障害者手帳がある主なメリットは、就労支援や税金の控除・減免、預貯金の非課税、公共交通機関運賃の割引やリフォーム費用などの生活支援、保育支援などがあることです。ただし、支援の内容は、障害の分類や、障害の程度に応じて決まる「等級」によって変わるため、どの区分に該当するか知っておきたいところです。
また、複雑な手続きや気持ちの面で障害者手帳の取得を迷っている方もいるのではないでしょうか。実際は、正しい知識を身につければ金銭面のメリット以外にも、障害者雇用や就労移行支援など就職しやすい環境を手に入れることも可能です。
本記事では障害者手帳の種類や障害分類ごとの等級区分、取得方法、メリット・デメリットなどを詳しく紹介していきます。また、障害者雇用で就職を考えている方向けに、就労支援サービスについても解説しているので、参考にしてください。
障害者手帳とは
障害者手帳とは、障害があることを証明する公的な手帳です。種類は、「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」があり、それぞれ根拠、交付主体、障害分類が異なります。
- 身体障害者手帳の障害区分:視覚障害・聴覚・平衡機能障害・心臓機能障害など
- 精神障害者保健福祉手帳の障害区分:統合失調症・てんかん・うつ病などの気分障害・発達障害*など
- 療育手帳の障害区分:知的障害
障害年金や自立支援医療受給者証、障害福祉サービス受給者証などと障害者手帳は違う制度ですが、障害福祉サービス受給者証などを申請する際は障害者手帳があると役立ちます。障害を証明するものは複数存在しますが、日本で障害を証明する最もポピュラーなものが障害者手帳なのです。
障害者手帳の対象者
障害者手帳の対象者は、手帳の種類によって異なります。まず、身体障害者手帳は身体障害者福祉法に定められた身体上の障害がある人が対象です。
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害や発達障害によって日常生活や社会生活の制約がある人を対象に交付されます。対象となる精神障害は、うつ病・不安症・統合失調症・高次脳機能障害・ その他の精神疾患などです。また、発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)・注意欠如多動症(ADHD)・限局性学習症(SLD)などの種類があります。
療育手帳は、児童相談所や知的障害者更生相談所から知的障害であると判定された人が交付対象です。主に18歳未満だと児童相談所、18歳以上では知的障害者更生相談所で判定を受ける仕組みで、年齢によって判定場所が変わります。
障害者手帳の対象者は障害の程度によって異なり、場合によっては複数の手帳を取得することも可能です。例えば、発達障害で知的障害も併存していれば、精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の両方が取得対象になります。
障害に対して取得できる手帳は1つとは限らないため、自分がどの障害者手帳の対象者に該当するのか判別できるよう、知識を身につけておくとよいでしょう。
障害者手帳の等級とは
障害者手帳における等級とは、障害の程度をあらわすものです。障害者手帳の等級に応じて利用できる福祉サービスの内容などが変わってくるため、適切な認定を受けることが大切です。
ちなみに、条件を満たした障害のある方が利用できる「障害年金」にも1~3級の等級がありますが、障害者手帳とは別の制度であり、運営主体や審査基準も異なります。それぞれの等級が連動しているわけではない点に注意しましょう。
ここからは、障害者手帳の各種類の等級について詳しく解説していきます。
身体障害者手帳の等級区分
厚生労働省の身体障害者障害程度等級表によると、等級は1〜7級に区分されており、最も重度なのが1級、7級になるほど低度となっています。なお視覚障害や聴覚障害には7級はなく、6級からの申請が可能です。
肢体不自由の場合は7級がありますが、7級のみの障害では手帳の交付対象とならないため注意が必要です。なお7級に当てはまる障害が2つ以上ある場合は6級に上がって手帳の交付対象となるほか、障害が2つ以上重複する場合は、障害の程度によって等級が変動するのも特徴です。
次項から障害の種類ごとの等級区分を紹介します。なお表中にある①や②などの条件は、いずれか一つに該当すれば、その等級に区分されます。「-」となっている箇所は、制度上区分が存在しないことを表します。
「視覚障害」の場合
視覚障害の等級区分は以下のとおりです。
1級 | 視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの ここでの視力とは、万国式試視力表(一般的な視力検査で使われる「C」の字型のマークが並んだ表)によって測ったものをいい、屈折異常(近視、遠視、乱視など)のある者については、矯正視力(メガネやコンタクトレンズなどで矯正した上で測った視力)について測ったものをいう(以下同じ) |
