障害者グループホームとは?入居条件や費用、メリットや利用の流れを解説

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障害者グループホームとは、障害のある人が必要な支援を受けながら、家庭的な雰囲気のなかで共同生活ができる場所です。「入所施設(障害者支援施設)より自由に暮らしたい」「一般住宅での1人暮らしは不安」など、いろいろな理由を持った障害者の人が利用しています。

今回は障害者グループホームとは何か、どのようなサービスを受けられるのか、障害者グループホームの4つのタイプ、入居条件、生活環境などを解説します。また具体的に入居を検討している人に向けて、費用や利用料、入居するまでの手続きや流れなども解説しているので、障害者グループホームの利用に役立ててください。

障害者グループホームとは?

障害者グループホームとは、障害のある人が日常生活の支援を受けながら共同生活を送れる住居です。「障害者総合支援法」で定められた福祉サービスとして、全国に設けられています。

住居のタイプはアパートや一戸建てなどさまざまですが、平均6名ほどの障害者が住んでおり、家庭的な雰囲気があるのが特徴です。また、基本的に地元の障害者グループホームを利用できるため、家族と近い場所で暮らせます。

障害者グループホームの支援内容は、入浴や排せつ、食事の介護、生活上の援助などです。障害者グループホームの利用者像としては、「単身生活ではいろいろ困りごとがあるため支援を受けたい」「施設を退所して地域生活に移行したいが、いきなり一般住宅で暮らすのは不安」といった人が挙げられます。

障害者グループホームと共同生活援助は同じ

障害者グループホームの正式名称は共同生活援助です。したがって2つの名称は同じ制度を指しています。なお、障害者グループホームをグループホームと略す場合もありますが、こちらも同じ意味です。

障害者グループホームは4種類に分けられる

障害者グループホームは以下の4種類に分けられます。

1.介護サービス包括型2.日中活動サービス支援型3.外部サービス利用型4.サテライト型
利用者像主に夜間や休日に介護、援助が必要な人夜間や休日だけでなく、日中も介護、援助が必要な主に夜間や休日に介護、援助が必要な人1人暮らしに近い状態で暮らし、困ったときに援助を受けたい人
サービス内容食事や入浴など日常生活の介護、支援
事業所数8,475291(平成30年4月~)1,320
利用者数12万2,220人3,977人(平成30年4月~)1万5,613人

参考:厚生労働省「障害者の居住支援について」

それでは各サービスの内容について解説します。

1.介護サービス包括型

介護サービス包括型は、主に夜間や休日の介護が必要な人のための障害者グループホームです。障害者グループホームには介護スタッフ(生活支援員)が配置され、食事や入浴などの日常生活の介護、支援を受けられます。

また、就労先との連絡調整や休日の余暇活動のサポートを頼むことも可能です。障害者グループホームの種類のなかで介護サービス包括型は、事業所数や利用者数ともに最も多い割合を占めています。

2.日中活動サービス支援型

日中活動サービス支援型は、夜間や休日だけでなく、日中の介護も受けたい人が入居する障害者グループホームです。昼夜を通じて1人以上の介護スタッフが配置されているため、日中の活動でも困りません。

日中活動サービス支援型は、障害者の重度化、高齢化に対応するために平成30年(2018年)から開始されました。長期入居者のための部屋のほか、地域に住む障害者のための緊急一時的な宿泊場所も併設されています。

3.外部サービス利用型

外部サービス利用型とは、主に夜間や休日介護が必要な人のための障害者グループホームです。介護サービス包括型との違いは、障害者グループホームの介護スタッフではなく委託契約を結んだ介護事業者のホームヘルパーが介護、援助する点です。

外部サービス利用型の場合、介護スタッフは必要なときに来てもらう形となるため常勤していません。そのため、障害の程度が比較的軽い人が入居する傾向にあります。

4.サテライト型

サテライト型は1人暮らしに近い生活をしながら、困ったときに世話人による巡回支援を受けられるタイプです。他の入居者との食事や、集団での余暇活動に参加したい場合は、サテライト型の住居からおおむね20分以内で移動できる本体住居(基幹となる障害者グループホーム)で交流を図れます。

サテライト型は2014年の改正障害者総合支援法で創設されました。背景には、共同生活より単身生活を望む人がいることや、事業者が住居を確保しやすいなどの理由があります。

障害者グループホームのメリットとは?

