WISC(ウィスク)検査とは?検査内容や対象年齢、費用と結果の見方も解説

公開: 2025.7.16

子どもの発達が気になったときに、WISC(ウィスク)検査という知能検査を耳にしたことがある方もいるかもしれません。WISC検査で子どもの何がわかるのか、気になる方も多いでしょう。知能検査の中でも特に知名度の高いWISCの概要を知り、適切に活用することは、子どもの認知特性を把握するきっかけになります。

この記事では、WISC検査の内容や対象年齢、受けられる場所などを紹介します。検査結果を見るときのポイントや、WISCに関するよくある質問にも回答しているので、ぜひ参考にしてください。

WISC(ウィスク)検査とは

WISC(ウィスク)検査はウェクスラー式知能検査の一つで、5歳から16歳までの子どもを対象としています。ウェクスラー式知能検査には80年以上の歴史があり、1939年の「ウェクスラー・ベルビュー知能検査」刊行以来、最もポピュラーな知能検査として世界中で実施されてきました。

WISC検査では、子どもの知的能力などを客観的に測定します。発達障害*の診断で使われるものと誤解されがちですが、本来の目的は子どもの得意不得意を把握するものであり、発達障害かどうかの判断には医師の診断が必要です。

60~90分程度の検査時間で、「言語理解」「ワーキングメモリー」「処理速度」「近く推理」といった指標を調べます。

WISC-IVとWISC-Vの違い

WISCにはいくつかのバージョンがあり、2021年に日本版がリリースされた「WISC-V」が最新版です。日本では2010年に改訂された「WISC-IV」が広く普及していますが、両者の違いを知っておくとよいでしょう。

WISC-Vでは、WISC-IVに比べて検査項目が細分化されており、より詳細な検査結果が出るようになりました。主要指標が4つから5つに増え、下位検査項目も計15項目から計16項目になっています。改訂が行われたことで、子どもの得意不得意がより詳しくわかるようになったといえます。

ウェクスラー式知能検査の対象年齢

ウェクスラー式知能検査は、受検者の年齢によって種類が分かれています。全部で3種類あり、幼児向けの検査がWPPSI(ウィプシ)、児童向けがWISC、成人向けがWAIS(ウェイス)です。それぞれの対象年齢は以下のとおりです。

  • WPPSI-III:2歳6カ月~7歳3カ月
  • WISC-V:5歳0カ月~16歳11カ月
  • WAIS-IV:16歳0カ月~90歳11カ月

いずれも改訂を繰り返しており、上記の対象年齢は2025年5月時点の最新版での設定を示しています。バージョンによっては対象年齢が異なる場合もあるので注意が必要です。

WISCはどこで受けられる?

WISCを受けられる場所としては、以下の機関や施設が挙げられます。

  • 医療機関
  • 教育支援センター
  • 大学
  • カウンセリングルーム
  • 放課後等デイサービス

医療機関では小児科や児童精神科などでWISCを受けられ、保険適用となる可能性があります。また、公立の発達支援センターなどの支援機関を利用する場合は、無料で検査を受けられることもあるでしょう。

カウンセリングルームや放課後デイサービスなどの民間施設を利用する場合は、自費で検査を受けることになるケースが多いです。

また、後述しますがKaienでもWISC-Ⅳなどの心理検査が受けられます。その他にも無料で受けられる施設や、東京都および神奈川県を中心に心理検査を実施している機関を以下にリストアップしているので、併せてご参照ください。

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WISCの主な検査内容

WISCの検査では、IQ(知能指数)に加えて全般的な認知能力も確認します。型によって検査内容も微妙に異なるため、検査を受ける前にどのような領域を調べてもらえるのか知っておくとよいでしょう。

ここからは、広く普及しているWISC-IVと最新版のWISC-V、それぞれの主な検査内容を紹介します。

WISC-IVの検査内容

WISC-IVの検査は、10種の基本検査と5種の補助検査、合わせて15種の下位検査で構成されています。この検査結果を基に、全般的な知能を示す全検査IQ(FSIQ)と、4つの合成得点を算出して数値化します。

WISC-IVの検査における合成得点を算出する4つの指標は以下のとおりです。

  • 言語理解指標(VCI)
  • 知覚推理指標(PRI)
  • ワーキングメモリー指標(WMI)
  • 処理速度指標(PSI)

VCIは言語による理解や思考、推理の力を測る指標で、PRIでは視覚的な情報から推理したり体を動かしたりする能力を測定します。WMIは一時的な情報の記憶・処理能力に関する指標で、PSIは視覚情報を処理するスピードを測る指標です。

