発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
*2 学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます


監修者コメント

ひきこもりであった方が社会に出たいと思った時、私はまさにそういう方にとって就労移行支援事業所が大きな味方になると思います。少し前に、私がクリニックに来ている患者さんを調べ直した時、ある期間で、初診時18歳以上の方で引きこもり歴のある方が50名弱おられました。ひきこもり年数は、24%が2年以下だった一方、28%の方が10年以上、20年以上の方もいました。そして、その約30%が調べた期間中に引きこもり状態を脱して就職されました。その皆さんの特徴は実をいうと様々でしたが、9割は就労移行支援事業所を利用して就職に至りましたので、やはり就労移行の果たす役割は大きいと再確認しました。ひきこもり年数で最大18年に及ぶ方がいたことを考えると、ひきこもり年数が長いからといって、諦める必要も無いことがわかります。ひきこもりの方の生活を支える中で、特に家族が思いもよらず、就職したい気持ちを醸成している方は実は結構おられる印象を持ちます。根気強く待ちながら、いざ、就職したいという気持ちを表明してくれた時には、是非就労移行支援の利用や、その前段階としての生活支援の利用を考えてみてください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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