何か悲しいことがあったわけではないのに、涙が止まらなくなってしまった経験はありませんか?自分では止めようと思っているのにコントロールできず、悩んでいる方もいるでしょう。
涙が止まらないときは、自分でも気付かないうちに精神状態が悪化している場合があります。
本記事では、涙が止まらないときの精神状態を解説します。
涙が止まらないときの対処法や、仕事に関する悩みの相談先もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
涙が止まらないのはなぜ?涙が出る時の精神状態
私たちの体は常に少量の涙を分泌していますが、涙がこぼれて止まらなくなる・止めようと思っても止められないのは、精神状態になんらかのトラブルがあるのかもしれません。
涙が止まらないときの精神状態として考えられる可能性を解説します。
涙が止まらないのは心のSOSサインかも
ヒトが流す涙には、基礎分泌・反射性分泌・情動性分泌の3種類があります。
基礎分泌の涙は、常に少しずつ分泌されている涙で、眼球の乾燥を防いだり、感染症から守ったりするために分泌される涙です。
反射性分泌は、目にゴミが入ったときや強い刺激を感じたときに、体を守るために涙が分泌される涙で、情動性分泌は、悲しいときや感動したときなど、心が大きく動いた際に分泌される涙をいいます。
目に異物が入ったり刺激を感じたりしたわけではないのに出てくる涙は、情動性の涙です。情動性の涙が止まらないときは、心に限界がきている可能性があります。
特に仕事で強いストレスや不安を感じていたり、心も体も疲れ切っていたりする場合、無意識に涙があふれて止まらなくなるケースがあります。
もとから涙もろい性格だとしても、涙が止まらなくなった場合は単に性格の問題だと決めつけず、心がSOSを発しているのだと受け止めて対処しましょう。
涙が止まらない症状が関係している病気
病気の症状として、涙が止まらなくなる場合もあります。特に精神的な病気の場合、自分の感情をコントロールする力が弱まって、些細な出来事で感情が大きく揺れ動いて涙が止まらなくなるケースがあります。
涙が止まらない症状が出る病気の一例は、下記の通りです。
- うつ病
- 適応障害
- 不安障害
- 双極性障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 自律神経失調症
涙が止まらなくなって日常生活に支障をきたしている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
涙が止まらないほど精神状態が悪化する原因はさまざま
小さなストレスが積み重なったり、新しい環境にうまく適応できなかったりすると精神的に不安定になるのは無理もありません。慣れない環境による体調不良や寝不足、肉体的な疲労が心に悪影響を及ぼして、精神的に不安定になる場合もあります。
そして、その人の性格や生育歴、発達障害の特性なども精神状態に影響を与えます。
たとえば、大らかな性格の人と几帳面な性格の人では、同じ環境でも受けるストレスの度合いが大きく異なるのは容易に想像できるでしょう。他にも過去に叱られた経験が少ない方は、職場で指導を受けるたびにストレスを抱え、精神状態が悪化しやすい可能性があります。
そのため涙が止まらなくなるほど精神状態が悪化する原因を、ひとつに絞り込むのは困難です。自分の精神状態や置かれている状況にあわせて、柔軟に対応するのが大切になってきます。
涙が止まらないときの精神状態の具体的な対処法
ここからは、涙が止まらない精神状態のときの具体的な対処法をお伝えします。
涙が止まらないと、不安になったり焦ったりするのは自然なことです。しかし、焦って少しでも早く涙を止めようとしても簡単には止められません。
涙が止まらないときは、次に記載する内容を試してみてください。
「涙が出る自分」を責めずに受け止める
大人になると「泣くのはみっともない、恥ずかしい」「泣いてはダメだ」と考える人が増えます。そのため、涙が止まらない自分を無意識に責めてしまう人も多いです。
しかし、自分を責めるとそれがストレスになって、ますます涙が止まらなくなる場合があります。
涙が止まらないときは、泣く自分を責めずに受け止めるようにしてみましょう。
感情が揺れ動いて分泌される涙には、脳の視床下部と扁桃体が大きく関わっています。視床下部も扁桃体もストレスや感情のコントロールに関与している器官です。
感情が大きく動くと神経伝達物質が分泌され、涙腺を刺激し涙が分泌されます。この時分泌される涙には、ストレスを感じると分泌されるホルモン「コルチゾール」の排出を促す働きや、副交感神経の働きを活発にして心と体をリラックスさせる働きがあるため、ストレスの緩和に役立つといわれています。
つまり、涙を流すことは私たちの体に備わったセルフケアのメカニズムのひとつといえます。
涙が止まらないときは、みっともない・恥ずかしいと自分を責めるのではなく、「自分の心と体を回復しようとしているんだな」と受け止めてみましょう。
感情を言語化してみる
感情を言語化してみるのも有効な方法です。
涙が止まらないときは、その涙が悲しみからくる涙なのか、不安からくる涙なのか、考えてみるのも良いでしょう。
涙が止まらない理由がわからないと、より不安になったり、涙が止まらないことそのものがストレスになったりします。
自分が泣いている理由を言語化する場合は、自分の考えや感情を紙や日記に書き出したり、人に話を聞いてもらったりするのがおすすめです。
身近に話を聞いてくれそうな人がいないときは、勤めている企業の産業医を頼ってみましょう。産業医は守秘義務があるため、基本的に相談した内容は周囲に伝わりません。
もし上司や人事部の人に話をする必要がある場合も、事前に本人の許可を得るのが一般的です。
参照:4 うつ病を防ぐ|厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
マインドフルネスや呼吸法などで気持ちを切り替えてみる
マインドフルネスや呼吸法を取り入れてみるのも良い方法です。マインドフルネスや呼吸法は、気持ちを切り替えるのに役立ちます。
特に自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症の人は、こだわりの強さや感情・行動のコントロールが苦手であるといった特性によって、気持ちを切り替えるのに時間がかかる場合があります。
そこで試したいのが、マインドフルネスや呼吸法です。
マインドフルネスは、心と体のリラックスやストレス緩和に役立つ物事の考え方・捉え方のことです。マインドフルネスでは、過去を悔んだり、未来を不安に思ったりせず、「今、この時」に意識を向けるトレーニングを行います。
瞑想と組み合わせてマインドフルネスを実践すると、少しずつ気持ちが落ち着いてくるでしょう。
呼吸法は、呼吸を通じて心と体の緊張をほぐす方法です。緊張すると無意識に呼吸が速く・浅くなるので、意識してゆっくり・深く呼吸してみましょう。
息を吸うと同時におなかを膨らませ、吐きながらおなかを凹ませる「腹式呼吸」で行うのがおすすめです。
呼吸だけに意識を向け、息を吸うよりもゆっくり吐くようにしてみてください。
気持ちの切り替えが苦手な人は、こちらの記事もぜひご覧ください。
気持ちの切り替えが苦手なことと発達障害の関係性とは?切り替えやすくなるための工夫も紹介
休息をとり正しい生活リズムを送る
生活リズムが乱れると、心と体のバランスが崩れて涙もろくなったり、涙が止まらなくなったりするケースがあります。寝不足が続いていたり、食事が満足に摂れていなかったりする場合は、休息を取って生活リズムを見直してみましょう。
睡眠不足が続いているときは、いつもより少し早めに就寝しましょう。イライラや不安でなかなか寝付けないときは、無理に寝ようとする必要はありません。
目を閉じて横になって、ゆっくり深い呼吸を繰り返してみてください。
生活リズムを整える際には、食事と適度な運動も意識しましょう。
手軽に済ませられるからといって、栄養バランスの偏った食事ばかりになっていませんか。朝食を抜きがちな人は、軽くでも構わないので朝食を摂るようにすると生活リズムが整いやすくなります。
また、デスクワークなどで運動不足になりがちな人は、意識して軽く体を動かすようにしましょう。散歩や軽いランニング、ウォーキング、ストレッチなどは生活リズムを整えるのにおすすめのエクササイズです。
涙が止まらない精神状態の時の病院受診の目安
涙が止まらず、日常生活にも支障をきたしているようなときは、早めに医療機関を受診しましょう。涙が止まらないのは、心の病気が原因である可能性があります。
涙が止まらなくなる病気はうつ病や適応障害などさまざまで、自己判断は禁物です。
涙が止まらず、次に挙げるような症状も見られる場合は、ぜひ医療機関を受診してください。
- 不安を感じる
- イライラする
- 集中力・思考力が低下している
- 気分が落ち込む
- 焦りを感じる
- 緊張する
- 眠れない、または眠り過ぎる
- 食欲がない、または食欲がありすぎる
- 何をするにも気力がわかない
- 自分を責めてしまう
- 死にたい・消えたいと考えるときがある
人によっては、上記のような精神的な症状のほかに、身体的な症状が出る場合もあります。
よく見られる身体的な症状は次のとおりです。
- 腹痛
- 頭痛
- 動悸
- 過呼吸
- 倦怠感
- 肩こり
- 手の震え
- めまい
- 発汗
仕事中に涙が止まらなくなるなら休職も選択肢の一つ
大人の場合、仕事のストレスで精神的に追い詰められるケースも少なくありません。仕事中に涙が止まらなくなったり、仕事でのつらい経験を思い出して辛くなる・精神的に不安定になるようなら、休職して心と体をしっかり休めるのも選択肢のひとつです。
休職中は、専門家のサポートを受けながら療養に集中できます。また、休職中は休職手当が受け取れるのも、退職にはないメリットです。
休職する場合は上司や人事部門に相談の上、医師に診断書を作成してもらう必要があります。
涙が止まらない精神状態で仕事や働き方に悩む人が利用できる相談先・支援機関
泣きたいわけではないのに涙が止まらず仕事や働き方に悩む人は、次の相談先や支援機関を利用してみるのも良い選択です。
利用できる相談先・支援機関には下記があります。それぞれ詳しく解説します。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- リワーク
- 自立訓練(生活訓練)
- 就労移行支援
ハローワーク
全国各地に設置されているハローワークでは、失業給付を受給しながら仕事を探したり、障害者雇用での求人を検索したりできるほか、ハロートレーニング(職業訓練)を受講しながら復職を目指したりできます。
ハローワークの利用には、求職申込み手続きが必要です。求職申し込みはハローワーク窓口に設置されているパソコンのほか、自宅のパソコンでも手続きが可能です。
障害者雇用での就職を目指す場合は、障害者専門窓口のあるハローワーク(原則として住所を管轄するハローワーク)に出向く必要があります。
参照:ハローワークインターネットサービス – 求職申込み手続きのご案内
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害がある人の生活・仕事に関する支援を行っている機関で、通称「なかぽつ」と呼ばれています。
障害者就業・生活支援センターが行っている主な支援は次のとおりです。
- 就労支援
就職活動のサポートや、職場実習・職業準備訓練のあっせん - 職場定着支援
就業後の職場訪問や、仕事に関する困りごとの相談など - 企業支援
障害がある人を雇用したい企業からの相談 - 生活支援
日常生活のほか、年金の申請や福祉サービスの利用などに関するアドバイス - 関係機関との連絡調整
ハローワークや自治体、特別支援学校、地域障害者職業センターなどとの連携
障害者就業・生活支援センターは、仕事と生活に関する困りごとにワンストップで対応できるのが強みです。
障害者就業・生活支援センターの詳細は次の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
参照:障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)の概要について【職業対策課】
リワーク
リワークとは、休職している人を対象にした復職支援をいいます。
リワークは大きく5つに分けられ、それぞれ実施する機関が異なります。リワークの種類は次の通りです。
- 医療リワーク(医療機関で行うリワーク)
- 就労移行支援でのリワーク
- 自立訓練(生活訓練)でのリワーク
- 障害者職業センターでのリワーク(職リハリワーク)
- 職場リワーク(勤めている企業で行うリワーク)
医療機関で行うリワークは、うつ病や適応障害といった精神疾患で休職・離職している人を対象にしたリワークです。主治医や看護師のほか臨床心理士や公認心理師、作業療法士、精神保健福祉士といった医療スタッフが復職をサポートします。認知行動療法でストレスの対処法を身につけたり、グループワークや活動を通じて生活リズムを整えたりするのが一般的です。
精神疾患や発達障害、身体障害などの障害がある人で、一般企業などへの就労・復職を希望する人には、就労移行支援でのリワークが適しています。
生活リズムを整えたり、ストレスへの対処法を学んだりしたい場合は、自立訓練(生活訓練)でのリワークもあります。Kaienでは職場見学や体験などリワークとして活用できるプログラムを実施していますので、興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせください。
このほかに精神障害がある人を対象に本人と雇用主、主治医の3者が連携して行う「障害者職業センターでのリワーク」や、勤めている企業が職場復帰支援のために行う「職場リワーク」があります。
リワークについては次の記事でも詳しく取り上げていますので、併せてごらんください。
リワークとは?種類や対象者、利用するメリットとデメリットも解説
リワークは適応障害の方も利用できる?リワークのメリットも解説
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、生活リズムを整えたり感情コントロールの方法を身につけたりするのに役立つ支援サービスです。
Kaienの自立訓練(生活訓練)では、科学的な手法も取り入れながら自己理解を深め、ストレスへの対処力を高めるため、次のようなプログラムを実施しています。
- 瞑想・マインドフルネス
- オープンダイアローグや認知行動療法の技法を用いたストレス対処法の習得
- 処方されている薬の意味や効果、副作用についての学び
- 具体的なコミュニケーション手法の習得
- 実際の職場に近い環境でのリスキリング体験
- 片付け・お金の管理スキルの習得
障害者手帳をお持ちでない方もご利用いただけますので、詳しくは次のページをご確認ください。
自立訓練(生活訓練)サービスについて – 株式会社Kaien
就労移行支援
就労移行支援は、就職を目指す人のための支援サービスです。
自立訓練(生活訓練)が、親や周囲の人の手助けを得ずに自立した生活を送るための支援サービスであるのに対し、就労移行支援は就活支援やスキル習得などを通じて就職をサポートすることに重点を置いているという違いがあります。
Kaienの就労移行支援は、Kaienが開拓した独自求人を多く取り扱っているほか、プログラミングやビジネススキル、伝統工芸など就職で役立つスキルを身につけられるのが強みです。
専門資格を保有する支援員も多数在籍していますので、詳しくは次のページをご覧ください。
自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用できるかも解説
涙が止まらない精神状態の時は支援機関の利用も検討してみて
涙が止まらないときは、心が悲鳴を上げているといっても過言ではありません。まずは泣いている自分を「みっともない」「ふがいない」などと責めたりせずに、心身ともに限界までがんばった自分を受け止め心と体を休ませましょう。
涙が止まらないときは、精神疾患が隠れているケースもあります。涙が止まらない状態が続く場合は、早めに医療機関を受診してください。
少し落ち着いたら、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援などの支援機関の利用も検討してみましょう。
Kaienでは、さまざまなプログラムが受講できる自立訓練(生活訓練)・就労移行支援を実施しております。見学・個別相談会も随時開催しておりますので、興味をがある方はお気軽にお問い合わせください。