大人のADHDは何科に行けばいい?受診から診断までの流れや医療機関を探す方法を解説

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発達障害*の一種であるADHD(注意欠如多動症)は、一般的に子どものころからその特徴が現れます。しかし大人になって社会人としての責任やストレスが大きくなってはじめて、ADHDに気付く方も少なくありません。

こうした大人のADHDの方は、どのような医療機関に行けばよいのか悩んでいる人も多いでしょう。本記事では、大人のADHDは何科に行けばいいのか、受診から診断までの流れについて解説します。

医療機関を探す方法や医療機関以外の相談先についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

「ADHDかも?」と思ったら何科を受診したらいい?

ADHDは「脳機能の障害」や「神経発達の遅れ」などと説明されます。また、心の病気のようにもみえる場合もあります。このため、大人のADHDを疑った場合に、どのような医療機関に相談したらよいのか迷っている方もいらっしゃることでしょう。

ここでは大人のADHDの診療が受けられる医療機関や、精神科と心療内科の違いについて解説します。

大人のADHDの診療は精神科や心療内科で受けられる

大人の方が「もしかしたら自分はADHDかもしれない」と思ったときは、精神科または心療内科のある病院、クリニックで診療を受けられます。

ADHD以外の発達障害(LD、ASDなど)についても精神科または心療内科で診療を受けられるため、どの発達障害にあたるのかわからない場合でも問題ありません。

ただし、発達障害という概念が日本で導入されたのは1980年代ごろからという背景もあり、精神科や心療内科であっても診療できる医師がいない場合や、診療はできても薬物の処方ができないケースがあります。こうした場合は、近年増えている大人の発達障害の専門外来を受診することをおすすめします。

なお、15歳未満の場合の受診先は、小児科または児童精神科です。

精神科と心療内科はどう違う?

精神科と心療内科のどちらかを受診すればよいのか、迷った方もいるのではないでしょうか。精神科と心療内科はおおまかに次のような違いがあります。

精神科心療内科
受診するケース心の病が原因で心に症状が現れているとき心の病が原因で体に症状が現れているとき
症状例・抑うつ感
・物忘れがひどい
・強い不安、など
・疲労感
・頭痛
・めまい、など

このように精神科と心療内科は本来、異なる診療科目です。しかし、街のクリニックなどでは同じ意味に使われている場合も多いため、注意が必要です。

また、心と体の両方に症状が出ている場合や、自分で判断できない場合もあるかもしれません。こうした場合は、精神科と心療内科のどちらもある医療機関を選ぶと安心です。症状を伝えると、どちらが適当か判断してもらい、受診先を決めてもらえます。

大人のADHDの特徴と困りごと

ADHDの症状の特徴として、以下の3つが挙げられます。

  • 不注意
  • 多動・多弁
  • 衝動的な行動

こうした特性から、以下のような困りごとが生じる場合があります。

症状困りごとの例
不注意・騒音や雑音があると、すぐに注意が散漫になる
・仕事や生活で忘れ物が多い
・約束の時間に遅れる、約束を忘れる
多動・多弁・単調な仕事や読書、計算を持続することが苦痛
・他人の話をさえぎり、一方的にしゃべり出してしまう
衝動的な行動・短気で、ささいなことで自分を見失うことや、突発的に怒り出すことが多い
・衝動買いをしてしまう

上記のような困りごとは、社会人としての責任が増し、他人と協力して働くようになってから目立つようになるケースがあります。心身不調になったり、周囲の人との違いを意識するようになったりしてはじめて、ADHDだと気付く大人の方も少なくありません。

関連記事:大人のADHD(注意欠如多動症)は治療で改善可能?原因や困りごとへの対処法を解説

##発達障害の受診から診断までの流れ

ADHDを含めた発達障害の方が医療機関にかかった際の基本的な流れは以下の3ステップです。

  1. 問診(症状の聞き取り)
  2. 検査(障害の有無や程度、特徴の判定)
  3. 診断(検査結果に基づく医師の判断)

順番に説明します。

問診

問診では、医師が本人から現在の症状や困りごと、これまでの生活などについて聞き取りを行います。発達障害の場合、本人の自覚がない場合もあることから、家族や周囲の人間からも聞き取ることも一般的です。

この問診をスムーズにかつ正確なものとするためには、以下のような情報をまとめておくとよいでしょう。

  • 生活歴のメモ(小学校のころから怒りっぽくケンカが多かった、会社に入ってから遅刻が多い、など)
  • 困りごと(抑うつ感がある、ささいな騒音や雑音が気になる、など)
  • 他の病気(てんかん発作を起こしたことがある、うつ病と診断された、など)
  • 生育歴(母子手帳、学校の成績表など)
  • ADHDのセルフチェックの結果(インターネット上で利用できる「ASRS-v1.1」の結果など)

現在だけでなく過去を含めて情報を集める理由は、発達障害は生涯続く特性のため、小さいころから特性が見られるはずだからです。

検査

発達障害の検査方法は複数あります。そのため、どの検査が用いられるかは一概にいえませんが、各医療機関は主に以下のような検査を実施しています。

検査は診断に必須ではなく、検査で診断が確定することもありません。あくまで診断にむけた補助的な情報になります。

種類内容
スクリーニング検査・発達障害の可能性がある人を抽出するための検査
心理検査・発達障害の可能性がある人に対して行われる専門的な検査
・知能指数(IQ)検査、発達検査、人格検査(描画テスト、文章完成法など)などがある
認知機能検査・頭の使い方や得意・不得意分野などを検査する検査

診断

診断は、アメリカ精神医学会が作成したDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に基づいて行われます。ADHDの場合、以下のような条件を満たすとADHDと診断されます。

  • 不注意、多動・多弁、衝動的な行動がみられる
  • 症状のいくつかが12歳以前から認められる
  • 障害の影響が仕事や日常生活に及んでいる、など

しかし、発達障害の診断は、明確な線引きをしにくいのが特徴です。このため、発達障害と診断されるほどではないが、その傾向や特徴を持った人を通称「グレーゾーン」と呼び、症状がない人と区別しています。

結局のところ、発達障害の診断は医師の総合的な判断に基づきます。診断結果に納得できない場合は、他の医師から診断を受けるのも選択肢の一つです。

関連記事:発達障害グレーゾーンとは?特徴や困りごと、対策についても解説

発達障害を診られる医療機関を探す方法

発達障害を診療している医療機関を探す方法としておすすめなのは、市町村保健センターに相談する方法です。

市町村保健センターとは、地域住民の健康を支えるために全国各地に設けられている機関です。市町村保健センターには医師や精神保健福祉相談員などの知識を持ったスタッフが在籍しており、適切な医療機関について助言してもらえます。

また、一部の自治体が公開している発達障害者向けの医療機関リストから、自分で探す方法もあります。例えば東京都では、東京都福祉局のホームページからリストを閲覧可能です。

参考:東京都福祉局「発達障害」

医療機関以外にも発達障害の相談先は多い

医療機関以外にも発達障害の相談先は数多くあります。代表的な相談先を以下に示します。なお、自治体や機関による対応範囲の違いもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

【日常生活に関する相談先】

発達障害者支援センター・発達障害者を総合的に支援する機関・発達障害者の方やそのご家族のさまざまな相談に応じ、保健や医療、福祉、教育、労働などの関係機関を紹介している
精神保健福祉センター・精神保健及び精神障害者福祉に関する総合的技術センター・心の健康づくりや社会復帰などを支援している
自助グループや家族会・同じ発達障害を持つ方やそのご家族の集まり・認知特性や困りごとの原因を理解したり、悩みを打ち明けたりする場を提供

【就労に関する相談先】

就労移行支援事業所・実践的な職業訓練や求人紹介を含む就職活動のサポート、就職後の定着支援などを行う機関
地域障害者職業センター・障害者に対する専門的な職業リハビリテーションサービスや助言などを提供する機関
障害者就業・生活支援センター・地域に住む障害者が職業生活で自立できるように、就業面と生活面の一体的な支援を行っている機関
ハローワーク・求職者向けに求人情報の紹介や職業訓練、雇用保険の手続きなどのサービスを提供する機関

このように、目的に応じてさまざまな機関を活用できます。例えば、就労移行支援事業所の中には発達障害に特化したサービスを提供しているところもあり、適職を探したり、障害を理解して対策を立てるのに役立つでしょう。

大人のADHDの悩みは専門機関に相談してみよう

大人になってから「もしかしたらADHDかもしれない」と医療機関に相談する方は少なくありません。社会人になってから障害の負担を重く感じ始めた方もいらっしゃるでしょう。大人のADHDの悩みは、専門機関に相談することをおすすめします。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます