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大人の発達障害 就職・雇用・仕事・就活診断・疑いのある人が 就活・職場に関して知っておくべきポイント

発達障害の診断をされたり、周囲に発達障害の人がいた時にまず知ってほしいことは4つあります。
  1. 脳の機能が多くの人と異なること。生まれもったものであるため一生特徴が続くこと。
  2. 特徴は凸凹ともいわれ、得意な部分と苦手な部分の差が激しいこと。
  3. 特徴には長所も多いが、経済的な価値を持つような秀でた才能であることもあれば、実直さや手の抜かなさといった人間性であることもあること。
  4. 社会に適応しづらい特徴もたくさんあり、それらは周囲・環境の調整やご本人の工夫で克服できるものが多いこと。

 「発達障害=天才」でも必ずしもないですし「発達障害=仕事ができない」でもありません。ご自身の特徴を知る上での一つの手助けでしかありません。特性は弱めることは出来ますが、一生お付き合いする特性でもあります。己を知ることで、周囲との関わりを向上させ、生きやすさを向上させていきましょう。

発達障害の診断には大きく4つの種類があります。ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠如多動性障害)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害です。

 専門医でも、同じ人を診察しても診断が異なることもありえます。年齢によってその人の特徴の見え方が変わることもあるでしょう。また複数の診断が重なっていることが通常です。一方で、本やネットにある「発達障害の特徴」にすべて当てはまる人も、まったく当てはまらない人もこの世にはいないでしょう。このため診断名にはあまりこだわらないほうが懸命です。

 ただし診断名はある程度の傾向を理解するのに便利です。ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)は、人とのコミュニケーションが特異だったり、特定のことへのこだわりが特徴としてあげられます。ADHD(注意欠如多動性障害)は注意が散漫だったり、ミスや抜け漏れが防ぎづらかったり、衝動的な言動があるのが特徴です。LD(学習障害)は読み書きがいくら練習をしても習得出来なかったり、数字や単位の理解が難しいことが挙げられます。その他にトゥレット症候群なども発達障害に含まれます。

 発達障害の割合には様々な統計があります。2%リンクとも6%リンクとも11%リンクとも言われていますが、明確な診断基準があるわけではありません。医師によっても診断の範囲を広く取る人から狭く取る人もいます。

 自分も発達障害ではないか?と気になる方のためにチェックリストも作っています。自分を捉える上での参考としてお使いください。

発達障害は増えているのでしょうか?ここには様々な見解があります。

 一つの見解は診断する医師が多くなってきたこと。また法律などが出来て病院やクリニックへの診察を促すことが出来る専門家が増え、チェックの頻度が高くなったことがあるでしょう。他には、学校や職場で求められる水準が高くなったことが挙げられます。ミスの許容度が低くなったり、臨機応変な態度や当意即妙なコミュニケーションが必要とされる機会が増えたということです。産業構造が変化し、相手の気持を読んだり複数の業務を同時に行うなど求められる業務の内容自体も変化していることがあるでしょう。遺伝子レベルでの発達障害の原因の究明も進んでいますが、発達障害が増えていることを証明するような決定的な研究はまだありません。 いずれにせよもはや現代日本では珍しい特徴ではありません。

診断は受けるべきでしょうか?困り感が自分や周囲にあるならYESです。

 日常生活や学校・職場で苦しみがあるならば診察を受けたほうが良いでしょう。診断を受けることによって、様々な制度が利用できますし、配慮が受けられ自分の能力を発揮しやすくなります。(目が見えづらくなったら早めに検査を受けてメガネやコンタクトレンズを使ったほうがご自身の力を発揮しやすくなるのと似ています。)

 診療・診断の目的は、あくまで自分を知るためであるべきです。診療・診断自体は手段でしかありません。 気軽にというと語弊がありますが、ご自身あるいは周囲が困っていたら専門の病院・クリニックを訪ねてみましょう。一方で明らかに特徴が強くても、自分も周囲も困らず幸せに暮らせているならば診断は不要です。

 一つ知っておいてほしいのが二次障害です。発達障害の生きづらさを放置すると、もともとその人に関係のなかったうつや不安障害など他の症状が出てくることがあります。二次障害があると生きづらさは倍増します。周囲との違和感が強くなったら、早めに専門家に相談しましょう。