全検査IQ(FSIQ)は、この4つの指標の得点をすべて合計し、全般的な知的能力の数値として算出します。

WISC-Vの検査内容

WISC-Vの検査では、10種の主要下位検査と6種の二次下位検査の合わせて16種の検査が実施されます。

WISC-Vでは、主要指標も以下の5つに変更されています。

  • 言語理解指標(VCI)
  • 視空間指標(VSI)
  • 流動性推理指標(FRI)
  • ワーキングメモリー指標(WMI)
  • 処理速度指標(PSI)

WISC-IVと比較すると、知覚推理指標がWISC-Vでは視空間指標と流動性推理指標に細分化されています。「視覚的な情報を認識・推理する能力」とひとまとめに考えられていた部分が「視覚的な情報を理解する能力」と「得た情報から結果を予測する能力」の2つに分けられた形です。

さらに、WISC-Vでは以下に挙げる5つの補助指標も加わっており、検査結果がより詳しくわかる仕様となっています。

  • 量的推理指標(QRI)
  • 聴覚ワーキングメモリー指標 (AWMI)
  • 非言語性能力指標(NVI)
  • 一般知的能力指標(GAI)
  • 認知熟達度指標(CPI)

WISCの検査時間とかかる費用

最新版であるWISC-Vの検査時間は、10の下位検査からすべての主要指標得点を得る場合は65~80分程度、7つの下位検査でFSIQを得るだけなら、45~60分程度の時間で実施できます。

WISCの検査にかかる費用は、どの施設で受けるかによって変わってきます。大まかな目安として、医療機関において保険適用で検査を受ける場合の費用は1,500円程度です。ただし、報告書作成などで別途費用が発生する場合もあります。

その他、教育支援センターではおおむね無料、大学では相談料と別に2,000〜5,000円程度、民間施設では1〜2万円程度が相場となっています。ただし、ここで紹介した金額はあくまでも目安なので、費用がいくらかかるかは検査を実施する機関や施設に確認しておきましょう。

WISCの検査結果を見るポイント

WISCの検査結果では、合成得点やパーセンタイル、信頼区間といったデータが示されます。

知能検査の結果を参考にするためには、これらのデータを見るときのポイントを把握しておくことが重要です。正しい検査結果の見方を知り、子どもの得意不得意を見極めるうえで役立てるとよいでしょう。

ここでは、WISCの検査結果で示される各データの見方と、主要指標の数値からわかる特徴を紹介します。

合成得点

WISCでは、それぞれの指標やFSIQについて合成得点が算出されます。WISC-Vの場合、FSIQと5つの主要指標、そして5つの補助指標があるため、算出されるのは11の合成得点です。

合成得点では、評価点の平均を100としたうえで、受検者がどの程度の位置付けなのかを数値化します。合成得点が100点を上回れば平均以上、下回れば平均以下であると判断できるのです。

各指標の合成得点の差が大きいほど、生きづらさを感じやすくなるといわれています。

パーセンタイル

パーセンタイルは、その検査項目における成績が、他の受験者に比べてどの程度なのかを示す指標です。具体的には、受検者100人のうち、パーセンタイルの数字が下から数えて何番目なのかを表しています。

パーセンタイルが30なら、同年齢の100人の集団において、その子どもの成績が下から30番目であることを示しています。パーセンタイルが50でちょうど真ん中の成績ということになるため、得意不得意を判断したい場合は、50を目安にするとよいでしょう。

信頼区間

信頼区間は、検査結果に含まれうる誤差を示す指標です。WISCの成績は当日の子どものコンディションなどに左右されるため、一度受検しただけで確実な結果を知ることはできません。そこで、その子どもが獲得する可能性のあるスコアの統計的範囲として、信頼区間のデータが示されています。

信頼区間のデータは「90%信頼区間が96〜106」といった形で提示されます。これは、その子どもが同じ条件下で何度も検査を受けた場合、90%の確率でスコアが96から106の間に収まるという意味です。

主要指標の数値による特徴

WISCを受検すると、主要指標の数値から子どもの特徴をある程度把握することができます。以下の表は、WISC-Vにおける5つの主要指標の数値が高い場合と低い場合、それぞれの特徴やよくある困りごとを紹介したものです。なお、WISCの結果はあくまで目安のため、必ずしも以下に当てはまるとは限らない点に留意しましょう。

