発達障害に向く仕事・働き方 ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)編コミュニケーションが苦手だけど、真面目でルールを守ることが得意なタイプの方へ

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発達障害*の中でも ASD (自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)の方は、特徴が割合に見えやすく、対策や適職も見つけやすいと言われています。
ただし、論理的だから「プログラマー」、コツコツするのが得意だから「職人」や「公務員」、というのは強引な考え方です。
それぞれの職種で求められるものは毎年のように変化していきます。
この記事では得意が見えやすく、苦手に工夫がしやすい働き方についてのポイントをまとめました。

職人的なもの、伝統工芸、農作業などが特性にあいそうです。このような仕事への就職活動はどうすればよいですか?

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確かに発達障害の方で職人的なものに出会えれば強さを発揮できる方は多いです。
職人になるには「手先が器用であること」、「その分野が本当に好きであること」の2つの条件が必要になります
これらが当てはまれば挑戦することも可能でしょう。

ただし、残念ながら21世紀の日本では、職人的な部分だけでは足りません。
職人は自営業の方が多いため、自分で経理をしたりマーケティングをしたりと、経営につきもののマルチな仕事をこなす力が必要です

また、こういった職人系の分野はコツコツと行う作業内容や業務内容について言語化・体系化されておらず、マニュアルがありません。
発達障害の方が苦手な「阿吽の呼吸」、「見て学べ」的な部分が多いところになります。
つまり「職人系」と言っても同時並行に動く部分が多く、かつ目に見えないルールが多い職場です
このため現実的には職人系はお勧めできる分野ではありません。

どうしても職人的な仕事をしたいという方もいるでしょう。
器用さが人一倍あり、それだけの能力で認められる場合などです。
伝統工芸は人材不足の業界であり、行政で様々なサポートをしています。
まずお住まいの自治体の窓口にお問い合わせください。

定型業務が良いなら公務員はどうでしょうか?

公務員の仕事は定型と思われている方が多いようですが、最近は定型部分はすでに業者に委託しています。
職員が行っているのは企画・調整などであり、多くの発達障害の方に苦手な業務となっています。

公務員試験は”受験”があります。
このため大学受験の延長線上のように感じやすいためか、公務員試験を受ける方は非常に多いのが実情です。
ですが、苦手な分野がある程度できたり、専門職での受験をしたりと、作戦をかなり練る必要があります。

「公務員の障害者枠ならどうか?」というご質問もよく受けます。
公務員ではフルタイムの障害者採用はほとんどが身体障害者です。
知的障害者や発達障害者向けの「チャレンジ採用」という3年限定の雇用枠はありますが、フルタイム(正職員)へのステップアップは無いことが一般的です。
障害者雇用に限っては民間企業のほうが(任せる職種の多様さや給与の高さでは)進んでいるといえます。

発達障害に良いといわれるコツコツ系・ルーティン系の仕事だとお給料が低いようです。それなりの給与がもらえる仕事はありますか?

発達障害の方で ASD 傾向の強い方は「定型業務」への適性があることが多いでしょう
このため、繰り返し、コツコツとする仕事は向いています。
人との接する場面の多い上流工程(お客様の要望や自分の会社の状況を考えながら可能なサービスや商品を考え調整する部分)ではなく、「下流工程」(変化が少なく、ルーティンを定められた通りに行う部分)の仕事がフィットしやすいでしょう。
ただし、「定型業務」・「下流工程」は給与が低めに抑えられがちなところは注意が必要です。

ASD (アスペルガー症候群・自閉スペクトラム症)の特徴を生かしながら、しっかりと暮らせるだけの仕事は例えば下記のようなものがあります。

ASD の方に向いている仕事

ルールやマニュアルがしっかりしている職種

「経理・財務」
「法務・情報管理」
「コールセンター」
「テクニカルサポート」
など

ルールやマニュアルなど決められたものがあればそれ通りにできることが ASD (アスペルガー症候群・自閉スペクトラム症)の人の強みの一つです。
経理、財務、法務はもちろん、重要性が増す個人情報の管理などは向いているでしょう。
また、しっかりとマニュアルがあればコールセンターやテクニカルサポートなど対人の業務も問題なくこなしている人もいます。

数字・論理や豊富な知識で対応できる(人の気分に左右されにくい)職種

「プログラマー・テスター」
「ネットワークエンジニア」
「電化製品等の販売員」
「塾での問題作成」
など

知識や論理などが重要である一方で、ある程度すべきことが予想されるような仕事も ASD (アスペルガー症候群・自閉スペクトラム症)の人には向いているでしょう。
プログラマーやネットワークエンジニアなどのいわゆるITの中での下流工程の仕事に加えて、知識が豊富なほど営業トークが高まる電化製品の販売などモノの販売業にも適性を感じる人が多いようです。

