過集中とは?メリット・デメリットと発達障害との関係

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過集中とは、時間を忘れて過剰に集中してしまう状態のことをいいます。集中力が持続するのはメリットともいえますが、「食事や睡眠を削ってしまって体調を崩す」「ルールや優先順位を守れず周囲との関係が悪化する」といったデメリットもあるため、対策が必要です。

この記事では、過集中の概要や発達障害*との関係、具体的な対策について紹介します。過集中に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

過集中とは?

過集中とは、物事に過剰に集中してしまうことです。「集中力があるのは良いことでは?」と思われるかもしれませんが、過集中は日常生活に支障が出るほど集中してしまう状態を指します。

例えば、「食事や睡眠をとるのも忘れて1つのことに集中してしまう」「集中しているときは何度名前を呼ばれても気づかない」といったケースです。このような症状があると、体調を崩したり周囲との関係が悪くなったりするおそれがあるため、注意しなければなりません。

過集中とASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)・ADHD(注意欠如多動症)の関係

過集中は、ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)やADHD(注意欠如多動症)と関係があると言われることがあります。

ここでは、過集中とASD・ADHDとの関係について解説します。

ASDの特徴と過集中との関係

ASDの人には、「特定の物事に対して強い興味・こだわりがある」「自分で決めたルールを変えるのが苦手」などの特性が見られます。これらの特性を持った人は1つのことに集中しやすく、過集中になりやすいという特徴があります。

ただし、「過集中はASDの特性の1つ」というわけではありません。あくまでも、「こだわりが強い」といった特性の結果、過集中を引き起こすことがあるということです。

「ASDの人は必ず過集中になる」「過集中はASDのサイン」というわけではないことは、理解しておきましょう。

ADHDの特徴と過集中との関係

ADHDの特性として、「興味がないことには集中できない」「じっとしているのが苦手」「衝動的に行動してしまう」などが挙げられます。

このような特性があると、1つのことに没頭し続けてしまう過集中は起きにくいと思ってしまいがちですが、実はADHDの人も過集中を起こすことがあります。

その理由は、ADHDの人のなかには興味がないことには集中できない一方で、興味を持ったものに対しては集中しすぎてしまい、切り替えるのが苦手な人もいるからです。

ただし、「ADHDの特性の1つに過集中がある」というわけではありません。ASDの場合と同じく、あくまで「ADHDの特性によって過集中を起こすことがある」と理解しておくとよいでしょう。

過集中によるメリット

過集中は悪いことばかりではありません。高い集中力を発揮できるのは、メリットでもあります。

例えば、過集中のときは短時間で仕事を終えられて高いパフォーマンスを発揮できるのは、仕事をするうえでのメリットです。「通常は5時間かかる作業を3時間で終わらせた」など、職場の生産性アップに貢献できます。

「集中力が続かないことが悩み」という人もいるなかで、高い集中力で仕事に取り組めるのはメリットといえるでしょう。

過集中によるデメリット

高い集中力を発揮できるのはメリットですが、集中しすぎることで引き起こされるデメリットもあります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 疲れやすい
  • 日常生活や社会生活に支障をきたす可能性がある
  • 興味がないことは取り組みづらい
  • 特定のものに依存しやすい

4つのデメリットについて、詳しくみていきましょう。

疲れやすい

1つのことに長い時間集中していると、かなりのエネルギーを消費します。その結果、疲れやすいのが過集中のデメリットの1つです。しかも、集中している間は疲れを感じにくいため、集中が切れたときに一気に疲労が襲ってきます。

過集中の場合は適切なタイミングで休憩をとることが難しく、「体調を崩すまで疲れていることに気づかなかった」というケースもあるため、注意が必要です。

日常生活や社会生活に支障をきたす可能性がある

時間を忘れて集中してしまうと、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまうことがあります。例えば、以下のようなケースです。

  • 食事をとるのを忘れる
  • 睡眠時間を削って作業してしまう
  • ほかにやるべき作業があるのに別の作業に没頭してしまう
  • 集中しているときは話しかけられても気づけない など

食事をとらないと低血糖や栄養失調につながりますし、睡眠時間が不十分では次の日の授業や仕事に支障が出てしまいます。

優先順位が高い作業に集中できれば良いのですが、そうでないこともあるでしょう。優先順位の低い作業に集中してしまうと、本来やるべきことが終わらないといった事態も出てきます。

過集中の人は「集中していると周囲の声が耳に入らない」という場合も多いものです。本人に悪気がなかったとしても、話しかけられても気づかないことが続くと相手は「無視されている」と感じて、周囲との関係が悪くなってしまうこともあります。

