地域活動支援センターは障害のある方を対象とする支援施設で、創作的活動や生産活動、社会交流をする場の提供、生活面・就労面の相談対応、就労支援などを行っています。地域活動支援センターは事業内容や利用人数によりいくつか分類があり、多くの方が無料もしくは少額の料金で利用可能です。
この記事では、地域活動支援センターの対象者や活動内容、利用するメリットや利用方法を他の支援施設との違いも交えて解説します。
地域活動支援センターとは
地域活動支援センターとは、以前は「小規模作業所」と呼ばれていた障害者支援の福祉施設です。地域活動支援センターでは、障害者総合支援法に基づき、創作的活動や生産活動、社会交流などができる機会を障害のある方に提供しています。
地域活動支援センターは地域生活支援事業として位置づけられており、実施主体は市町村などの地方自治体です。基礎的事業の場合、「10人以上が利用できる規模」「施設長1名、指導員2名以上の職員を配置」という設置要件はありますが、市町村がそれぞれ工夫して柔軟に運営することが認められています。
地域活動支援センターの目的
地域活動支援センターの目的は、障害のある方が自立した地域生活を送れるよう支援することです。具体的には、創作的活動や軽作業といった生産活動の機会を提供しながら、社会とのつながりや人との交流を広げるサポートを行います。さらに、日常生活における不安や悩みを相談できる場所を提供することで、地域での安定した暮らしを後押しする役割も担っています。
地域活動支援センターの事業内容
地域活動支援センターには、大きく分けて基礎的事業と機能強化事業があります。それぞれの事業内容について、以下で詳しく見ていきましょう。
基礎的事業
地域活動支援センターの基礎的事業は、主に創作的活動や生産活動、社会との交流促進などを実施しています。具体的な事業内容はセンターによって異なりますが、例としては次のような活動が挙げられます。
- 料理
- 陶芸
- 園芸
- 音楽
- 絵画
- 体操
- ヨガ
- 映画鑑賞
- カラオケ
- ゲーム
- パソコン教室 など
基礎的事業を行う地域活動支援センターは、次の要件を満たす必要があります。
- 10人以上が利用できる規模
- 創作的活動の機会の提供などができる場所や必要な備品等を揃えている
- 施設長1名、指導員2名以上の職員を配置している
これらの基礎的事業を行う地域活動支援センターは、地方交付税から補助を受けて運営されています。
機能強化事業
基礎的事業よりも手厚い人員配置を行っており、機能訓練などの付加サービスを実施してセンター機能を強化している場合は、機能強化事業に該当します。機能強化事業を行うセンターは、国や自治体による補助(地域生活支援事業費等補助金:国1/2以内、都道府県1/4以内)を受けることが可能です。
機能強化事業の活動内容
地域活動支援センターの機能強化事業は、事業内容や利用可能人数によって次の3つに分類されています。
- 地域活動支援センターⅠ型
- 地域活動支援センターⅡ型
- 地域活動支援センターⅢ型
それぞれの事業内容や利用可能人数について以下で詳しく解説します。
地域活動支援センターⅠ型
地域活動支援センターⅠ型は、障害のある方と医療・福祉・地域の社会基盤を連携強化するための調整や、困りごとへの相談対応などが主な事業内容です。加えて、障害への理解促進を図るための啓発やボランティアの育成なども実施しています。利用可能人数は1日あたり約20名以上です。
また、地域活動支援センターⅠ型には原則として、精神保健福祉士や社会福祉士などの専門職員を配置することが義務付けられています。
地域活動支援センターⅡ型
地域活動支援センターⅡ型は、就労が難しい障害のある方を対象に、体の機能向上や維持を目指す「機能訓練」や、ソーシャルスキルの向上を図って人間関係を円滑にすることを目的とした「社会適応訓練」などを行っています。また、入浴など生活におけるサポートも実施します。地域活動支援センターⅡ型の利用可能者数は、1日あたり約15名以上です。
地域活動支援センターⅢ型
地域活動支援センターⅢ型は、障害者支援団体などが地域の障害のある方のために通所による支援事業を約5年以上にわたって運営し、引き続き実施する場合に認定されます。地域活動支援センターⅢ型の活動はセンターによって異なりますが、基礎的事業と同様に、作業や交流の場の提供、相談対応などが主な内容です。
地域活動支援センターの利用対象者
地域活動支援センターは、各センターの管轄エリアに住んでいる障害のある方が利用できます。具体的な利用条件はセンターによって異なりますが、以下のいずれかの提示が必要な場合があります。
- 障害者手帳
- 障害福祉サービス・地域生活支援事業などの受給者証(自立支援医療受給者証など)
- 医師の意見書
自分が利用できるかどうか迷う場合は、地域活動支援センターの公式サイトなどで確認するか、直接問い合わせてみましょう。また、利用する前に予約がいるセンターもあるため、事前の確認が必要です。
利用料金はかかる?