視覚情報が重要である職種

「CADオペレーター」
「工業系デザイナー」
「設計士」
など

アパレルやウェブなど感覚が求められやすいデザイナーは適性を発揮できないことが多いかもしれません。
一方で工業製品などのデザインや CAD といった機能を求められる部分でかつ画像や映像など視覚情報のこだわりが生かせる職種は ASD の特性の強い人にはフィットする職種といえます。
ほかにも放射線技師など資格が必要な仕事も ASD (アスペルガー症候群・自閉スペクトラム症)の人に合う可能性が高いでしょう。

コミュニケーション力を鍛えるためにわざと苦手な仕事をすべきですか?

発達障害の方のコミュニケーション力は劇的に高まるかと言うと残念ながらそうではありません。
大学生のアルバイトの時には苦手なことにチャレンジすることも重要な考え方かもしれません。
が、フルタイムで働く場合に苦手な職種を目指すことは避けたほうが良いでしょう。

もちろんどのような仕事でもコミュニケーション能力、対人交渉能力は必要とされます。
職業訓練に通うなどで一定のコミュニケーションの型を学び、不安を取り除くことはお勧めできます。
しかし、決して接客や雑務の仕事をすればその能力が身につくわけではありません。
極端に背伸びをせず、苦手克服よりも、得意が発揮できる道を選びましょう。

ASD の方の就職事例 就職した方の声

当社の就労移行支援をご利用いただいた訓練修了生の就職事例をご紹介します。

31歳・男性  流通・事務職

マイペースで働くことができるだろうとのことで区役所へ公務員として就職。
しかし、濃密なコミュニケーションを求める上司など職場の気風に合わず退職することになります。
その後、アスペルガーとの診断を受け職業訓練などを経た後に Kaien の就労支援へ。
Kaien で面接練習を繰り返し行ったことで多くの発見があったとおっしゃっています。
現在、訓練されている方には「面接練習はたくさんやっとけよ」とアドバイスされるほどです。

現在のお勤め先は Kaien に届いている求人( Kaien 訓練生のみを対象にした、発達障害の特性に配慮した求人)から就職されました。
発達障害の特性に配慮がある企業なので不安なくお仕事ができているということです。
最近は仕事の量や種類が増えて大変さを感じつつも仕事に楽しみを見いだして勤務されているそうです。
趣味のゲームで不摂生にならないように注意しながら日々の仕事に励んでおられます。

性別 男性
年齢 31歳
診断 アスペルガー
業種 流通
職種 事務職(人事契約)

Kaienの就労支援をご利用いただいた方々へのインタビューシリーズ「私とKaien」第15話リンクより

35歳・男性 通信・経理職

スーパーで勤務していましたが交通事故で働けなくなり退社。
30歳で発達障害の診断を受け、それまでコミュニケーションが苦手なのは性格だと思っていましたが発達障害が原因だったとわかります。
その後、Kaien の就労支援へ。
Kaien ではさまざまな職種の仕事体験を行い、少しずつ自信を持つようになります。
特にオンライン店舗(実際にAmazonなどに店舗を持って、古書、古着、おもちゃなどをオンラインで販売する職業訓練プログラム)で店長の役割を担い、やり遂げた時には特別な達成感を得られたとのこと。
もともと独学で簿記の勉強をしていて3級を取得されていました。
Kaien でパソコンの訓練を行うことで事務の仕事にさらに自信を持つようになり障害者枠で経理職として就職されます。

同僚の方々は年配の方が多いようですが、偏見の目で人を見ない良い方が多く「ここを辞めたら次はないよな」との思いで業務に励んでおられます。

性別 男性
年齢 35歳
診断 ADHD傾向の強い自閉スペクトラム症
業種 通信
職種 経理

Kaienの就労支援をご利用いただいた方々へのインタビューシリーズ「私とKaien」第14話リンクより


監修者コメント

臨床をしている中で、ASDの傾向がある方には、変化が多い仕事よりも、ある程度決まった流れがあるもの、自分で変化をコントロールできる仕事に就いている方のほうが安定している印象があります。一方で頻繁にコミュニケーションをとったり、その都度自分の作業が分断されたりする仕事では苦しんでいる方が多いです。「昔からある仕事で、今後もなくならない仕事」と「新しい仕事で、これから増えていく仕事」に分けるとしたら、不安感の強い方は、前者を選んだ方が、業務も見通しがつきやすく、自分でも将来設計が立てやすそうです。


監修 : 益田 裕介 (医師)

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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