就労移行支援は学生でも利用できる?利用条件とメリットを紹介

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就労移行支援は、一般企業などでの就労を希望する障害のある方に向けて職業訓練・就活サポートなどを行なう支援サービスのことです。この就労移行支援について、「学生でも利用できるの?」と疑問に思っている人もいるでしょう。

この記事では、学生でも就労移行支援を利用できることや、その利用条件、実際の利用方法、利用の流れについて紹介します。利用のメリットとデメリットも紹介しますので、利用を検討している場合には、ぜひ参考にしてください。

学生でも就労移行支援は利用できる

就労移行支援は、障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスです。企業などへの就労を希望する原則18歳以上65歳未満、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害*、難病などの障害のある方が利用できます。

上記の条件に該当していれば、教育機関に通う学生でも利用できます。

受けられるサービスは、ビジネスマナーやPCスキルなどの作業実習や適正に合った職場探し、就労後の職場定着のためのサポートなどです。通所でのサービスが基本となっており、利用期間は原則2年です。

先述の通り、学生でも利用可能ですが、利用する際には条件があるため、注意が必要です。学生での利用条件については、次項以降で紹介します。

大学生や専門学生の利用条件

大学生や専門学校生が就労移行支援を利用する際は、下記のすべての条件を満たすことが必要とされています。

  1. 大学や地域における就労支援機関等による就職支援の実施が見込めない場合、又は困難である場合
  2. 大学卒業年度であって、卒業に必要な単位取得が見込まれており、就労移行支援の利用に支障がない者
  3. 本人が就労移行支援の利用を希望し、就労移行支援の利用により効果的かつ確実に就職につなげることが可能であると市町村が判断した場合
引用元:厚生労働省「平成 29 年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A(平成 29 年3月 30 日)」等 の送付について

基本的に、卒業の見込みのある卒業年度の大学生で、大学や自治体などで就職支援が受けられる見込みがない場合に利用できるといえます。利用条件に当てはまるかどうか判断しかねる場合は、地元の自治体に就労移行支援事業所が利用できるかどうか確認することがおすすめです。

高校生は見学や体験なら可能

就労移行支援の利用対象年齢が原則18歳以上65歳未満のため、基本的に高校生の利用は難しいといえます。ただし、見学や体験といった利用であれば可能です。

就労移行支援事業所によっては高校生向けに見学会や体験実習会を設けています。そうした就労移行支援事業所を活用すれば高校生でも見学や体験実習を利用できます。

本格的に利用するのは高校卒業後としても、高校在学中から利用したい事業所の見学会などに参加することで、卒業後、スムーズに職業訓練などの支援サービスに移行できるでしょう。

学生のうちから就労移行支援を利用するメリット

学生のうちから就労移行支援を利用することには下記のようなメリットがあります。

  • 早めの就職対策ができる
  • 障害の悩みに合わせたサポートが受けられる
  • 就職後の定着支援も受けられる

以下で詳しい内容について紹介します。

早めの就職対策ができる

在学中から就労移行支援サービスを受けることにより、卒業後に支援サービスを受けるよりも早めの就職対策ができます。

在学中に学業と並行して職業訓練を受けて仕事探しをすることで、卒業までに就職先が決まる可能性が高くなります。卒業までに就職先を見つけて、卒業後そのまま社会人生活をスタートすることも可能です。

一方、卒業後から就労移行支援を受けて、職業訓練を利用するといった場合は、訓練に集中できるものの、卒業から就職して社会人生活をスタートするまでに、時間が空いてしまいます。

在学中に始めた方が時間の効率が良いといえます。

障害の悩みに合わせたサポートが受けられる

学生のうちから就労移行支援を利用することで、障害の悩みに合わせたサポートが受けられます。大学や専門学校にも就職支援センターなどがありますが、障害の悩みに合わせたサポートを受けられるケースは少ないといえるでしょう。

一方、就労移行支援を利用する場合は、専門性が高いスタッフが障害の特性に合わせてサポートしてくれます。そのため、悩みも相談しやすく、自分に合った就職先を探しやすくなるといえるでしょう。

障害特性による悩みに寄り添った支援を受けることで、就職活動を進めやすくなるという大きな利点が得られます。

就職後の定着支援も受けられる

就労移行支援には、就職後の定着支援も受けられるというメリットがあります。

一般的に大学や専門学校の就職支援センターなどでは、就職後のサポートはありません。その点、就労移行支援は、就職先に入社した後も、定着して働けるようにサポートをしてくれます。仕事上の悩みを聞くだけでなく、改善に向けて職場に働きかけてくれることもあります。

就職後も安心して働けるようにサポートしてもらえることが大きなメリットです。

学生のうちから就労移行支援を利用するデメリット

学生のうちから就労移行支援を利用することには、下記のようなデメリットもあるため注意しましょう。

  • 学業との両立が難しい場合がある
  • 利用中はアルバイトができない

詳しい内容は次の通りです。

学業との両立が難しい場合がある

学生のうちから就労移行支援を利用する場合、学業と職業訓練などの就労活動との両立が難しいというデメリットがあります。

就労移行支援は基本的に通所サービスのため、日中に就労移行支援事業所に通う必要があります。学校の授業とスケジュールが重なってしまうケースも少なくありません。

特に、卒業のためにまだ単位がそろっておらず出席しなければならない授業が多いようなときは注意が必要です。そうした状況で、就労移行支援を受け始めてしまうと、実質ほとんど通所できずに就労支援を受けられないといったことになりかねません。

