発達障害と睡眠障害 様々な症状とその対策発達障害の人の視点で議論してもらいました ~キスド会 2017年2月 開催報告~

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 在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは発達障害と睡眠障害。仕事や生活に深く関わる睡眠についてお話しました。

参加者の半分が睡眠障害を自覚

Aさん: 睡眠障害のことで検査に行ったんですけれども、3割の方がADHDを併発しているので検査してもよいかというからどうぞと言って問診を受けたらADHDと出ました。発達障害と睡眠障害って重なりやすいんですかね。自分は睡眠障害かなぁと思う人ってどのぐらいいますか?睡眠で苦しんでいる方、もしよろしければ手を挙げてもらえますか?

参加しているうち半分程度が手を挙げる

Aさん: 半分近いですね。

Bさん: 一口に睡眠障害といっても何が原因になっているかで対処法も異なると思うのですね。私も過眠なんですね。突発的に寝てしまうことがあります。不眠の人と過眠症の人、共通して治療できるものとしては光の治療器があると聞きました。ヨーロッパのものですが、北欧などでは白夜や極夜で季節性のうつというのが多いそうなんです。その治療で光が使われているらしいので、機材に頼るということもありますよね。あとは食事などにも気を付けながら睡眠にも影響するホルモンを増やすこともあると思います。私は突発的に寝てしまうことでナルコレプシーの治療薬を出されています。どうしても無理な時はお薬に頼っています。そもそも根本的に悩みがいろいろあっては寝られないと思うので、そういうところを取り除いてよいのか、と考えたほうが良い方もいるでしょうね。

Cさん: 自分は4時とか5時まで寝られないことがよくありました。何かを考えて寝られないというパターンでした。でもある時、加湿器とか扇風機の音があると寝やすいということがわかったんです。考え過ぎてしまうことを上手に妨ぐという効果なんだと思います。なので最近はiPhoneのアプリでそういう音を出してくれるのがあって使っています。ぐっすり寝られることが増えてきました。

スタッフ: 扇風機の音を出してくれるのですか?

Cさん: それはいろいろな音を選択できます。水滴の音とか。水滴の音プラスで寝やすい音を出してくれるらしいんですよ。自分の場合はそれだとすごく寝られます。

スタッフ: あまり静かすぎてもいけない、ということなんですね。

睡眠導入剤は効く効かない?

Dさん: 僕は5年前、発達障害と診断を受ける前にうつ状態になって寝られなくなったことがあります。そのときは睡眠薬を使って、寝ていました。僕もその時は心配事がずっと頭から離れなくて、布団の中に入ってもずっと考えてしまって、睡眠障害と心配事が同時に発生してしまいました。睡眠薬は最初服薬にかなり抵抗ありましたが、僕の場合は飲めば必ず眠れたので救いにはなりました。

Eさん: 私は高校生ぐらいの時から、規則正しい生活を送らないといけないという強迫観念が強く出すぎてしまって、5・6年睡眠薬を飲んでいました。睡眠導入剤を飲んでもちょっと自分で努力しないといけないと思っています。睡眠導入剤飲んで大丈夫だからテレビ見ようでは眠くならなくて、部屋を暗くして静かにしてやっと効くかなぁぐらいな感じですね。もしかしたら薬に慣れてしまって効くものも効かなくなったのかもしれません。それで試しているのが筋弛緩法とメディテーション。それでもひどいときはやっぱり寝られない。

Fさん: 僕も睡眠導入剤使っています。ただ最近は薬に慣れて、慣れてしまうと効かない状況。睡眠薬を飲むと脱力感があってすぐ横になりたくなるのですけれども、頭だけはさえていて、ずっと同じことを考えて寝られないことが続いていた時期もあります。悩みがなくなったら解決するかと思ったのですが、悩みがない時期は意外とそうでもない。結局3時4時まで起きて、3時間ぐらいしか寝られなくて、疲れ果てた状態で朝起きるという感じが結構続いています。悩みがあると寝られないこともありますが、悩みだけではなさそうな、根本的なサイクルがあっていないのではないかなと考えているところですね。

不眠ではなく過眠ならではの悩み

Gさん: 私の症状は過眠です。12時間ぐらい寝てしまいます。悩みでとか、考え事が止まらなくて眠れないというのはそんなにありませんでした。ただ毎日早く寝ても寝坊してしまう。なので小さいころから親から怒られていました。努力不足ということを言われ続けています。先天的にいろいろ悩みがあってというよりは、寝すぎてしまうという問題で怒られて、後天的に眠られなくなっていくということがあったと思います。不眠ならば病気と受け取られやすいかもしれないのですけれども、過眠だと甘えと思われやすいと思うので、周りの受け取り方とか反応の仕方もかかわってくるかなぁと思っています。

Dさん: 12時間、目も覚まさず寝られるんですか?