厚生労働省による障害者グループホーム利用者へのアンケートにおいて、「グループホームの生活でよいと思うこと」の上位3つは次の項目でした。

  • 具合が悪くなったときや病気になったときに助けてもらえる(49.1%)
  • 困ったときに相談しやすい(48.6%)
  • グループホームの仲間がいるのでさみしくない(45.5%)

参考:厚生労働省「障害者の居住支援について(共同生活援助について)」

ほかにも、以下のような内容が障害者グループホームのメリットといわれています。

  • 住み慣れた地元で暮らせる
  • 入所施設よりも地域住民と交流しやすい

また、障害者のご家族側にも介護や支援の負担が減るメリットがあります。

障害者グループホームに入居している人はどんな人?入居条件はある?

障害者グループホームにはどのような人が住んでいるのでしょうか。入居対象者や年齢制限について解説します。

対象者

障害者グループホームに入居できるのは、以下の障害、病気を持っている人です。

  • 知的障害
  • 精神障害(発達障害*や自閉症、高次脳機能障害などを含む)
  • 身体障害
  • 難病

障害者グループホームの入居条件には、障害支援区分(必要な支援の度合を総合的に示すもの)はありません。区分1~6まで幅広い人が利用しています。

また、体の機能に問題がない精神障害の人でも障害者手帳があれば入居できます。たとえば単身生活だと生活リズムが大きく乱れてしまう、部屋の片づけができないといった人は、障害者グループホームを利用するとよいでしょう。

年齢制限

障害者グループホームに入居できるのは、18歳以上65歳未満の人です。18歳未満で入居したい場合は、児童相談所から利用の許可を得る必要があります。

また、65歳までに入居をはじめた人は、65歳を超えてもそのまま住み続けられます。しかし、65歳を超えた人は障害福祉サービスではなく介護保険サービスの対象者になるため、障害者グループホームに入居できません。この場合は、介護保険サービスによる支援を受けることになります。

障害者グループホームの生活とは?どんな家に住むの?

障害者グループホームの住宅はマンションやアパート、戸建てなどがあります。障害者グループホームには避難がむずかしい障害者が入居することがあるため、消防用設備の基準が一般より厳しく、火災通報設備と連動する自動火災報知機、スプリンクラー(一部を除く)などが備わっています。

具体的な住環境は以下のとおりです。

スペース条件
個人スペース1人1部屋※自治体が部屋の基準を設けている場合もある(千葉県は6畳以上を推奨など)
共同スペース トイレ、キッチン、風呂など※サテライト型は基本的に個別
交流スペースリビングや食堂※サテライト型は基幹となる障害者グループホーム移動して交流

障害者グループホームでは、障害を持つ人が普通に暮らせるための場ですので、障害者施設より自由に暮らせるように配慮されています。

障害者グループホームのスタッフはどんな人?

障害者グループホームには、以下のような役割を持つスタッフが在籍しています。

職名役割
管理者事業活動や従業員などの全体を管理する人
サービス管理者支援計画や関係機関との連絡など実務全体を管理する人
生活支援員食事や入浴などの直接的な介護をする人
世話人食事作りや生活の相談に乗るなど、日常生活の援助をする人

各スタッフの人数は、十分な介護・援助ができるように、障害者グループホームの種類や入居者に応じて法律で定められています。

生活支援員や世話人には、特別な資格や実務経験は必要ありません。しかし、生活支援員のなかには、介護福祉士や社会福祉士などの資格を持っている人も多くいます。

障害者グループホームの費用・利用料はどれくらい?

障害者グループホームの利用にかかる費用は、大きく分けると次の5つです。

  • 障害福祉サービス利用料
  • 家賃
  • 水道光熱
  • 食費
  • その他生活費

それぞれについて解説します。

障害福祉サービス利用料

障害者グループホームを利用する際は、障害者総合支援法が定める「障害福祉サービス利用料」の支払いが必要です。この利用料は、世帯の収入状況によって次のように決まっています。

区分世帯の収入状況負担上限
生活保護生活保護受給世帯上記以外
低所得市町村民税非課税世帯(注1)0円
一般1市町村民税課税世帯
(所得割16万円未満(注2) 
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3)
9,300円
一般2上記以外3万7,200円

※注1:3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯

※注2:収入がおおむね670万円以下の世帯

※注3:入所施設利用者(20歳以上)とグループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」になる

参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」

家賃

障害福祉サービス利用料とは別に家賃もかかります。家賃は地域の相場によるので目安ではありますが、都市部では4万~6万円程度、地方では3万~4万円程度です。

家賃に対しては、国の「特定障害者特別給付」から1万円の補助が出ます。また、実費の半額を補助している市区町村も少なくありません。たとえば、家賃が5万円であれば、国の補助金1万円を差し引いた実費4万円の半額2万円を市区町村が負担してくれます。