興味がないことは取り組みづらい

興味があることには高い集中力を発揮できる一方で、興味がないことには集中できない点もデメリットといえるでしょう。例えば、「ゲームは時間を忘れて集中してできるのに、学校の課題には全然取り組む気にならない」といったケースが考えられます。

興味がなくても、日常生活や社会生活を送るうえで取り組まなければならないことはたくさんあります。しかし、「やるべきことに限って集中できない」という人がいるのも事実です。

特定のものに依存しやすい

過集中は、ネットやゲームなど特定のものに依存しやすい点にも注意しなければなりません。ネットやゲームに強く依存してしまうと、睡眠時間を削ってのめり込んだり、高額な課金をしてしまったりするおそれがあります。

適度に楽しむ分には問題ありませんが、依存しすぎるとさまざまな問題を引き起こす可能性があるのも、過集中のデメリットの1つです。

過集中の3つの対策

過集中に悩んでいる人に有効な対策を3つ紹介します。

  • 定期的に休憩を入れる
  • タイマー・アラームを活用して時間を管理する
  • 事前に特性について説明する

どのようにおこなっていくのか、どういった効果があるかについて詳しく解説します。

1.定期的に休憩を入れる

過集中になると休憩を忘れてしまいがちなので、「1時間ごとに水分補給をする」「◯時に必ず食事をとる」など、ルール化して意識的に休憩を入れるようにしましょう。定期的に休憩することで、疲れすぎや水分不足、栄養不足が防げます。

過集中のときは疲労に気づきにくいため、自分では「まだ疲れていない」と思ってもこまめに休息をとることが大切です。「疲れたら休憩する」のではなく、あらかじめ休憩についてのルールを作っておくのがおすすめです。

2.タイマー・アラームを活用して時間を管理する

時間を忘れて没頭してしまうのを防ぐには、タイマーやアラームの活用が効果的です。例えば、作業前に「この作業は3時間まで」と区切りを決めてタイマーをセットしておき、「タイマーが鳴ったら必ず作業を中断する」というルールを設けると良いでしょう。休憩する時刻をあらかじめ決めておき、アラームを鳴らす方法もあります。

過集中の対策には、スケジュール管理が大切です。集中していると時計を見るのを忘れてしまうので、音や振動で気づきやすいタイマーやアラームを活用しましょう。

3.事前に特性について説明する

過集中で周りにどう思われるか不安な気持ちを和らげたり、周囲とのトラブルを防いだりするために、事前に特性について説明しておくのも対策の1つです。

例えば声をかけられたのに気づけなかった場合でも、特性について理解してもらっていれば「無視された」という印象を与えずに済みます。

何時間も集中しているときは休憩するよう声をかけてもらうなど、周囲の協力を得られる可能性もあります。

とはいえ、特性について話をするのは抵抗があるという人もいるでしょう。無理に話す必要はありませんが、信頼できる先生や友達、上司や同僚など、特定の人に打ち明けてみるだけでも、学校や職場で過ごしやすくなるかもしれません。

働く発達障害の人の悩みとは?当事者の声をご紹介

Kaien修了生が参加する座談会での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは障害者枠と一般枠の違いです。

ストレステストでうつが発見できなかった

Aさん: 職場でストレスチェックってあるじゃないですか?ストレスがかかっているのを自覚してもらう、早期発見の目的で。皆さんはしたこと有りますか?

Bさん: やりました。安定していると結果が出たんです。二重丸、ニッコリマークで。でも直後にうつだとわかりました。ストレスチェックをしてもうつになるまでは自分のストレスレベルにまったく気づかなかったんです。

Cさん: うつがわかる前だったんですか?

Bさん: 前ですね。でも今思えばストレスチェックを受けた時から来ていたんですよ。早朝覚醒が始まっていたり。

Aさん: 発達障害の特性的にそういうのに自分では気づきにくいというのがあるんでしょうね。きっと。

スタッフ: 余裕がある職場だったら、周囲の人の疲れ具合に感度の高い人がいて「大丈夫?」と声をかけてくれるかもしれないですけれども、今はどの職場もみんなギリギリなので、本当はセルフモニタリングして自分の精神状態をコントロールできると理想なんですけれどもね。

【参考】 発達障害の二次障害

自己感覚がずれやすい発達障害

Cさん: 発達障害の人が急にバタンって倒れちゃうのって、知識があっても自己感覚がずれているからだと思うんですね。私自身それで悩んでいます。いくら経験しても、セルフモニタリングが出来ない。そこを予防線を張ろうとすると頑張れるところまで行かず、ある意味自分を甘やかすようなラインで済んでしまう。どうしたらよいんですか?

スタッフ: 発達障害の人は確かに疲れの感覚がわかりにくい人が多いですよね。燃料メーターがない車に似ていると思っています。いつガス欠するかわからない。じゃあどうしたらよいかというと、ガソリンスタンドが見えたらすぐに休憩するみたいな感じになる。

Cさん: 情けない…。

スタッフ: でも、ギリギリまでして度々ガス欠するのと、休み休み行くのとどっちが良いのかというと、後者かなと。本当は100点の力はあるけれども、そこを目指すとガス欠になる可能性がすごく高いから、20、30点で満足する必要があると思うんですよね。もちろん20、30点だと”不全感”が出るのは確かです。足りないことによる不全感を満たすものを仕事以外でどうやって得るかを考えましょうというのが、いつもセルフモニタリングが弱い人にアドバイスしていることです。

Bさん: 20点とか30点かぁ。

Cさん: ただそうすると、やるからにはきっちりやりたいというこだわりが許さない。

Dさん: そうですね。やるならやるし、やらないなら全くやらないっていう。

Cさん: どっちにいってもストレスが溜まるっていう…。歪みが出るんですよね。必ずどっかに。

Dさん: 発達障害の特性というか、脳から来ているんでしょうね、その感覚って。

Bさん: 80点でも厳しいですもんね。自分が許せないというか。100か120まで頑張らないと…。でも人生無理して短距離走みたいになりますけどね。

Cさん: 妥協ができないから不幸になっているのかなと思っています。

「手を抜くことが良い」という経験をする

Dさん: 20、30が良いという経験をすれば良いかもしれません。僕もそうだったんですけれども、作業を振られたりすると100%をしないと気がすまなかった。例えば文章を整理しろと言われると細かいことが気になって、スペースが入っていなかったりとか、てにをはが違ったりとか。

Cさん: わかる…。

Dさん: 完璧っていうのは、基本的に到達できない。数学で言うと漸近線に当たるようなものだと思って、時間が経てば経つほど完璧には近づくけれども、100%に到達することはない。なので、60、70%を目指すのが理想だと思うのですよ。

参考:漸近線

 そういう考えを本で読んで、自分は60、70点を目指すようにしてみたんですね。そうしたら周りの人の反応がかえって良くて成功体験を得られたのです。100点を目指さなくても、周りとスムーズに進むんだという経験を得られた。今は60、70を目指すようにコントロールできるようになって、こだわりが少なくなってきたように感じています。

Cさん: そう考えられるためには、他者からの賞賛が基準になっていないといけないですよね

Dさん: そうですね。僕は確かに周りから賞賛されたいという渇望がとても強いです。なので、60、70という自分から見ると手を抜いているような感覚でも、周りからの評判が良かったというのがこだわりが弱くなった理由の一つですね。

Cさん: 周りが良いって言っても、駄目って言っても、私の場合は関係ないんですよね…。よく誰もそこまで求めていないと言われるんです。

Dさん: それは確かにきついかもな…。

【もっと詳しく】「発達障害と仕事」について読む
【もっと詳しく】「発達障害と就職活動」について読む

過集中の特性を理解し対策を行おう

特定の物事に過剰に集中してしまう「過集中」。高い集中力が発揮できるのはメリットですが、過剰な集中が長時間続くと日常生活や社会生活に支障をきたすおそれがあるため、注意が必要です。

過集中の対策としては、「休憩や作業中断に関するルールづくり」「タイマー・アラームの活用」「特性について周囲に理解してもらう」などの方法があります。過集中に悩んでいる人は、これらの方法を試してみましょう。

過集中は、ASDやADHDと関連があると言われることがあります。過集中があるからといって必ずしも発達障害であるとは限りませんが、必要に応じてクリニックや専門機関への相談も検討してみてください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

過集中は確かに発達障害特性の方に多く見られる特徴の1つですね。なかなか悩ましい問題で、ASDの方ではそのこだわりが、ADHDの方では興味あることに対しての際立った集中力が、それぞれ才能を発揮することに繋がっていることもあるわけです。
何にも集中できないよりも、過集中があるほうが長所があるといえるはずです。自分の力の出し方を本文にあるやり方を参考にしながら工夫できるといいですね。私自身は集中が必要なときにはタイマー設定を上手く利用しています。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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