発達障害に理解があったり、長所が発揮できる職場や学校は?選び方をまとめます。

 2016年に障害者差別解消法が施行され、どの職場・学校でも「合理的配慮」が受けられるようになっています。合理的配慮は自分の苦手を学校や職場に伝え、配慮を受けることで、ご自身の力を発揮しやすくすることのことです。しかしあくまで合理的(経済的などの観点で学校や事業者に無理な配慮でないこと) が求められ、すべての要求が通るわけではありません。また法律で決まっているからといって本当にすべての事業者が合理的配慮を真剣に考えてくれないという事実もあるでしょう。

 大学については近年整備が進み、多くの大学で学生支援室が作られています。単位取得のハードルが下がるわけではありません。しかしノートテイクが難しい書字障害の学生にスマートフォンでの板書撮影が認められるなど、発達障害のある大学生にとっては少しずつ配慮が広がっていると言えるでしょう。

 就職や職場環境については、日本にはもともと障害者雇用についての法律があり、障害者枠で発達障害の人が数多く働き始めています。一方で障害者雇用と比較すると、一般枠(※一般枠であっても合理的配慮の対象です)での配慮は進んでいないと言って良いでしょう。

 ご自身の特徴を踏まえた就活をするには、行政の職業訓練校リンク や福祉の就労移行支援事業所などを活用する人が増えています。 自分の適性についてアセスメントしてもらったり、苦手の克服・対策方法について技術を習得するためのプログラムで準備をしていきましょう。

 自分の不得手なところに対策が見えたら、次は長所を発揮できる仕事を探しましょう。ASDの特徴が強いタイプは似たような仕事につくことがありますが、ADHDタイプの方は個々の興味関心に応じた職種が良い場合が多くあります。 一般雇用か障害者雇用かは多くの方が悩まれるポイントです。支援者の意見も聞きながら、年齢・経歴・特性・家族のサポート・メンタル面などを総合的に考えていきましょう。

発達障害の種類

 医師の診察をうける時に発達障害のどの種類に当たるのかの検討をつけておくと良いでしょう。発達障害と言っても千差万別で、自分がどのような特徴に当たるかを把握しておくことは生きやすさが増す可能性があるからです。(※下記解説は当社の別ページから重要部分を抜き出しています。)

ASD 自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群

 ASDは”Autism Spectrum Disorder (Disability)” の略で、日本語では自閉症スペクトラムと訳します。ASDの人は、学校や職場など社会の様々な場面で人とのコミュニケーションや関わりに難しさが生じることが多くあります。また興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特のこだわり行動や振る舞いが見られることもあります。他にも五感などの感覚が人よりとても敏感に感じたり、逆にほとんど感じない分野がある人もいます。

大人のASD 特徴1  グループでの業務・活動が苦手

 自閉症スペクトラムの人は一人で黙々と作業をするのは得意な傾向にありますが、チームで業務を行うのが苦手な人が多くいます。チーム内で孤立してしまったり、周囲と足並みを揃えずに自分が良いと思ったことを独断で行い他のメンバーを混乱させてしまうことがあります。よく「空気が読めない」と表現されますが、本人にはチームがどんな目標のためにどうやって動いているかを理解したり、それを踏まえて自分はどう動けばよいかを理解するのが難しいのです。結果として周囲からは非協力的な態度だと受け取られてしまいやすくなります。

大人のASD 特徴2  やり取りがうまくかみ合わない

 業務の指示を誤って理解したり、報告や相談をするときに話が分かりづらく支障が出ることがあります。また職場では状況が色々と変化する中でその場で言われたことを理解し適切に返答するといった動的なコミュニケーションが求められるようになります。そのようなスピード感のあるやり取りだと理解が追いつかなかったり言いたいことをぱっとまとめて伝えられないという人も少なくありません。学校では急な変化が少なく自分のペースで落ち着いてやり取りできる静的なコミュニケーションが多いため、学校生活では問題が目立たない人もいます。しかしそのような人でも就職してから困り感が急に大きくなることがあります。

大人のASD 特徴3  自己流で物事を進めたがる

 マニュアルや指示の通りに作業をするよう言われていても、自分が気になってしまうと作業を先に進めることができなかったりします。中には指示されていないことも気になってしまい作業してしまう場合もあります。このため作業の効率が落ちたり作業が完了できなくなることもあり、職場での評価が下がってしまうことも残念ながら少なくありません。