地域活動支援センターの利用料金は、基本的に無料のところが多いです。しかし中には、100円~200円程度の利用料金がかかるセンターもあります。また、創作的活動または生産活動の材料費や食事、おやつ、お茶代、入浴サービスを受ける場合は光熱費、イベントへの参加費、その他の必要経費などの実費が利用者負担になる場合もあります。詳しくは、利用したい地域活動支援センターの公式サイトで確認するか、センターに問い合わせてみましょう。
全国にどれくらいある?
地域活動支援センターの施設数と定員の推移は、以下のとおりです。
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
施設数 | 3,038 | 2,935 | 2,935 | 2,849 | 2,824 |
定員数 | 50,687 | 48,944 | 48,703 | 47,689 | 47,202 |
また、機能強化事業の分類別の施設数は、以下のとおりです。
分類 | 施設数(2020年) |
地域活動支援センターⅠ型 | 1,005 |
地域活動支援センターⅡ型 | 504 |
地域活動支援センターⅢ型 | 1,016 |
地域活動支援センターを利用するメリット
地域活動支援センターを利用すると、さまざまなメリットがあります。ここでは、実際にセンターを利用することでどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
日々の悩みや困りごとを相談できる
地域活動支援センターでは、日常生活の中で感じる悩みや不安、困りごとについて気軽に相談できます。例えば、福祉サービスの利用手続きや制度の活用方法、就職や住まいに関することなど、幅広い内容に対応しています。困ったときに相談できる場所があるという安心感は、大きな支えになるでしょう。
地域の人と交流する機会を得られる
地域活動支援センターでは、他の利用者やスタッフ、地域の人たちと交流できるのもメリットです。レクリエーションや趣味の活動を通じてほかの利用者と仲良くなれるほか、地域の清掃活動やイベントへの参加を通じて、地域の中での役割や関わりを感じられるようになります。このように、人とのふれあいや関係性が生まれると、心の安定や生きがいにもつながるでしょう。
生活リズムを整えるのに役立つ
地域活動支援センターに通って活動を行うことで、自然と生活リズムが整うのもメリットのひとつです。決まった時間に起きて出かけ、日中は活動に参加する習慣が身につくと、規則正しい生活が送りやすくなります。特に、これから就労を目指したい人にとっては、無理なく社会復帰の準備ができるのは大きな魅力です。
スキルを身につけられる
センターによっては、パソコンの基本操作や文章作成、コミュニケーションの練習など、就労につながるスキルを学べるプログラムを実施しているところもあります。無理のないペースで取り組めるため、「自信をつけたい」「将来的に働きたい」と考えている人にもおすすめです。
地域活動支援センターの利用方法
地域活動支援センターの利用方法や手続きの流れ、手続きに必要な書類などは、センターによってさまざまです。ここでは参考までに、一般的な流れや必要書類の例を紹介します。
①地域活動支援センター利用について相談・見学予約
利用したいセンターの窓口、または市町村の福祉課に見学予約をします。
②必要書類を確認し、登録手続きをする
必要書類はセンターによって異なりますが、一般的には登録手続きの際に、障害者手帳や障害福祉サービス受給証、地域生活支援事業の受給者証(自立支援医療受給者証など)が必要になります。これらの受給者証は市町村の窓口で申請し、審査を受けて承認されると取得可能です。
③利用するセンターでの手続き
④センターの利用をスタート
利用開始まで少々手間と時間がかかるため、おっくうに感じてしまう方もいるかもしれません。その場合は、センターに相談してアドバイスをもらったり、地域活動支援センターの公式サイトから情報収集をしたりするところから始めてみてはいかがでしょうか。
利用には受給者証の用意を
地域活動支援センターの利用に必要な受給者証は、支援を受けるセンターにより異なります。多くの場合、以下のいずれかの受給者証が必要です。
- 障害福祉サービス受給者証
- 地域生活支援事業の受給者証
- 自立支援医療受給者証(精神通院医療) など
地域活動支援センターによっては、上記以外に障害者手帳や医師の意見書が必要な場合もあります。どの受給者証が必要かはセンターや自治体のホームページ、窓口などで確認してください。
受給者証は市区町村の窓口で申請して審査を受け、取得します。主な聞き取り調査の内容は次の通りです。
- 利用条件を満たしているか
- 希望するサービス内容(利用頻度など)
地域活動支援センターと他の支援施設の違い
地域活動支援センターの他に障害がある方が利用できる支援施設は複数あり、支援内容はそれぞれ異なります。主な支援施設は次の通りです。
- 就労移行支援
- 就労継続支援
- 自立訓練(生活訓練)
- 発達障害者支援センター
- 障害者就業・生活支援センター
