療育手帳のB2とは?等級の種類や判定基準、申請方法について解説

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療育手帳は知的障害を持つ人を対象とした障害者手帳で、A・B1・B2といった等級があります。等級は障害の程度によって決まり、種類や判定基準は自治体によって異なるのが特徴です。

この記事では、療育手帳の等級の種類や取得するメリット・デメリット、申請方法などを解説します。「B2判定で障害年金はもらえる?」「障害者雇用枠に応募できる?」など多くの人が気になるポイントについても紹介しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

療育手帳のB2とは?

療育手帳は、B1やB2といった分類がされています。はじめに、そもそも療育手帳とはどのようなものなのかと、等級の種類について詳しく見ていきましょう。

そもそも療育手帳とは?

療育手帳は障害者手帳のひとつで、知的障害を持つ人が対象です。児童相談所もしくは知的障害者更生相談所で知的障害があると判定された人に交付されます。療育手帳を取得すると、税金の控除や民間施設の割引などが受けられるのが特徴です。

療育手帳の交付や運用をするのは各自治体のため、自治体によって名称が異なることがあります。「愛の手帳」や「みどりの手帳」という名称を使っている自治体もありますが、療育手帳と名称が異なるだけで役割は同じです。

B2とは療育手帳の等級の1つ

療育手帳は、障害の程度によって等級が定められています。厚生労働省は等級を「重度(A)」と「それ以外(B)」の2つとしています。判定基準は以下のとおりです。

  • 重度(A):知能指数が概ね35以下で、日常生活の介助を必要とする、もしくは興奮などの問題行動を有する人
  • それ以外(B):Aに該当しない人

自治体によっては、上記のA・Bをそれぞれ細分化しているところもあり、B2は上記の「それ以外(B)」を細分化した等級のひとつです。

例えば横浜市では、療育手帳(愛の手帳)の等級を「A1」「A2」「B1」「B2」の4つに分けています。一方、大阪府の療育手帳の等級は、「A 重度」「B1 中程度」「B2 軽度」の3つです。このように、療育手帳の等級の種類は自治体によって異なります。

参考:

横浜市「愛の手帳」

大阪府「療育手帳について」

療育手帳B1・B2の違いと判定基準

療育手帳のB1・B2の違いは、障害の程度です。大まかにいうと、障害の程度が中度の場合はB1、軽度の場合はB2に該当します。ただし、先ほど紹介したとおり療育手帳の等級は自治体によって異なり、細かい判定基準も異なります。

例えば横浜市の判定基準は、以下のとおりです。

  • A1:IQ20以下
  • A2:IQ21〜35
  • B1:IQ36〜50
  • B2:IQ51〜75

一方、兵庫県では以下のような判定基準を採用しています。

  • A:自他の意思の交換及び環境への適応が困難であって、基本的な日常生活に絶えず注意と介助を必要とし、成人になっても自立困難とされるもの
  • B1:新しい事態の変化に適応する能力に乏しく、他人の助けや指導によって、自己の身辺のことがらを処理しうるもの
  • B2:日常生活にさしつかえない程度に自ら身辺のことがらを処理できるが、抽象的な思考推理が困難なもの

なお現在国で療育手帳に係る統一的な判定基準の検討がされていて、統一に向けて議論が進められています。

参考:

横浜市「愛の手帳」

兵庫県「療育手帳について(Q&A)」

療育手帳B2で障害年金はもらえる?

知的障害を持つ人が障害年金をもらうには、知能指数と日常生活における援助の必要度などを考慮して支給対象であると認定される必要があります。療育手帳B2の人も障害年金をもらえる可能性はありますが、療育手帳と障害年金の審査基準は異なるため、「療育手帳があれば必ず障害年金がもらえる」というわけではありません。

療育手帳B2は障害の程度が比較的軽度のため、障害年金の審査で「援助が必要でない」と判断されて支給対象外になる可能性もあります。

療育手帳B2でも障害者雇用で働くことはできる?

療育手帳は障害者手帳の一種のため、療育手帳を持っていれば障害者雇用枠で働くことができます。障害者雇用とは、障害を持つ人が働く機会を得やすくすることを目的とした制度で、一定規模以上の企業は一定割合以上の障害者を雇用するよう法律で定められています。

障害者雇用を利用すると、勤務時間や業務内容など障害の特性に合わせた配慮を受けやすいのがメリットです。一般雇用枠と比較すると求人数は限られますが、療育手帳B2を持っていて就職を希望する人は、障害者雇用枠の活用も検討してみるのもおすすめです。

療育手帳B2判定の方が利用できる障害者雇用以外の就職支援 

療育手帳B2判定の方が利用できる就職支援として、障害者雇用以外に次の2つがあります。

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援

就労移行支援は、障害を持つ人が一般企業への就職を目指す際に利用できる支援制度です。就労移行支援事業所に通い、就職に必要なスキルを身につけるトレーニングを行います。履歴書の作成支援や模擬面接から就職後の定着支援まで、一貫したサポートが受けられます。

就労継続支援は、障害のために一般企業への就職が困難な人に働く場所を提供する支援制度です。A型とB型があり、A型は利用者と事業所が雇用契約を結び、最低賃金以上の給料が支払われます。一方B型は雇用契約を結ばず、作業に応じた工賃が支払われます。

ちなみに就労移行支援と就労継続支援は、療育手帳を取得していない人も利用できる制度です。

療育手帳は発達障害でも取得できる?

