【2025年改正】障害年金は今後どうなっていく?概要を詳しく解説

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障害年金は、障害者の生活をサポートするための制度のひとつですが、「支給される金額が少ない」「そもそももらえない」など、これまでに多くの方から不満が上がっており、様々なことが問題視されていました。

しかし、2025年に厚生労働省から「障害年金制度」に関する改正法案が打ち出され、従来の制度が見直される運びになりました。制度の改正検討が行われるのは、実に40年ぶりということで、可決されれば障害者の方の生活にも大きな変化が表れることでしょう。

本記事では、今回法案改正が検討されている「障害年金制度」は今後どうなっていくのか、改正の背景や概要とともに、詳しく解説しています。

そもそも障害年金とは?

障害年金制度の改正について解説する前に、まず障害年金とは一体何なのか、というところから説明していきたいと思います。

障害年金とは?

障害年金とは、日常生活や日々の就労に支障が出るほどの病気や怪我を負った方に対し、国から支給される年金のことです。

国に3つ存在する公的年金(老齢年金・遺族年金・障害年金)のうちの一つで、20歳から65歳までの方が受け取れる仕組みになっています。

また、支給される金額は障害等級や家族構成によって異なるため、年金を申請する際は自分がどこに該当するのかをきちんと知っておく必要があるでしょう。

障害年金の種類

障害年金は、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類で構成されています。概要は以下の通りです。

1. 障害基礎年金

国民年金に加入しており、且つその間に傷病に関する初診を受けている方が受給できる年金です。対象は、障害等級が1級、2級の方のみ。3級の方は、支給対象に含まれていません。

支給金額に関しては、等級ごとに指定された金額と、お子さんの人数による加算によって決まります。

2. 障害厚生年金

厚生年金保険に加入しており、且つその間に傷病に関する初診を受けている方が受給できる年金です。支給対象は、障害等級が1級、2級、3級となっています。

また、障害厚生年金は障害等級以外にも、給与額や会社に勤務している(厚生年金に加入している)期間の長さによって支給される金額が異なるというのが特徴です。

ただ、障害等級が3級の方に関しては、障害基礎年金の支給対象外であることから、会社での勤務期間が少ない場合、受給できる金額が著しく低くなってしまうことが懸念されます。

そのため、障害等級3級の方にいたっては、「最低保証額を必ず支給する」という条件が付け加えられています。

障害年金を受給する際の注意点

障害年金を受給したいと思ったときに、注意していただきたいのは『初診日』です。これは、この後に解説する障害年金制度の改正に大きく関わっている部分でもあります。

ちなみに初診日とは、傷病を負った際、あるいはご自身の障害を自覚した際に、初めて医療機関で相談をされた日のことを指します。

例えば、会社に勤務している際に精神を病んでしまい、退職後に医療機関にかかったらうつ病と判明したというケース。

上記の場合は、初診日が退職後になるため、障害厚生年金の受給要件である「厚生年金保険に加入している時に初診を受ける」に該当しなくなってしまいます。

そのため、受給できるのは障害基礎年金のみになり、本来もらえるはずだった金額を受け取ることができなくなってしまうのです。

障害年金制度の改正の背景・概要

上記では、障害年金制度について重要なポイントに絞ってご説明しました。では、ここからが本題です。

障害年金制度の改正の背景とその概要について、詳しく解説していきます。

障害年金制度改正の背景

厚生労働省が打ち出した改正法案は、「障害厚生年金」を従来よりも多くの方が受給しやすくなる仕組みをつくることです。

上記でご説明しましたが、従来の障害年金制度は、初診日が条件とわずかにズレるだけで、障害厚生年金を受け取れない、支給額が大きく異なってしまうという懸念点がありました。

また、障害等級が3級の方は、元々、障害基礎年金の受給対象ではないことから、障害厚生年金の対象から外れてしまうと、障害年金自体を受け取れないということになります。

そうした問題から、改正を求める声が積み重なった結果、今回の改正法案が検討されるという事態に至ったという経緯があります。

障害年金制度の改正の概要

厚生労働省が法案に挙げている論点は以下の通りです。

障害厚生年金において延長保護を認める余地があるか否か?(延長保護=被保険者資格喪失後の一定期間内であれば、被保険者資格喪失後の保険事故発生も給付対象にする)障害厚生年金において長期要件を認める余地があるか否か?(長期要件=厚生年金保険料の納付済期間が一定以上あれば、被保険者資格喪失後の保険事故発生も給付対象にする)

引用元:厚生労働省 第5回社会保障審議会年金部会「障害年金制度の見直しに係る課題と論点

上記を分かりやすく説明すると、まず1点目の論点は、会社を退職したあとに事故を起こしたり、怪我をしたりしても、一定期間内であれば障害厚生年金を問題なく受給できる措置にしたらどうか。

2点目は、会社に一定期間以上勤務していれば、退職後に事故を起こしたり、怪我をしたりしても、障害厚生年金は問題なく受給できる措置にしたらどうか、ということが述べられています。

障害者がより生きやすい社会にするために

障害者年金改正については、まだ検討段階ではありますが、無事に可決されれば不平等な思いをする方が圧倒的に減ると考えます。

長年、一つの会社に勤務し、厚生年金を納付していたにも関わらず、初診日がズレてしまっただけで支給対象から外れてしまうというのは、あまりにも不条理だと言えます。

ただ、今の段階で検討が進められているのは、新しく受給される方のみで、改正前にすでに受給している方、申請をしている方は対象にはなりません。

まだまだ問題点はありますが、一歩ずつ障害者の方が生きやすい社会になっていくことを願うばかりですね。


監修者コメント

障害年金を考えたい、というときに、基礎年金にあたるのか、厚生年金にあたるのかは大変重要です。ことに3級での支給が厚生年金にしかない、というのは時に盲点にもなるでしょう。そして、初診日がいつになるか?は、年金診断書を書くのに悩ましい問題となることを少なからず経験します。その意味で、今回年金改正により初診日の多少のズレが許容されるようになるなら、それはとても望ましい改正と言えるでしょう。正直、この年金制度に関しては、もう少し、制度的にも、支給基準的にもわかりやすくなって欲しい、という思いはいつも抱く思いではありますね。

尚、障害年金診断書の希望を主治医に伝える時に、以下の点が明確だと主治医も書きやすいかと思います。初診日、生活歴の陳述者氏名(本人以外の時、例えば母親の氏名)、これまでの通院歴(いつからいつまでにどこに罹ったか、外来か、入院か、その時の診断名)、発育歴、学歴、職歴、仕事をしているなら現在の就労形態、1ヶ月の大凡の収入、職務内容、など。これらは初診時や、通常の診療を通じて本来はカルテを見返せば良いはずなのですが、漏れがあるものです。障害年金診断書は、当事者と主治医の共同作業と考えて、これらの情報を一緒に確認してみてください。「いつの時点」での診断書が必要と年金事務所に言われたか、も大事なので情報共有をお忘れなく。はいはい、とあっさり引き受ける主治医には尚更確認してみてくださいね。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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