仕事の抜け漏れをなくすには

発達障害の人の視点で議論してもらいました ~キスド会 2018年7月 開催報告~
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奇数週土曜日開催の在職者向けの当事者会「キスド会」では、様々なお悩みが寄せられており、そのお悩みにスタッフや参加者が知恵を寄せ合って答えていきます。発達障害の傾向があるからこそ生まれるお悩み。今回は「仕事で抜け漏れが出てしまう」というお悩みをお送りします。

今回のお悩み: 仕事で抜け漏れが出てしまう

相談者(以下Aさん) 業務を進める上で、どの部分の仕事を覚えるのか覚えないのか、判断が苦手です。それによって作業に抜け漏れが出ちゃう気がします。みなさんはどのように抜け漏れを防いでいますか?

スタッフ) Aさんはどういうときに抜け漏れが出ると感じてますか?

Aさん) 今の仕事は3D-CADのオペレーター、設計の仕事です。頭から抜けてしまうのは、データで3Dモデルを作る上で、ここはこういうふうに作らなければいけないとか、ここはこう処理しなければいけないとかですね。指示を受けた内容が頭から抜けてしまいます。

スタッフ) 工程が複雑すぎるとか細分化されて過ぎている。なので覚える事が沢山ありすぎる、ということですか?

Aさん) そうです。量が多いのもあると思います。加えて、発達障害の特性上、作業を進めながら指示されても覚えられないのです。漏れなく覚えられるようにするために、何か対策がないかなと思っています。

【参考】発達障害 職場の困りごと対策② 優先順位/ミス・抜け漏れ/ズレの多さ

工程を書き出す、途中でチェックする、忘れたらたずねる、休憩を取る…

Bさん) 私だったらまず、紙に書いて工程を整理します。そんなに複雑な作業だったら、たぶん上司の方も一発で覚えることは想定してないので、忘れてしまったら、その都度聞いてもいいのではないか、とも思うのですが。

Cさん) 最初から最後まで何工程かあるとして、途中でチェックはしないんですか? 

Aさん) はい、途中でチェックはするのですが、納品前の最終チェックで初めて抜け漏れが見つかるという感じです。

Cさん) いつも同じような事項が抜けるのであれば、メモを書くなりチェックリストを作るなりするしかないですね。それでも出るミスに対してはリカバリーしてくれる存在があるといいのですが。例えば私は保険事務をしていますが、最終報告にミスがあってもすぐに保険会社が気付いて直してくれます。

Dさん) 集中力がなくなることはないんですか? 

Aさん) それはたしかにあります。

Dさん) でしたら、集中力が落ちた時に「休息時間を取りたい」って上の方に要請するのが一番いいと思います。それでも抜け漏れが減らない場合、リカバリーの対策を取ればいいのではないでしょうか。

自分なりのチェックリストやリカバリー方法を考える

スタッフ) 具体的にはどんなチェックリストや対策が考えられますか?

Cさん) 私の場合、期日までに済ませなければならない案件を、例えばお客様からの連絡を待っていたりして、放置しおくことがよくあります。期日が過ぎてしまったら保険が成立しないので、忘れないために付箋を付け、日付順に案件を並べて、期日の何日か前までには問い合わせを入れる、といったことを心がけています。工程が複雑な場合は必要な作業を全部書き出しておいて、それぞれの作業の際に最低限チェックすべきことを前もって書き込み、途中でそれを見るといった工夫もしています。そもそも保険には細かい期日や計算ルールが山のようにあってとても全部は覚えきれません。そういう細かい決まり事については、参照できるものを自分で分かる所に貼ったり、机に置いたりしています。

 Aさんの場合、ここの部分を作って次はそこ、その次はあそこを作る、といった工程があると思うんです。それぞれの工程ごとに抜け漏れしやすそうな作業を書き出すといいのでは? 作業を忘れてしまったとしても、後で見返してフォローできるような仕組みも考えられれば、なおいいですね。

Bさん) 一度抜け漏れの記録を取ってみてはいかがでしょう? 例えば、Excelファイルで間違えの日時と内容を記録し、その間違えの原因は不注意によるものか、指示や理解不足によるものかを分類してリスト化してみる。そのリストを見れば抜け漏れの原因を客観的に分析できるので、何か対策を立てられると思います。