それぞれの施設の特徴や利用できる支援サービスについて、以下で詳しく見ていきましょう。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害のある方が一般就労を目指すために利用できる就労支援サービスです。就労移行支援は通所型で、地域活動支援センターとの併用もできます。
就労移行支援のサポート内容には、職業訓練や就活支援、定着支援などがあります。Kaienで実施している就労移行支援の具体的な内容は次の通りです。
- 職業訓練
100種類以上の職種体験が可能で(事務、もの作り、軽作業、ITエンジニアなど)、プログラミングやデザインなど専門分野を極めたい方向けのクリエイティブコースもご利用できます。
- 就活支援
精神障害や発達障害*に理解のある200社以上と連携しており、他社で取り扱いのない独自求人も紹介できます。一人ひとりに担当カウンセラーが付き、二人三脚であなたの就活をサポートします。
- 定着支援
就職が決まれば終わりではなく、就職後の困りごとに対するサポートも手厚く行っています。
Kaienの就労移行支援を経て就職を実現した方は、過去10年で約2,000人にのぼります。また、3人に1人が給与額20万円以上を実現し、1年後の離職率もわずか9%と、職場に定着した方が多いことも特徴です。
就労継続支援
就労継続支援とは、障害があり一般就労が困難な方などを対象とした就労支援サービスです。就労継続支援は、「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」の2つに分かれています。
就労継続支援A型は、就労継続支援事業所と雇用契約を結ぶため、賃金が支払われます。ただし一般就労よりは勤務時間が短く、福祉の利用料を支払ったうえで勤務や作業を行う形態です。次に説明する「就労移行支援」を受けたり、特別支援学校を卒業したりした後に一般企業への就職活動を行ったけれど採用されなかった方などは、就労移行支援A型を受けられる可能性が高くなります。加えて、A型には年齢制限があり、利用できるのは18歳以上65歳未満の方です。
一方、就労継続支援B型は、障害によって一般企業での就労が困難な方が対象になります。通所により工賃をもらいながら作業を行いますが、雇用契約は結ばれません。年齢制限もなく、働く時間や日数を個人に合わせて決められるので、柔軟な対応ができる点がメリットです。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)とは、障害がある方の自立した生活を支援するサービスです。障害(特性)理解を促す講座や自立生活訓練、進路選択や社会生活スキルの習得支援などを受けられます。
Kaienでは次のような自立訓練(生活訓練)を実施しています。
- ソーシャルスキル講座:生活スキルや特性理解、発達障害学、コミュニケーション、進路選択など
- 2~8週間の実践プロジェクト:自立生活をする、みんなと暮らす、求人検索など
- カウンセリング:日々の振り返り、将来に向けての強み探しなど
発達障害者支援センター
発達障害がある方が利用できる支援機関で、発達障害の特性に応じて専門家による個別の支援プログラムの提供や、家族への情報提供、相談対応を行っています。また、発達障害の方が仕事や生活をする上で困った時に、相談できる場所としての役割も持っています。
他にも、学校や職場、労働関係機関などとの連携による発達障害の方が生活しやすい環境作りの支援や、地域社会における発達障害への理解を啓発するなど、活動内容はさまざまです。
障害者就業・生活支援センター
障害のある方の就労・生活面における相談に対応しており、主に雇用促進や安定就労を目的としています。利用料・相談料は原則として無料です。障害者手帳がなくても利用できるため、発達障害の方および正式に診断されていないグレーゾーンの方も障害者就業・生活支援センターの利用対象です。
障害者就業・生活支援センターが近隣に設置されていない場合は、市区町村の障害者就労支援センターで同様の支援を受けることができます。
地域活動支援センターの利用ではじめの一歩を
障害のある方は、地域活動支援センターで生活や就労に関する相談対応や支援を受けることができます。地域活動支援センターには基礎的事業と機能強化事業があり、機能強化事業は活動内容や利用可能人数などによってさらに3種類に分かれています。
また、地域活動支援センターの他にも障害がある方が利用できる支援施設は複数あり、支援内容がそれぞれ異なるため、自分に合った施設を選ぶとよいでしょう。どの施設が適しているかわからない方は、まずは地域活動支援センターの利用から始めてみてはいかがでしょうか。
就労を希望する方は「就労移行支援」、まずは生活基盤を整えたいという方は「自立訓練(生活訓練)」の利用もおすすめです。Kaienの就労移行支援や自立訓練(生活訓練)は充実したプログラムを提供しており、見学・個別相談会も実施しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
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