【2024年度施行】障害者総合支援法改正案の概要と就労に関する項目について解説

就労に関する3つの項目を深掘り 影響と今後の展望
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2022年10月14日に閣議決定された「障害者総合支援法」の改正案が、同年12月10日に参議院本会議にて賛成多数で可決されました。改正案は2024年度より施行されることが決まっており、障害福祉サービスにおける重要な改訂として広く注目されています。

本記事では、障害者総合支援法の法改正の概要と就労に関する項目の見直し内容についてわかりやすく解説します。2024度の改正案施行に向けて、就労に関する準備を進める上で必要な情報をまとめていますので、ぜひお役立てください。

障害者総合支援法とは?

「障害者総合支援法」は、正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と言います。制定時には「障害者自立支援法」という名称でしたが、2013年4月から「障害者総合支援法」に変更されています。

この法律は、障害者および障害児が、基本的人権を持つ個人として日常生活や社会生活を送れるよう、必要な障害者福祉サービスの給付制度や、障害者の生活支援を充実させることを目的としています。

重度訪問介護の対象者の拡大や地域生活支援事業の実施など、障害者福祉の内容の拡充を図ることが明記されています。ここで対象となる障害の範囲は身体障害だけでなく、発達障害*を含む精神障害や知的障害も含まれます。

障害者総合支援法の事業内容は、主に「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに分かれ、障害者の自立支援に向けた福祉サービスや地域における社会生活サポートに対して、費用の支給制度などがあります。

障害者総合支援法改正案の概要と改正の目的

「障害者総合支援法改正案」は、2022年10月26日に国会に提出された障害者総合支援法の改正案です。さまざまな制度の見直しや創設が含まれ、検討段階であった2022年6月時点から社会的に注目されていましたが、10月14日に閣議決定され、同月26日に第210回国会(令和4年臨時会)に提出されました。

改正案は「障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しについて(議論の整理)」としてまとめられ、一部内容を除いて2024年4月1日から施行されることが決まっています。

日本国内においては、国際的な障害福祉に関する流れを受けて、2006年に採択された「障害者権利条約」を日本政府が批准しました。それに伴い、2012年に「障害者総合支援法」が施行された経緯があり、施行後は定期的な見直しと改訂が行われています。

今回の改正案は、主に「障害者の地域生活」「障害者および障害児への社会的ニーズに対する細かな対応」そして「持続可能かつ質の高い障害福祉サービス等の実現」という3つの柱で構成されています。

具体的には、障害者の地域支援体制の充実や、精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備に加えて、多様な就労ニーズへの支援及び障害者雇用の品質の向上など就労に関する内容が含まれています。

また、難病患者や小児慢性特定疾病児童が適切な医療を受けられる支援の充実と強化、障害福祉サービスなどのデータベースに関する規定の整備も盛り込まれています。

障害者総合支援法改正案の6つのポイント

障害者総合支援法改正案では、主に6つのポイントに沿って進められることが定められています。ここでは、障害者総合支援法改正案の6つのポイントについて詳しく解説します。

障害者等の地域生活の支援体制の充実

「障害者等の地域生活の支援体制の充実」では、共同生活援助(グループホーム)の支援や、各市町村における障害者向け地域相談を含む地域生活支援拠点等の整備、精神保健の相談支援を受けられる対象者の拡大と包括的支援の確保について、明確化するよう定められています。

障害者が地域において相談しやすい環境を確保するとともに、本人の意思を尊重した支援を進めていく必要があります。また、自らも障害や疾病の経験を持つ人が支援を行うピアサポートの取り組みも重視しています。

この項目は、障害者総合支援法に加えて、精神障害に関する医療と福祉の法律である「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」に関する内容です。

障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進

「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」では、就労アセスメントの手法を活用した就労選択支援の創設や、障害者の就労機会の拡大に向けた実雇用率の算定、企業に支給される障害者雇用調整金の見直しと助成措置の強化について規定されています。

就労アセスメントとは、就労サービスの利用や雇用を希望する障害者本人と協同で、能力や適性の評価や就労ニーズの把握、就労開始後の配慮についての整理を行うことです。ハローワークでは、本人のアセスメントの結果を活かして職業指導を実施することになります。

この項目は、障害者総合支援法だけでなく、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」にも関係する内容です。

精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備

「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」は、家族の代わりに市町村長の同意を持って精神障害者の医療保護入院が可能となる他、入院者訪問支援事業の創設や虐待防止を目的とする取り組みの推進が含まれます。