療育手帳は知的障害を持つ人を対象としているため、知的障害を伴う発達障害のある方は取得できる可能性があります。18歳未満の人は児童相談所、18歳以上の人は知的障害者更生相談所で知的障害があると判定されれば、療育手帳の取得が可能です。

発達障害を持つ人を対象とする障害者手帳は、精神障害者保健福祉手帳です。そのため、療育手帳の対象でない場合でも精神障害者保健福祉手帳の申請はできます。

発達障害を持つ人は知的障害があるかどうかで取得できる手帳が変わるため、どの手帳を取得するか迷う場合にはお住まいの自治体の窓口に相談してみてください。

療育手帳を取得するメリットとデメリット

ここでは、療育手帳を取得するメリットとデメリットについて見ていきましょう。これから療育手帳を取得したいと考えている人は、ぜひ参考にしてくださいね。

取得のメリット

療育手帳を取得すると、以下のようなメリットがあります。

  • 税金の障害者控除が受けられる
  • 公共・民間の各種サービスで割引が受けられる

障害者控除とは、障害者手帳を持つ本人や配偶者、扶養親族が所得税・住民税の控除を受けられる制度です。療育手帳も障害者控除の対象なので、療育手帳を取得すると支払うべき税金が安くなるのが大きなメリットです。

また、税金だけでなく各種サービスの割引も受けられます。医療費や公共交通機関の運賃、博物館などの入館料やNHK受信料など、さまざまなサービス・施設が割引を実施しています。

取得のデメリット

療育手帳を取得するデメリットは特にありませんが、申請や更新に手間を感じる人がいるかもしれません。療育手帳を取得するには自治体の窓口で申請が必要で、そのための書類の用意などに手間がかかります。

「療育手帳を取得すると知的障害があることが周囲にバレるのでは」と心配な人もいるかもしれません。手帳を取得しても自分から話したり手帳を見せたりしない限り周囲に伝わることはないので、安心してください。また、取得した手帳が不要になった場合はいつでも返却が可能です。

療育手帳の申請方法と注意点

療育手帳を取得する場合、申請は基本的に以下の流れで行います。

  1. 自治体の窓口に申請書を提出する
  2. 知的障害の判定を受ける
  3. 申請内容に問題がなければ手帳が交付される

まず、自治体の窓口に申請書を提出します。障害福祉窓口で療育手帳を取得したいことを伝えると申請書や必要書類について教えてもらえます。申請の際には以下のような書類が必要になるので、準備しておきましょう。

  • 申請書
  • 本人の顔写真
  • 母子手帳
  • 診察情報提供書
  • 印鑑 など

必要書類を提出したら、児童相談所もしくは知的障害者更生相談所で知的障害の判定を受けます。判定を受けて申請が受理されたら、1〜2ヶ月程度で療育手帳の交付となります。

詳細な申請の流れや必要書類は自治体によって異なるため、実際の申請についてはお住まいの自治体へ確認しましょう。

ニーズにあわせて療育手帳の取得も検討してみよう

療育手帳は、知的障害を持つ人を対象とした障害者手帳です。障害の程度によってB1・B2などの等級があり、B2は「軽度」に分類されます。療育手帳B2判定の方は障害者雇用の制度を利用でき、もし療育手帳を持っていなくても就労移行支援や就労継続支援といった福祉サービスの利用が可能です。

療育手帳の取得は任意ですが、障害者雇用枠を利用できたり税金が控除されたりメリットも多いため、ニーズにあわせて取得を検討してみてください。

知的障害や発達障害を持つ人が就職を希望する場合は、就労移行支援の活用がおすすめです。Kaienでは、専門家が推奨する充実したプログラムが特徴の就労移行支援を実施しています。ご利用説明会・見学会も開催しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


監修者コメント

ダニエル・キイス不朽の名作「アルジャーノンに花束を」は主人公チャーリイの知能が高まることで自身の境遇や社会のさまざまな問題に直面することになり、読者は幸せとは一体何なのかを考えざるを得ない状況になります。人間の生活がコンピューターやスマホなど知能の先鋭化された媒体に依存するようになり、サービス産業が高度化すればするほど、知的障害を持つ方の就労は困難になります。このようにメンタルヘルスで言う障害は、社会の発展と切り離すことができず、また社会の構造によって問題となる障害が変わってしまうという「可塑性」を有するという特徴があります。

本コラムで紹介された療育手帳は、知的障害を持つ人の生活や就労を支援する目的で作られました。自治体が発行しているため、療育手帳の名称や等級が異なる場合があるので、お住まいの自治体にご確認ください(例えば東京都では「愛の手帳」と呼び、等級は1度から4度まであります)。等級を決めるための心理検査も多くの自治体では田中・ビネー検査で得られたIQを参考にしますが、西日本では発達指数(DQ)で判定するところもあるようです。いずれにしても、数値だけでなく生活状況や他者との交流なども参考にして判定されます。税金の控除や就労だけでなく、場合によって障害年金を受けられる場合もありますので、主治医やスタッフに良くご相談ください。


監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。