就労移行支援と就労継続支援の違いと特徴を項目ごとに解説

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就労移行支援とは、障害のある方のための職業訓練・就活支援・定着支援を行う障害福祉サービスです。社会福祉法人やNPO法人、民間企業が運営する就労移行支援事業所において、一般就業(一般の労働者と同じように企業と雇用関係を結んで働くこと)を実現するための支援を受けられます。

この就労移行支援と混同しやすいのが、就労継続支援というサービスです。そこで本記事では、就労移行支援と就労継続支援の違いについて詳しく解説します。

就労移行支援の全体像については下記記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説 

就労移行支援とは?

ここでは就労移行支援の対象内容やサービス内容、利用料、利用期間、工賃について説明します。就労移行支援の全体像を理解できれば、就労継続支援との比較をしやすくなるでしょう。

対象者

就労移行支援の対象者は以下のすべての条件を満たす人です。

  • 18歳以上65歳未満の人
  • 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
  • 一般就労を目指しており、かつ職業訓練・就活支援などによって一般就労が可能になると見込まれる人

たとえば、現在失業中または働いたことのない発達障害*の人やうつ病の人などは、こちらの就労移行支援を受けられます。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書などを提出すれば申請可能です。

就労移行支援の利用条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

サービス内容

就労移行支援は、「職業訓練~就活支援~定着支援」という一貫した支援を受けられるのが特徴です。それぞれの支援内容を以下に示します。

内容具体例
職業訓練職業訓練、講義、職場体験実習など
就活支援求人選定、選考フォローなど
定着支援職場訪問、オフ会、懇親会など

なお、就労移行支援は基本的に、就労移行支援事業所に定期的に自分で通う「通所」方式となっています。ただし、定着支援サービスでは、就業先にスタッフが出向く場合もあります。

利用料

9割以上の人は無料(0円)で支援を受けています。しかし、世帯収入が一定以上あると、おおむね1日500円~1,200円の料金がかかることに注意が必要です。ただし、世帯収入に応じて月単位で負担上限があり、これを超えた分は無料となります。

世帯(本人+配偶者)の収入状況負担上限月額収入の目安
生活保護受給世帯
市町村民税非課税世帯
0円・給与収入の場合おおむね年収100万円以下
・障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下
市町村民税課税世帯
(所得割16万円未満)
9,300円年収がおおむね600万円以下
上記以外37,200円年収がおおむね600万円を超える

入所施設利用者(20歳以上)や、グループホーム・ケアホームの利用者は、市町村民税課税世帯の場合、負担上限月額は37,200円です。

なお、通所のために交通費がかかる場合があります。一部の自治体は交通費を補助しているので、問い合わせてみるとよいでしょう。

就労移行支援の利用料については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

利用期間

就労移行支援の利用期間は以下のようにサービス内容によって違います。

  • 職業訓練:原則として最長2年
  • 就活支援:原則として最長2年
  • 定着支援:期間の指定なし

つまり、2年以内の就業を目指して職業訓練と就活支援を並行して受けて、もしも就業できたら、その後は定着支援が続きます。

利用期限は合計2年以内であれば、何度でも利用可能です。たとえば「1年間就活移行支援を利用→就職→3年後に離職」となった場合、残り1年間の就活移行支援を受けられます。

就労移行支援の期間について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。

工賃

工賃は原則として出ません。なぜなら就労移行支援は、あくまで仕事に就くための学習・訓練であり、労働とはいえないからです。

しかし、月に数千円ほどの工賃を出している就労移行支援事業所もまれにあります。このようなケースは、企業と業務委託して実習訓練をしていたり、金銭管理を学ぶ目的で工賃を支給したりする場合が多いようです。

就労継続支援とは?