精神障害者に適切な医療を提供するとともに、本人の希望のもとで入院者に必要な情報提供を行うことが定められています。また、虐待防止に向けて精神科病院での研修や普及啓発を進め、虐待発券時に速やかに通報できる仕組みを整備することも挙げられれます。

難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化

「難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する適切な医療の充実及び療養生活支援の強化」では、難病患者や小児慢性特定疾病児童などに対する医療費助成の前倒しや、療養生活支援、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業の強化について定められています。

難病患者や小児慢性特定疾病児童などに対する医療費助成の開始日を前倒しし、適切な支援をすみやかに受けられるよう配慮しています。また、各種施設の利用やデータ管理を促すための「登録者証」の発行や、難病相談支援センターとの連携推進などの対策も含まれています。

障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備

「障害福祉サービス等、指定難病及び小児慢性特定疾病についてのデータベース(DB)に関する規定の整備」では、障害DBや難病DB、及び小児慢性特定疾病DBを活用した支援や療養生活の向上を目指し、第三者への情報提供の仕組みを整備することが定められています。

障害福祉サービスの利用者が多様化し、サービスを提供する事業主も増加する中で、利用者ごとの個別ニーズに応じた質の高いサービスの提供を目指し、データ基盤の整備や管理、監査の強化といった必要性をカバーする内容です。

その他

「その他」の項目では、各都道府県知事による事業者指定の際に、市町村⾧が意見を申し出ることができる仕組みの創設や、居住地特例対象施設への介護保険施設の追加が定められています。

各知事による事業者指定において、市町村障害福祉計画に整合した障害福祉サービス事業者を指定するために、市町村長が参加できることが規定されています。など、介護保険施設を居住地特例対象施設に含めることは、地方分権提案に向けた対応という役割も担っています。

就労に関する3つの項目を深掘り

ここからは、改正案の中でも就労に関する3つの項目について深堀りして解説します。「就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化」と「短時間労働者に対する実雇用率算定等」、「障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化」という3つの項目について、それぞれの現状と課題を踏まえた上で、見直しの内容を開設します。

「就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化」について

「障害者の多様な就労ニーズに対する支援及び障害者雇用の質の向上の推進」の項目で決められた「就労アセスメントの手法を活用した支援の制度化」について詳しく見ていきます。

就労先での仕事の質が担保されていないという課題

現在は、障害者雇用施策と障害福祉施策に基づいた就労支援が進められています。実際に民間企業で約60万人、就労系障害福祉サービス事業所では約40万人が就労しているというデータが出ています。

障害者の就労能力や適性については、就労系障害福祉サービスの利用を開始する段階で把握することになっているものの、働き方や就労先の選択に必ずしも活かせているとはいえず、就労先での仕事の質が担保されていないという課題があります。

就労を希望する障害者本人のニーズ、社会経済状況における多様化が進む中、障害者が働きやすい社会を実現するためには、障害者個人の希望や能力に沿った就労が実現するよう、従来よりもきめ細かな支援が求められています。

就労先や働き方の選択を支援

改正案では、「就労アセスメント」の手法を用いて、障害者本人が就労先や働き方に関するより良い選択ができるよう支援する「就労選択支援」サービスを創設することが決まっています。これにより、ハローワークでは支援を受けた者に対して、就労アセスメントの結果を参考にして職業指導等を実施します。

また、就労中の就労系障害福祉サービスの一時利用についても、改めて位置付けがなされました。障害者が就労開始から勤務時間を段階的に増やしていく場合や、休職から復職を目指すケースでは、一般就労中であっても就労系障害福祉サービスを一時的に利用できるようになっています。

さらに、一般就労への移行・定着の支援を推進するために、障害者就業・生活支援センターが市町村や障害福祉サービス事業者と連携し、雇用と福祉の連携を強化していくことが盛り込まれています。

「就労選択支援」活用のイメージとは?

前述の「就労選択支援」制度とは、障害者と就労支援サービス側が協力して、本人の能力や適性、希望する職種や労働条件、就労後に必要となる合理的な配慮といった項目を整理するための制度です。

これらの就労アセスメント結果を活用し、ハローワークにおける職業指導や就労系障害福祉サービスの利用を通して、障害者が自身にあった働き方を実現できるようサポートすることを目的としています。

就労選択支援制度では、障害を持つ本人が就労支援サービスを利用するタイミングで、就労アセスメントを実施します。就労アセスメントでは、以下の3つの項目を中心に、障害者本人と支援側が協同で希望や特性などの状況を整理します。