ADHD 注意欠如多動性障害

 ADHDは”Attention Deficit Hyperactivity Disorder”の略で、日本語では注意欠如多動性障害と訳します。以前は注意欠陥多動性障害と訳していましたが、「欠陥」という言葉よりマイルドな「欠如」という言葉に置き換わりました。ADHDの人は注意が散漫だったり、じっとしているのが難しく衝動的に行動する傾向があります。個人によってどの特徴が強く出ているかは変わりますし、同じ人でも年齢を重ねると行動の傾向が変わったり、特徴が弱まることもあります。

大人のADHD 特徴1: 頭が”多動”である

 大人になるとほとんどの人は身体の多動が目立たなくなります。身体の多動が認められないということでADD(注意欠如障害)と診断されることもあります。これは多動な特徴がなくなったというよりは、頭の多動は残っていて結果として不注意につながっていると言えます。上手に頭の中を整理できない、制御できないような状態です。

  • つい他のことを考えて気が散ってしまう。すべき仕事に集中できない。
  • 集中して作業し過ぎて疲れてしまう(過集中)。
  • 1つの作業を順序立てて進めるのが苦手。段取り良く作業できない。
  • 複数の作業を一度に進めようとするとどこから手を付けたらいいかわからなくなる。どの作業も途中までで完了できない状態になりやすい。
大人のADHD 特徴2: ”衝動的”な言動・”突発的”な気分変調

 衝動性は大人になると見えにくくなりますが、気分に大きなむらがあったり、急に考えが変わったり思いついて行動に移してしまうなど別の形で現れます。その時の感情や自分が思いついたことに気を取られ、ついつい周囲への気配りや前後の流れを無視してしまいがちです。

  • 思ったことをすぐに発言してしまう。他の人が話していても遮って話し始めてしまう。
  • 作業をしていても別の作業が気になるとそちらに手を付けてしまい元々の作業が進まなくなる。
  • カチンとくると怒りがうまく抑えられない。
  • ミスをすると少しのことでも大きく落ち込んでしまい他のことが手につかなくなる。

 注意しておきたいのは数日~数か月など中・長期で関心のあるものが変わるパターンです。仕事を転々としたり、相性が悪いからと通院先を変え続けたりと、長期間継続するのが難しいことがあります。

大人のADHD 特徴3: ミス・抜け漏れが多い

 ADHDの人が最も訴えるのはミスや抜け漏れの多さです。特徴1でお伝えしたように注意・関心のコントロールがしづらく、またワーキングメモリー(短期間情報を記憶して処理する能力)が小さいためと考えられます。人間ならば誰でもミスはあります。しかしADHDの人はミスの頻度が他の人の数倍あったり、どうしてもミスをしてはいけない場面でミスする・忘れてはいけない事が抜け落ちてしまうなど、生活や職場で大きな支障が出てしまいがちです。

  • 重要な手続きの期限を守れない。
  • ケアレスミスを何度も繰り返してしまう。
  • 持ち物を頻繁に忘れる・なくしてしまう。

LD 学習障害

 LDは”Learning Disorder”または”Learning Disability”の略で、日本語では学習障害と呼ばれています。Disorderは医療の場面で、Didabilityは教育の場面で多く使われているようです。最新の診断基準であるDSM-5では限局性学習症(SLD=”Specific Learning Disorder”)に名称が変更されました。LDのある人は子供の時には学校の勉強についていけなくなることが最も大きな困り感になりますが、大人になると働く時に指示理解の難しさやミスの多さによって業務をうまく進めることができないことが問題になります。また他の作業は問題なくできているのに決まった作業だけ「こんなところでつまづくの?」というところで難しさが出ることから、周囲の上司や同僚からどうしてつまづいてしまうのか理解が得づらく、やる気がないのではと叱責されてしまうこともあります。そのため対人コミュニケーションに不安や恐怖を感じるようになってしまう人も少なくありません。

大人のLD 特徴1 マニュアルを読んで理解するのが難しい

 作業の手順が整っている職場ほどきちんとしたマニュアルが用意されていることが多いですが、理解の助けとなるはずのマニュアルも、文章を読むのが苦手なLDの人は読むこと自体が大きな負担になりやすいです。新しい作業を教わる時にマニュアルだけ読んで自分だけで行うということも少ないかもしれませんが、口頭で説明を受けるときや、実際に自分が行ってみるときの理解の助けとしてマニュアルをスムーズに読めないとやはり不利になります。マニュアル以外にも、業務文書や連絡事項など読んでおくべきことはたくさんあるため、知っておくべきことなのに知らなかったなど情報の抜け漏れが起こりやすいです。

