障害者雇用におけるAI活用法とは?代表的なツールや注意点、よくある質問を紹介

公開: 2025.7.16

就活は自己分析や企業研究、面接対策など、やるべきことが多く、特に障害のある方にとっては大きな負担となります。そんなときに頼れるのが「AIツール」です。AIを上手に使えば効率的に準備を進められ、アドバイスやサポートを受けることで不安も和らぎます。

この記事では、障害者雇用におけるAI活用法や注意点をわかりやすく解説します。就活にAIを活用したいと考えている方は、ぜひチェックしてみてください。

AIツールとは?就職活動で活用できる代表的なツールを紹介

AIツールとは、人工知能を使って文章作成やデータ分析、画像生成などをサポートするツールのことです。これにより、人の手作業よりも効率的にさまざまな作業を進められます。

AIツールは勉強や仕事のほか、就職活動にも活用が可能です。例えば、履歴書や職務経歴書の添削、面接のやりとりのシミュレーション、志望動機のブラッシュアップなど、さまざまな活用法があります。

こうした就活対策には、AIに質問を入力することで、回答がもらえる対話型のAIツールがおすすめです。代表的なツールには、「ChatGPT」「Gemini」「Microsoft Copilot」などがあります。

AIツール・デジタルツールが障害者雇用に与える影響

近年、AIツールやデジタルツールの活用が進んでおり、障害者雇用の現場にも広がりを見せています。こうしたツールの普及は、決してマイナスなものではありません。むしろ、働きやすい環境づくりや、個々に合ったサポート体制の強化といった、プラスの影響をもたらしています。

ここでは、AIツール・デジタルツールが障害者雇用に与える具体的な影響について、詳しく見ていきましょう。

業務の効率性や正確性の向上

障害者を雇用している企業へのアンケート調査によると、デジタル化の進展が障害者雇用に与える影響について、「今後プラスの影響がある」と回答した企業は一般企業で約4割、特例子会社では約半数にのぼりました。

具体的には、「デジタル化によって業務の効率性や正確性が向上した」と回答した企業の割合が高く、特に特例子会社では「より高度な業務に従事できるようになった」という意見も多く見られます。AIツールやデジタルツールの活用による効率性や正確性の向上は、障害者の活躍の場を広げる大きな後押しになっているといえるでしょう。

参考:AI 等の技術進展に伴う障害者の職域変化等に関する調査研究

障害特性にあわせたサポート

AIツールやデジタルツールを活用すると、障害の特性に応じたきめ細やかな支援が可能になります。ここでは、発達障害*を例に具体的な活用方法を見ていきましょう。

メンタルヘルス支援

発達障害のある方の中には、不安やストレスを感じやすい傾向のある方も少なくありません。就職活動や仕事で不安になったときには、AIツールを「相談相手」として活用できます。

AIは24時間365日いつでも利用可能で、すぐに反応してくれる点が大きなメリットです。例えば、考えがまとまらないときに気持ちをAIに吐き出すことで、思考を整理する手助けになります。さらに、ストレスを感じたときの対処法や、落ち着くための行動アドバイスなども受けられます。

また、「こんな相談をしたらどう思われるだろう」といった不安を感じにくいのもAIの特徴です。人には話しづらい内容でも気軽に相談しやすく、心理的なハードルが低いことから、継続的なメンタルサポートに役立ちます。

コミュニケーション支援

AIツールは文章の添削や会話のシミュレーション、言葉に含まれるニュアンスの解説といった使い方が可能です。こうした使い方は、発達障害のある方にとって、対人関係や言語表現の不安を和らげるための支援になります。

例えば、「この指示を受けたとき、どう返事すべき?」「この上司の言葉にはどんな意図がある?」といった質問をAIに投げかければ、具体的なアドバイスやヒントをもらえます。実際の会話や対応に活かしやすく、コミュニケーションへの自信にもつながるでしょう。

