
仕事や人間関係などに困りごとや支障が出ているとき、「自分はASD(自閉スペクトラム症)かもしれない」と悩む方もいるかもしれません。発達障害*の一種であるASD(自閉スペクトラム症)にはいくつかの特性があり、仕事上の困りごとにつながる場合もあります。ASD(自閉スペクトラム症)の可能性がある場合、正式に診断を受けたうえで然るべき対策を講じることが大切です。
この記事では、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴や症状、診断方法などを解説します。特性への対処法についても紹介しているので、困りごとのある方は参考にしてみてください。
目次
大人のASD(自閉スペクトラム症)とは
ASD(自閉スペクトラム症)は、生まれつきの脳の特性によって生じる発達障害の一つで、対人関係やコミュニケーションに困難を抱えやすく、強いこだわりが見られるのが特徴です。
たとえば、相手の気持ちや場の空気を読み取るのが難しい、冗談を文字通りに受け取る、自分の考えをうまく伝えられないといったケースがあります。また、決まった手順やルールに強くこだわったり、好きなことに深く没頭したりする傾向もあります。
「スペクトラム(境界線がはっきりせず連続的に変化する状態)」という言葉が示すように、特性のあらわれ方や強さは人によってさまざまです。
子どもの頃に、発覚するケースが多いものの、子どもの頃には見過ごされ、大人になって社会生活や人間関係において困難を抱え、初めて気づく場合があります。
大人になってからASD(自閉スペクトラム症)と診断されることはある?
大人になってからASD(自閉スペクトラム症)と診断されるケースは、決して珍しくありません。
子どもの頃は、コミュニケーションがうまくできなかったり、自分なりのルールにこだわったりしても、「マイペースな性格」や「個性的な子」と受け止められることがよくあります。また、親や学校の先生など周囲の理解やサポートにより、日常生活に大きな支障が出ずに過ごせる場合もあります。
しかし、大人になると、社会生活では、職場でのルール遵守や、相手の気持ち・場の空気を読む力などが求められるようになります。そうした場合にうまく対応できず、仕事や人間関係にさまざまな悩みを抱えて医療機関を受診し、初めてASD(自閉スペクトラム症)と診断される場合があります。
大人のASD(自閉スペクトラム症)の診断方法
ASD(自閉スペクトラム症)の診断には、米国精神医学会が発行する「DSM-5-TR(精神障害の診断・統計マニュアル)」がよく用いられます。
主な基準は以下の通りです。
- 複数の状況で社会的コミュニケーションや対人関係に持続的な困難がある
- 行動や興味、活動に限定的・反復的な特徴が2つ以上見られる
- 上記の症状が初期の発達段階で見られる
- 上記の症状で日常生活や社会生活に支障をきたしている
- 知的障害や全体的な発達の遅れでは説明ができない
また、診断時には、知的障害や言語障害の有無、ADHD(注意欠如多動症)やSLD/LD(限局性学習症/学習障害)の併存も確認されます。
詳しい診断方法については、下記の記事を参照してください。
関連記事:大人のASD(自閉スペクトラム症)は治療で改善する?原因や症状、対処法を解説
大人のASD(自閉スペクトラム症)のセルフチェック
大人のASD(自閉スペクトラム症)の気づきの一助として、「RAADS-14」という自己記入式のチェックリストがあります。
「相手の気持ちが分かりにくい」「騒音がつらい」「急な変化に弱い」などの全14問の質問に答えると、ASD(自閉スペクトラム症)の疑い度がわかる仕組みになっています。こうしたセルフチェックによって、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴に気づくきっかけにもなるでしょう。
ただし、セルフチェックはあくまで参考にすぎません。結果にかかわらず、気になる点があれば自己判断で終わらせず、必ず精神科医などの専門家の診断を受けるようにしましょう。
セルフチェックの方法について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
関連記事:ASDの診断テストとは?セルフチェックの方法と診断基準
大人のASD(自閉スペクトラム症)の特徴と症状
「自分はASD(自閉スペクトラム症)かもしれない」と感じている方は、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴や症状を知ることで自己理解が深まり、対策を講じられるようになるかもしれません。
ここからは、ASD(自閉スペクトラム症)の主な特徴と症状について6つの項目に分けて解説します。
暗黙のルールがわからない
暗黙のルールがわからないというのも、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴の一つです。
暗黙のルールとは、言葉で明示されていなくても、集団の中で当然のように共有されている決まりごとを意味します。たとえば「適切なタイミングで報告する」「忙しそうな人には声をかけない」など、職場で“言わなくてもわかる”とされる行動がそれにあたります。こうしたルールを自然に実行するのに、ASDのある人は困難を感じやすいといえるでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、非言語的なサインや言葉の裏にある意図を読み取るのが難しいといった特性があります。そのため、言語化されていないルールを察して行動することが難しく、周囲とのすれ違いや誤解を招きやすいといえます。
相手の気持ちを理解するのが難しい
ASD(自閉スペクトラム症)の方には、相手の気持ちを理解するのが難しいといった特徴も見られます。
背景には、他者の心の動きを推測し理解する“心の理論”と呼ばれる能力が十分に働きにくいことがあると考えられています。ASD(自閉スペクトラム症)の方は、言葉を文字通りに受け取りやすく、冗談や皮肉が理解しにくい傾向があります。また、表情や身振りといった非言語的なサインから相手の感情を読み取るのも得意ではありません。相手の立場に立って考えられずに、思ったことをそのまま発言してしまうケースもよくあります。
そのため、「空気が読めない」「無神経」「自分勝手」と誤解されやすく、対人関係やコミュニケーションに悩みを抱えるケースも少なくありません。
こだわりが強い
自分が心地よいと感じる行動パターンに固執するなど、こだわりが強いこともASD(自閉スペクトラム症)の特徴です。自分が一度決めたルールは守らなければならないと考え、予想外の事態が起こると不快に感じたり、パニックになったりすることがあります。
特に積極奇異型タイプのASD(自閉スペクトラム症)の方は他者との積極的な関わりを好みますが、マイルールや独自のこだわりを押し付けてしまいがちです。こうした姿が自己中心的に見られてしまったり、相手と適切な距離感で接せられなかったりすることにより、トラブルに発展するケースも少なくありません。
またASD(自閉スペクトラム症)のこだわりの強さが、他人の不正や例外を認めない過剰な正義感となってあらわれ、いざこざを引き起こすケースもあります。
感覚過敏または鈍い
感覚過敏または感覚鈍麻もASD(自閉スペクトラム症)の方によく見られます。感覚過敏は通常よりも光や音、においなどの外部刺激に敏感な状態のことで、日常生活において一般的には気にならない程度の刺激でも、ASD(自閉スペクトラム症)の方には刺激が強すぎる場合があります。大きな音などがパニックの引き金となることもあるので注意が必要です。
一方、感覚鈍麻は感覚過敏とは逆に痛みや温度変化などに鈍感で、危険な状況に自分で気づけないケースがあります。骨折したのに気づかなかったり、熱中症になったりすることもあるため、周囲の配慮が求められます。
空気を読みすぎる過剰適応
ASD(自閉スペクトラム症)の傾向はあるものの、すべての診断基準には当てはまらないグレーゾーンの方は、過剰適応を起こしやすいと言われています。過剰適応とは、周囲の人に合わせようと過剰に気を配って意見や考えを合わせようとするため、強い疲労感やストレスを抱えている状態です。
過剰適応は車のフロントガラスで例えるとわかりやすいです。ASD(自閉スペクトラム症)の方はフロントガラスが塗りつぶされており、前が完全に見えない状態で運転しています。
一方、グレーゾーンの方は曇りガラスになっていて、何となく前が見えるので一生懸命見ようとします。その結果、運転時間が長引くにつれて疲労の度合いが増していくのです。ストレスや疲労がたまると、後述する二次障害につながるリスクも高まるため注意が必要です。
不器用さがみられる
ASD(自閉スペクトラム症)の方の中には、動作に不器用さやぎこちなさが見られるケースも少なくありません。これは、DCD(発達性強調運動症)を併発していることが一因と考えられています。
DCD(発達性強調運動症)は、発達障害の一種で、身体の動きをうまく調整する力に偏りがあり、運動全般に不器用さが見られるのが特徴です。たとえば、立つ・座る・走るといった大きな動きを伴う“粗大運動”や、字を書く・箸を使うなどの微細な手指の動きである“微細運動”に困難さがあらわれます。
ASD(自閉スペクトラム症)とDCD(発達性強調運動症)をあわせ持つ場合、動作にぎこちなさや不器用さが目立ち、日常生活に支障をきたすことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の原因や予防法
ASD(自閉スペクトラム症)を含む発達障害の特性は、生まれつきの脳機能の偏りによって生じるもので、環境や親のしつけ、本人の努力不足が原因ではないと考えられています。
また、現時点では予防法も確立されておらず、特性自体は「病気」ではないため、治療の対象とはされていません。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性が見られても、診断基準を満たさない「グレーゾーン」と呼ばれる状態の方も多く存在します。こうした方々は、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向を抱えながらも周囲に適応しようと努力を重ねており、その分、大きな負担を感じていることも少なくありません。
その結果、発達特性による生きづらさから、うつ病や不安症などの精神疾患(二次障害)を併発するケースもあります。特にグレーゾーンの方は、二次障害の症状をきっかけに医療機関を受診し、初めて発達障害の傾向が明らかになることも珍しくありません。
発達障害のグレーゾーンや二次障害については、以下の記事で詳しく解説しているので参照ください。
関連記事:発達障害グレーゾーンとは?特徴や困りごと、対策についても解説、発達障害の二次障害とは?症状と種類、予防法や支援機関を解説
ASD(自閉スペクトラム症)の特性がある方が抱えやすい悩み
ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ方が、日常生活の中で抱えやすい代表的な悩みについて解説します。
- 人間関係のトラブルを抱えやすい
- 感覚刺激により疲れやすい
- ほかの発達特性をあわせ持つことがある
また、詳細な困りごとや抱えやすい悩みについては、下記の記事でも解説していますので、参考にしてください。
関連記事:大人のASD(自閉スペクトラム症)の方が苦手なこととは?困りごとや対処法を解説
人間関係のトラブルを抱えやすい
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、先に紹介した「暗黙のルールがわからない」「相手の気持ちを読み取りにくい」といった特性から、人間関係でトラブルを抱えやすい傾向があります。
たとえば、場の空気やその場限りのルールを察することが難しいため、意図せずルールを逸脱してしまい、「自分勝手」「非常識」と誤解される場合があります。また、相手の表情や言葉の裏にある感情を読み取るのが苦手なため、「無神経」「空気が読めない」と受け取られるケースも少なくありません。
こうしたすれ違いが積み重なり、人間関係において誤解や摩擦が生じやすくなる場合があります。
感覚刺激により疲れやすい
ASD(自閉スペクトラム症)で感覚過敏の方は、日常的な感覚刺激によって強い疲労感を覚えやすいでしょう。
感覚過敏には、さまざまな種類があり、下記のようなストレスを受けやすいといえます。
- 聴覚過敏: 食器の音や掃除機の音など特定の音に強い不快感や苦痛を覚える
- 視覚過敏: 光や文字がまぶしく感じられる、特定の模様や色の組み合わせが苦手
- 触覚過敏: 衣類のタグや素材など、特定に強い不快感を覚える
- 嗅覚過敏: 香水や柔軟剤など特定のにおいに耐えられない
- 味覚過敏: 味が濃く感じられる、苦味や甘味など特定の味が苦手
- 前庭覚過敏:乗り物酔いしやすい、揺れや回転に敏感に反応する
これらのストレスにより、疲れやすくなる傾向があります。触覚過敏については、下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてください。
関連記事:触覚過敏とは?症状や原因、大人の対処法とセルフチェック方法を解説
ほかの発達特性をあわせ持つことがある
発達障害は併発するケースもあり、複数の障害の特性をあわせ持つことは珍しくありません。
たとえば、ASD(自閉スペクトラム症)の方に、ADHD(注意欠如多動症)やLD(学習障害)、チック症などの特性が見られる場合もあります。
併発する際に見られるそれぞれの特徴は以下の通りです。
- ADHD(注意欠如多動症):不注意(集中できない、忘れ物が多い)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつきで行動してしまう)
- LD(学習障害):読字障害(文字を読むのが難しい)、書字障害(文字を書くのが難しい)、算数障害(数字や計算の理解が難しい)
- チック症:音声チック(無意識に音声や言葉を繰り返す)、運動チック(意思と関係なく体の一部が動いてしまう)
これらの特性が重なり、日常生活に困りごとを抱える場合があります。発達障害の種類や、LD(学習障害)、チック症について詳しくは下記の記事も参考にしてください。
関連記事:LDとは?種類ごとの特徴と仕事選びのポイントを解説、発達障害とは?種類や特徴、相談先について解説、大人のチック症とは?症状や対処法、トゥレット症との違いを解説

ASD(自閉スペクトラム症)の治療法
ASD(自閉スペクトラム症)の治療法としては、生まれつきの特性をなくすことはできないため、困りごとを軽減するための工夫や支援が行われます。
たとえば、「薬物療法」や「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」などの方法があります。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性によるイライラや不機嫌、過剰なこだわりに関しては、抗精神薬などの服用で軽減される場合があります。特性が自傷行為や他者への攻撃に発展する恐れがありますが、投薬によってある程度コントロールできると知られています。また、ASD(自閉スペクトラム症)の二次障害としてうつ病や不安症を併発した場合も薬物治療が効果を発揮するでしょう。
一方、SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、ロールプレイやゲームなどを通じて、対人関係に必要なスキルを実践的に学ぶ方法です。たとえば、言外の意図を読み取りにくい、会話の間や順番がつかみにくいといった悩みの軽減に役立ちます。
ASD(自閉スペクトラム症)かもしれないと思ったときの対処法
ASD(自閉スペクトラム症)かもしれないと感じたら、精神科あるいは心療内科に相談してみましょう。ただし、医療機関によっては発達障害を専門としない場合もあるため、受診前に、発達障害の診断に対応しているかを確認しておくと安心です。
また、自治体によっては、発達障害の診断を行っている医療機関の紹介をしている場合もあるため、お住まいの自治体に問い合わせてみるのもよいでしょう。
そのほか、保健所・保健センターや発達障害者支援センターも利用できます。保健所や保健センターでは、心の健康や発達に関する幅広い相談に対応しており、発達障害者支援センターでは、診断が確定していない段階でも相談を受け付けています。これらの公的機関は無料で利用できるため、ひとりで抱え込まず、ぜひ活用してみてください。
ASD(自閉スペクトラム症)に関するよくあるFAQ
ASD(自閉スペクトラム症)について、よく寄せられる質問をQ&A形式でわかりやすく解説します。
自分がASDかもしれないと思ったとき、まず何から始めればよいでしょうか?