大人のLD 特徴2 メモが取れない

 手で文字を書くことが苦手なLDの人はその場でメモを取るのが難しいことが多いです。文字をうまく形を取って書けない人もいれば、ひらがなはOKだが漢字が苦手という人もいます。書くことはできるが書くスピードが遅い場合も、1つのことを話すたびにメモを書き終わるまで毎回指示している人を待たせることになり、指示に非常に時間がかかってしまって教える方も教わる方も負担を感じやすくなります。

大人のLD 特徴3 言われたことをその場で理解することが難しい

 その場で言われたことを一度で理解することが難しくて業務を覚えるのに支障が出てしまう人もいます。5つの項目を言われても聞き終わるときには2、3個はもう頭の中から抜け落ちてしまうようなケースや、言われたことを覚えていてもかみ砕いて理解するのにしばらく時間がかかり、「わかりました」と返事ができるようになるまでに通常よりも何テンポも遅く、スムーズにやり取りが行うことができずに本人も周囲も困り感を感じるケースもあります。

発達障害の診断と医療機関

 大人の発達障害の診断は、発達障害外来のある病院や、大人も診察する小児神経科の発達障害専門医によって行われます。精神科やメンタル・クリニックなどでも通常診断は可能です。また、各自治体の発達障害支援センターやかかりつけ医、障害者就労・生活支援センター、各自治体・学校・企業の保健師などでも、診断をしてくれる近隣の医療機関についての相談をすることができます。多くの場合は予約でいっぱいで初診まで数ヶ月待つことも珍しくありません。

 医療機関に行くときは、これまでの生育歴をまとめておくと良いでしょう。ご家族を連れていければ小さい頃の様子を話してもらえることもありますが、一人で診察をうけることが一般的です。小さな頃、学生時代、大人になってから、など困り感や、他人との関係を具体的なエピソードとともに伝えましょう。

医療機関を探す

 発達障害の診断はDSM-5(米国精神医学会による精神疾患の分類と診断のマニュアルと基準)や、世界保健機関(WHO)のICD-10(『国際疾病分類』第10版)による診断基準によって行われます。実際の診断は、面談による成育歴の確認や本人の挙動の観察、脳波などの生理学的検査、認知・知能などの心理検査などから総合的に行います。

 発達障害と診断されるには以下の基準を満たすことが必要です。

  • 心理テストで凸凹(得意な部分と苦手な部分)が統計的有意にあること。
  • 発達障害の特徴が小さい頃から続いていること(家族や幼少時の記録などで確認することもあり)
  • 他の診断名では説明がつかないこと。

 WAIS-3(ウェイス・スリー)などの心理テストでは、IQを構成する各要素の山と谷が大きいことが決め手になります。発達障害ではない定型発達の人は、IQを構成する各要素がどの項目も同じような点数となるのですが、発達障害の傾向がある場合はある項目は高く別の項目は低いという凸凹が出ます。この凸凹によって、作業による得意不得意の大きなばらつきや、脳のある部分は活発に働くけれど別の部分は上手に働いていなかったり、脳の複数部分の連携・連絡が上手にできていない、といった状態が推測されます。

発達障害の原因

 発達障害を疑っている人の中には、症状の原因を考える人も少なくありません。困り感につけ込み、発達障害が治るという期待を抱かせる人もいます。実際は発達障害は先天的であり、根本的な治癒はありません。しかし原因をしっかり理解することで、本質を理解し、対策を立てていくことは大事です。

遺伝要因か、環境要因か

 まず最初に、発達障害の「子育て」原因説や「ワクチン」原因説は、既に科学的に否定されていることをお伝えしておきます。発達障害の本当の原因はまだはっきり解明されていませんが、遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合って脳神経回路のつながり方や脳神経情報伝達物質の生成・分泌に影響を及ぼし、定型脳と異なる働きをするため、と考えられています。

 遺伝的要因が重要であることは、兄弟が自閉症である場合、もう片方も自閉症である割合(一致率)をみれば明らかで、一卵性双生児で77%、二卵性双生児で31%、兄弟で20%となっています(米シモンズ財団研究より)。この一致率の高さは、遺伝病と言われる心臓病や癌、糖尿病を凌いでいます。