また、挨拶や面接など特定のシーンを想定した会話の練習も可能です。さらに、メールや履歴書、議事録といったビジネス文書においても、文章構成や語彙の選び方などを相談できます。単なる文法の添削だけでなく、「相手に伝わりやすい表現かどうか」までアドバイスを受けられる点も、AIツールの大きな強みです。

作業支援

AIツールは情報の整理も得意としており、タスクやスケジュールの管理にも適しています。発達障害のある方の中には、計画を立てて物事を進めるための「実行機能」に困難を抱えている方も少なくありません。実行機能に障害があると、「スケジュール通りに行動できない」「やるべきことと別の作業を始めてしまう」「想定外の出来事にうまく対応できない」といった悩みが生じることがあります。

こうした困りごとに対して、AIは次のようなサポートが可能です。

  • 大きな業務を細分化してToDoリストを作成する
  • タスクに優先順位をつけて整理する
  • リマインダーを設定して次の向上を促す
  • トラブル発生時に状況整理と具体的な対応策を提示する

このように、AIは目の前のタスクを整理する手助けとなり、仕事に取り組みやすくなります。

AIの活用でできる障害者雇用の就活対策とは?

障害者雇用を目指す方は、就職活動にAIを積極的に取り入れてみてください。具体的には、次のような活用法が挙げられます。

  • 自己分析や自己理解
  • 自分にあった求人情報の収集
  • 業界研究や企業研究
  • 履歴書やエントリーシートの作成
  • 面接練習や面接対策

それぞれの活用法について、以下で詳しく見ていきましょう。

自己分析や自己理解

AIを活用すれば、自己分析や自己理解をより深めることができます。

まずは「これまでの経験や得意なことをAIに伝えて分析してもらう」方法です。例えば、学生時代の活動や成功体験を入力すると、AIがあなたの強みや特性をわかりやすく整理してくれます。

次に、「AIからの質問に答えて特性を明確にする」方法もおすすめです。AIに「対話形式で自己分析を進めたい」といった指示を出すと、「どんなときにやりがいを感じますか?」「苦手だと感じる作業は?」などの質問を投げかけてくれます。これに答えていくことで、自分の価値観や適性を整理できるでしょう。

どちらの方法も、自分ひとりでは気づきにくい視点を引き出せるのがメリットです。

自分にあった求人情報の収集

AIを活用すると、自分に合った求人情報の収集も効率的に進められます。例えば、自分の得意分野や希望条件を入力し、「障害者雇用を実施している業界で、自分の特性にあいそうな職種を教えて」といった指示を出すと、候補となる業界や職種を提案してもらえます。

また、「どんな業界が障害者雇用に積極的か」「希望条件に近い業界はどこか」といった質問にも対応可能です。志望業界や職種に悩んでいる方は、ぜひ活用してみてください。

ただし、AIから最新の求人情報を得るのは難しいため、まずはAIで就活の方向性を絞り込み、その上で就労支援機関や求人サイトなどを活用して実際の求人を調べるのがおすすめです。

業界研究や企業研究

業界や企業について深く理解することは、志望動機を明確にする上でとても大切です。AIを活用すれば、「この業界はどんな特徴がある?」「障害者雇用に力を入れている企業は?」といった質問に対し、情報をわかりやすく整理して教えてくれます。

また、企業のIR資料やプレスリリースなどを読み込ませて要約させることも可能です。事業内容や経営方針を理解しやすくなり、自分にあっているかどうかを判断しやすくなるでしょう。AIを使うと短時間で多くの情報を把握できるため、効率よく業界研究・企業研究を進められます。

履歴書やエントリーシートの作成

履歴書やエントリーシートの作成にも、AIの活用がおすすめです。例えば、自己PRや志望動機を入力すれば、読みやすく自然な文章に整えてくれます。表現の修正や誤字脱字のチェックも行えるため、自信を持って提出できる内容に仕上がるでしょう。

さらに、「自分の経験をどうアピールすればいいかわからない」という場合も、AIに相談することで強みや適性を整理してくれます。記入に迷う項目への具体的なアドバイスも得られるので、応募書類全体の完成度が高まりますよ。

面接練習や面接対策

就活の面接に不安を感じている方も多いでしょう。そんなときは、AIを使った面接練習や対策に取り組むのがおすすめです。

例えば、「障害者雇用の面接でよくある質問を教えて」といった指示を出すと、想定される質問リストをすぐに作成してくれます。また、チャット形式で模擬面接を行い、回答内容をAIに添削してもらえば、表現の工夫や伝え方の課題を見つけられます。

このようにAIで面接対策を積んでおくと、本番でも落ち着いて自分らしく話せるようになるでしょう。

AIを就活対策に使うときの注意点

AIはとても便利なツールで就活にも活用できますが、利用する際は以下の点に注意してください。

  • 情報の正確性を必ず確認する
  • AIが生成した内容をそのまま流用しない
  • 個人情報の扱いには気をつける
  • 目的にあったツールを導入する
  • 自身の感覚やリアルな情報も大切にする
  • AIへの依存に気をつける

上記6つの注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。

情報の正確性を必ず確認する

AIはとても便利なツールですが、その回答が常に正確というわけではありません。求人情報や企業データなどは日々更新されているため、AIが出力した内容を鵜呑みにせず、最新の公式情報と照らし合わせることが大切です。

また、AIはあなた自身の障害特性や環境の細かい背景まで把握しているわけではありません。そのため、障害者雇用に知見のある支援者や医療機関に通院中なら主治医などの意見も参考にしましょう。

AIが生成した内容をそのまま流用しない

AIが生成する文章には、不自然な表現や事実と異なる内容が含まれることがあります。そのため、エントリーシートや履歴書、面接の回答などにAIが生成した内容をそのまま流用しないように注意してください。

AIはあくまで下書きやヒントとして使い、自分自身の言葉や経験を反映させて文章を整えましょう。そうすることで、より説得力があり、自分らしさが伝わる応募書類や回答に仕上がります。

個人情報の扱いには気をつける

AIツールの中には、入力された内容を学習データとして利用するものがあります。就活で扱う書類には、氏名・住所・障害の内容など、センシティブな情報が多く含まれるため、これらを不用意に入力しないよう注意しましょう。

自己分析や応募書類の添削を依頼する際も、詳細な個人情報ではなく、概要や要点だけを伝えるようにしてください。また、信頼できる企業が提供するAIツールを選ぶことも大切です。

目的にあったツールを導入する

AIツールには、文章生成に特化したもの、会話シミュレーションが得意なもの、データ整理に優れたものなど、さまざまな種類があります。就活対策に活用する際は、「何のために使いたいのか」を明確にし、自分の目的に合ったツールを選びましょう。

幅広い用途に使える汎用的な文章生成AIから、就活サイトが提供する面接対策のAIツールまで、多くのツールが提供されているため、用途に応じて使い分けるのがおすすめです。

自身の感覚やリアルな情報も大切にする

AIを活用すると効率的に情報収集を進められますが、自分自身の感覚や実際に働いている人の声など、リアルな情報も大切にしましょう。AIが提供する情報や提案はあくまで参考とし、内容を過信しすぎないようにしてください。

例えば、「AIはこの業種をおすすめしているけど、企業説明会に行っても興味が持てなかった」といった場合には、無理に選考に進む必要はありません。最終的には自分の直感や納得感を信じて方向性を決めることが、後悔しない就活につながります。

AIへの依存に気をつける

AIは就職活動を効率化してくれる便利なツールですが、「AIがいればすべて解決できる」と依存してしまうのは危険です。AIに頼りすぎると人との関わりが減って孤立を招いたり、自ら考える力が衰えてしまったりする可能性があります。

あくまでAIはサポート役として、適切な距離感を保ちながら活用することが大切です。AIだけに限らない話ではありますが、依存しすぎず、自分自身の判断や感覚を大切にし、バランスの取れた使い方を心がけましょう。

AIによる就活対策に関するよくある質問

AIを就活に活用できると聞くと、「どこまで使ってもいいの?」「企業にばれたりしないの?」といった疑問が浮かんでくると思います。ここでは、AIによる就活対策に関するよくある質問に回答するので、気になるポイントがある方はぜひチェックしてみてください。

AIはどこまで就活に使ってもよい?