ここからは就労継続支援について解説します。先に解説した就労移行支援と同じように、就労継続支援は障害のある方のための障害福祉サービスですが、次のように目的が違います。

  • 就労移行支援:働くための知識・能力を学ぶための支援
  • 就労継続支援:働く場を紹介・提供するための支援

就労継続支援は次の2種類に分けられます。

  • 就労継続支援A型:雇用契約に基づく就労を目指す人への支援
  • 就労継続支援B型:年齢や体力の面で雇用されることがむずかしい人への支援

それでは対象者やサービス内容、利用者、利用期間、工賃についてみていきましょう。

対象者

就労継続支援A型とB型では対象者が異なります。

就労継続支援A型の場合

就労継続支援A型を受ける条件は次のとおりです。

  • 18歳以上65歳未満の人
  • 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある方
  • 一般就業はむずかしいが、適切な支援によって就労継続支援事業所における雇用契約の就労が可能な人

一般就業がむずかしいとは、就労移行支援を受けたものの雇用に結びつかなかった場合を指します。また、特別支援学校を卒業して就職活動をしたけれども企業等の雇用に結びつかなかった場合や、就業していたが失業した場合なども、A型支援を受けられる可能性がある対象者です。

就労継続支援B型の場合

就労継続支援B型の対象者は、身体障害、知的障害、精神障害、難病があり、以下の条件を満たす人です。

  1. 1.企業などや就労継続支援事業(A型)での就労経験があるが、年齢や体力の面で雇用がむずかしくなった人
  2. 50歳以上の人または障害基礎年金1級受給者
  3. 1、2以外の人で、工賃をともなう就労ができると認められる人

就労継続支援B型は、就業移行支援やA型の支援を受けたものの雇用に至らなかった人、雇用関係のある就業がむずかしい人が利用する支援です。年齢制限がないため、65歳超の高齢者でも支援を受けられます。

サービス内容

A型とB型のサービスの内容は似ていますが、違いもあります。それぞれの内容を紹介します。

就労継続支援A型の場合

就労継続支援A型の主なサービスは以下のとおりです。

就労機会の提供・雇用契約に基づく就労の機会(就労継続支援事業に通所)を提供
職業指導・生産活動の実施指導
・職場規律の指導、など
生活支援・健康管理の指導
・相談支援、など
一般就労への移行支援一般就労に移行するためのサポート
※A型支援によって、一般就労に必要な知識や能力を獲得した人に限られる

サービスの活用イメージとしては、「一般就労は負担が大きいので事業所で支援を受けながら働きたい」「実務で報酬を得ながら就労スキルを高めたうえで一般就労にチャレンジしたい」といったケースが考えられます。

就労継続支援B型の場合

就労継続支援B型の主なサービスは以下のとおりです。

就労機会の提供工賃をともなう就労機会の提供
職業指導・生産活動の実施指導
・職場規律の指導、など
生活支援・健康管理の指導
・相談支援、など
一般就労・A型への移行支援一般就労やA型に移行するためのサポート
※B型支援によって、一般就労やA型に必要な知識や能力を獲得した人に限られる

活用イメージとしては、「年齢・体力の関係で一般就労やA型就業がむずかしくなったので、B型を利用したい」「無理のない範囲で仕事を続けたい」といったケースが多いといえます。

利用料

9割以上の人は無料(0円)で支援を受けています。しかし、世帯収入が一定以上あると、A型の場合はおおむね1日500~1,000円ほど、B型の場合はおおむね1日500~700円ほどの料金がかかることを想定しておきましょう。ただし、世帯収入に応じて月単位で負担上限があり、これを超えた分は無料です。

世帯(本人+配偶者)の収入状況負担上限月額収入の目安
生活保護受給世帯
市町村民税非課税世帯
0円・給与収入の場合おおむね年収100万円以下
・障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下
市町村民税課税世帯
(所得割16万円未満)
9,300円年収がおおむね600万円以下
上記以外37,200円年収がおおむね600万円を超える

入所施設利用者(20歳以上)や、グループホーム・ケアホームの利用者は、市町村民税課税世帯の場合、負担上限月額は37,200円です。

なお、通所のために交通費がかかる場合があります。自治体によっては交通費を補助している場合もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。

利用期間

就労継続支援には期間の定めがありません。体の調子がよくなるまで支援を受けたり、無理のないペースでスキルを高めていったりできます。ただし、A型の利用は原則として65歳までです。