Gさん: 私の場合はずーっとですね。小学生のときとかによる8時に寝て、7時に起きないと学校間に合わなかったのですけれども、寝たら次の瞬間は朝8時みたいな感じ。

Dさん: 小学校の時だったら健康的でよいと思われるかもしれないですけれどもね。

Gさん: ずーっと大人になっても続いていたので…。今はコンサータとかのおかげで頑張って起きているという感じですね。

Fさん: 私も学生の頃とか生活上問題がないときは12時間寝ていました。普通の人は24時間のうち7~8時間寝てちょうどよいと思うのですけれども、私の場合は12時間寝て、その後24時間起きて、また12時間寝て、という感じで1日のサイクルは1.5とか2日になるとちょうどよいです。社会人になってからはそういう生活は無理なので、最初のうちはかなりサイクルを直すのに苦労しました。でも今でもストレスがかかってくると悩み事が多くなって寝られなくなって、3時4時まで起きていることも多くあります。睡眠不足で会社に行って昼休みはなぜかすぐに寝られるんですけれども、夜だけ寝られなくて、昼休み1時間寝ないと体が動かない状況になります。もし昼休み寝られない職場に行ったら結構きついなと思います。

概日リズム障害 1日のリズムがほかの人と違う

Hさん: 私も同じ傾向があって、概日(がいじつ)リズム障害だと思っています。子どもの時から学校から帰ってくると寝ちゃって、夜起きていろいろなことをして、朝方また寝てという感じ。結局学校行かないといけないじゃないですか。そのために朝頑張って起きるのですけれども、お昼ぐらいになると眠くて眠くて仕方がない感じで生活を送っていました。

Bさん: 概日リズム障害って何ですか?

Hさん: 決まった時間に体と脳が起きてまた眠くなるというサークルがうまく回っていないということです。

スタッフ: それは睡眠以外にも空腹を感じるタイミングとかもずれていくということですか?

Hさん: はい。いろいろずれます。ネットで検索したらADHDと重なりやすいらしくて、それ知って気持ち的には軽くなりました。でも別の問題もあります。悩みがあると眠れなくなるというお話を皆さんされているじゃないですか。私は逆で悩みがあると考えるのをやめるためにひたすら眠るのですね。16時間とか20時間とか寝続けてしまうので、真逆のパターンだなぁと思っています。そういうのも困りますね。対人の仕事をしているのでストレスは大きいんですね。

Iさん: 僕は夜寝付けない時に、ひたすらゲームをやるんですね。いやなことを一切考えずゲームに没頭できるのと、自然と部屋も寝る体勢で暗くなってベッドに入っているので、自然と眠りやすい。いやなことを考えずに自然と寝ているという感じになりますので、僕の場合としては一つの方法になっています。

スタッフ: ちょっと不思議な療法ですけれどもね。ゲームによって目が冴える人もいると思いますが、Iさんの場合はむしろ安心して、結果的にポジティブな効果をもたらしているのでしょうね。

Hさん: 私も一つはまっているゲームがあります。それを夜寝る前とか決まった時間にやるようにしたら、安心するのかすこっと寝られるようになりました。その時間にログインすると体力のゲージが上がることもあって、その時間に合わせてゲームをしていたら、安心して寝ちゃうみたいなパターンもあります。

Jさん: 自分は逆で不安になって逃避的にゲームをすると、時間管理ができないのと、夢中になりすぎちゃうので、結局眠れなくなるパターンがあります。障害というよりは自分の努力不足かもしれないですが…。

スタッフ: 夜の寝るまでの準備が先送り癖のような形でダラダラしてしまって、寝ることが遅くなっちゃうということですかね。ADHDの方がよくおっしゃる状態ですね。発達障害の人はほかにも明かりや音への感覚過敏で寝づらいという人も多いですし、理由も様々、対策も様々というのは納得です。NHKの調査では現在の日本人の睡眠時間は、平均で7時間15分。一方で1970年、つまり50年ぐらい前は8時間ぐらい寝ていた。日本人の睡眠時間が45分ぐらい短くなっているのは確からしいです。その短い睡眠になってきているという世の中の流れに発達障害のある傾向の人はなかなか追いつけていないのでしょう。

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監修者コメント

人間は群れで暮らす動物なので、外敵から身を守るためにも、様々な睡眠パターンを持つ人間が必要でした。極端に朝方のタイプ、朝方のタイプ、いわゆる普通のタイプ、夜型のタイプ、極端に夜型のタイプ、昼夜逆転しているタイプ、いずれにも当てはまらない不規則タイプ…。そういう様々なタイプの人たちが協力しあって、村の防衛にあたっていたんですよね。

しかし、19世紀の産業革命以後、人類は時計とともに暮らさねばならないようになりました。皆が同じ時間に起きて、同じ時間を働き、同じ時間に眠らなくてはならなくなりました。そうなった途端、これまでは珍しいタイプとして村の防衛に一役をかっていた、昼夜逆転タイプや極端な朝型、夜型タイプが迫害されるようになってしまいました…

ちょっと極端かもしれませんが、世の中の変化に対応しきれていない発達障害の人は多いと思います。睡眠薬や生活習慣の是正などで、生活の困難を軽減することも可能ですので、医療が助けになりやすい部分かもしれません。あなたにあった解決策を一緒に探していきましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修 : 益田 裕介 (医師)

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