水道光熱費

水道光熱費は「水道光熱費÷入居者数」で計算した金額を支払います。仮に水道光熱費が6万円で入居者が6人であれば、6万円÷6人=1万円です。水道光熱費は保険適応対象外ですので補助はありません。

この水道光熱費には、障害者グループホームで使う電話代やインターネット通信費も含まれます。これらについても共同で使う場合は、料金を人数で等分して支払います。

食費

食費は、障害者グループホームごとに朝食代・昼食代・夕食代が決められているのが一般的です。目安としては、月2万5,000円程度と考えておけばよいでしょう。仮に朝食代200円・昼食代300円・夕食代400円であれば、1日当たり900円となり、1ヶ月(30日)で2万7,000円です。

しかし、食費は必ずしも固定ではなく、自炊したり外食したりした際には、その分食費が減ります。障害者グループホームではキッチンを使えるため、入居者が食材を買って自炊し、食費を節約しているケースもあります。

その他生活費

その他生活費とは、日用品の買い物費用や遊興費、自治会費、通院のための医療費などがあります。トイレットペーパーや石けん、洗剤など共同で使う物の費用は、入居者で分担して費用を負担するのが一般的です。

また、通院や買い物などのときに生活支援員や世話人に同行してもらうと「同行費」がかかります。同行費は障害者グループホームが各自に設定しており、1時間1,000円~1,500円程度が目安です。

障害者グループホームには入居期限はある?更新料は必要?

障害者グループホームは基本的に入居期限がありません。65歳までに入居していれば、一生住み続けることも可能です。しかし、サテライト型の場合は、原則3年以内に一般住宅に移らなければなりません。また、一部の障害者グループホームは入居期限を設けているため、事前に確認しておくとよいでしょう。

更新料の有無は障害者グループホームによって異なります。障害者グループホームの更新料とは、賃貸物件の大家に支払う更新料や、建物の維持管理(屋根や外壁、設備などの補修、点検など)といった経費をまかなうために徴収されるものです。

障害者グループホームの探し方とは?見学はできる?

障害者グループホームの探し方はいくつかあります。代表的なものは以下の2つの方法です。

  1. 障害福祉サービスの情報サイトで検索する
    サービスや地域などを選んで障害者グループホームを絞り込めます。障害者グループホームのホームページのリンクも掲載されているので、さらに詳しい情報も調べられます。
  2. 自治体の障害福祉課窓口、相談支援事業所に相談する
    入居条件や障害の程度などを伝えると、適切な障害者グループホームを紹介してもらえます。また、障害者グループホームに関する他の内容を一緒に相談できるのもメリットです。

入居したい障害者グループホームが絞り込めたら見学も可能です。障害者グループホームに直接問い合わせるか、障害福祉課窓口、相談支援事業所を経由して問い合わせるとよいでしょう。障害者グループホームによっては体験入居をさせてもらえます。

障害者グループホームの入居に必要な手続きと流れとは?

障害者グループホームの入居に必要な手続きと流れは以下のとおりです。

  1. 「障害者手帳」を自治体に申請して交付してもらう
  2. 「障害福祉サービス」の支給を申請し、障害支援区分を認定した「障害福祉サービス受給者証」を交付してもらう
  3. 入居したい障害者グループホームを決める
  4. 障害者グループホームの見学、面談、体験入居などを行う
  5. 本人と保護者の希望を障害者グループホームに伝え、具体的な支援計画を記した「個別支援計画」を作成してもらう
  6. 個別支援計画を確認して入居契約を交わす
  7. 入居開始

初めての場合はわからないことも多いため、相談支援専門員にサポートしてもらうとよいでしょう。相談支援専門員が付いていない場合は、市区町村の障害者担当窓口に頼むと担当を決めてもらえます。

気になった障害者グループホームがあれば見学してみよう

障害者グループホームは障害のある人が生活の支援を受けながら、地元で共同生活を営める場です。障害の負担や不安を軽くしながら、より自立的な社会との交流を持った生活を送りやすくなります。

障害者グループホームは4種類のタイプがあります。それぞれ支援の仕方や生活スタイルが違うため、自分に合ったタイプを選ぶと快適に暮らせるでしょう。気になった障害者グループホームがあれば見学や体験入居もできるので、よりよい暮らしのための方法として検討してみてはいかがでしょうか。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます