▪年齢:30代前半 ▪診断名:自閉症スペクトラム ▪仕事における苦手なこと :こだわりの強さ、突発的な事象への対応、不安感が強い ▪就職先:事務職(障害枠) |
感情のコントロールが苦手で、こだわりも強かった
―――幼い頃はどんなお子さんでしたか?
車や標識、三輪車に乗るのが大好きな子どもでした。保育園ではミニカーを一列に並べてみたり、三輪車を自由に走らせて満足していたり、一人の世界に没頭するのが好きでした。ただ、言葉を話し始めるのは少し遅く、2歳半くらいだったと聞いています。
―――周囲と自分が「何か違う」と感じたことは、ありましたか?
20歳前後になると感情のコントロールが難しくなる時がありました。また、それまで気にならなかった音が気になるようになり、聴覚過敏の症状も出てきました。そのため、当時はノイズキャンセリング付きのイヤフォンをいつも持ち歩いていました。
ただ、薬の服用をすることで症状は軽減したため、今では安定的に生活できています。
―――診断名・特性を教えてください。
4歳の頃に医師から自閉症スペクトラムと診断されました。苦手なこととしては、イレギュラーなことに対応することです。
また、人が怒っているかどうかなど、人の感情を理解するのも苦手です。想像することが得意ではないので、見通しがつかないと先が見えなくなったり不安になったりすることも多々あります。
精神的に弱っていた時にKaienと出会う
―――Kaienに通う前は何をされていましたか?
高校卒業後、職業訓練校に通い、その後就職をしました。しかし、思春期が遅れてきたこともあって、自分の気持ちが不安定になることがあり、また悩み事を周りに相談することもできず、会社を辞めることになりました。
当時は新型コロナウイルスが流行していたこともあり、希望の職種や職場環境なども選ぶこともできず離職してしまい、精神的にとても疲れてしまいました。
―――Kaienを利用するに至った経緯を教えてください。
母と兄に勧められたことがきっかけです。3日間の体験実習で私もKaienを気に入り、2月にKaienに入所しました。
体験の時に、スタッフが丁寧で優しかったことが気に入った一番の理由ですが、通勤で大好きな電車に乗ることもできるので、私にとっては最適な環境だったと思います。
―――職業訓練では、どのようなことをしていましたか?
事務と軽作業のプログラムを7ヶ月ほど行っていました。以前の仕事の経験を活かせる部分もあり、楽しく取り組むことができたのですが、そもそも手先を使った器用さが求められる作業や、パソコンを使ったデータ入力は自分に合うと感じています。そのため、とてもやりがいを感じられました。
職場で必要な力は、感情をコントロールする力。認知を変える力。我慢する力

―――Kaienを通して学んだことを教えてください。
仕事への向き合い方や、「報連相」の重要性を再確認できたと思っています。実際、訓練を行う中で、それらが仕事の結果を大きく左右するものなのだということが分かったのです。そのため、訓練ではどのような状況でも自然と実行できるように指導していただきました。
また、ミスをした時は、上司の指摘をしっかり受け入れ、同じミスをしないようにしました。
―――訓練では、苦手なことにどのように向き合ってきましたか?
私の苦手なことは、自分の気持ちをまとめ、相手に分かりやすく伝えることです。あとは、急な予定変更があった時に臨機応変に対応することも苦手です。
そうした苦手と向き合うのはなかなか難しかったのですが、スタッフや講師に相談することで、徐々にマイナス思考から前向きに物事を捉えられるようになっていきました。「自分には就職できる力がある」と信じ、前に進み続けました。
また、Kaien川崎の環境が自分にとても合っていると感じていたので、そのことが苦手なこととも向き合い、頑張り続けられた要因でもあります。毎日安心して過ごせる環境があったからこそ、今の良い結果につながったのだと感じています。
―――特に思い出に残っていることを教えてください。
2024年6月に開所した「Kaien千歳烏山」で使用するチラシとカレンダーの折り込み作業を、皆で協力して取り組んだことが印象に残っています。
その際も、こまめにコミュニケーションを取りながら作業を行ったことで上手くいったので、今後も周囲との連携を大事にできれば、就職しても長く働き続けられると学びました。
内定を取れると信じて、ひたむきに進み続けた
―――就活で難しかったことを教えてください。
自分に自信を持って就活に臨むことが難しかったです。私は過去に2回仕事をやめた経験があったため、なかなかすぐに就職するのは難しいだろうと思っていました。合同説明会などは、大勢の人が参加するため、「受かるはずがない」と決めつけて一度も参加しませんでした。
―――その葛藤を、どのように乗り越えましたか?
まずは、毎日”Kaienにしっかり通う”ことを意識していました。ここで就職しなかったら、前に進めなくなってしまう。立ち止まったら、また最初からやり直すことになってしまうという気持ちがあったので、とにかく休まないようにしていました。地道に頑張れば、必ず就職できると信じ続けました。
―――就活ではどの業界を目指しましたか?
前職の事務経験を活かせる仕事を探していました。また、趣味で週末にサッカーをしているので、可能であれば土日休み、かつ特例子会社で働きたいと思っていました。
―――就活を終えて、新しい環境に向かう今の気持ちを教えてください。
雇っていただいた会社に、真面目に働き続けることで貢献し、定年まで勤め上げたいと思っています。Kaienで学んだことを活かし、信頼を得たいです。
また、困ったことがあれば周囲に早めに相談し、悩み事が小さなうちから解決していきたいと考えています。
付録 〜Oさんのこと〜
私は7年以上、サッカークラブに所属しています。2017年に友人の紹介を受けて入部しました。活動は毎週日曜日です。
長くBチームに所属していましたが、今年は大会で最優秀選手にも選ばれ、金メダルと表彰状をいただきました。この活躍によって最近はAチームの練習に参加するようになりました。Aチームの厳しい練習にも、前向きに取り組んでいます。
フォワードとしてプレーしており、脚の速さとシュートの威力には自信があります。みんなで行動するのも楽しく感じられるようになり、サッカーをこれからも続けていきたいです。
サッカーがない休日は、マラソンやスイミングをすることが多いです。マラソンの日は午前中はランニングをして、午後はお出かけします。スイミングは月に1回、スイミングスクールで鍛えています。これからも運動は続けていきたいです。
人気の記事はこちら
-
2024.12.9
ポイントは「少しずつ」。口頭指示の理解やマルチタスクが苦手なSさんが見つけた対策
▪年齢:20代前半▪診断名:ASD▪仕事における苦手なこと:口頭での指示理解、マルチタスク▪就職した職種:事務職(障害枠) 口頭での指示の理解やマルチタスクが苦手 ―――幼い頃はどんなお子さんでしたか? ミニカーやテレビ […]
-
2025.1.10
自分の長所を見つけられずにいたYさん。訓練の成果が自信に
▪年齢:30代前半▪診断名:ADHD、双極性障害▪仕事における苦手なこと:マルチタスク、聴覚情報の処理、空気を読むこと、片付け、金銭管理▪就職した職種:事務職(障害者枠) マルチタスクや聴覚情報の処理が特に苦手 ―――幼 […]
-
2024.12.25
自己分析が、自分を知るきっかけに!Oさんが“第一希望の会社”に就職できた理由
▪年齢:40代後半▪診断名:ASD▪仕事における苦手なこと:臨機応変な対応、口頭指示、同時並行で作業を行う▪就職:専門職(IT・障害枠) 仕事で出会ったお子さんが、幼少期の自分と重なった ―――幼い頃はどんなお子さんでし […]
-
2024.11.20
「どんな特性の人にも居場所を作ってあげたい」成果主義だったOさんが変わった理由
▪年齢:20代半ば▪診断名:ADHD▪仕事における苦手なこと:時間や持ち物などの管理▪就職した職種:事務職(特例子会社) ※記事に挿入しているお写真は実際にOさんからご提供いただいたものです。 成果が求められる業務で結果 […]
-
2024.8.21
見極めのカギは「職場実習」!自分に合った会社で安定して働く
Kaienで実施しているプログラムの一つである『ようこそ先輩』は、Kaienの就労移行支援を修了し、実際に働かれている先輩方の生のお話を聴ける会です。本記事は、そのインタビュー動画の内容を編集し、記事にまとめています。 […]
-
2025.2.20
生活リズムの改善から始めたKaienでの生活訓練。辛いことも相談も書き出すことで前進!
▪年齢:30代前半▪診断名:うつ、適応障害、不安障害▪特性/苦手:対人コミュニケーション、白黒思考、不安感が強い▪就職:事務補助 「観察の虫」だった幼少期 ーーー幼い頃はどんなお子さんでしたか? 小さい頃は、常に人と違う […]
まずはお気軽に
見学・個別相談会に
来てみませんか?
当社サービスの説明、事業所見学、個別相談を行っています。全体で約1時間。参加は無料です。
日によっては当日体験も可能。ご家族、支援者の方の同席もできます。ぜひお気軽にご来所ください。