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HOME 大人の発達障害Q&A 発達障害 「グレーゾーン」「傾向がある」の真意

発達障害 「グレーゾーン」「傾向がある」の真意病院で「グレーゾーン」と言われました。つまり発達障害ではないということですか?

 発達障害はしばしばスペクトラムと表現されます。はっきりした特徴からうっすらとした特徴まで様々に分布しているということです。一方で「病院でASD(自閉症スペクトラム障害)のグレーゾーンと言われました。グレーゾーンなので支援は受けられませんか?」や「ADHD(注意欠如多動性障害)傾向がある、と言われた私は結局のところ発達障害なのでしょうか?」など、はっきりしない見立てを受けた方の混乱が多いのも特徴と言えるでしょう。この記事では「グレーゾーン」が何を意味するのか、そして確定診断が下らず「傾向がある」と言われた場合の対処法について解説します。

 なぜ医師は曖昧な表現を使うのでしょうか?大きく分けて医者の発言の背景には二種類あると考えられます。

  1. 診断が下せなかった、あるいは診断を下すのに十分な根拠がなかった。
  2. 診断名をあいまいに告げることで、告知のショックを和らげたかった。

 以下で詳しく見ていきましょう。

発達障害の”重さ” “軽さ”を測る医学的基準はない

 まず発達障害の診断には、腫瘍マーカーやγ-GTPのような絶対的な数値基準が存在している訳ではありません。診断は日常生活や社会生活上の困難・生きづらさがある点を確認することで行われます。例えば現在診断基準とされるDSM-5でも、ご本人や周囲の理解を数値化・リスト化しているだけとも言えます。このため医師は断定を避け、「グレーゾーン」や「傾向がある」という表現をすることが多いようです。

 そもそも精神科や心療内科の医師にも得意・不得意があります。うつのアセスメントや治療が得意な医師や、子どもの精神領域が得意な医師などがたくさんいる中で、発達障害という精神医療領域はまだまだ少数派。このため発達障害の診断を自信をもって行える医師が少ないこともあるでしょう。

 発達障害の特性の出方は「スペクトラム=連続体」と言われるように、個々人により濃淡が様々です。同じ人であっても環境(つまりいる組織や置かれる状況)や年齢などにより変化します。すべての人がグレーという考え方も出来るほどですので、はっきりと言わない医師が多いのも頷けます。

ショックを和らげるための医師の心遣い

 二つ目の理由は、そうでなくとも日常生活で傷ついたり自信をなくしたりしていることの多い発達障害の方々に、しかも診断とともに明確な治療方法を提示できる訳でもないなら、せめて断言を避けることで与えるショックを軽くしよう、という医師の心遣いもあるでしょう。

 この心遣いは逆効果になることもあります。というのも、発達障害の特性を持った人は白黒つけて欲しい人が多いためです。傾向があると言われるとはっきりとせずに、かえって悩みが深まったということもしばしば聞く話です。

はっきり知りたいときは、曖昧な言い方ではなくて直截的な言い方のほうが有難いです、などと医師に伝えてみましょう。

「グレーゾーン/傾向がある」=「困難の程度が軽い」とは限らない

 では「グレーゾーン/傾向がある」と言われた当人は、それをどう受け止めたらいいのでしょうか。

 まず、発達障害の傾向とともに、他の精神障害の診断がはっきりついた方は、それらの二次障害の治療を優先させましょう。発達障害が原因で二次障害を起こすケースや、背後にある発達障害が大人になるまで未診断で、他の様々な精神疾患症状が診断されている、いわゆる”重ね着症候群”である場合もあります。一定期間の治療を経て効果が出ない場合は、より発達障害に詳しい医師や心理士、発達障害専門の就労支援施設などに相談されることをお勧めします。(なお重ね着症候群とは、様々な精神障害の困難が重ね着のように見られる人の場合もその着物をはいでいくと発達障害が根幹にあるケースがあるという状態のことを指します。)【参考】発達障害の二次障害

 また、「傾向がある」と言われて同時に薬(ストラテラやコンサータ)を勧められたり処方された場合は、実質的に少なくともADHDか、ADHDを併発しているという診断が下った、と考えていいでしょう。本来、その症状が確認されないとお薬を出されることはないからです。【参考】ADHDのお薬

 重要なのは、「グレーゾーン/傾向がある」という診断が、必ずしも当事者の生きづらさの「軽さ」を意味しない、という事実です。発達障害の特性が見えづらいために、かえって周囲からの理解が得られず、ご本人の苦しみはむしろ深いケースも意外に多いものです。ですから「グレーゾーン/傾向がある」程度なら放っておいていい、と即断するのは禁物で、困難や生きづらさがある場合は、なんらかの対策・支援が望まれます。

グレーゾーンは制度を利用するかしないか 本人に委ねられた状態とも

あるいは「グレーゾーン」「傾向がある」と言われた場合は、発達障害と自認して障害者手帳を申請したりお薬を飲んだりしてもよいし、工夫や努力を重ねて今の職場や生活を維持することを考えてもよいし、ご本人に委ねられている状態と考えることも出来ます。いわゆる普通に生きることも出来なくもないし、福祉制度などを利用して配慮を受けることも検討できるし、どちらの道とも医師が判断しにくい状態かもしれません。 つまり「診断しても良いけれども、あなたにそれが有利になるか不利になるか微妙なラインです」というメッセージだと考えられるわけです。多くのクリニックや病院では診察時間は一ヶ月に5~10分程度ですので医師だけに頼ろうとせず、ご家族や発達障害の専門家などに相談ができると良いでしょう。

なお、Kaienは発達障害専門の就労移行支援事業所ですが、必ずしも発達障害(自閉症スペクトラム、ADHD、LD、アスペルガー症候群、学習障害など)の診断名がついていなくても、発達障害の特徴があり、働きたいという意思があれば、ご利用いただくことは可能です。ただし就労移行支援サービスをご利用の際に申請する障害福祉サービス受給者証の手続きで医師の意見書(診断書など)が求められますのでご注意下さい。

【参考】1000人の支援実績 発達障害の方向けの職業訓練・就労支援