また、無理に就労支援事業所への通所を優先してしまうと、授業に出席できずに卒業単位が足りなくなり、卒業できないという本末転倒な状況に陥る恐れもあります。

卒業見込みが十分にある状況での就労移行支援サービスの利用がおすすめです。

利用中はアルバイトができない

就労移行支援を利用する場合、原則としてアルバイトが禁止されている点もデメリットといえるでしょう。学費や生活費のためにアルバイトを続ける必要がある人の場合は、注意が必要です。

厚生労働省では、アルバイトを含めた一般就労中の就労移行支援の利用は、就職後のステップアップのための利用に限るとしています。そのため、就職前のアルバイトは原則できないこととなっています。

ただし、原則禁止とはいえ、短時間や特別な事情がある場合などは自治体によっては就職前のアルバイトについて許可を出しているケースもあります。アルバイトの許可を出している場合でも、「週×時間まで可能」「経済的事情など特別な事情がある場合に可能」といった条件があります。アルバイトの必要がある場合は自治体の窓口に問い合わせてみましょう。

また、就労移行支援は原則2年しか利用できません。学業・アルバイト・就労移行支援の掛け持ちで、思うように就労移行支援の利用が進まないと、利用期間を無駄にしてしまうこともあるため、注意しましょう。

就労移行支援の利用までの流れ

就労移行支援を利用する際の流れについては次のようになります。

1. クリニックを受診する

就労移行支援の利用には障害福祉サービス受給者証が必要で、受給者証を申請する際には医師の「意見書」や「診断書」が求められます。そのため、クリニックの受診が必要です。

2. 利用する事業所を決める

自治体のホームページを見たり自治体の窓口で直接聞いたりしてどのような事業所があるか確認して選びましょう。住んでいる自治体以外の事業所に通うことも可能です。

3. 障害福祉サービス受給者証を申請する

利用する事業所や開始時期が決まったら、自治体の窓口で障害福祉サービス受給者証を申請しましょう。

4. 利用計画を作成する

「受給者証」の申請時に、どのように就労移行支援を利用するかという「計画書」の提出も必要です。そのため、利用計画を作成しましょう。

5. 障害福祉サービス受給者証を受け取る

「受給者証」申請後、自治体で支給が決定すれば、決定から1~2週間で受給者証が自宅に郵送されてきます。

6. 利用契約を行う

「受給者証」が発行されたら、利用する就労移行支援事業所と契約します。契約したら利用を開始しましょう。

就労移行支援の利用方法や就労移行支援サービスの詳細については、下記の記事で詳しく紹介しておりますので、ご覧ください。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

休学中の人は自立訓練の利用が可能

休学中で就労移行支援が利用できないといったこともあるでしょう。

そうした場合には、自立訓練(生活訓練)サービスの活用がおすすめです。Kaienの自立訓練(生活訓練)では、数千人への支援をもとに必要なスキルを厳選し、実践的なプログラムで習得できるような支援を行なっています。

休学中は、日中通う場所がなくなり、生活のリズムが整えにくく、精神的、肉体的な状態がかえって悪化することがあります。状況の改善に向けて、早めに支援を活用することが大切です。

自立訓練(生活訓練)サービスについて

メリット・デメリットを踏まえて就労移行支援の利用を検討してみよう

就労移行支援は学生でも利用可能です。ただし、利用には条件があり、卒業の見込みのある卒業年度の大学生で、大学や自治体などで就職支援が受けられる見込みがない場合などに利用できます。

就労移行支援を受けることで、障害の悩みに合わせたサポートが受けられることや就職後のアフターフォローが受けられるといったメリットがあります。一方で、学業との両立が難しいことや、利用中はアルバイトができないといったデメリットもあることに注意しましょう。

就労移行支援の利用や就職活動全般についてお悩みの場合は、Kaienにお気軽にご相談ください。

Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、人材紹介サービスを行っています。発達障害や精神障害に理解ある企業200社以上と連携し、他社にないKaien独自の求人の紹介をしています。

学生向けの支援も行なっておりますので、就労移行支援や自立訓練をご検討の方は、Kaienまでお問合せください。

ご利用説明会・見学会

大学生向け支援

*1 発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

大学生の間に就労移行支援事業所を利用し始めるーこれは通院中の方にとっても、また多くの場合主治医にとっても、まだまだよく知られていないことのように思えます。ここに紹介されている通り、在学中からの利用も、メリットはかなりあるので、就職活動に対して実践的な助言や、寄り添ってもらう存在が必要と感じられたら、利用を考えて良いのではないでしょうか。もちろん、幾つかの基準が本文の通りあるので、それも考慮してにはなります。特にアルバイトが必要であったり、最終学年でも学生生活がそもそも忙しい理系さんの場合には、それぞれの利用との両立が難しい気がしますね。高校生の間での利用、は難しいのですが、とはいえ、利用を開始した方もいましたよ。それぞれの事情に合わせて、ということになるでしょうから、主治医、利用したい事業所、お役所、と率直に相談していくことで道が開けるはずです。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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