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仕事が遅い場合の対策は ADHDで処理速度・知覚統合が低めWAIS(知能検査)の分析あり! 発達障害の特性理解と適職へのアプローチADHD仕事

 仕事が遅くて困っている方の中に、発達障害の特徴がある方は多いのは確かです。この記事ではADHD傾向のある発達障害の方のお悩みをもとに、なぜ努力をしても仕事が遅いのかを分析するとともに、診断や特徴をどのように受け止めるべきかを考えていきます。

少し変わった女の子 勉強はできるタイプ

 Aさんは勉強はとてもできたものの、工作などでやや不器用なところが目立ったり、体育が全般に不得手だったりと、学校では苦手な教科もありました。忘れ物が多かったり、いつもどこかにアザを作っていたり(不注意で色々な物にぶつかってしまっていたり)、時々不思議な発言をするので周囲の人に笑われたりはありました。でも大きな困り感はさほど感じることなく進級していきました。大学は福祉学部を選択。ほんわかした自分に介護の世界があっている気がしていました。

 実際、大学でも単位取得にはあまり困りませんでした。少し不安だったのは実習。介護の実習では動きが他の人に比べて鈍かったり、指示にすぐに反応できなかったり、状況をすぐに飲み込めず頭が真っ白になってしまったり…。「そういえばコンビニのアルバイトでも仕事のペースが速すぎて数ヶ月で辞めてしまったし」と心配に思うこともありましたが、慣れれば他の人と同じぐらい働けると思い直していました。

就職先で不安的中 仕事の遅さが他の悩みにもつながる

 不安が的中したのは就職先の社会福祉法人。介護の現場は思っていたほどほんわかとしていませんでした。むしろ日々何が起こるかわからず、自分だけが立ち尽くしている気がします。周囲はお年寄りと楽しそうに話をしています。どうして自分だけが出来ないのだろうと焦りが募りました。

 作業の遅さが何よりも辛い。他の人は定時で仕事が終わるのに、自分だけは人の何倍も時間がかかる気がします。作業を習熟するうちに少しはまともになりましたが、それでも残業しないと仕事が終わらない日々が続きました。疲れを感じづらい体質なのか、頑張るだけ頑張った後に、倒れてシフトに穴を開けてしまうことも何回も出てきました。上司や同僚には仕事が遅いことを努力が足りないと責め立られます。精神的にも肉体的にも参ってしまいました。

自分は作業速度が遅いんだとWAISで気づく

 周囲の勧めもあって休職。何度か心療内科に通ううちに医師から「Aさんは少し能力に凸凹がありそうだから、検査を受けてみませんか」とすすめられました。アドバイスどおりにWAISを受けたところ、下のような結果が届きました。

 医師からは「言語理解は高いから勉強もできたでしょう。仕事でも特にマニュアルになっていると間違えなく作業が出来る方です」と得意な部分を説明された一方で、「知覚統合が低いのは、もしかしたら介護の作業の流れの中で次に何をするかとか暗黙の了解を理解しながら先回りして動くのが苦手かもしれない」「作業速度が低めなので、一生懸命に処理をしようとしてもどうしても周囲よりも遅くなってしまうことがありそうですね」と教えられました。

 どうしてそんなに分かるのだろう…。Aさんは医師の分析に驚くとともに、今の仕事が自分の特徴にまったくあっていないと言われた気がして、目の前が真っ暗になった気がしました。診断をつけるのが目的ではないとはいわれましたが、医師からは「発達障害のグレーゾーンと思われ、自閉症スペクトラムというよりも状態的には不注意優勢型のADHDに近いかもしれません」と言われました。

仕事が終わらなかった理由は2つ

 医師からも語られたように、Aさんが残業続きになったのは、本人の努力不足ではなく、他のところに原因がありました。WAISから読み取れるのは2つです。

  1. 処理速度が遅いので、作業そのものが遅い
  2. 知覚統合が弱いので、作業の理解・把握が遅い(→動き始めが遅くなる、理解に時間がかかる)

 重要なのは2で書いたとおり、作業に取り掛かるのが遅いことに課題がありそうな点です。2については周囲の配慮や環境調整で支援しやすい部分になります。1の処理速度だけに目が行くと対策が取れなさそうですが、2も組み合わされているところがポイントになります。

 なお気をつけていただきたいのは、WAISの結果から行動が予測できるわけではないことです。つまり同じWAISの数字の人でも同じ長所短所があるわけではありません。逆にある行動の背景を分析していく時にWAISに書いてあることが理由として納得できるということはありえます。

復職か退職か 専門家と二人三脚で自分の得意を活かせる方法を探す

 ではAさんにはどのような選択肢があるのでしょうか?

 まずまったく何も変えずに復職するのは危険でしょう。周囲もAさんのスピードの遅さや理解のゆっくりな部分を責め続ける可能性が高いからです。一方で障害が認められるからと言ってすぐに障害者雇用を考えるのも性急すぎるでしょう。

 大事なのは一人で決めないことです。発達障害の方は自分を客観的に分析するのが苦手な場合が多く、長所や短所に気づきにくい(自分が思っている長所短所と違い評価を周囲がしている場合が多い)のが特徴です。このため特性を把握した上で適職を考えていくプロセスは専門家の支援を仰いだほうが良いでしょう。下の二つの選択肢はいずれも正解になりえます。

  1. 復職する。ただし自分の苦手を伝えて、配慮してもらう。特に作業の指示をわかりやすくしてもらう
    → 事前に医療のリワークなどを受けることで自分の得意苦手を把握し、対策を立てる。また配慮してほしい点を伝える。
  2. 退職する。介護の現場は会社を変えても苦手さが残りそうなので早めに他の職種を考える。
    → 就労移行支援などで自分の特徴をじっくりと把握して、真面目でおっとりとした性格が活かせる環境や、言語理解の高さやワーキングメモリー(作動記憶)の高さなどが活かせる仕事を探していく。いずれにせよ長所を活かせる仕事を考える。

 ご本人の気力、体力の回復度、精神的なタフネスさ、現職の忙しさ、上長や人事の理解度、ご家族のサポート状況などによって、2の場合では障害者枠を最終的にお勧めすることもあるでしょう。一般雇用と障害者雇用で優劣はありません。ご本人がいかに前向きに働けるかを考えていく過程で、制度を頼って障害者枠が良い場合もあるでしょう。あるいは数年後には支援を受ける可能性を残しつつ、短期的には復職をしてうまく行かなかった時に障害者枠などを考えるのも一手です。