高いときの特徴低いときの特徴
言語理解指標(VCI)・語彙力に優れている
・読み書きや文章の読解が得意
・口頭での指示や、プリントに書かれた文章などを理解できない場合がある
視空間指標(VSI)・視覚的思考に優れている
・地図を理解するのが得意
・図形問題が苦手
・グラフをうまく読み取れない
流動性推理指標(FRI)・物事を論理的に捉えられる・新しい環境に順応するのが苦手
・問題を解決するのが苦手
ワーキングメモリー指標(WMI)・複数の情報を同時に処理できる
・短期記憶に優れている
・注意散漫な傾向がある
・指示を覚えていられない
処理速度指標(PSI)・物事の判断が早い
・タスクを手際よくこなせる
・テストの回答に時間がかかる
・読み書きや会話のアクションが遅くなりやすい

WISCを受ける際の注意点

基本的に、障害は個人の特性と環境要因が組み合わさって顕在化するものです。

WISCは個人の得意不得意を見極めるうえでは有用ですが、検査結果を見ただけで障害の特性をすべて把握できるわけではありません。WISCが万能ではないことを理解したうえで、アセスメントの結果を解釈したり、活用したりする必要があります。

WISC検査で出された数値だけで、特性をパターン化したり、分類したりするのは難しいです。検査結果から仮説は立てられるものの、適切な支援をするためには、やはり人間の力が不可欠だといえるでしょう。

WISCに関するよくある質問

WISC以外の知能検査の種類や発達障害との関連性、受検できる回数など、WISCを知ったことでさまざまな疑問が浮かんだ方も多いでしょう。

ここからは、WISCに関してよくある質問をいくつか取り上げ、回答していきます。

WISC以外に受けられる知能検査はある?

WISC以外の児童を対象とした知能検査としては、「田中ビネー知能検査V」が挙げられます。

田中ビネー知能検査Vは、年齢ごとに検査内容が異なるのが特徴です。2~14歳の場合は検査項目が「知能指数(IQ)」と「精神年齢(MA)」の2つのみですが、14歳以上の場合は「結晶性領域」「流動性領域」「記憶領域」「論理推理領域」の4つになります。

田中ビネー知能検査では、検査中の行動観察も記録するのが特徴です。

発達障害でなくてもWISCは受けられる?

発達障害傾向の方で、IQに凸凹(バラつき)があるケースもありますが、全員が発達障害に該当するわけではありません。むしろ大多数の人に多少の凸凹はあるものです。発達障害に関する困りごとがなくても、「単に知りたい」という理由でWISCを受けることはできます。WISCは発達特性の有無に直結するものではありませんが、自分を理解する一つの手段としては有用です。

ちなみに、発達障害の診断に役立てられている検査に「新版K式発達検査」があります。この検査では、「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」といった領域の検査を通して、受検者の発達状態を評価します。

WISC検査は何度も受けていい?

WISC検査を一度受けた後は、最低でも1年以上の時間を空けるのが望ましいとされています。これは、学習効果が生まれて正確な結果が得られなくなる事態を避けるためです。逆に言えば、一定の期間が経過した後なら、またWISCを受検できるということになります。

また、複数回受けたWISCの結果が異なることがあるのは、検査者の熟達度や子どものそのときの状態などが関係している場合が多いです。検査自体はなるべくコンディションなどの影響を受けないように作られていますが、人間同士で行うことなので、多少の誤差は生じるものと捉えておきましょう。

Kaien心理検査特急便でWISCが受けられる

Kaien心理検査特急便は、誰でも気軽に心理検査を受けられるサービスです。学校で心理検査を受けるよう言われたときや、子どもの認知特性を知りたいときなど、スピーディに検査を受けることができます。

Kaienの心理検査特急便ではWISC-IVだけでなく、成人を対象とするWAIS-IVも受けられます。費用は4万円(税込)で、報告書の作成やオンライン面談での説明なども料金に含まれています。検査の所要時間は1〜2時間で、検査結果が届くまでの期間は1週間程度です。

Kaienの申込フォームから簡単に予約できるので、興味がある方は検討してみてください。

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WISC検査は結果に一喜一憂せず上手に活用を

子どもの知的能力や認知特性などを測りたい場合は、WISC検査が選択肢の一つとして挙げられます。WISC検査では言語理解やワーキングメモリーなどの指標における認知能力を測定でき、子どもの得意不得意を見極めるうえで役に立ちます。

ただし、WISC検査を受けるだけで障害特性などがすべてわかるわけではありません。検査結果は参考にしつつ、専門家の支援を受けながら障害と向き合っていくことが大切です。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

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