 一方でこの結果は、遺伝子が完全に同一な一卵性双生児においても一致率が100%にならないことで、遺伝子以外の環境要因の存在をも証明しています。環境要因としては、父親の高年齢、母親の妊娠期における食事、特定薬物(例えばてんかん薬のバルプロ酸)の摂取や感染症、出産時の合併症、子供の脳発達の初期段階での公害・汚染からの影響、ストレスなどが挙げられています。最近の研究ではこうした要因が遺伝情報の発現に及ぼす影響の解明に焦点が絞られる傾向があります。

遺伝子・染色体と発達障害

 遺伝子・染色体解読技術を応用した自閉症と遺伝にかかわる研究によれば、発達障害にかかわる単一の遺伝子が特定される場合もあれば、数百の遺伝子が複雑に影響し合っていると想定されるものも認められています。また、遺伝とはいっても親から受け継いだものではない、数多くの新たな突然変異の遺伝子が発達障害の発生と関係があることも突き止められています。

 突然変異遺伝子や染色体重複がどのように認知にかかわる脳神経回路の不定形な形成を促し、発達障害発生に至るのか、そのメカニズムの解明を目指す同様の研究が現在世界各地で繰り広げられています。
日本でも理化学研究所がシナプス関連遺伝子NLGN1の変異が発達障害の原因となる可能性を発表し、大阪大学大学院医学系研究科解剖学講座の研究グループは、16番染色体の 16p13.11微小重複によっておこる神経発達障害群の原因分子を2016年に世界で初めて発見しています。

 こうした研究によって発達障害発生機序が解明されることで、将来的に診断前の不定形脳の形成期以前に発達障害発生のリスクを把握し、遺伝子への薬物による適切な働きかけや理学的療法により、不定形回路形成を改変させる方法の発見と確立が期待されています。ただし、研究数は加速度的に増えているものの、現時点で明かになっていることは多くない、というのが本当のところです。

スペクトラムとグレーゾーン

 特性が個々人により多様で、しかも個々の特性の出方に濃淡があるのが発達障害です。実際、発達障害のひとつのタイプであるASDの”S”はスペクトラム、つまり連続体の意味で、定型発達と発達障害を分ける明確な線が引ける訳ではありません。また、発達障害の特性は場面場面で出方が大きく変わることも多いものです。さらに同様の特性を共有する他の疾患・障害や、発達障害を原因とする二次障害との見分けも簡単ではありません。

 そのため発達障害か否かの判断は時に専門家でも難しく、診断基準は満たさないけれども発達障害の特性のいくつかは当てはまる、というケースはグレーゾーンと診断されることがあります。また、告知によるショックを和らげるために曖昧な表現をする医師も多いようです。

 きっちり線引きができないのはASD、ADHD、LDの診断名についても同様で、どれかひとつタイプの特性に完全に当てはまる人は稀で、いずれかのタイプの一部の特性だけに当てはまり、他タイプの特性も併せ持つのが普通です。さらに年齢や環境により特性の出方が変化することもあり、同一個人に対して別の医療機関では別の診断が下ることも珍しくありません。

 ですから、診断名からわかることは多いものの、診断名に囚われ過ぎたり、すべてを診断名から考えるような姿勢に陥いることなく、むしろ個々の特性や困難にひとつひとつ対処して行くことが大切です。

具体的な人物像で見る 発達障害の特徴とその対応法

 職場での発達障害の現れ方とその人にあった対応策を具体的な人物像で描いてみました。いずれも当社の支援経験から複数の方のストーリーを組合わせた架空の人物像です。診断名だけでなく、それまでの生育歴や現在の環境によってどのように仕事に向けた対策が異なるかを注意してお読みください。

Aさん 35歳 女性 既婚

大卒後、事務職として職業人生スタート。当初半年程度は、細かな作業、静かな場所での作業、毎月の決まった仕事などを丁寧に仕上げていた。しかし口頭での指示を取り違えたり、電話が上手に取れなかったり、女性同士の会話についていけないなど、一部の人との対人関係が徐々に悪化し退職。結婚を挟んで再就職を目指しているが、目立った職歴がなく就職活動がうまくいかない。近所付き合いや友達付き合いもうまくいかない中、アスペルガー症候群の本をきっかけに病院を訪れ発達障害と診断される。その後は服薬もなく病院にも頻繁には通っていなかったが、就職を考え精神障害者保健福祉手帳を申請。

【解説】ADHDの不注意と広義のLDが併存しているタイプです。仕事が定型かつ落ち着いた環境で人間関係がさばさばしている職場には馴染めるでしょう。一般枠で十分に働ける力があっても、苦手や困難を理解してくれる安心した環境で働きたいという場合、障害者枠を希望する選択肢もあり得ます。実際に診断がついており、就職活動に支障もあるため、本人に取得意志があれば障害者手帳は問題なく出るはずです。

