採用面接の終盤に、面接官から「最後に何か質問はありますか?」と聞かれる場合があります。この時、志望者が面接官に対してする質問を逆質問といいます。
就活をしている方のなかには、「何を質問すればいいのかわからない」「採用の可能性を高めるためには、どんな内容が良いのか」などと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、面接の逆質問の概要や、逆質問が求められる理由、良い質問の仕方、質問例、質問が思いつかなかった時の対処法などを解説します。
面接の逆質問とは
就職活動で使われる「逆質問」とは、志望者が面接官に対して、企業や業務内容などについて質問することです。面接では、主に面接官が志望者に質問しますので、この逆の形になることから逆質問と呼ばれます。
逆質問の機会は、面接の最後に設けられるのが一般的です。面接官から「最後に何か質問はありますか?」といった形で尋ねられ、それに応じて志望者が逆質問を行います。
面接で逆質問が求められる理由
企業が逆質問を受け付ける理由の一つは、志望者に疑問や不安を解消してもらい、志望度を高めてもらうためです。しかし、それだけではなく、志望者の熱意や適性などを見極めたい企業側の意図も働いています。
企業の意図を理解しておくことで、採用につながる逆質問が思い浮かびやすくなるでしょう。それぞれの理由について詳しく解説します。
志望者の疑問や不安を解消する
逆質問を受け付ける理由の一つは、志望者の疑問や不安を解消することです。企業側は、応募者に質問の機会を提供し、理解を深めてもらいたいと考えています。
志望者にとってのメリットは、疑問や不安を解決し、入社するかどうか具体的に検討できる点です。どうしても確認したい内容があれば、事前に準備しておきましょう。
志望者の志望意欲や関心を確認する
企業は志望者の志望意欲や関心を確認するために、逆質問の時間を設けます。特に、多数の志望者の中から熱意を持った志望者に絞り込みたい一次面接において、よく使われる手法です。
志望者側からみれば、自分の熱意や関心をアピールする良いチャンスになります。例えば、入社後の業務内容や配属先について具体的な質問をすれば、志望度が高いと判断されたり、企業研究をしっかり行っていると判断されたりする可能性が高いでしょう。
志望者のコミュニケーション能力や質問力を測る
逆質問は、志望者のコミュニケーション能力や質問力を測る判断材料としても使われています。逆質問を通じて、自分の考えを端的にまとめる力や、わかりやすく他人に伝える力などを判断できるからです。
そのため、志望者は単に自分の疑問を解消するだけでなく、自分の質問を明確に理解してもらえるように、面接官の立場や面接の目的を考慮する必要があります。相手と場に合わせたコミュニケーション能力は社会人に必須であり、面接官はこのスキルを見極めようとしています。
志望者と企業の社風とのマッチを知るため
志望者と企業の社風との適合度を測るためにも、逆質問が活用されています。逆質問の内容には志望者の関心や価値観が端的に表れやすく、長期定着や能力の発揮に重要となる適合度を見極められる場合があるからです。
例えば、キャリアパスや教育制度についての逆質問があれば、向上心が強いと推測できます。また、休暇についての質問が多ければ、仕事よりプライベートを重視する人だと判断されるかもしれません。
そのため、採用の可能性を高めるには、企業がどのような人材を求めているか知っておく必要があります。例えば、ビジネス志向でアグレッシブな社員を求めている企業、社風であれば、それにマッチした逆質問を選んだほうがよいでしょう。
逆質問をする時に押さえたい8つのポイント
ここでは、好印象を与える逆質問を作るための8つのポイントを紹介します。逆質問は面接の終盤で行われるため、強い印象を残すこともあります。逆質問を軽視せず、事前準備をしっかりしておき、採用の可能性を高めていきましょう。
逆質問の内容を用意しておく
逆質問を当日とっさに考えると、緊張して思いつかないことがあります。そこで、志望企業ごとに質問を3~5個準備しておくと安心です。
逆質問の時間はそれほど長くなく、通常1~2個を選ぶことになるでしょう。そのため、必ず聞きたい質問、次に重要な質問、時間に余裕があれば聞く質問、というように優先順位を付けておくことが大切です。
また、面接の流れに合わせて適切な質問を選べるよう、3~5個の質問にある程度バリエーションを持たせる必要もあります。
簡潔な質問にする
逆質問が簡潔でわかりやすいと、相手も的確に答えられます。また、コミュニケーション能力や質問力を評価されやすくなるでしょう。
