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HOME宮尾医師 寄稿記事女性ほど悩みがちな「アスペルガー」

女性の「アスペルガー」の悩み

アスペルガー症候群は、「社会性の乏しさ」や「強いこだわり」といった特徴があります。これは、先天的な脳の機能障害による発達障害なのですが、言語や知能の発達に目立った遅れがなく、「フツウ」に見えてしまうため、周囲の人から誤解されがちです。特に、女性のアスペルガー症候群は気付かれにくく、適切なケアを受けられないまま、二次障害としてのうつ病などを悪化させたり、性被害に遭ってしまうケースすらあります。

先天的な脳機能不全による発達障害には、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)などがあります。このうち、自閉症スペクトラム障害(ASD)は社会生活で必要なコミュニケーション力、想像力、社会性の三つに障害があるとされています。

アスペルガー症候群(AS)は、ASDのうち、言語や知能の発達に目立った遅れがないもののことをいいます。

アスペルガー症候群(ASD)の人の特徴
  • 言葉を文字の意味通りに受け取る
  • あいまいな表現をされると、意味がわからない
  • 相手の気持ちを想像できない
  • 音や匂いなどの刺激に過敏
  • 興味の幅が限定的で、こだわりが強い

例えば、「お皿を洗っておいてくれる?」と頼まれた時、シンクの中の食器全部だと理解できず、言葉そのままに、「お皿」を洗う、と理解してしまいます。その結果、茶わんや箸、フライパンなどは、シンクに残したままにしてしまいます。変わり者、やる気がない人だと思われがちですが、本人としては、「お皿を洗う」ということにフォーカスしており、そのほかの考えは一切浮かばないことが多いようです。

遅れやすい女性のアスペルガー診断

「女性のアスペルガー症候群」(講談社)などの著者で、発達障害の第一人者である宮尾益知先生によれば、「女性のASは気付かれにくく、診断が遅れやすい」傾向にあるといいます。男性であれば、3歳ごろからアスペルガーの特徴が目立ち始め、周囲との衝突が増えてきます。しかし、女性のアスペルガーの症状は、男性に比べてわかりにくい傾向があります。多くあるケースが、小学校中学年ごろから原因不明の体調不良という症状が現れはじめ、実はそれがアスペルガーによるものだった、というものです。これについて、宮尾先生は、「元々の診断基準が男性の症例から作られており、女性の方が比較的社会適応力が高いことも、診断を遅らせてしまう原因ではないでしょうか」と指摘しています。

ガールズトークについていけない!

ASの女性特有の悩みで多くあるのが、いわゆる「ガールズトーク」に付いて行けず、女性のグループになじめない、というものです。一般的に、「ガールズトーク」は、話の目的、方向性や結論が明確でなく、話題が多岐にわたる雑談になる傾向があります。こうした「雑談」は、ASの人には理解しづらいのです。また、女性には特有の仲間同士の空気感もあります。ASの人は、そういった「暗黙の了解」や「雰囲気」を理解することが苦手です。そのため、仲間外れにされても、「なぜ嫌われるのかわからない。」という人も多くいます。

診断が遅れると、症状が悪化してしまう

宮尾先生によると、ASは「うつ」や「睡眠障害」などの2次障害を発症することが多く、適切な治療が受けられなかったばかりに、症状を悪化させてしまうケースもあります。

また、言葉をそのまま受け取ってしまうという特性が原因で、性被害に遭う成人女性もいます。

宮尾先生の患者であったある女性は、真夏に道を歩いていたところ、「シャワーで汗を流した方がいい」と見知らぬ男性に声をかけられました。確かに汗ばんでおり、「汗を流した方がいい」と感じたため、男性に連れられてホテルに行ってしまったといいます。また、「ここに汚れがついているから、取ってあげる」などと適当に言われて、体を触られても、「汚れを取っている」としか認識できず、実は被害にあっていた、というケースもあります。その背景にどんな意図があるのか、推察することが難しいのです。

自分の生活しやすいように、環境を調整しよう

本人はもちろん、周囲の人たちはどのように対応すればよいのでしょうか。宮尾先生は「自分の特性を理解して『環境調整』することが大事ですよ。」とアドバイスしています。

本人ができる環境調整の例
  • 人間関係の摩擦を避けるため、大勢の雑談に加わらず、趣味の合う特定の人と付き合う
  • ペットを飼ってコミュニケーション不足を補う
  • 小さなトラブルでも家族や信頼できる相手に相談し、どういうことだったのか解説してもらう
周囲ができる環境調整の例
  • 不測の事態や臨機応変に対応することが苦手なため、スケジュールや手順などは詳しく、細かく示す
  • 曖昧な表現は避け、すべきことをはっきり伝える
  • 複雑なことは、図示するなど、わかりやすく伝える

こうして、環境調整を行うことで、お互いに生きやすくなっていきます。ASの人は、得意な分野で人並み以上の能力や、爆発的な集中力を発揮する人も多く、これは一種の才能といえます。特性を生かして、あなたらしく生きられる方法を探してみてくださいね。

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンクを開院。
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