就活において、「どこまでAIを使ってよいか」という明確なルールがあるわけではありません。大切なのは、AIから得た情報や提案はあくまで「参考」として活用することです。AIを活用する際は、自分自身で情報の真偽を確かめたり、自分の言葉で考えたりする姿勢が求められます。

例えば、履歴書や面接でAIが作成した文章をそのまま使用するのは避けましょう。AIが生成した内容に自分の経験や価値観を反映させて表現を工夫することで、より魅力的で説得力のあるアピールができるようになります。

AIを使うと企業にばれる?

AIの使い方によっては、企業に「AI任せでは?」と気づかれ、評価を下げてしまうリスクがあります。例えば、AIが生成した文章をそのままエントリーシートに流用すると、「独自性に欠ける」「質問の意図とズレている」といった印象を与えかねません。

AIを使うこと自体は問題ありませんが、そのまま引用するのは避けましょう。これは、就活本や就活情報サイトなどを活用する場合でも同じことが言えます。これらはあくまでたたき台や参考情報として使い、自分の体験や言葉を加えてオリジナリティを出すことが大切です。

自分なりにアレンジした内容は他の応募者との差別化につながり、採用担当者の心に響きやすくなります。AIは便利なツールですが、活用方法を間違えると逆効果になってしまうため、注意しましょう。

無料で使えるAIツールはある?

無料で使えるAIツールは多くあり、代表的なものとして「ChatGPT」「Google Gemini」「Notion AI」などが挙げられます。

まずは、気になるツールを実際に使ってみるのがおすすめです。無料ツールでも文章の添削やアイデア整理、自己分析などに十分活用できるので、まずは自分に合ったツール探しから始めてみてください。

AIがあれば支援機関は必要ない?

AIは非常に便利なツールですが、就活のすべてを任せられるわけではなく、誤った情報を生成することもあります。また、個別の事情や感情に寄り添った対応は苦手で、「AIがあれば支援機関は必要ない」とは言い切れません。

AIを就活に活用する際は、支援機関の専門家によるサポートと併用することが重要です。AIはあくまで補助的な役割として活用し、必要に応じて専門家の力を借りることで、より安心して就活を進められます。

発達障害の人向けのおすすめの使い方は?

発達障害の人は、AIツールをコミュニケーションの練習相手として使ったり、タスクやスケジュール管理に活用するのがおすすめです。

対話型のAIは、面接での受け答えや日常会話の練習相手として活用できます。特定のテーマについて話す練習をしたり、自分の考えや感情を言語化する手伝いをしてもらったり、さまざまな使い方が可能です。

また、「就活を始めたいけれど何から手をつければいいかわからない」「先延ばしグセがある」といった場合には、AIに「就活のタスクを細分化して、優先順位と期限を設定して」と依頼すると、実行しやすい形で整理してもらえます。

AIを障害者雇用の対策にうまく活用しよう

AIツールは、障害者雇用における就職活動をサポートしてくれる心強い味方です。自己分析や業界研究、面接対策などさまざまな場面で活用できるため、ぜひ取り入れてみましょう。

ただし、AIはあくまで補助的なツールです。すべてを鵜呑みにするのではなく、情報の正確性を確認し、自分の考えや経験を反映させることを意識しましょう。AIをうまく活用しながら、必要に応じて支援機関や専門家のサポートを受けることで、より自分にあった職場を見つけやすくなります。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

サービスについて詳しく知りたい方はこちら
就職を目指す方
就労移行支援
自立を目指す方
自立訓練(生活訓練)
復職を目指す方
リワーク(復職支援)
学生向けの就活サークル
ガクプロ(学生向け)