療育手帳(愛の手帳)とは?申請方法やメリット、受給者証との違いを解説

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療育手帳は、知的障害のある方が取得できる障害者手帳です。自治体によって申請方法や等級などが異なりますが、取得することで税金控除や公共料金の割引、就職に関する支援などさまざまなサポートを受けられます。

本記事では、療育手帳を取得するメリットや申請方法などを詳しく解説します。混同されやすい傾向のある障害福祉サービス受給者証との違いや、療育手帳の必要性など気になる情報をまとめていますので、ぜひご覧ください。

療育手帳は障害者手帳の一つ

療育手帳とは、知的障害があり、一定の基準に該当すると認められる場合に申請できる手帳のことです。児童相談所または知的障害者更生相談所から、知的障害があると判定された人が持つことができます。

療育手帳を取得すると、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや各自治体、民間事業者による各種サービスを受けられます。療育手帳制度は国のガイドラインに沿って、各自治体が判定基準や等級、運用方法などを定めています。

なお、療育手帳と身体障害者手帳、精神障害者保険福祉手帳の3つを合わせて「障害者手帳」と呼びます。制度の根拠となる法律はそれぞれの手帳で異なりますが、いずれの手帳も障害者総合支援法の対象です。

療育手帳の目的

療育手帳の目的は、知的障害を持つ人が支援や援助などの福祉サービスを受けやすくすることです。療育手帳を持っていると税金が減免されたり公共交通機関を割引運賃で利用できたり、さまざまなメリットがあります。

実際に、障害福祉サービスの利用や手当・年金の申請のために療育手帳を取得する人も少なくありません。療育手帳を取得しなくても利用できるサービスもありますが、療育手帳があると利用できるサービスの選択肢がより広がります。

療育手帳と障害福祉サービス受給者証の違い

療育手帳と似た制度に「障害福祉サービス受給者証」がありますが、両者の違いは発行元と取得目的です。療育手帳は障害名やその程度を証明するために、都道府県が発行する障害者手帳であるのに対し、受給者証は療育施設や放課後デイサービスの利用するための許可証で、各自治体が発行しています。

受給者証を取得することで、行政からの給付金を受けながら障害者総合支援法や児童福祉法に基づくサービスを利用できます。受給者証は主に「福祉サービスを受けられるもの」と「医療サービスを受けられるもの」の2つに分けられます。

自治体によって異なりますが、療育手帳を持っている場合は受給者証を短時間で発行してもらえる場合もあります。

発達障害の方も療育手帳を取得できる?療育手帳の対象者

知的障害を伴う発達障害*である場合、療育手帳を取得できる可能性があります。厚生労働省では、療育手帳の対象者は「児童相談所または知的障害者更生相談所から知的障害であると判定された人」と提示しています。18歳未満だと児童相談所、18歳以上では知的障害者更生相談所で判定を受けられます。

18歳未満で療育手帳を取得する人が多い傾向にありますが、大人になってから知的障害の診断を受けて、手帳を取得するケースも少なくありません。また、療育手帳を取得できない場合であっても、診断があれば「精神障害者保健福祉手帳」を取得できることが一般的です。

精神障害者保健福祉手帳は、精神障害の症状によって日常生活や社会生活に制約や影響が認められた場合に取得できます。発達障害のある人が取得できる手帳は、知的障害を伴うか否かによって変わるため、取得を検討する際には住んでいる市区町村の窓口へ相談してみましょう。

どれくらいの人が療育手帳を持っている?

厚生労働省が公表している「令和3年度福祉行政報告例の概況」によると、令和3年度末時点での療育手帳の交付台帳登載数は1,213,063人でした。年齢別で見ると、18歳未満が299,008人、18歳以上が914,055人となっています。

令和3年度の療育手帳交付台帳登載数は、前年度に比べて3万人以上増加しました。これ以前からも年々増加してきていて、療育手帳の取得を希望する人が増加傾向にあることが伺えます。

参考:厚生労働省「令和3年度福祉行政報告例の概況

愛の手帳とは?地域による療育手帳の違い

療育手帳の制度は、国が示したガイドラインに基づき、都道府県や政令指定都市などの自治体が運用しています。そのため、東京都では「愛の手帳」、さいたま市では「みどりの手帳」というように、異なる名称を設定している場合もあります。

住んでいる地域で、手帳を取得できる判定基準や等級、支援内容などは異なりますが、おおよその目安としては以下が挙げられます。

  • 18歳よりも前に知的機能障害が認められ、現在も持続している
  • 標準化された知的検査で測定された知能指数(IQ)が70以下(もしくは75以下)

基本的には上記条件に加えて、各自治体の基準を満たした場合に取得することが可能です。多くの場合、知能指数だけでなく、日常生活でどのくらい困りごとがあるか、サポートが必要かといった点も合わせて検討されます。

療育手帳の等級と等級ごとの判定基準

療育手帳には等級が設けられています。等級は、知能指数(IQ)と生活における困りごとや支障の程度などの判定結果で決まり、等級ごとに手帳交付後に利用できる支援やサービスが異なります。

自治体によってはより細かな等級を設定している場合もありますが、厚生労働省のWebページではA判定(重度)とそれ以外のB判定(B1・B2など)に分けられます。療育手帳の等級について詳しく見ていきましょう。

A判定

厚生労働省が示す「A判定」の判定基準は、以下のいずれかに該当する人としています。

  • 知能指数がおおむね35以下で、次のいずれかに該当する者:食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。もしくは異食、興奮などの問題行動を有する。
  • 知能指数がおおむね50以下で、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者

A判定は一般的に知的障害が「重度」であると認められるケースです。自治体によっては、判定が細分化されていることもあります。

例えば、千葉県ではA判定とは別に最重度の「〇A判定」を設けており、18歳未満は〇A、18歳以上は〇A-1、18歳以上でなおかつ特別介助を常時要する状態は〇A-2に該当します。また、福岡県では、A1・A2・A3の3つに分かれています。

B判定(B1・B2)

「B判定(B1、B2)」は、厚生労働省では「A判定(重度)以外」とされています。A判定同様に、「B1」「B2」に分けている自治体も多く見られます。

兵庫県の場合、「B1(中度)」は日常生活で指示が必要な場面があり、疾病や軽い障害による情緒面や行動面に注意が必要だと判断できる状態としています。また、「B2(軽度)」は、日常生活が1人ででき、情緒面や行動面でさほど注意は必要なく、治療や介護の必要性がないケースを指します。

等級の詳細は住んでいる市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。

療育手帳をもらうには?療育手帳の申請方法と流れ

療育手帳の申請方法は各自治体で異なり、申請する際には市区町村の障害福祉などの担当窓口で事前に確認しておく必要があります。ここでは、申請手順の例として、香川県での申請方法を紹介します。

  1. 申請者が市町村の福祉事務所もしくは障害福祉担当窓口へ療育手帳の申請を行う
  2. 自治体の担当者が障害福祉相談所へ書類を送付する
  3. 障害福祉相談所と申請者が面接を行う
  4. 障害福祉相談所が判定する
  5. 療育手帳が障害福祉相談所から市町村の担当窓口へ送付される
  6. 申請者へ療育手帳が交付される

療育手帳の判定を行う面談の日時や場所については、障害福祉相談所から電話または書面で連絡があります。判定結果により療育手帳の申請が認められた場合、交付までは通常1〜2ヶ月前後を要します。

療育手帳を申請する際の注意点

療育手帳を申請する際には、住んでいる地域の申請方法に従う必要があります。住所や氏名の変更手続きや、18歳未満の更新手続きなどは、必要なタイミングで完了しなければ療育手帳の保有者として認可してもらえない可能性もあるため、注意が必要です。ここでは、療育手帳を申請する際の注意点を解説します。

必要な書類は自治体によって異なる

療育手帳の制度は各自治体が運用しているため、申請時の必要書類や手続き方法は自治体によって異なります。多くの場合、療育手帳交付申請書と手帳に使用する顔写真、印鑑などを提出しますが、他にも書類を求められる場合があります。

市町村の福祉障害担当窓口などに事前に問い合わせておくと、必要な書類を揃えて提出でき、スムーズな交付につながるでしょう。

住所や氏名が変更になった場合は手続きが必要

療育手帳を取得したときから本人または保護者の住所や氏名が変わった場合には、変更手続きが必要です。基本的には、市町村の障害福祉担当窓口にて、療育手帳記載事項変更届と手帳を提出して対応してもらいます。

なお、県内での移動と県外への転出で手続きが異なる場合があります。県外に転出する場合は、療育手帳県外転出届を提出した後、転入先の市町村にて別途手続きを行うというのが一般的な流れです。