逆質問の長さは、文章にして1~2行程度が目安です。どうしても長くなる場合は、最初に要点を述べてから質問すると、相手に伝わりやすくなります。
例えば、「御社の職場環境について詳しく知りたいです。特に騒音の程度について教えてください。実は、私は聴覚過敏の傾向があり・・・(以下省略)」といったように、重要な順に簡潔に質問します。
質問の意図を伝える
質問の意図を伝えると、面接官が意味を理解しやすくなります。また、志望者は自分の知りたい情報についてより正確に回答をもらえます。
例えば、「入社後すぐに活躍したいと思っています。そのために、今のうちに準備できることはありますか?」のように逆質問します。この場合「入社後にスムーズに業務をこなしたい」という意図が伝わるため、この観点から面接官が質問に答えてくれます。
調べてわかる内容は質問しない
自分で調べられる情報を質問すると、「事前準備が足りない」「熱意がない」といったようにマイナスの印象を与える可能性があります。例えば、「御社の企業理念を教えてください」「御社が強みとしている事業を教えてください」といった質問は、調べればわかる内容です。
こうした逆質問をしないように、自分で企業パンフレットやコーポレートサイトを調べて、情報が掲載されていないことをチェックしておくとよいでしょう。また、「新入社員が入社してすぐに経験する業務はどのようなものですか?」のように、具体的な質問を意識すると、形式的な質問に陥りにくくなります。
自己PRにつなげる
逆質問は単に疑問を解消するだけでなく、自分のスキルや意欲をアピールする機会にもなります。特に、逆質問の内容が自分の強みや実績、履歴書・ESの自己PR欄に記載している内容に関連していると、面接官に良い印象を残しやすくなるでしょう。
例えば、「英検1級を取得しており、海外業務に興味があります。御社では語学力を活かせる機会はありますか?」のように逆質問します。このように質問すると、自分の強みを自然にアピールできます。
働いているイメージをもってもらえる質問をする
入社後を想定した具体的な質問をすることで、面接官に自分が働く姿をよりリアルにイメージしてもらいやすくなります。このような逆質問を考える際は、希望する職種や配属部署など、具体的な要素を含めるのがポイントです。
例えば、「プログラマーとして配属を希望していますが、御社では最新技術に触れる機会はありますか?」と逆質問すると、意欲的に働く姿が想像できます。また、「店舗スタッフとして経験を積んだのち、将来的にはマネジメント層に挑戦したいと考えています。御社ではどのようなキャリアステップが用意されていますか?」と逆質問すると、成長イメージを持ってもらいやすくなるでしょう。
面接のフェーズにあわせて質問を変える
面接は通常、一次面接から最終面接までの複数回に分かれています。面接のフェーズごとに担当する面接官が変わりますし、面接で見極めたいポイントも変わります。
そのため、面接のフェーズに応じて質問内容を変えることが重要です。面接官の役職や立場に応じた質問をすることで、的確な答えを得られるだけでなく、時と場に合わせたコミュニケーション能力を評価してもらいやすくなります。具体的な考え方や質問例は、後ほど詳しく説明します。
待遇面や福利厚生ばかり質問しない
面接で仕事内容や企業への関心を示さず、待遇面や福利厚生に関する質問ばかりすると、「条件や待遇を重視している」と思われがちです。面接官は志望者の仕事への意欲や企業文化への適合度を知りたいため、質問は控えめにしましょう。
例えば、「基本給以外の手当はありますか?」「賞与の実績を教えてください」などの質問は控えめにしたほうが無難です。どうしても質問したい場合は、企業に関心があることを伝えてから質問すると、より良い印象を与えられます。「社員が安心して働ける環境を重視されていると伺いましたが、具体的にはどのような支援制度がありますか?」のように言い方を工夫しましょう。
良い逆質問と悪い質問の例を紹介
ここでは、良い逆質問を考えるためのポイントを紹介します。また、悪い逆質問の特徴も解説します。どちらも具体例を挙げて解説していますので、実践的なコツをつかむための参考にしてください。
良い質問の例
良い印象を与える逆質問は、「働く意欲や熱意」「スキルや経験」「適性」をアピールする要素が含まれています。
【働く意欲や熱意が伝わる質問】
- 「営業部に配属された場合、最初に担当する業務はどのような内容になりますか?」
- 「御社で成果を上げている社員に共通するスキルや特徴は何でしょうか?」
【スキルや経験をアピールする質問】
- 「前職で海外のクライアントと英語でメールのやり取りをしていました。御社でもこのような業務はありますか?」
