やる気が出ない・何もしたくないのはなぜ?原因や対処法について解説

公開: 2024.11.25更新: 2025.8.13

「やる気が出ない」「何もしたくない」と感じたことがある方も多いかもしれません。

このような状態が一時的であれば心配いりませんが、長く続く場合は注意が必要です。心や体の疲れ、ストレスが原因となることがある一方で、うつ病などの病気や障害が関係していることもあります。

本記事では、やる気がでない原因や、裏に隠れている可能性のある病気・障害について解説します。意欲が低下しているときの対処法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

やる気が出ない・何もしたくないと感じる原因

やる気が出ない・何もしたくないという感情は、誰にでも起こり得る自然な反応です。しかし、その原因は人によって異なり、心や体の状態が影響していることも少なくありません。

ここでは、やる気が出ない・何もしたくないと感じる原因として考えられるものを5つ紹介するので、こうした感情に悩まされている人はぜひチェックしてみてください。

精神的な要因

精神的な要因が、やる気の低下につながることがあります。ストレスや不安、精神的な疾患について解説します。

心の疲労やストレス

心の疲労が溜まると、心を守るための防御反応としてやる気が出ない・何もしたくないといった感情が湧いてくることがあります。心の疲労は人によって原因が異なりますが、例えば人間関係のストレスや仕事でのプレッシャーがその一因となっているケースも多いです。

これらの要因が積み重なると、心のエネルギーが消耗し、日々の生活への意欲が低下することがあります。

うつ病などの精神的な疾患

「やる気が出ない」「何もしたくない」と感じるとき、単なる疲れや気分の落ち込みと思われがちですが、精神疾患が背景にある場合もあります。「うつ病」は代表的な疾患のひとつです。そのほかにも、自律神経失調症や適応障害など、関係する疾患はさまざまです。

また、発達障害*¹などの障害を抱える方は、日常生活の中で繰り返しストレスや失敗体験を重ねることで、うつ病などを発症することがあります。これは「二次障害」と呼ばれ、明確なきっかけがないように見えても、長年の積み重ねによって意欲が低下してしまう場合があるのです。

身体的な要因

体の異変が、気力の低下を引き起こすことがあります。疲労や不規則な生活、栄養不足が与える影響について解説します。

身体の疲労

やる気が出ない・何もしたくないと感じるのは、身体の疲労や体調不良が原因かもしれません。例えば「胃腸の調子が良くない」「微熱がある」「身体の凝りやむくみを感じる」といった症状があると、身体が回復するまで無気力や意欲の低下といった状態が続くことがあります。

こうした身体の不調はストレスとなり、心の疲れを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。

生活リズムの乱れや睡眠不足

生活リズムの乱れや睡眠不足が続くと、日中に眠気や疲れを感じることが多くなります。また、夜ふかしが続いたり食事を抜いたりしている人は、それが原因で心身に不調をきたしているのかもしれません。

このような状態が続くと自律神経が乱れ、倦怠感や無気力を引き起こすことがあります。やる気が出ない・何もしたくないと感じたときは、日々の生活を振り返ってみてください。

栄養不足

やる気が出ない、何もしたくないと感じる背景には、栄養の不足や食事バランスの偏りが関係している場合があります。十分な量を食べていても、必要な栄養素が足りていないと、脳や身体が本来の力を発揮しづらくなります。また、無気力の状態が続くと食事そのものをとらなくなり、さらに栄養不足が進んでやる気が出なくなるという悪循環に陥ることもあります。

個人の気質や性格の要因

病気や障害による認知のゆがみや不安を感じやすい性格、完璧主義などの気質がある人は、日常生活の中でストレスや不満を抱えやすいのが特徴です。ちょっとした出来事にも過剰に反応してしまい、緊張や不安が蓄積されやすい人もいるでしょう。

また、完璧主義の人は物事を理想通りに進められないと自分自身に否定的な感情が芽生え、気分の落ち込みを引き起こすことがあります。

こうした負の感情が積み重なると、外出する気力が湧かなくなって「何もしたくない」といった無気力な状態に陥ってしまうケースが多く見られます。

環境の変化やライフイベントの要因

転勤や転職、引っ越しや結婚など、身の回りの環境が大きく変化する出来事があると、心と体に大きなストレスがかかります。たとえ結婚や昇進のようなポジティブな変化であっても、期待や責任が伴い、知らず知らずのうちに負担がかかっている可能性もあります。