  • 本人の就労能力や適性
  • 本人がもつ強みや課題
  • 働く上で必要な支援や配慮

本人への疾患や障害の特性の情報共有をはじめ、作業場面などを活用した状況把握、他機関連携を通したケース会議などを行い、アセスメント結果を作成します。

作成された就労アセスメント結果は、ハローワークでの職業訓練や就労支援、事業者などとの連絡調整といった目的で活用されます。また、一般就労中の障害者が就労系障害福祉サービスを一時利用できることも、改正案に追加されていますが、この場合にも就労アセスメント結果が考慮される方向で進められています。

「短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満)に対する実雇用率算定等」について

続いて、「短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満)に対する実雇用率算定等」の具体的な内容を見ていきましょう。

短時間労働を希望する人の雇用機会の拡大が必要

障害者の職業的な自立を促す目的で制定されている「障害者雇用促進法」において、障害者雇用に関する事業主の雇用義務は、週所定労働時間が20時間以上の労働者に限定されています。

一方で、障害の特性などの理由で⾧時間の勤務が難しく、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する人は、障害の種別をとわず一定数存在します。特に精神障害者に多くみられるこうしたニーズを踏まえて、週20時間未満の労働時間で働ける人の雇用機会の拡大が求められています。

短時間労働者でも雇用率に算定できるように

これまでは、障害者雇用に関して、優良企業の認定制度や特例給付金制度が施行されています。特例給付金制度は、週所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く障害者を雇用する事業主に対して、従業員数に応じて月5,000円〜7,000円/人が支給される制度です。

改正案では、週所定労働時間が10時間以上20時間未満と短い精神障害者や重度身体障害者、および重度知的障害者の雇用を特例的扱いとし、雇用率に算定できるようになりました。あわせて、特例給付金は廃止されることがきまっています。

人数のカウント方法は、一定の要件を満たす場合以外は1人を持って0.5人とする方針が、改正後も引き続き適用される予定です。

「障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化」について

次に、「障害者雇用調整金等の見直しと助成措置の強化」の現状と課題、見直し内容について詳しく解説します。

雇用の質の向上に向けた支援の不足

「すべての事業主は社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有する(障害者雇用促進法第37条)」という理念に基づき、障害者雇用に伴う経済的負担の調整や、事業主に対する助成を目的とした納付金制度を整備しています。 

給付金制度によって、障害者を雇用するために必要な施設や設備の見直し、職場環境の整備といった負担を軽減できるよう配慮されています。

事業主側の取り組みにより実雇用率が上昇したという結果が出ているものの、現在は雇用する障害者の数で評価する調整金や報奨金が支出のほとんどを占めています。そのため、雇用の「質の向上」に向けた支援への助成金支出が限られているという課題があります。

調整金や助成金の見直し

改正案では、障害者雇用の質の向上のために、限られた財源を効果的に運用しながら事業主への支援を充実させるために、調整金や助成金の見直しが実施されます。

まず、事業主が一定数以上の障害者を雇用する場合に、当該超過人数分の調整金や報奨金の支給額を調整することがきまっています。雇用管理に関する相談援助や加齢に伴う障害者の雇用継続支援など、事業主の取り組み支援への助成金が新設されました。

加えて、障害者の雇用の促進等に関する法律に関し、雇用の質の向上を目指し、雇用機会の提供や雇用管理、職業能力の開発および向上などに関する措置を追加して、事業主の責務を明確化します。

また、就業機会の更なる確保に向けて、在宅就業障害者への仕事の発注に関する特例調整金を支給する「在宅就業障害者支援制度」の登録要件が緩和されました。団体登録に必要な在宅就業障害者人数が、10人から5人に引き下げられます。

さらに、事業協同組合のスキームを活用し、複数の中小企業の実雇用率を通算できる特例(事業協同組合等算定特例)について、有限責任事業組合(LLP)が対象に追加されました。

障害者総合支援法改正案による影響と今後の展望

2024年度施行の障害者総合支援法改正案には、障害者の希望する地域生活や就労活動を実現させるための幅広い支援や体制の見直し・創設が盛り込まれています。

改正案の施行により、障害を持つ方が必要な医療や介護、適切な生活支援や就労支援を受けられる可能性がより高まるでしょう。また、障害者雇用を進める企業と障害者支援を担う事業所との連携が従来よりも進み、希望する職種や職場で就労できるチャンスも増えると想定できます。

障害者本人の希望やニーズに合った雇用を実現するために、アセスメントの実施と結果の共有を通して、支援側が一緒に就労要件や就労環境について検討する「就労選択支援」がスムーズに実施される体制と環境の整備が重要になってきます。

重度の知的障害や精神障害を抱える人が短時間労働者として雇用されることで、雇用率に反映されるようになる反面、特例給付金の廃止が決まっており、事業主にとっても重要な改正であることには違いないでしょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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