2級 | ①視力の良い方の眼の視力が0.02以上0.03以下のもの ②視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁(目の前で手を動かして、それを認識できるかどうかという基準)以下のもの ③周辺視野角度(Ⅰ/4視標による。以下同じ。)の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度(Ⅰ/2視標による。以下同じ。)が28度以下のもの<補足>・周辺視野角度:目をまっすぐ前に向けたときに、左右や上下にどれだけ広く見えているかの範囲・Ⅰ/4、Ⅰ/2:視野検査の際に使われる視標。数字が小さいほど検査が細かくなる ④両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの |
3級 | ①視力の良い方の眼の視力が0.04以上0.07以下のもの(2級の2に該当するものを除く。) ②視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のもの ③周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下かつ両眼中心視野角度が56度以下のもの ④両眼開放視認点数(視野検査で測定される視野の見え具合の点数)が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの<補足>中心視野角度:視線の中心部分(正面)にどれだけの範囲がはっきり見えているかの角度両眼開放視認点数:「両目で見たときにどれくらい見えるか」を点数化したもので、点数が低いほど見える範囲が狭い |
4級 | ①視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下のもの(3級の2に該当するものを除く。) ②周辺視野角度の総和が左右眼それぞれ80度以下のもの ③両眼開放視認点数が70点以下のもの |
5級 | ①視力の良い方の眼の視力が0.2かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの ②両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの ③両眼中心視野角度が56度以下のもの ④両眼開放視認点数が70点を超えかつ100点以下のもの ⑤両眼中心視野視認点数が40点以下のもの |
6級 | 視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ他方の眼の視力が0.02以下のもの |
7級 | – |
「聴覚又は平衡機能の障害」の場合
聴覚又は平衡機能の障害では、聴覚障害と平衡機能障害で等級区分が異なります。
聴覚障害 | 平衡機能障害 | |
1級 | – | – |
2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう) | – |
3級 | 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳のすぐそばに接しなければ大声語を理解し得ないもの) | 平衡機能(体のバランスを保つ能力)の極めて著しい障害 |
4級 | ①両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳のすぐそばに接しなければ話声語を理解し得ないもの) ②両耳による普通話声の最良の語音明瞭度(どれくらい言葉として理解できるか)が50パーセント以下のもの | – |
5級 | – | 平衡機能の著しい障害 |
6級 | ①両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの) ②一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの | – |
7級 | – | – |
出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
デシベルのイメージとしては、50デシベルが静かな事務所の会話、雨音程度、100デシベルが電車が通る時のホーム、カラオケのスピーカー近くの音程度とされています。
「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」の場合
音声機能(声を発する能力)、言語機能(言葉を使って考え、伝える能力)、そしゃく機能(食べ物を噛んだり飲み込んだりする口の機能)は、同じ障害分類にあたり、以下の等級区分があります。
1級 | – |
2級 | – |
3級 | 音声機能、言語機能又はそしゃく機能(食べ物を噛む・飲み込むなどの口の機能)の喪失 |
4級 | 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障害 |
5級 | – |
6級 | – |
7級 | – |
出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
「肢体不自由」の場合