このようなストレスが積み重なると気力が低下し、やる気が出ない・何もしたくないといった無気力な状態に陥る人も少なくありません。

やる気が出ない・何もしたくないと感じた際の対処法

やる気が出ない・何もしたくないという感情は珍しいものではありませんが、そのまま放置してしまうと心身の不調を招き、日常生活に支障をきたす可能性があります。不調の原因を少しでも取り除くために、自分に合った対処法を試してみましょう。

ここでは、やる気が出ない・何もしたくないと感じた際の対処法を5つ紹介するので、参考にしてください。

休息を十分に取る

心身の疲労やストレスを和らげるためには、まず休息を十分に取ることが大切です。体をしっかりと休めることで、心の負担も軽減されます。可能であれば、有給休暇を利用して長期休暇を取るなど、休息に専念できる環境を整えるとより効果的です。

無理をして活動を続けるよりも、一度立ち止まってしっかりと休んでみてください。心身のエネルギーが回復し、自然とやる気が湧いてくるでしょう。

十分な睡眠時間を確保する

睡眠不足に陥ると、やる気が出ない・何もしたくないという感情を引き起こしやすいため、十分な睡眠時間を確保することが重要です。また、疲労が蓄積していると無気力な状態が続いてしまうため、睡眠を取って回復させなければなりません。

特に「忙しい日々が続いている」「つい夜ふかしをしてしまう」と感じている場合は、意識的に睡眠時間を長く取るよう心がけましょう。質の良い睡眠は心身のエネルギーを回復させ、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになります。

規則正しい生活を送る

毎日決まった時間に起きて、決まった時間に食事を取るリズムが整うと、心身が安定し、意欲が高まりやすくなります。特に、朝に太陽の光を浴びることは、体内時計を整えるうえで重要です。セロトニンというホルモンの分泌が促され、気分が安定しやすくなります。

適度な運動を取り入れる

適度な運動を取り入れることは、心身のリフレッシュにつながります。運動は身体に適度な疲労を与え、夜の寝付きを良くする効果が期待できるため、夜ふかしが続いている人や寝付きが悪いと感じている人にもおすすめです。

外に出る気力が湧かない場合は、室内でできるストレッチから試してみてください。これらの軽い運動でも血行が促進され、心身がリラックスしやすくなります。

バランスの良い食事を取る

無気力な状態が続くときは、栄養面の見直しも大切です。意欲にかかわる脳の働きを支える栄養素には、次のようなものがあります。

タンパク質

神経伝達物質(ドーパミンなど)の材料となるアミノ酸を含む
例:肉、魚、卵、大豆製品、ナッツ類

ビタミンB群

脳の働きを支え、やる気や集中力を保つのに役立つ
例:レバー、マグロ、葉物野菜、玄米

鉄分

脳に酸素を運び、ドーパミンの生成にも関与する
例:赤身の肉、レバー、魚、ほうれん草

これらの栄養素を意識して取ると、心と体のバランスが少しずつ整いやすくなります。

家族や友人と話す

誰かと話すだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。信頼できる家族や友人との会話は、悩みを整理したり、気持ちを共有したりする助けになります。他愛のない話を交わすだけでも、気持ちが落ち着くかもしれません。

身近に相談できる相手がいない場合は、医療機関でのカウンセリングも選択肢のひとつです。医師や臨床心理士と話すことで、自分でも気づかなかったストレス源や、心の病気、障害に気づくこともあります。

小さなことから始めてみる

無気力な状態では、何かに取りかかること自体が難しく感じられるものです。しかし、実際には動き出すことで、少しずつ気持ちが前向きになるケースも少なくありません。

まずは「そんなことでいいの?」と思えるくらいの、とても小さな行動から始めてみることが、活動量を増やすコツです。例えば、「コップ1杯の水を飲む」「カーテンを少しだけ開ける」「手をお湯で洗う」など、ほんの数秒でできることでも十分です。

