Kaienでの学びが導いた「自分らしく働ける場所」ーMさんが理想の職場を見つけるまで

▪年齢:20代後半
▪診断名:ADHD、境界知能(IQ70)
▪仕事における苦手なこと:マルチタスク、未経験のことを覚えること(時間がかかる)、複雑な説明が理解しにくい、見通しや優先順位付けが苦手
▪就職:総務庶務(障害者雇用枠)


就職を機に人との違いを感じるように

―――幼い頃はどんなお子さんでしたか?

新しいことを覚えるのが苦手な、忘れっぽい子どもでした。例えば、「外から帰ってきたら手を洗う」と教わってもすぐには覚えられず、1ヶ月ほどかけてやっと覚えていたそうです。

覚えてもなかなか習慣化されず、「新しいことを1つ覚えると、何かを1つ忘れていくような状態だった」と親からは聞きました。

―――周囲と自分が違うと感じたことはありますか?

今思えば、忘れっぽさは特性によるものだったのかもしれませんが、当時は「人よりもゆっくりしているな」と思った程度でした。

学生時代にも特に困りごとを感じることはなかったのですが、信用金庫に就職してから自覚し始めました。まず感じたのは、入社後の研修中に周りの同期と比べて物覚えが悪いことでした。

また、支店に配属されてからも業務をなかなか覚えられず、スピードについていけないことにとても悩みました。

―――診断名と苦手なことを教えてください。

診断名は、ADHDと境界知能です。物事の見通しを立てたり、優先順位をつけて行動したりすることが不得手です。

仕事においては、ルーティン業務は問題なくこなせるものの、新たな業務が加わったときに自分のキャパシティを考えながら計画的に進めていくことに難しさを感じます。

(Mさんが静岡県三島市で街歩き中に撮影した源兵衛川の流れる風景)

訓練を通して大きく成長したことを実感

―――Kaienで訓練をはじめようと思ったきっかけを教えてください。

発達障害*の診断を受けたときに、「障害者雇用の枠で働きたい」と思ったのがきっかけです。いろいろな支援施設やサービスを調べている中でKaienを見つけて、見学に行きました。

決め手になったのは、実際の職場を想定した環境下で訓練を受けられることと、Kaienの独自求人「マイナーリーグ」があることです。

実は、私はKaienを今までに2回利用しています。1回目のときはKaienでの訓練を経て経理の仕事に就いたのですが、業務量が多いなか定時で上がらなければならず、うまく仕事を回せないことに悩んだ結果、体調を崩して退職してしまいました。

その後、体調が回復して再び就活をする際にもKaienを選びました。1回目に利用したときに「また利用したい」と思えるほど、いい環境だったからです。

―――2回目の訓練ではどのようなことに取り組みましたか?

週替(しゅうがわり)コースで、経費精算や顧客伝票修正などの事務作業やグループワークに取り組みました。

グループワークは、「4~5人で採用業務を行う」という内容で、面接の動画や履歴書を見た上で誰を選ぶかを全員で話し合いました。

―――訓練を通して、苦手なことや特性について、何か対策を見つけることはできましたか?

自分から質問や相談をするのが苦手だったことを改善できました。

例えば、グループワークではサブリーダーになることが多かったのですが、リーダーが不在のときには私がみんなをまとめるべきところ、どうしたらいいのか分からず、動けなくなってしまうことがよくあったのです。

しかし、そこでKaienの講師にアドバイスをもらいに行ったり、同じグループのメンバーに自分の苦手なことを伝えたりしていくうちに、自分から積極的に質問できるようになったのです。これは大きな成長でした。

―――訓練で印象に残っていることはありますか?

自由参加で行われていた、他の訓練生やスタッフとの「雑談タイム」が印象に残っています。訓練生同士で自然と話が続くこともあれば、「今日は何の日ですね」とスタッフが話題を提供してくれて、それに対してみんなで話すこともありました。

自由参加とはいえ、継続的に参加するうちに同じメンバーと顔を合わせることが多く、安心感がありました。みんなといろいろな話題で盛り上がれて、とても楽しかったです。

(「おいしいものを食べるのが好き」なMさん。川越で食べ歩きをしたときに食べた黒ごまソフト)

周囲の支えが就活の原動力になった

―――早い時期から就活をはじめていたそうですが、その理由を教えてください。

2回目にKaienを利用していたときは、「早く就職したい」という強い思いがありました。仕事をしていると気持ちの切り替えがしやすいですし、人と関わることで充実感が得られるからです。前職を退職後、しばらく入院をしていたこともあり、より就職への思いが強くあったのかもしれません。

―――就活では、どういった業種・業界を目指しましたか?

訓練で行った経費精算の業務が楽しかったので、経理の仕事を探しました。その他に軸にしていたのは、土日祝日が休みであること、月給18万円以上であること、離職率が低いことです。離職率を重視したのは、前職での「うまく仕事が回せないことに悩んで体調を崩す」という経験から、「次は適切な業務量で、長く働ける環境を選びたい」と思ったからです。

就活では全部で6社受けました。しかし最初に応募した5社はすべて書類で落ちてしまいました。早く就職したかったので、当時はひどく落ち込みました。

ただ、Kaienの講師やスタッフが声をかけてくれたり、話を聞いてくれたりしたおかげで、気持ちを引きずることなく次に進めました。励ましてもらえたことがとてもうれしかったですし、それが次に進む原動力になったと思います。

6社目に応募する前には、書類を見直してもらい、書類に記載したほうがいいことと、記載しなくてもいいことを一緒に整理しました。いろいろな視点から見直すことができてよかったです。

修正した書類を提出して応募したおかげで、無事に内定をもらうことができました。

―――現在の職場での仕事内容を教えてください。

旅費精算を担当しています。暗算するのは苦手ですが、数字を確認するなどの細かい作業は得意なので、自分に合っているなと感じています。

入社後しばらくは面談の時間を毎日設けてくれていたので、悩みを抱えることなく仕事に取り組めました。上司から、「様子を見ていると、仕事に慣れてきたのが伝わってくるよ」と言われたときは、とてもうれしかったです。

現在は、体調や気分、思ったことなどを入力できるシステムを使って日報を出して、体調の変化や悩みなどを共有できています。ちょっとした変化でも日報に書くと、その都度面談を設けて詳しく話を聞いてくれるので、ありがたいです。

4月に入社しましたが、今のところ困ったことは一度もありません。恵まれた環境で働けて幸せです。

―――今後の目標や挑戦したいことはありますか?

後輩ができたときに、仕事を教えられるような先輩になりたいと思っています。

今の職場にはいつでも声をかけやすい雰囲気があり、質問をしても嫌な顔をする人がいません。気軽に話しかけられる人が多いので、それが働きやすさにつながっていると思います。私も先輩たちのように、優しく教えられるようになりたいです。

付録  ~Mさんのこと~

(Mさんが以前、草津温泉の湯畑に行ったときの眺め)

私の趣味は、旅行をしたり、美味しいものを食べたりすることです。来月は温泉に、再来月は花火大会に行く予定で、今からとても楽しみにしています。また、身近にあるお気に入りのお店に、ふらっと一人で食事に行くのも好きです。

自分で料理をするのはあまり得意ではないのですが、今後は簡単な料理からチャレンジしていきたいです。


*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。

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