肢体不自由は、「上肢」「下肢」「体幹」「乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害」に分けられ、それぞれに等級区分があります。ここでは、「上肢」「下肢」の等級区分を紹介します。
その他の区分については、厚生労働省の「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」からご確認いただけます。
肢体不自由(上肢)
上肢とは、肩・肘・手首・手・指を含む、腕全体のことです。等級区分を以下に示します。
1級 | ①両上肢(右腕・左腕の両方)の機能を全廃(その部位がまったく動かせない状態)したもの ②両上肢を手関節以上で欠くもの |
2級 | ①両上肢の機能の著しい障害 ②両上肢のすべての指を欠くもの ③一上肢(右腕または左腕)を上腕の2分の1以上で欠くもの ④一上肢の機能を全廃したもの |
3級 | ①両上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの ②両上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの ③一上肢の機能の著しい障害 ④一上肢のすべての指を欠くもの ⑤一上肢のすべての指の機能を全廃したもの |
4級 | ①両上肢のおや指を欠くもの ②両上肢のおや指の機能を全廃したもの ③一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの ④一上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの ⑤一上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの ⑥おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指を欠くもの ⑦おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指の機能を全廃したもの ⑧おや指又はひとさし指を含めて一上肢の四指の機能の著しい障害 |
5級 | ①両上肢のおや指の機能の著しい障害 ②一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害 ③一上肢のおや指を欠くもの ④一上肢のおや指の機能を全廃したもの ⑤一上肢のおや指及びひとさし指の機能の著しい障害 ⑥おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指の機能の著しい障害 |
6級 | ①一上肢のおや指の機能の著しい障害 ②ひとさし指を含めて一上肢の二指を欠くもの ③ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能を全廃したもの |
7級 | ①一上肢の機能の軽度の障害 ②一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障害 ③一上肢の手指の機能の軽度の障害 ④ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能の著しい障害 ⑤一上肢のなか指、くすり指及び小指を欠くもの ⑥一上肢のなか指、くすり指及び小指の機能を全廃したもの |
出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
肢体不自由(下肢)
下肢とは、股関節・膝・足首・足・足指を含む、脚のことです。等級区分を示します。
1級 | ①両下肢(右足・左足の両方)の機能を全廃(完全に動かせない状態)したもの ②両下肢を大腿(太もも)の2分の1以上で欠くもの |
2級 | ①両下肢の機能の著しい障害 ②両下肢を下腿(ひざから下)の2分の1以上で欠くもの |
3級 | ①両下肢をシヨパー関節(足の中ほどにある 足根骨どうしをつなぐ関節の一部。正式にはショパール関節)以上で欠くもの ②一下肢(右足または左足のどちらか)を大腿の2分の1以上で欠くもの ③一下肢の機能を全廃したもの |
4級 | ①両下肢のすべての指を欠くもの ②両下肢のすべての指の機能を全廃したもの ③一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの ④一下肢の機能の著しい障害 ⑤一下肢の股関節又は膝関節の機能を全廃したもの ⑥一下肢が健側に比して10センチメートル以上又は健側の長さの10分の1以上短いもの |
5級 | ①一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害 ②一下肢の足関節の機能を全廃したもの ③一下肢が健側に比して5センチメートル以上又は健側の長さの15分の1以上短いもの |
6級 | ①一下肢をリスフラン関節(足の中ほどの位置の関節)以上で欠くもの ②一下肢の足関節の機能の著しい障害 |