できたことがひとつあるだけで、小さな達成感が生まれ、自己否定の気持ちを和らげやすくなります。

頭の中を整理する

やる気が出ない、何もしたくないと感じているときは、頭の中がごちゃごちゃしていて、何から手をつけて良いか分からない状態になっていることがあります。この混乱が気力を奪ってしまう原因のひとつです。

そこで役立つのがToDoリスト(やることリスト)です。書き出して整理することで、気持ちが落ち着き、「今やるべきこと」が見えやすくなります。頭の中が整理されると、少しずつでも動ける感覚が戻ってくる場合があります。

医療機関を受診する

ここまで紹介してきた対処法を試してもなかなか改善しない場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性もあるため、医療機関の受診をおすすめします。医師による診察やカウンセリングを受けることで、自分では気づかなかった原因が明らかになることもあります。

原因を特定できれば適切な対処法が見えてくるため、解決への糸口となるでしょう。症状の悪化を防ぐためにも、早めに医療機関を受診してみてください。

やる気が出ない・何もしたくないに隠れている病気や障害とは?

やる気が出ない・何もしたくないという感情は、単なる気分の落ち込みだけでなく、病気や障害が関係していることもあります。心や体が発するサインを見逃さないために、その背景にどのような病気や障害が潜んでいる可能性があるのかを理解しておきましょう。

ここでは、やる気が出ない・何もしたくないに隠れている病気や障害を8つ紹介します。

発達障害

発達障害とは先天的な脳機能の発達に関係する障害で、注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害*²(LD)などが代表的です。これらの障害は単独で現れることもあれば、複数の症状が組み合わさって見られることもあります。

発達障害のある人は、「周囲とのコミュニケーションがうまく取れない」「物事を整理して行動するのが難しい」といった特性を持ち、それが原因で大きな負担やストレスを抱えることも少なくありません。

このようなストレスが蓄積すると、意欲の低下や無気力感が生じることがあります。これを「二次障害」といい、発達障害の二次障害としてやる気が出ない・何もしたくないと感じるケースもあるのです。

厚生労働省が公表した「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、ひきこもりに関する相談者の約30%に発達障害の診断があったことが指摘されていて、実際に多くの発達障害の人が無気力や意欲の低下を感じていることがわかります。

うつ病

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠障害や疲労感などの症状が見られる病気です。ストレスや本人の気質、薬の副作用など、発症のきっかけはさまざまです。うつ病になると強い倦怠感や気分の落ち込みが続き、やる気が出ない・何もしたくないといった感情に見舞われることがあります。

適応障害

適応障害とは、職場や学校など周囲の環境にうまく適応できず、ストレスが蓄積されて心身に不調をきたしている状態です。症状は人によって異なり、不安感や抑うつ気分を引き起こすこともあります。そのため、適応障害の影響でやる気が出ない・何もしたくないと感じる人も少なくありません。

睡眠障害

睡眠障害は、「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚める」など、睡眠の質が低下している状態を指します。このような状態が続くと心身の疲労が蓄積し、やる気が出ない・何もしたくないといった感情が湧きやすくなります。さらに、慢性的な睡眠障害はうつ病を引き起こすこともあり、意欲の低下や無気力を悪化させるおそれがあります。

自律神経失調症

自律神経失調症は、自律神経の乱れが原因で起こる症状の総称です。ストレスの蓄積や生活リズムの乱れ、更年期障害などによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、心身にさまざまな影響を及ぼします。「やる気が出ない」「気分が落ち込む」といった感情を引き起こすケースもあり、やる気が出ない・何もしたくないと感じる人も少なくありません。

統合失調症

統合失調症は精神疾患のひとつで、幻聴や妄想などのさまざまな症状が現れる病気です。症状の中には「物事に関心を持てない」「何もしたくない」といった感情鈍麻と呼ばれるものも含まれます。このような感情の鈍化によって日常的な活動への意欲が低下し、「やる気が出ない」といった状態が続くことがあります。