- 「簿記の資格を活かし専門性を高めたいと考えています。御社ではどのようなスキルアップの機会がありますか?」
【適性をアピールする質問】
- 「私はチームワークが大切だと考えています。御社では社員同士のコミュニケーションを重視しているとお聞きしましたが、具体的な取り組みがあれば教えてください。」
上記は一例ですので、自己PRにつなげられないか考えてみるとよいでしょう。
悪い質問の例
悪い質問の多くは、「働く意欲や熱意が伝わらない」「自信がない、または自信過剰」「リサーチ不足」という特徴があります。
【仕事への熱意・意欲が感じられない】
- 「残業はどのくらいありますか?」
- 「有休はどの程度取得できますか?」
【自信がない、または自信過剰な質問】
- 「未経験でも働けますか?」
- 「私の才能を活かせるポジションは用意されていますか?」
【リサーチ不足を感じさせる質問】
- 「御社の創業はいつですか?」
- 「どの国で海外展開していますか?」
面接官の立場になって見直してみましょう。
面接の段階ごとの逆質問の考え方の違い
面接は一次面接、二次面接、最終面接のように複数回実施されることが少なくありません。各フェーズでは面接官が変わり、注目されるポイントも変わるため、それに合わせて逆質問を考える必要があります。
そこで、各面接の特徴と、それぞれの面接に適した逆質問の例を紹介します。
一次面接の場合
一次面接では、社会人としての基本的な能力と働く意欲が重視されます。このため、以下のような逆質問が適しています。
- 「この職場で大切にしているコミュニケーションのポイントは何ですか?」
→協調性があることが伝わります - 「プロジェクト内での情報共有の方法について教えていただけますか?」
→コミュニケーションを大切にする姿勢が伝わります - 「御社が今後展開を予定している×××プロジェクトでは、どのようなスキルが求められますか?」
→企業理解の深さと志望意欲が伝わります。
不自然にならない範囲で、自己PRの要素を含めましょう。
二次面接の場合
二次面接では、志望者が企業でどのように働くかを具体的にイメージできる逆質問が効果的です。面接官は中堅社員や管理職が担当する場合が多く、戦力化できる人材か確かめようとしているからです。
- 「このポジションにおいて、特に役立つスキルや経験はどのようなものですか?」
→企業が求める人材になろうとしていることが伝わります。 - 「現在進行中の○○プロジェクトにエンジニアとして参加できるチャンスはありますか?」
→希望の職種や業務内容が明確に伝わります。
- 「女性の管理職の割合を教えてもらえますか?」(女性の志望者の場合)
→将来的に管理職になりたいことが伝わります。
良い印象を与えるには、業務に関する具体的な質問を考えることが大切です。
最終面接の場合
最終面接は、経営層や役員クラスの方々と直接対話する重要な機会です。最終面接での逆質問では、企業理念や事業の方針に関連した内容を選ぶとよいでしょう。
- 「御社の○○という理念に共感しているのですが、経営者として特に大切にされている価値観は何ですか?」
→理念への理解と共感を示せます。 - 「社員に対して特に求めていることは何でしょうか?」
→組織の一員となって貢献したい意欲が伝わります。 - 「御社はすでに関西エリアに進出し成功を収めていますが、今後も事業拡大を広げる方針ですか?」
→事業全体に関する広い視野を持っていることが伝わります。
最終面接では、細かな質問は控えて、高い視座での質問を考えるとよいでしょう。
質問が思いつかない場合はどうすれば良い?
面接で「何か質問はありますか?」と尋ねられた際、「特にありません」と答えることはできるだけ避けましょう。企業への関心が低いと受け取られてしまいかねません。
逆質問が思い浮かばない時は、面接で不明点が解決したことを伝え、そのために質問がないと伝えることが大切です。例えば、「本日の面接で多くの疑問が解消されました。現時点での質問はありません」と述べると印象が良くなります。
また、「質問は特にありません。本日の面接を通じて、御社で働きたい気持ちが一層高まりました。引き続きよろしくお願いいたします」のようにポジティブな文言を簡潔に追加する方法もあります。
逆質問を通じて面接官にアピールしよう
逆質問は、面接の終盤で志望者が面接官にする質問です。単に志望者の疑問をぶつけるのではなく、自己アピールの機会と捉えると、好印象を残しやすくなるでしょう。
事前に逆質問を考えておくと、本番で慌てずに対応できるようになります。本記事で紹介した質問例を自分なりにアレンジして、熱意やスキルなどをアピールできないか検討してみてはいかがでしょうか。良い質問をすれば、採用の可能性が高まります。