まずは一人で結論を出そうとせず、「これまでどんな場面で困りごとを感じてきたか」、振り返ってみましょう。日常の中で感じた違和感やつまずきを思い出し、書き出してみるのもおすすめです。
そのうえで、医療機関や地域の相談窓口に話を聞いてもらうことで、自分の特性を客観的に整理する手助けが得られます。発達障害の診断を受けるかどうかは、必ずしもすぐに決める必要はありません。
大切なのは、困っていることを言葉にしてみること、そして、必要な支援や工夫を考えていくことです。それ自体が、前に進むための大切な一歩になります。
ASDの特性は、必ず「生きづらさ」につながるものなのでしょうか?
ASDの特性があるからといって、必ずしも生きづらさだけにつながるわけではありません。
確かに、環境によっては困難を感じることもあります。しかし一方で、物事を深く考えられる、興味のある分野に集中できる、決まった手順を丁寧に守れるなど、特性が強みとして活かされる場面もたくさんあります。
大切なのは、「自分に合わない環境で無理をし続けること」ではなく、「自分の特性を理解し、負担を減らす工夫をし、自分に合った環境を見つけていくこと」です。自分の特性を否定せず、少しずつでも「心地よく過ごせる場所」を増やしていけたら、それはとても大きな前進といえるでしょう。
ASDの診断を受けていない場合でも、周囲に配慮をお願いすることはできますか?
診断を受けていなくても、困りごとがある場合は、周囲に配慮をお願いすることは可能です。
たとえば、「体調面で負担がある」「生活や作業をスムーズに進めたい」といった伝え方で、予定を事前に共有してもらう、口頭だけでなく書面でも説明してもらうなど、具体的な工夫を相談できます。
大切なのは、診断の有無ではなく、「どんな場面で困りやすいか」「どんな対応があると助かるか」を自分なりに整理し、しっかりと伝えることです。自分の感じている困難を伝えることは、決してわがままではありません。少しの配慮で過ごしやすくなるなら、それは自分にとっても周囲にとっても大切なことといえるでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)かもと思ったら適切な対処と支援を
ASD(自閉スペクトラム症)は、発達障害の一種で、対人関係やコミュニケーションに困難を抱えやすく、特定の物事への強いこだわりが見られるのが特徴です。
「暗黙のルールがわかりにくい」「相手の気持ちを読み取るのが難しい」などといった特性から、人間関係でトラブルを抱えたり、感覚過敏で疲れやすくなったりする場合があります。
ASD(自閉スペクトラム症)かもしれないと感じたら、一人で抱え込まず、適切な対処と支援を受けるようにしましょう。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
監修者コメント
大人のADHD(注意欠如多動症)と同じように、大人のASDも良く話題にのぼるようになりました。診断数も、日本のみならず、先進諸国ではどこでも20年前と比べて格段に増えています。その理由は様々言われていて、何が絶対的な理由とは言えないのですが、診断基準も浸透し、特性のある方に気づきやすくなったことは1つあるでしょう。それに加えて、サービス業中心の職務が増えてきたことで、ASDの方が抱えるコミュニケーションの苦手さが障害として捉えられる機会も増加したということもあるでしょう。
ただ、ASDの特性があることと、診断すること/されること、は別問題であったりもします。診断基準でも社会的、職業的に意味のある障害を引き起こしているときに診断するとなっています。その人が持っている特性も人ぞれぞれで決まってはおらず、同じASDという診断名があったとしても持っている特性に違いはありますし、まして性格は別物ですからASDという診断名は一個人の人となりを示すほんの一端に過ぎないということは肝に銘じておきたいところです。ともあれ、ご自分の、もしくはご家族のASD特性が、何かしらの「生きづらさ」に繋がっている場合、医療機関のみならず様々な支援機関もありますから、頼って欲しいところです。ASDという「診断名」はそういった支援を受けるために必要な「道具」でもあるのです。

監修 : 松澤 大輔 (医師)
2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。
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