また、就労移行支援を利用したり、就労継続支援の種類を変えたりした後で、また元の就労継続支援を再開することも可能です。

工賃

就労継続支援での工賃(賃金)はいくらくらいなのでしょうか。2023年度のデータを紹介します。なお、A型の工賃は2015年以降なだらかな増加傾向にあり、B型の工賃は2006年以降なだらかな増加傾向にあります。

就労継続支援A型の場合

就労継続支援A型の2021年の平均賃金は以下のとおりです。

平均工賃(賃金)施設数
月額時間額4010
81,645円926円

出典:厚生労働省|令和3年度工賃(賃金)の実績について

就労継続支援A型は雇用契約があるため、最低賃金が保証されます。たとえば、東京都の事業所であれば、東京都の最低賃金は1,113円(2023年10月時点)が適用されるのです。このこともあって、就労継続支援A型はB型より工賃が総じて高くなっています。

就労継続支援B型の場合

就労継続支援B型の2021年の平均工賃は以下のとおりです。

平均工賃(賃金)施設数
月額時間額14,393
16,507円233円

出典:厚生労働省|令和3年度工賃(賃金)の実績について

就労継続支援B型は雇用契約がないため、最低賃金が保証されません。したがって、就労継続支援B型はA型より工賃が安い傾向があります。

また、就労継続支援B型はA型よりも、勤務日数・勤務時間を柔軟に決められます。たとえば「心身の負担が大きいので週1日・1時間程度で働く」といったことも可能です。こうした状況も工賃の差につながっていると推測されます。

就労移行支援と就労継続支援の違いを一覧表で確認

ここまで解説してきた内容をまとめたのが以下の表です。

就労移行支援就労継続支援A型就労継続支援B型
目的職業訓練・就労支援就労機会の提供
サービス内容・職業訓練
・就活支援
・定着支援
・就労機会の提供
・職業指導
・生活支援
・一般就労への移行支援
・就労機会の提供
・職業指導
・生活支援
・一般就労、A型への移行支援
対象者一般就労が可能な人一般就労がむずかしい人年齢・体力の関係で一般就労や雇用契約のある就労がむずかしい人
年齢制限18歳以上65歳未満18歳以上65歳未満なし
利用期間2年間無制限
就労先企業就労継続支援事業所
雇用契約ありありなし
工賃(賃金)なしあり
平均月収(2021年時点)81,645円16,507円
利用料世帯収入による(9割の人は無料で利用している)

各支援の違いを理解したうえで、自分に合った支援を選んでいきましょう。

就労移行支援の利用についてお悩みの方はKaienにご相談ください

障害のある方は就労移行支援や就労継続支援A型・B型の利用を検討できます。目的やサービス内容がそれぞれ異なるため、違いを知ったうえで自分に合った支援を活用していきましょう。

しかしながら、障害の程度や就労への適応度などを、自分で客観的に判断するのはむずかしいものです。困ったときは地域の障害福祉課や保健センター、就労支援をしている民間企業などに相談するとよいでしょう。

発達障害を抱えながら一般企業や事業所への就労を目指しているなら、Kaienにお任せください。Kaienは、発達障害の方の強みや個性を踏まえた就労移行支援を得意としています。

「仕事が長続きしない」「まだ働いたことがなくて働くイメージが持てない…」「自分の障害特性を見つめたい」といった課題・悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せください。

ご利用説明会・見学会

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

就労移行支援、就労継続支援A型B型、はそれぞれどういう違いがあるのかは、私も実は最初よくわかりませんでしたので、本記事のまとめでその違いを知ることができるのはいいですね。様々な就労支援サービスの中で、就労移行支援事業所はもちろん、A型もB型も事業所ごとのバラエティに富んでいるのも特徴ですね。利用にあたっては、就労移行支援なら、Kaienさんはもちろん、幾つかの事業所を選んで見学し、納得して利用を開始することをお勧めします。就労継続支援A型B型も同様です。私自身が外来で担当している患者さんで利用した皆さんは、それぞれ満足していることが多く、とても安心して任せられています。就労を考える方は是非積極的に利用してください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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