発達障害ならではのお悩み「障害者雇用の給与で暮らせる?」~キスド会レポート~

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奇数週土曜日開催の在職者向けの当事者会「キスド会」では、様々なお悩みが寄せられており、そのお悩みにスタッフや参加者が知恵を出し合って答えています。発達障害*の傾向があるからこそ生まれるお悩み。今回は「障害者雇用の給与で暮らせる?」というテーマでお送りします。

今回のお悩み:障害者雇用の給与で暮らせる?

相談者:一般雇用から障害者雇用に転職しようと考えておりますが、やはり障害者雇用になると、一般的にお給料が落ちてしまいます。私にはパートナーがいますが、今後一緒に生活していくにあたって相手に負担をかけることにならないか、将来貯蓄できるか、さらには給料が上がって行くのか、などの不安があります。

スタッフ鈴木(以下鈴木):障害者雇用になると、通常は年収が落ちると。中長期的にみて給与が増えるかどうか、心配だということですね。フロアの皆さん、質問や意見などお聞かせてください。

フロア:現時点での年収という観点だけではなくて、60歳、65歳までに、その収入をもらい続けられるかを考えなくてはいけないのではと思います。

鈴木:生涯獲得収入のようなものでしょうか。

フロア:国の制度として、障害者雇用は保護されているとも言えるかと思います。給与額という観点からは少ないのかもしれないけど、非正規でも安定して継続勤務できる会社も多いと聞きました。本当であれば、一般雇用でも会社が倒産してしまったり、派遣社員で年収が高かったとしても次が見つからなかったり、就労が途切れる可能性が高いのとどちらがいいのか、観点として持たなくてはいけないのではと思います。

参加者の意見:生涯収入の観点から考えるべきで、保護されている障害者雇用なら安定するのでは?

鈴木:そうですね。生涯収入の観点から考えるべきで、障害者雇用は保護されていて、非正規でも安定して継続して給与がもらえるという意味では、最終的には高いかもしれないということですね。すごく高いお給料をもらっていても、うまくいかなくなって空白の期間が生じてしまうより、低いけれどもずっと続いていた方が結局高いのではないかということですね。

フロア:実はすでに障害者雇用の契約社員で内定を一つもらっているのですが、受諾しようか悩んでいます。その会社はまだ契約社員から正社員になった社員がいないみたいなのです。仮に正社員になれたとして、普通の正社員と同じ給与体系や昇進の制度になるかはわからないので、少し不安があります。

鈴木:正社員になった事例がない内定先だし、正社員になったところで、それが本当に他の正社員と同じ条件か、わからないということですね。障害者雇用の年収は、今現在、東京、神奈川で週40時間くらい働けば月収15万円くらいでしょうか。ただ、障害者雇用では知的障害や精神障害、発達障害など本当にさまざまな人がいて、フルタイムで働けない人たちもいます。当社で就労する方の平均給与額は18万円弱です。20万円を超えるケースは全体で見るとやはりすごく少ないと思われます。

フロア:一般雇用と障害者雇用の違いを教えてください。まず障害者雇用は多くの場合、大企業です。そう簡単にはつぶれないので、契約社員でも、一般雇用に比べると安定性があります。逆に、一般雇用でも大企業以外の会社に勤める大多数の方々は、正社員であってもやはり不安定になりやすいです。一方で一般雇用は、昇給がありますし、仕事の幅が大きいです。障害者雇用の場合は仕事が限定されやすいですし、昇給はないか、幅が小さいことが多いです。多くの場合、一般雇用・正社員の給与テーブルと、障害者雇用・正社員の給与テーブルは正社員であってもやはり違いがあります。

フロア:障害者雇用の正社員のメリットは何でしょうか?

鈴木:福利厚生は一般雇用の正社員と変わりませんが、障害者雇用は解雇要件が非常に厳しいので解雇されづらくなります。給与額や仕事の内容の面では、一般雇用の契約社員とあまり変わらないと思います。仕事が一般雇用の正社員のようになったり、お給料が20~35万、急に上がるということはありません。やっぱり違う雇用ではあると思います。

フロア:障害者雇用の給与で生計を立てていくにはどうすればよいでしょうか?