7級 | ①両下肢のすべての指の機能の著しい障害 ②一下肢の機能の軽度の障害 ③一下肢の股関節、膝関節又は足関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障害 ④一下肢のすべての指を欠くもの ⑤一下肢のすべての指の機能を全廃したもの ⑥一下肢が健側に比して3センチメートル以上又は健側(障害のない側の足)の長さの20分の1以上短いもの |
出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
「心臓、じん臓若しくは呼吸器又はぼうこう若しくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫若しくは肝臓の機能の障害」の場合
体の内側の臓器(内臓)や免疫などの働きの障害は、以下の等級区分となっています。
1級 | 機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの |
2級 | <ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害の場合>免疫の機能の障害により日常生活が極度に制限されるもの <肝臓機能障害の場合>肝臓の機能の障害により日常生活活動が極度に制限されるもの |
3級 | 障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの |
4級 | 機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの |
5級 | – |
6級 | – |
7級 | – |
出典:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」
精神障害者保健福祉手帳の等級区分
精神障害者保健福祉手帳の等級は1〜3級に区分されています。1級が自立での生活が困難な人(重度)、2級が日常生活が困難な状態だが自立は可能な人(中度)、3級は日常生活や社会生活において何らかの制限を受けている人(軽度)となります。
判断材料としては、付き添いがなければ外出できない、金銭管理や食事の準備が困難な場合は1級、付き添いなしでも外出可能だがイレギュラーな事態に一人で対応できない、衛生保持が一人では困難な場合は2級、日常的な家事はできるがルーティンが変わると対応できない、周囲とテンポを合わせて行動できる場合は3級が目安です。ただし、あくまで目安である点に留意しましょう。
具体例として、うつ病、双極症(躁うつ病)などの気分(感情)障害と、発達障害の等級区分を示します。
気分(感情)障害 | 発達障害 | |
1級 | 高度(重さ・深刻さ・症状の程度が非常に強いこと)の気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期(病気の症状が表れている時期)があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの | 主症状とその他の精神神経症状が高度(重さ・深刻さ・症状の程度が非常に強いこと)のもの |
2級 | 気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの | 主症状が高度であり、その他の精神神経症状があるもの |
3級 | 気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり、ひんぱんに繰り返すもの | 主症状とその他の精神神経症状(脳や神経の働きに関係してあらわれる症状全般)があるもの |
出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」
その他の区分については、厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」から確認できます。
療育手帳の等級区分
療育手帳の等級は、知能指数(IQ)と生活への支障の程度によって判定されます。厚生労働省の判定区分ではA判定とB判定があり、A判定が重度でB判定が中度です。
ただし、自治体によってはB1は中度、B2は軽度といったように、判定区分が細分化されるケースもあります。このように療育手帳の診断基準について、現状は自治体ごとに大きな差があることが問題となっています。今後は地域差による不都合が生じないよう、判断基準の全国統一化を目指し、アセスメントツールの開発や専門家の養成が進められている段階です。
具体例として、東京都「愛の手帳」の場合の等級区分を紹介します。
【東京都「愛の手帳」の場合】
区分 | IQ範囲・基準 | 状態・備考 |
A1(最重度) | 19以下 | 生活全般(食事・排泄・更衣・移動などの基本的な生活動作)で常時、個別的援助(声かけ、付き添い、身辺介助など)が必要 |
A2(重度) | 20〜34 | 社会生活(日常生活全般に加え、外出・対人関係・仕事・学習なども含む)には個別的援助が必要 |
B1(中度) | 35〜49 | 何らかの援助のもとで社会生活が可能 |
B2(軽度) | 50〜75 | 簡単な社会生活のルールに従って行動できる |
障害者手帳を取得する6つのメリット
障害者手帳を取得すると「障害者雇用での就職」「障害者控除・減免」「医療費の助成」「公共交通機関などの料金の割引」「生活・医療面の支援」「保育面での支援」などのメリットがあります。メリットを活用すると生活する上で必要な支出を抑えることも可能です。
しかし、障害者手帳を持っていても、各メリットの内容を理解していないと助成や割引の受け方や、相談する場所がわからず困ってしまうかもしれません。そのため、ここでしっかりと各メリットの内容を把握していきましょう。
障害者雇用での就職も可能になる
障害者手帳を取得することで、障害者雇用で企業に就職することが可能になります。障害者雇用とは、企業側が一般枠とは別に障害のある人を雇用するために設けたものです。採用後も障害の区分によって、仕事の内容を考えてもらえるのが一般枠との違いでもあります。
ただ、障害者雇用で求人を応募する場合にも履歴書や面接が必要となってきます。専門的な知識が必要となる障害者雇用の場合、家族内で悩むのではなく就労支援サービスの利用がおすすめです。Kaienでは障害者向けの就労サポートを行っており、就職実績も豊富なので、ぜひ相談してください。
障害者控除や減免で税金が安くなる
確定申告の際に、障害者手帳があると障害者控除や減免を受けられるのもメリットの一つです。
障害者控除は区分や条件によって、一定金額の所得税や住民税、相続税の控除を受けられます。具体的な控除金額は以下の通りです。
区分 | 所得税控除額 | 住民税控除額 | 相続税 |
障害者 | 27万円 | 26万円 | 10万円/年※満85歳になるまで |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 | 20万円/年※満85歳になるまで |
同居特別障害者(注) | 75万円 | 53万円 | ― |
(注)同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族で、納税者自身、配偶者、その納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている方です。
出典:国税庁|No.1160 障害者控除
出典:国税庁|No.4167 障害者の税額控除
出典:財務省|所得控除に関する資料
また、障害者手帳の交付を受ければ、障害のある方と生計を同じくする家族が所有して使用する車両の自動車税・軽自動車税や自動車取得税が減免されます。詳しくは居住の市区町村を管轄する自動車税事務所などへご相談ください。
加えて、少額貯蓄非課税制度として障害者手帳を持っている方が申告すれば、元本の合計350万円までの預貯金や合同運用信託、特定公募公社債等運用投資信託及び一定の有価証券などの利子が非課税になります。詳しくは金融機関等にお問い合わせください。
医療費の助成などの申請がしやすくなる
障害者手帳を取得すると自立支援医療費制度や、重度障害者・高齢重度障害者医療費の助成の申請がしやすくなります。中でも自立支援医療費制度は、特定の医療において医療費の負担額を少なくできるものです。所得によって負担額は変動しますが、1割の支払いで済むケースもあります。
他にも自治体によっては、医療費の助成や補助がプラスで行われている場合もありますが、名称や詳細が少しずつ異なるため、詳しくはお住まいの自治体やかかりつけの病院に相談してみましょう。
公共交通機関などの料金が割引になる
障害者手帳を持つことで、公共交通機関などの料金が割引になります。例えば、NHK放送受信料が全額又は半額免除をはじめ、他にも複数の割引制度があるので、以下を参考にしてください。
- 公共交通機関の運賃
- 上下水道料金
- 携帯電話料金
- 公共施設の入館料など
公共交通機関の割引が受けられるサービス内容を確認したい場合は、各自治体のホームページなどがおすすめです。
ちなみに、各鉄道会社でも障害者割引拡充の動きが出ており、精神障害のある方も割引対象になることが発表されました。例えばJRでは、2025年4月1日から下記条件を満たす精神障害のある方や同乗の介護者も割引対象になり、対象運賃の50%が割引になります。
- 第1種認定(精神障害者保健福祉手帳1級)を受けている障害者本人と介護者
- 第2種認定(精神障害者保健福祉手帳2級・3級)を受けている12歳未満の障害者本人と介護者
- 第1種・第2種認定を受けている本人単独(営業キロが片道100kmを超える場合のみ)
営業キロの制限がない鉄道会社もあるなど各社で条件が異なるため、詳しくは利用したい公共交通機関をご確認ください。
生活・医療面の支援が受けられる
障害者手帳を取得することによって、バリアフリーを目的としたリフォーム(手すり設置や段差解消など)費用の助成が受けられます。また、障害者手帳があれば車いすや歩行器、眼鏡やコンタクトレンズ、装具や義肢、義眼など「補装具費」支給制度の申請も可能です。詳しくは居住している市区町村の障害福祉窓口にお問い合わせください。
保育面での支援を受けやすい
障害者手帳の交付を受けている保護者は、保育面での支援も受けられます。障害者手帳と医師の診断書があれば、フルタイムで就労していなくても優先的に認可保育園への入園が可能です。また、障害者手帳を持つ保護者の世帯はシングルペアレントと同じ「保護世帯」の扱いになるため、保育料の減免・補助制度を利用することもできます。