できないことは、自分にできる形に落とし込む

Eさん) 私なりの抜け漏れの原因と対策についてお話します。口頭で指示されたときに、周りの人は言われたことを頭の中で整理してその場でやることができるようです。でも私はそれがちょっと苦手でした。苦手なのに周りの人と同じようにその場で頭で整理してやろうとして、うまく行かないことに悩んでいました。それで最近、自分にできないことは、できる形に落とし込んでやればいいのではないか、と考え方を変えました。例えば、私は紙に書いて整理して工程を把握するのが得意なので、言われた内容を後からかみ砕いて紙に書き出して、分からない所があれば上司に聞いて確認しています。Aさんが何が得意なのかは分かりませんが、Excelのファイルで付箋を貼ることでも何でもいいので、自分の得意な形で工程を整理し直してみたらどうかな、と思いました。

一同) (頷く)

Bさん) マニュアルを印刷をしておいて、ここは必ずやらないといけない、という所に印を付けて作業を確認する――そういう自分専用のマニュアルを作ってみてはいかがでしょう。工程上抜け漏れしそうなところは抜き出してまとめ、マニュアル1冊の内容が最初の1枚目だけで確認できる、ここさえ注意すれば大丈夫、という形に自分でまとめ直しておけば、やりやすくなるのではないでしょうか。

Dさん) ちょっと違う視点もあります。皆さんマニュアルを作るように言われていると思うんですが、私は職場の上司から「数で稼げ」と言われました。失敗を経験した数だけ成功の確率が上がる、という考え方です。

スタッフ) それはミスが許される場合に限られますね。確かに失敗を繰り返しながら覚えるしかない仕事もあるので、そういう場合のミスに対しては深刻になり過ぎず、少しずつミスを減らす努力を重ねればいいと思います。

原因をひとつひとつ分析し、対策を立てられるかどうかが大切

Cさん) どんな人でも抜け漏れはあると思います。でもそこで、なぜそこを抜け漏らしてしまったのか、という原因を考えないと進歩がありません。失敗の原因を客観的に分析し、自分の状況、得意と苦手を考えた上で、何を変えたら上手くできるようになるのか、という対策を立てられるかどうか。そこが肝心では? 対策の仕方は各自で違うでしょうが、他人のやり方から何かに気づくこともあるでしょう。ですからこの後懇親会に残って、どんどん対策をシェアし合うのもいいかも知れません。

Dさん) 本当にそうですね。「数で稼げ」の話の補足ですが、何故そういう風に失敗したのかをちゃんと考えておくようにも言われました。失敗学という学問があるんですが、ハインリッヒの法則といって、世の中の失敗というのは、大きな失敗も実はその下に何個もの小さな失敗があって起こる、という事実が知られています。ケアレスミスをした段階でなぜ失敗したのかを突き詰めて考えていければ、少なくとも大事には至らないのではないか、と自分も思います。

Bさん) 何か分かったあとは他の人と反省会みたいなものを開いて、抜け漏れの原因と対策を共有するといいのではないか、と私は思いましたね。

Eさん) 私は、ミスを犯すのはどこかに無駄や無理があるからだと思うんです。例えば、必要のない作業にこだわって時間をかけて、作業工程全体を見渡したり確認したりする時間を取っていないとか。ですので、今自分が、ある作業をする際に何が一番必要なのかを整理整頓することで、無駄や無理による抜け漏れはある程度減らせる気がします。

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監修者コメント

任されている作業を一度、文章や絵や図など、目に見える形に落とし込む作業はとても効果的です。自分用のマニュアルをつくるということですよね。見える形にし、ミスがあるたびに改善していくというのは、モチベーションの向上にも繋がります。

ただ気をつけたいところが一つ。作業を文章に落とし込むという、最初の過程はとても難しく、エネルギーがいるものです。なので、一人でできないよと思う方は、誰かに手伝ってもらうのが良いでしょう。

加えて、職場の同僚で、発達障害ではない人も、そういう自分なりのマニュアルを作っていたりします。そういう人からアドバイスをもらったり、彼らのマニュアルをそのまま借りてしまうのも、検討してみてください。


監修 : 益田 裕介 (医師)

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