鈴木:障害者雇用のお金で暮らせるといわれますと、もちろんカツカツかもしれないですが、一般の人よりはすこし少ないけど、そこそこ安定はしているし、所得税や減免があると思うので出費が実は減っていることを考えると暮らせなくはないですね。ただ、給与が増えるかというと、多くの場合はノーです。

対策について:他の会社から見ても魅力的なスキルを高め、スキルアップを図り、転職もできるようにしておくのはアリだと思います。

鈴木:当社でも、障害者雇用の方が利用できる転職のサービスを考えています。ただ、企業から新たないい求人を出してもらうのは厳しい。給与やキャリアを求めて障害者雇用から一般雇用に移る人も、そこそこ出始めています。一般雇用でちょっと疲弊したのだけれど、障害者雇用でもう一回立て直してみて、それでもやはりお給料が少ないという場合は一般雇用にもう一度挑戦するとか。障害者雇用の中でもお給料が高い企業は数は少ないながらもありますので、挑戦するのはありだと思います。

フロア:今後、障害者雇用での雇用はどのようになっていきますでしょうか?

鈴木:5年後、10年後、障害者雇用がどうなるかは非常に難しく、今はちょっと読めないです。現在、一般雇用と障害者雇用の間にはまだ溝がありますが、障害者雇用率は上がっていくので色んな意味でその間の層が増える可能性があります。障害者雇用でもより戦力化しないといけないし、お給料も上げたい。だからプレッシャーも当然かかる場合が増えるような気がします。当社でもそういった求人を開拓できないかと考えています。

フロア:ある程度スキルアップもかんがみながらということですね。

鈴木:そうですね。だから障害者雇用でもこのままでいいというよりも、他の会社から見ても魅力的なスキルを高めている人材になっておいて損はないですね。
福祉の考え方では、障害者雇用で入れた人を転職させるなんてどうなのというような、障害者雇用で一度就職したら、同じ会社で一生働いてほしいという考え方があります。若干良くない言い方すると、かわいそうな人で色々苦しんでいるのだから、もう転職などせず一生安心できる所で、本人も満足すればいいのではというのが、これまでの絶対的な考え方だったと思います。
だけどそれでは満足できないような方々が増えてきて、その人が障害者雇用で働いている時に、その会社のために一生働くというより、スキルアップをして転職ができるように準備しておくのはありだと思います。一般雇用の考え方とすごく近いですよね。

フロア:あとは障害者雇用だとどうしても残業があまりできなくなりますね。私くらいの年齢だと残業して成長しようという考え方もあると思うので、例えば残業ができないのであれば、資格を取るとか。今流行っているかもしれないですが、名刺を2枚持つイメージで、NPOでボランティアをしたりとか。

鈴木:そうですね。年齢が上がれば上がるほど、資格よりも経験と、人の上に立てるかどうか、リーダーシップが求められますよね。資格とか、手を動かせる人間は若い人にたくさんいるのですよ。もちろん、社外で何か活動するのはいいと思いますが、仕事を選ぶ時の基準として、きちんと成長をさせてくれるところ、専門性を与えてくれるところ、社内でしっかりスキルアップできることをさせてもらえることに勝るものはないですね。

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監修者コメント

障害者枠で働くこと、お金のこと、本当に悩んでしまいますよね。

僕ら医師はもう少し障害が重い人を診ていることも多く、患者さんの中には生活保護受給者も少なくありません。生活保護と聞くとギョッとするかもしれませんが、しかし、お金で思いつめてしまう人も多く、そのような道を選ぶ方もいます。

日本には皆さんが知らないであろう制度や生き方がたくさんあります。上手に選べばご自身にあう道が見つかる可能性が高いですので、視野を広げ、様々な選択肢を、できるだけ先入観を持たず考慮し判断していくことが重要になってきます。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修 : 益田 裕介 (医師)

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