発達障害の方が障害者手帳のメリットを活かして受けられるサービス例
上述したように障害者手帳の交付を受けることのメリットはたくさんあります。ここでは、発達障害の方が具体的にどのような福祉サービスを受けられるかについて、精神障害者保健福祉手帳3級を取得している方を例に見ていきましょう。
精神障害者保健福祉手帳3級の場合
精神障害者保健福祉手帳3級を交付されている方の場合、次のような福祉サービスを受けることができます。
- 障害者雇用に応募できる
- 所得税が27万円控除される
- 住民税が26万円控除される
- 相続税が満85歳になるまでの年数×10万円控除される
- 贈与税信託受益権の3,000万円まで非課税になる
- 預貯金等350万円までの利子が非課税になる
- 障害に関係する医療費の助成の申請がしやすくなる
- 公共交通機関の割引が受けられる(自治体・交通機関による)
- 航空旅客運賃割引を受けられる(航空会社による) など
このような就労や金銭面、生活面での支援を受けることによって、発達障害の方の生きづらさを軽減できる可能性があります。
障害者手帳のデメリットと注意点
メリットの多い障害者手帳ですが、もちろん取得のデメリットも存在します。
まず、障害者手帳を取得するためには、公的な書類や証明写真などを用意する必要があります。必要書類のひとつには医師の診断書もあり、診断書を発行するために診察料とは別に費用が必要です。また、障害者手帳は一度取得すれば終わりではなく、有効期限が定められています。有効期限が近づくと再申請をする必要があり、再申請にも時間がかかるのも事実です。
続いて、生命保険の加入は障害者手帳の申告が必要となり、保険会社にもよりますが障害者手帳を持っていない人に比べて、加入が難しくなります。加入できる場合でも、保険料が通常よりも高くなる可能性もあるので留意しておきましょう。
最後に、心理的抵抗も大きなデメリットです。障害者手帳を持つことで、周囲からの目が気になり始めることもあるので、よく考えて障害者手帳の取得を検討してください。
種類別 障害者手帳の取得方法
ここでは、障害者手帳の取得方法を種類別に詳しく解説していきます。障害者手帳の取得には複数のステップがあり、事前に手続きの流れを理解しておくだけで、実際に行う際も手続きがスムーズです。
また、ここで紹介する取得方法はあくまでも一般的な流れであり、実際に障害者手帳を取得する際は各都道府県によって、必要書類や手続き内容が異なる場合もあるので注意して見ていきましょう。なお、いずれの手帳も各市町村によって必要書類や申請方法は若干異なります。
身体障害者手帳
身体障害者手帳取得の流れは以下の通りです。
①必要書類の準備 住んでいる市区町村の窓口にて、「申請書」「指定の診断書書式」を受け取る
②診断書作成 都道府県が指定した指定医に診断書を作成してもらう。
③申請 市区町村の窓口に「申請書・診断書・証明写真」などの必要書類を提出する。
④判定と交付 都道府県で判定後、市区町村の窓口で手帳を受け取り、手続き完了。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳取得の流れは以下の通りです。
①精神科受診 初診から6ヶ月後に手帳申請が可能。ここで精神障害者保健福祉手帳を取得したいと主治医に伝えておく。
②診断書作成 住んでいる市区町村の窓口にて、「申請書」「指定の診断書書式」を受け取った後、主治医に診断書を作成してもらう。
③申請 市区町村の窓口に「申請書・診断書・証明写真・郵便はがき」などの必要書類を提出する。
④審査 申請後、約2~3ヶ月で審査結果の通知がくる。
⑤交付 市区町村の窓口で手帳を受け取って手続き完了。
療育手帳
療育手帳取得の流れは以下の通りです。
①申請 市区町村の窓口や障害福祉センター、などで療育手帳の申請をする。
②判定 障害福祉センターや児童相談所(18歳未満)にて、「IQテスト・問診・面接」をする。
③審査 判定から約1~2ヶ月で結果の通知がくる。
④交付 市町村の窓口や郵送などで療育手帳を受け取り、手続き完了。
障害者手帳の取得と共に利用されることの多い就労支援サービス
障害者雇用での就労に不安がある場合には就労支援サービスの利用がおすすめです。就労支援サービスを行う施設には、「就労移行支援所」「ハローワーク」「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」があるので、ここではそれぞれの特徴や支援内容を解説していきます。
これらのサービスはすべて障害者手帳がなくても受けられますが、手帳の取得と共に利用されることが多いです。各支援サービスの特徴を理解して、自分に合いそうな支援サービスを選びましょう。
就労移行支援所
就労移行支援所は障害のある方を対象に、一般企業への就職をサポートする福祉サービス機関です。利用者は就労移行支援所に通いながら主に職業訓練や講座受講などを行い、就労に向けた知識・スキルを習得していきます。加えて、障害や適性に合った職場探しや就職活動のサポート、定着支援なども実施しているのが特徴です。