Bさん 23歳 男性 未婚

小さい頃に言葉の遅れが目立ち、また同い年の子との遊びの輪に加わらず、「発達が気になる」と受診し、診断を受ける。その後は周囲のサポートもあり、また本人もほんわかとした性格であり、特段大きな問題もなく小中高と進む。専門学校で就職活動をしなんとか1社内定。従業員50人程度のIT企業(派遣)に就職。しかしスピードや業務量についていけず半年で離職。その後、職業訓練を受けている。

【解説】IQが85程度。以前なら高機能自閉症、あるいは学習障害と診断を受けたケースかもしれません。成長しても言葉遣いにやや不自然さが見られるものの、”受動型”であるため周囲から煙たがれることもなく、特別な支援は受けずともするすると進学。ただし職場のスピード感には追いつくのが難しく、社会に出て障害特性を理解した支援を受けるタイプです。

Cさん 28歳 男性 未婚

中高一貫校から大学に進む。しかし研究と就職活動の両立が上手くいかず留年。特にレポート・論文で苦労する。通常より2年長くかかって卒業。その後も就職先がない。在学中から大学内の学生支援課などでカウンセリングを受ける。その後、大学病院でアスペルガー症候群と適応障害の診断を受ける。一般枠で就職活動を続けたものの1社も受からず、手帳を取得して障害者雇用での就職を考え始める。

【解説】IQが120ぐらい。高学歴に多い発達障害のタイプです。見た目にも頓着せず、あまり親しくない人からはガサツな人と思われがちですが、実はガラスのハートの持ち主という、表情や振る舞いからはわからない内面を持つ方が多いようです。このような方も高校や大学、そして社会人と年齢が高くなるごとに適応が難しくなってきます。学歴もあるためまずは一般枠で就職し、本人が自分の得手不得手を職場という環境で理解することが望ましいでしょう。

Dさん 40歳 男性 既婚

趣味は鉄道。小さいころから周囲との違和感はあったが、趣味の合う友達がいたり、のんびりとした地域で育ったため、特に困難もなく高校・大学と進む。就活で苦戦するが地元企業になんとか内定。その後、営業・総務・コールセンターを転々とする。どの部署でも仕事の覚えが悪い、怒られても申し訳なさそうにしていない、いつもは律儀だが時々感情的になり周囲をイラッとさせるなど、すれ違いが出て徐々に孤立。転職をするがそこでも適応が難しく、何か原因があるのではと思っていた矢先、妻から家庭でも気が利かないことを指摘され、発達障害を疑い始める。確定診断には至らなかったが、傾向があると複数の医師から見立てを告げられる。

【解説】律儀なアスペの典型でしょう。スピード感は遅いものの、ルール通りに、周囲の人への気遣いも(やや機械的ですが)出来、趣味を通して友達も作れるタイプです。この為、少し変わった人ということで成長し、就職も出来ますが、部下をみたり、複雑な案件で調整が必要となったりすると、苦しさが出てきます。無理に出世せず、そのまま専門職などで働けると一生幸せに暮らせるタイプです。

Eさん 31歳 女性 未婚

小さいころから”不思議ちゃん”と呼ばれる。学校に遅刻したり、物忘れがひどく、毎日平穏に過ごすこと自体に疲れを感じ始める。部屋は足の踏み場がないほど片付かず、そういった様子を振り返ると自分が情けなくなり一人さめざめと泣くことが多い。自尊心は常に低い。1対1で話をすることは得意なため、面接での評価は高いが、仕事が始まるとミスや抜け漏れが出ないように極度に神経を使うため、週末は何もする気が起きないほどで、ほぼ寝て過ごしてしまう。片づけられないというキーワードからADHDを疑い受診。服薬後はできなかった整理整頓や思考のまとめができるようになり、生きやすくなったと感じる。

【解説】女性に大変多いタイプです。ゆっくりとしていてどことなく愛嬌があり異性からの人気も高いでしょう。しかしご本人の脳内はかなり混乱しています。かつASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の特性は弱いために自分が客観視できるので、自分の抜け漏れや周囲のがっかり感が認識できてしまい、自己肯定感が沈みがちです。このような症状はADHD治療薬で改善することもあります。

 

 

執筆: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。これまで1,000人以上の発達障害の方の就労支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA) 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴

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