住所や氏名の変更以外には、療育手帳を失くしたり壊したりした場合にも手続きが必要になります。顔写真など必要なものを用意して窓口で申請すると、療育手帳を再交付してもらえます。

18歳未満の場合は更新が必要になる場合がある

療育手帳に「次の判定月日」などの期限が記載されている場合は、期限が来る前に更新する必要があります。更新手続きのタイミングは自治体によって異なり、18歳未満の場合、2年ごとの更新が必要なケースが多く見られます。

通常、期限の約3ヶ月前から受付を開始しており、更新申請書や顔写真に手帳を添えて提出します。更新に必要な書類や手続きの詳細については、住んでいる市町村の担当窓口にて確認しましょう。

療育手帳取得のメリットは多い!代表的な4つのメリットを紹介

療育手帳を取得することで、疾患や障害の証明ができるため、さまざまなサービスを利用できます。また、生活や就労に関する必要な支援を受けられる上、税金控除や割引サービスの対象になります。ここでは、療育手帳を取得することで得られるメリットについて解説します。

1.障害者控除を受けられる

療育手帳を持っている人は「障害者控除」の対象であり、税金の控除を受けられます。障害者控除とは、納税者本人もしくは配偶者や扶養親族に障害がある場合、所得控除を受けられる制度です。

療育手帳の等級がA判定相当の場合、特別障害者として通常の障害者控除よりも多く控除される場合があります。

手帳を交付されている人が被扶養者の場合、扶養者の税金が控除対象です。また、給与所得を得ている人であれば、年末調整にて不要控除等の申告書を提出することで所得税や住民税の控除があります。

障害者控除の区分は、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3つです。療育手帳の等級がA相当の人は特別障害者として、より多くの障害者控除が受けられます。同居特別障害者とは、「納税者自身」「配偶者」「納税者と生計をともにする親族」のいずれかと同居する特別障害者のことです。

それぞれの控除額は、以下の通りです。

区分所得税控除額住民税控除額
障害者27万円26万円
特別障害者40万円30万円
同居特別障害者75万円53万円

2.自動車取得税の控除を受けられる

本人もしくは生計をともにする人が療育手帳の等級A相当の場合、自動車関連の税金の控除を受けられる可能性があります。例えば、障害を持つ本人が運転するための車や、障害を持つ人の通院や通学、通勤などのために使用する車を新しく取得する場合には、自動車取得税の減免が可能です。

すでに所有している自動車についても、障害を持つ人の移動手段として使う場合は申請することで自動車税の減免が受けられるケースがあります。これらは自治体によって対応が異なるため、詳細はお住まいの自治体に確認してみてください。

3.各種割引を受けられる

療育手帳を取得している人は、公共料金などの割引を受けられます。以下は、割引対象となるものの一例です。

  • 携帯電話の基本料金の割引
  • NHK受信料の割引
  • 博物館や映画館などの利用料金の割引
  • JRやバスなど公共交通機関の料金割引
  • 飛行機やタクシー利用時の割引
  • 映画館での割引

他にも、公営住宅の優先入居などが利用できるなど、多くの経済的なメリットがあります。

4.就職や仕事に関するサポートを受けやすい

療育手帳を持つ人は、就職や仕事に関する支援やサービスを受けることも可能です。代表例には、療育手帳を含む障害者手帳を持つ人向けの「障害者求人」への応募があります。

障害者求人は、障害のある人が働きやすくなるような配慮のある職場環境や業務内容の求人のことです。ハローワークで障害者求人を扱っており、障害者向けの窓口で相談が可能です。また、担当スタッフに面接対策や入社後のアフターフォローを依頼できる場合もあります。

就職に向けた訓練や講習の受講、リハビリテーション計画、職業適性検査といった、幅広い支援も用意されています。

これらの就職や仕事に関するサポートは、地域のハローワークや専門の機関で受けられます。療育手帳を持つ人のために就職関連のサポートを実施している機関を紹介しますので、支援を受けたいと考えている人はチェックしてみてください。

地域障害者職業センター

地域障害職業センターは、ハローワークと連携しながら障害を持つ人への専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。全国47都道府県に設置されていて、一人ひとりの希望や能力に合わせた支援計画の策定や職業準備講習、コミュニケーション能力向上のための支援などを行います。

また、利用者への支援だけでなく、地域の事業者に対しての支援や助言も実施しています。例えば事業者のニーズや雇用管理上の課題を分析し、障害者の雇用管理に関する専門的な援助を実施するのは、地域障害者職業センターの役割のひとつです。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害を持つ人の就業と日常生活に関する支援を行う機関です。就業支援と生活支援の2つを並行して行うのが特徴で、就業支援担当者と生活支援担当者がそれぞれ付いて一体的な支援を提供します。

就業支援として行われるのは、職業準備訓練や職場実習のあっせん、利用者の特性や能力に合った職務の選定や就職活動の支援などです。一方生活支援では、生活習慣の形成や自己管理に関する助言などを行います。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワーク(公共職業安定所)は、仕事を探している人や働き手を求めている事業者に対してさまざまなサービスを提供する機関です。全国のハローワークには障害を持つ人のための専門窓口が設置されていて、専門知識を持ったスタッフが担当となり支援を行っています。

履歴書の作成支援や面接指導といった就職支援から、就職後の職場定着支援まで、一貫したサポートを受けることが可能です。さまざまな支援機関や企業と連携しているので、働きたい職場での実習や個別の求人開拓などにも対応しています。

療育手帳取得のデメリットとは?

療育手帳を取得することで、考えられるデメリットは少ないですが、申請や更新などの手続きが面倒に感じられるかもしれません。申請や更新には自治体の障害福祉窓口で手続きが必要で、顔写真や申請書類などを用意する必要があります。窓口に行ったり書類を準備したりするのが大変だと感じる人もいるでしょう。

また、手帳取得により、周囲の人に障害があることが伝わることを不安に思う人もいるでしょう。実際には、自分から伝えなければ障害について伝わることはないので、安心してください。

療育手帳はいつでも返却可能

療育手帳の申請は任意であり、取得後に返納することも可能です。一度取得してみて、不要だと感じた場合には返還の手続きを取るという選択肢もあります。

なお、療育手帳を含む障害者手帳の返還には法的な規定があり、症状や特性がなくなった場合には返却するように定められています。手帳の変換には手数料などはかからず、市町村の担当窓口に返却の申請を行います。

療育手帳がなくても利用できるサービスもある

療育手帳がなくても、発達障害などの障害がある人が利用できる就業支援サービスも多数あります。Kaienが提供する「就労移行支援」もその1つです。

就労移行支援では、障害のある人が就職や仕事に関する支援を受けられるサービスです。就職に向けた職業訓練では、仕事に役立つスキルや就労に必要なマナーを身につけるためのプログラムに参加できます。

また、就職活動時の求人の選定や書類作成、面接を受ける前の準備などの選考フォローも用意されています。自分の障害をどのように職場に伝えるか、といった具体的な相談も可能です。

入社した後も、職場訪問などの定着支援により、長期的に安定して仕事を続けられるようにサポートが受けられます。就労移行支援については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ご参考ください。

就労移行支援とは?受けられる支援や利用方法をわかりやすく解説

そのほか、就労継続支援や就労定着支援なども療育手帳がなくても利用が可能です。就労継続支援は一般企業での就職が困難な人のための支援制度で、事業所と利用者が雇用契約を結ぶA型(雇用型)と、雇用契約を結ばないB型(非雇用型)があります。就労継続支援A型は地域の最低賃金以上の給料が支払われ、就労継続支援B型も作業に応じた工賃を受け取れます。

就労定着支援は、自立訓練や就労移行支援などを利用して就職した人を対象に、職場への定着を支援する制度です。利用者や就職した企業と面談や調整を行い、利用者が長く働けるようにサポートします。

療育手帳はさまざまな分野で活用できる

療育手帳は、知的障害を持つ人が取得できる障害者手帳の1つです。療育手帳を取得することで障害の証明となるだけでなく、税金の控除や公共料金の割引、就労に関するサービスを受けられるといったメリットがあります。

療育手帳には等級があり、判定結果によって分けられますが、運用する自治体によっては細分化されている場合があります。また、申請時の手続きや必要書類なども異なるため、住んでいる市町村の障害福祉担当窓口に直接確認しましょう。

Kaienでは、発達障害がある人に向けた就労支援や自立支援サービスを提供しています。利用を検討する人に向けて、オンラインでの説明会も随時開催していますので、ぜひお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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