また就労移行支援所では、障害者手帳がなくても障害福祉サービス受給者証を取得することで、サービスを利用できる場合もあります。障害者手帳が必要かどうかだけでなく、取り扱うサービス内容も各就労移行支援所で異なるため、特徴の違いを理解し自分に合った支援所を探してみましょう。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、厚生労働省が運営する総合的雇用サービス機関です。求職者や求職事業主を対象に、無料で職業の相談や紹介を行います。
障害のある人への就職活動のサポートも充実しており、専門知識のある職員や相談員が障害者専門の支援体制を整えているのも特徴です。サポートはハローワーク内だけではなく、採用面接への同行や就職面接会の開催など幅広く実施しています。こちらも障害者手帳がなくても利用可能です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営する、障害のある人を対象にした職業リハビリテーションを提供する施設です。施設は全国47都道府県にあり、ハローワーク(公共職業安定所)と連携しています。
主に、障害のある人の就職や職場復帰、就職後のサポートなどの支援を実施しており、職業リハビリテーション計画を作成し、作業体験や職業準備講習なども行っているのが特徴です。障害者手帳がなくても利用が可能なので、安心して相談してみましょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害のある人が自立・安定した職業生活の実現を目指す支援機構です。2023年4月1日時点で全国に337の拠点があり、ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携して就業支援を実施しています。
また、福祉事業所や就労移行支援事業所と連携し、日常生活や地域生活での助言をするなど、生活支援にも関わっているのが特徴です。保健所や医療機関とも連携しているため、障害者就業・生活支援センターを通じて様々な機関と繋がれる仕組みづくりをする場所でもあります。
Kaienの就労移行支援
Kaienでは発達障害の方に特化した就労移行支援を行っています。Kaienの就労移行支援では、常時100種類以上の幅広い職業体験ができるため、自分に合った適職が見つかります。具体的には、経理・人事・データ分析などの事務スキル、軽作業など手や体を動かす仕事のスキル、伝統工芸といったもの作りスキル等が獲得可能です。加えて、プログラミングやデザインの技術を身につけたい方のために専門コース(クリエイティブコース)も設けています。
また、社会スキル・自己理解の向上のためのカリキュラムや独自求人の紹介、担当カウンセラーによる二人三脚の就活支援や定着支援など、手厚いサポートもKaienの特徴です。
Kaienの自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)では、就労に必要となる生活リズム・生活習慣の改善や社会スキルの向上、自分の障害や特性を理解した上での進路選択、周囲への合理的配慮の求め方などを身につけることが可能です。
Kaienは生活リズムが乱れている方や就活に取り組む自信がまだない方などを対象とした自立訓練(生活訓練)も実施しており、発達障害の強みを活かせる訓練内容や自己理解に役立つ講座を用意しています。
就労移行支援と自立訓練(生活訓練)は原則として併用できないため、自分にどちらが合っているか迷う方はお気軽にご相談ください。
障害者手帳を取得するメリットを上手く活用しよう
障害者手帳を取得することで、「障害者雇用枠での就職」「所得税・住民税・相続税などの障害者控除や自動車税の減免、預貯金の非課税」「医療費や補装具・バリアフリーへのリフォーム費用などの助成」「公共交通機関などの料金の割引」「保育面での支援」など様々なメリットがあります。ただし、障害の区分ごとに手帳の種類や手続き内容は異なり、手続きには時間がかかるなどのデメリットも理解しておかなければなりません。
障害者手帳を取得した後は、障害者雇用を活用して働く場を探してみるのもおすすめです。就労支援サービスには、就労移行支援所、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがあり、サポート体制も充実しています。
障害者手帳がなくても支援サービス自体は利用できるので、障害者手帳の有無に限らず就職を希望する人は安心して就労支援サービスに相談してみてはいかがでしょうか。
Kaienは主に発達障害の方に向けた就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を実施しています。幅広い職業体験や自己理解に役立つカリキュラム、他事業所で扱っていない独自求人の紹介や担当カウンセラーによる手厚い就活サポート、定着支援がKaienの特徴です。無料の見学会や体験利用も行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます