発達障害と合理的配慮

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障害がある人の移動や意思疎通を無理のない範囲で支援する「合理的配慮」。発達障害の人にとってどのような影響があるのでしょうか。この記事では、合理的配慮の概念はもちろん、働く場面で「合理的配慮」がどう活かされるかについて、わかりやすく解説します。

この記事で分かること

Q1.「合理的配慮」とは何ですか?
Q2.「合理的配慮」と「障害者雇用での配慮」に違いはありますか?
Q3.民間事業者は努力義務と聞きました。つまり配慮が拒否されることもありえますか?
Q4.合理的配慮に必要な「自己権利擁護」とは何ですか?

Q1. 合理的配慮とは何ですか?

合理的配慮は2016年に日本に正式に導入された、障害のある人への配慮方法を示す比較的新しい概念です。それまで日本では障害名によって配慮が決められていました。

例えば、目が見えない人向けに公共機関や歩道などに点字タイルが敷かれています。また通常のトイレが使えない身体障害のある人向けに多機能トイレを設置する基準があります。いわば障害名を聞けば、前もって対策ができる配慮と言えます。

しかし発達障害や精神障害など、障害名は同じだけれども、一人一人困り感が違う場合は、前もっての対策ができません。そこで一人一人にあった配慮をしていこうという考えが「合理的配慮」です。

「合理的配慮」では、まず障害のある人が学校や事業主などに配慮の希望を伝えます。それに基づいて学校・事業主は、負担が重すぎない(=断る合理的な理由がない)限りは配慮をする、という流れになります。

一回の話し合いで配慮が確定することも少ないでしょうし、年月が過ぎると配慮事項も変わることもあり得ることから、障害のある人と学校、事業主との継続的な対話が求められています。また両者が話し合いでは納得せず、問題が解決しない場合は、苦情・紛争を解決する手続きも定められています。

これらは2016年に施行された「障害者差別解消法」で規定されました。同時に雇用や生活に関するそのほかの法律も合理的配慮の概念を取り入れて修正されています。詳しくは内閣府が用意した「障害を理由とする差別の解消の推進」のウェブページをご確認ください。リーフレットなどで分かりやすく紹介されています。

Q2. 「合理的配慮」と「障害者雇用での配慮」に違いはありますか?

答えとしてはそれほど明確になっていない、となります。なぜ明確になりづらいのかを解説していきます。

もともと合理的配慮は職場だけに限らず、生活や学校などあらゆる場面が想定されている概念です。たとえば大学での勉強の場面、公共交通機関の利用の場面などでも「合理的配慮」の要求は可能です。

一方で障害者雇用での配慮は1960年に「身体障害者雇用促進法」が制定されて以来、現在の「障害者雇用促進法」のもとで発展してきた、就職活動や職場に限った配慮概念と言えます。

つまり、日本で独自に発展してきた障害者雇用についての配慮の考え方と、主にアメリカからもたらされた「合理的配慮」の考え方の2つが併存しているのが、今の日本と言えるかもしれません。もちろん2016年以降の関連法の改正によって、法律上は両者にズレが無いようになっていますが、現実的には混乱があるのも確かです。

例えば、障害者差別解消法による「合理的配慮」は、障害者雇用に限定していません。つまり一般雇用でも「合理的配慮」は受けられることになっています。では一般雇用と障害者雇用で、「合理的配慮」の差はないのでしょうか。

実際は、障害者雇用は「障害者雇用促進法」で様々な助成金や制度があり、金銭的にも時間的にも一般雇用より手厚い配慮ができる環境が整っていることが多いです。そのため、障害者雇用は、一般雇用よりも「合理的配慮」が手厚くなっているという事が言えるかもしれません。しかしこれらの境界線は非常にあいまいです。

日本に「合理的配慮」の概念が導入されてからまだ日が浅く、今後様々な事例を重ねる中で、何が合理的なのかが社会で議論されていくことになるでしょう。

発達障害 仕事がうまくいく 合理的配慮の求め方

Q3. 民間事業者は努力義務と聞きました。つまり配慮が拒否されることもありえますか?

2021年5月に「改正障害者差別解消法」が成立し、2024年までに民間事業者も義務化されます(それ以前は国、自治体のみの義務でした)。
このため3年以内に、行政・民間を問わずに合理的な理由がない配慮の拒否は法律違反になります。これを受けて多くの大学・企業などで対策が進んでいます。

発達障害のある人の「合理的配慮」とは 大学編

Q4. 合理的配慮に必要な「自己権利擁護」とは何ですか?

「自己権利擁護」は、セルフアドボカシーの訳語で、障害のある方がまわりの人に必要なサポートを説明し、理解してもらうことです。

また「合理的配慮」を要求するときは、事業主などに「自己権利擁護」に当たる自分の苦手な項目や配慮を求めたい論拠を書面などで提出することが必要です。

逆に言うと、障害のある方は、自分から行動を起こさない限り、配慮を得られない可能性があります。

このため障害を隠すということを良しとする社会風潮のままでは、配慮を得づらくなりますし、また自分が障害を認めず我慢をしたりする行為も自ら首を絞めることに繋がります。
また、発達障害など見えない障害のある人は、自分の苦手なところを把握しづらく「合理的配慮」を要求する上で壁になります。

自尊心を失わないようにしながらもご自身の特性を周囲に伝えて、学びやすい、働きやすい配慮を勝ち得ていくための「自己権利擁護」への意識の高まりが、「合理的配慮」の概念を健全に活用し、よりよい社会を作る上でカギになってくると言えるでしょう。

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