慢性疲労症候群

慢性疲労症候群とは、日常生活に支障をきたすほどの強い疲労感が6か月以上続く状態のことです。この疾患は疲労感だけでなく、集中力の低下や睡眠障害を伴う人もいます。その結果、意欲の低下や無気力を引き起こし、やる気が出ない・何もしたくないと感じるケースが見られます。

回避性パーソナリティ障害

回避性パーソナリティ障害とは、他人からの拒絶や批判に強い恐怖を抱き、外部との交流を避けようとする障害です。原因は明確になっていませんが、幼少期から臆病だった人や褒められた経験が少ない人、いじめなどで強く否定された経験がある人に多く見られる傾向があります。

この障害では、人との交流を避けようとして「やる気が出ない」と感じたり、失敗を恐れるあまり「何もしたくない」と思ってしまうケースもあります。

やる気が出ない・何もしたくない悩みに関するよくある質問

やる気が出ない・何もしたくない状態が続くと、不安や疑問がいろいろと浮かんでくるものです。ここでは、よくある質問とその答えを通して、悩みの理解と対処のヒントをお伝えします。

やる気が出ない・何もしたくないは甘え?

「やる気が出ない」「何もしたくない」と感じると、自分を責めてしまいがちですが、単なる甘えとは限りません。心や体の疲れ、強いストレス、うつ病などの不調が隠れていることもあります。そうした状態が続いている場合は、「なぜつらいのか」を見つめ直し、必要に応じて専門機関に相談するなど、原因に合った対処をしていくことが大切です。

やる気が出ない・何もしたくないときにしてはいけないことはある?

「何もしない自分はダメだ」などと考えて、無理にがんばろうとするのは逆効果になりかねません。心や体が限界に近づいているときは、無理を重ねることで状態がさらに悪くなるおそれがあります。

大切なのは、自分を責めず、今のつらさに気づいてあげることです。休む勇気をもつことで、心に少しずつ余裕が戻ってくる可能性があります。

医療機関を受診する目安は?

やる気が出ない、何もしたくない日が続いている場合、体や心の不調が隠れていることがあります。特に、気分の落ち込みがほとんど毎日、2週間以上続くようであれば、うつ病などの病気の可能性も考えられます。

「気のせいかも」と我慢せず、早めに医療機関で相談してみることが大切です。

やる気がでない・何もしたくない時は十分な休息が重要

やる気が出ない・何もしたくないと感じる背景には、心身の疲労や病気、障害が隠れていることがあります。原因によって適切な対処法は異なるものの、まずは十分な休息を取ることが回復の第一歩です。焦らず、一度ゆっくりと休んでみましょう。

気分の落ち込みや意欲の低下を強く感じる場合は、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)といった福祉サービスの利用も検討してみてください。就労移行支援は一般企業への就職をサポートするサービス、自立訓練(生活訓練)は自立した日常生活を送れるよう支援するサービスです。

これらのサービスを活用することで、適切な支援を受けながら自分のペースで生活リズムや心身の健やかさを取り戻せます。特に、就労移行支援は在宅でも利用できるため、外出に苦痛を感じる方でも利用しやすいでしょう。

症状がつらい場合は一人で抱え込まず、周囲の人や地域の障害福祉窓口、医療機関などを頼ってみてくださいね。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます。

監修者コメント

外に出たくない、というのは本記事にある通り様々な要因によってなっている状態ですね。今主治医を持って病院受診をしているのであれば相応の理由があるはずだと思いますので、まずは焦らず治療に専念してもらえればと思います。ただ、どうしても外出など含めた意欲低下が遷延しているときにどうするか、というのは解決の難しい課題です。休息が必要とのことで、横になっていれば自然に意欲が向上するかと言えば、そうでないことが多いのです。うつ病からの回復でも意欲向上は最後まで残ることが多いですし、そこでは少し工夫も必要になります。ちょっと動いてみたら案外動けた、という体験をしたことはないでしょうか。予定があれば実は動ける方も多いので、予定をカレンダーにあらかじめ入れてもらってその通りに動く、とか、過ごしやすい場として図書館を設定して予定がない日は行ってみるなども効果的なので試してみてください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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