大人の発達障害

HOME発達障害とは大人の発達障害

「発達障害*¹」は医学的には脳機能の問題です。
発達障害の方は、円滑に「コミュニケーション」をとったり、「ミス・抜け漏れ」なく作業をしたりすることに他の人よりも難しさを感じています。

発達障害の方は、環境適応が悪いと、時に努力不足や不真面目とみなされてしまうことがありますが、どちらかといえば性格的には「真面目」で「表裏のない」方が多かったりはします。
しかし、結果が伴わないため「努力が足りない」「怠け癖がある」などと勘違いされやすいのです。

大人の発達障害の種類とその症状や特徴

「発達障害」は複数の障害を一つのカテゴリーにまとめた総称です。
発達障害に含まれる主な障害として以下4つの種類があります。

  • ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)
  • ADHD(注意欠如多動症)
  • LD (学習障害*²)/ SLD(限局性学習症)
  • DCD(発達性協調運動障害)

それぞれの障害について以下に説明します。

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

ASD は人との関わりやコミュニケーションに困難が表れている障害です。
興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特の行動や振る舞い、こだわりが見られることもあります。
また、感覚が人よりもとても敏感なこともあれば、逆にほとんど感じない部分がある人もいます。

ASD の主な症状と特徴
  • グループでの業務・活動が苦手。
  • やり取りがうまくかみ合わない。
  • 伝えたいことを言葉にまとめることが難しい。
  • 人の話に関心を持てない。
  • 自己流で物事を進めたがる。

大人の ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

ADHD(注意欠如多動症)

ADHDは、うっかり間違いが多かったりじっとしていられないなど、いわゆる「不注意、多動・衝動型」といった特徴・症状が表れている障害です。
ADHDの方は幼少期から失敗経験が多く、人により自分に自信が持てず、自分を否定的にとらえてしまう方がいます。
場合によっては「不安」「うつ」などの二次障害を発症される方もいます。

ADHD の主な特徴
  • その場に適した注意の配分が難しい。
  • 要請されたことに集中し続けるのが困難。
  • 忘れる・抜け漏れることがある。
  • 順序立てて課題を進めることが難しい。
  • ソワソワと手足を動かしたり、座っていてもモジモジ動いてしまう。

大人の ADHD(注意欠如多動症)

LD (学習障害)/ SLD(限局性学習症)

単に国語や数学が苦手ということではなく、「認知能力」や「聞いたことや見たものを処理する能力」に凹凸があり、結果として読み、書き、計算が苦手として表れている障害です。
幼少期には障害のあることがわからず、年齢を重ねて求められる水準が高度化するにしたがって症状が目立ち始めて、その時になってはじめて障害があることがわかったというケースもあります。

LD / SLD の主な特徴
  • 文字や単語、文章を読むときに正確でなかったり速度が遅かったりする。
  • 読んで意味を理解することが難しい。
  • 発音が正確ではない。
  • 文字や文章を書くことが難しい。
  • 数の概念、数値、計算を学ぶことが難しい。

大人の LD (学習障害)/ SLD(限局性学習症)

DCD(発達性協調運動障害)

不器用さや身のこなしの不自然さが見られる障害です。

DCD の主な特徴
  • 身体を動かすことが苦手。特に野球やサッカーなど球技は嫌い。
  • 身体の動きがカクカクしている。ロボットのようだと指摘されることがある。
  • 手先が不器用で細かな作業が苦手だ。

発達障害の原因

発達障害の原因は1つに限定されたものではありません。「遺伝子的要因」が大きな割合を占めているのは確実で、それに「環境的要因」が複雑に影響しあって症状を形成します。
これまで言われてきた親のしつけなどの子育てが原因であることはすでに明確に否定されています。

発達障害の原因 わかっていること わかっていないこと

現在もさまざまな国、機関で発達障害の原因について調査、研究が行われ発表されています。
しかし、現状はいずれも数百人規模の調査をもとに確からしいとして導き出された説であり、それらをそのまま鵜呑みにすることはできません。
全体の方向性がどうなっているか理解する姿勢が必要です。
現時点(2019年3月)で最新の研究成果から発達障害の原因についてわかっていることわかっていないことを紹介します。

わかっていること

  • 遺伝的要素が主な要因である
  • 次いで環境要因が影響する
  • 症状には遺伝要因と環境要因が相互に影響し合っている
  • ワクチンや子育てが原因ではない

わかっていないこと

  • どの遺伝子がどのように関連して症状を引き出すのか
  • 親からの遺伝がどの程度か
  • 遺伝しないで発症する確率(その人の遺伝子の突然変異)がどのくらいか
  • 環境要因が何なのかはまだわからないことが圧倒的に多い

発達障害の原因と現在の研究成果についてより詳しく紹介しています。よろしければご覧ください。
発達障害は遺伝ですか?

「心の病」ではなく「情報の混乱」

発達障害は「心の病」(精神障害)というよりは、脳の機能的な「情報処理の混乱」(認知障害)と考えたほうが正しいようです。
しかし、発達障害の苦手さを理解してもらえないことで心に傷を受け、それが原因で「二次障害」として「うつ」などの心の病まで抱えてしまっている例が非常に多く見られることが重要なポイントです。

発達障害を理解するのは難しい?

同じ診断名でも正反対の特徴が表れる

発達障害を理解することが難しい原因の一つとして同じ診断名でも人により表れる特徴が大きく異なるということがあります。
下記例では二人とも「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)」と診断されましたが、表面上の特徴は正反対です。

AさんBさん
表面に現れる特徴
  • 多弁
  • 過敏
  • 過集中
  • 我が道を行く
  • 緘黙
  • 鈍麻
  • 不注意
  • 人に気を使いすぎる
Aさん、Bさん二人とも「ASD」と診断

Aさん、Bさん二人の特徴は正反対に見えますが、この状態を考える時に重要なのが、「頃合いがわからない」あるいは「頃合いにできない」という概念です。
例えば、喋りすぎ(多弁)と喋らなさすぎ(緘黙)は、いずれも「ちょうどよく喋る」「頃合いのやりとり」がわからない、あるいはできないため、喋りすぎたり、喋らなさすぎたりになってしまっているのです。
こうした両極端の特徴がいくつもあるのが、発達障害を理解しづらくしています。

AさんBさん
潜在的な特徴(AさんとBさんの共通点)
  • 頃合いがわからない
  • 頃合いにできない
  • ちょうど良いがわからない
表面に現れる特徴
  • 多弁
  • 過敏
  • 過集中
  • 我が道を行く
  • 緘黙
  • 鈍麻
  • 不注意
  • 空気を読みすぎる

また、上記に加え、複数の種類の発達障害が一人の中で重なっている場合が多く複数の特徴が混ざりあい、さらに分かりづらくなっています。
ASD は ADHD と重なることが多いと言われています。

知的障害を伴うことがある

発達障害は知的障害を伴うことがあります。
知的障害は知能検査でIQが70を下回り、社会生活上の障害となっている時に診断されるものです。
喋りが上手な人でも知的障害を伴うこともあり、一見理解していそうなのにできないのが発達障害によるものなのか、知的障害によるものなのか、専門家でもすぐにはわからないことがあります。

発達障害の重なり

上記で説明したように発達障害を理解するのは簡単ではありません。
加えて発達障害の方の中には複数の種類の発達障害や知的障害をかかえておられる方がおり、一人の中でさまざまな症状、特徴を持っていることでさらに理解することが難しくなっています。

重なりのイメージ図

ASD自閉スペクトラム症、
アスペルガー症候群・広汎性発達障害

ADHD注意欠如多動症

LD 学習障害 /
SLD 限局性学習症

DCD 発達性協調運動障害

知的障害

大人の発達障害 チェックリスト

ここでは大人の発達障害で多く見られる ASD と ADHD に加えて LD / SLD の障害の特徴、症状を種類別、タイプ別にしてチェックリストにしました。

このチェックリストは、あくまで簡易セルフチェック用であり、実際の診断は医療機関でしか受けられません。
疑いが強く生活に困難を感じる場合は、精神科のある病院・クリニックを受診されることをお勧めします。

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)のチェックリスト

  • 丁寧に接しているつもりでも、無礼だとか失礼だとか言われてしまう。
  • 綺麗な身なりのつもりでも、清潔感がないと言われてしまう。
  • 相手がついている嘘や悪意がわからず、騙されてしまう。
  • うわさ話や陰口がどうしても許せないし、自分でも言わない。
  • 伝えたいことはわかっているのだが、言葉でまとめるのが苦手だ。
  • 話すことが好きで語彙も豊富だが堅苦しい・辞書みたいな話し方だと言われることがある。
  • 会話をするときに相手の目を見て話すことができない。
  • ジェスチャーが多すぎると言われることがある。あるいはジェスチャーを全く使えない。
  • 興味の範囲が限られ、他の人の話に関心を抱けない。
  • 違うことを試すよりも、同じやり方を何度も繰り返す。
  • 悪気はないのに事実を言ってしまい、相手との関係性が悪くなったりしたことがある。
  • 日々のルーティンが何らかの理由で出来なかったり、予定していたスケジュールがキャンセルされると動揺して頭が真っ白になる。
  • 飲食店など大勢の人がざわついている場所では相手との会話が聞き取りにくい。
  • 偏食がひどく、においの強いものや特定の食感のものが食べられない。
  • 季節や気温にあった衣服の調節などが、うまくできないと感じる

ADHD(注意欠如多動症)のチェックリスト

  • 後先考えずに行動・決断してしまう。
  • 人がしゃべっている時でもつい発言してしまう。
  • 喋りが長くなりやすい。喋り過ぎと言われる。
  • 何時間も同じ作業をするよりも、10分や20分など短い単位で複数の作業をする方が楽である。
  • 同じことを繰り返し長い時間するとミスが多くなる。
  • 貧乏ゆすりなど体の一部分が揺れがちで、かつ揺れると落ち着く。
  • 1対1で話していても相手の話についていけないことがあったり、他のことをついつい考えてしまっている。
  • 大事な授業や会議でも集中できず時には寝てしまう。
  • 注意していても何かをし忘れたり、何かをし間違っている。
  • よく物にぶつかったり壊したりする。
  • 二つ以上の仕事や作業をこなそうとすると、どうしても両方とも中途半端になってしまう。あるいはどちらかをすっかり忘れる。
  • 約束やすべきことをメモをしていても忘れてしまう。
  • いつも詰めが甘い。終わったと思っても何かをし忘れたり、何かをし間違っている。
  • しないといけないと分かっていても締め切り間際にならないと行動できない。
  • おっちょこちょい、落ち着きがない、と言われることが多い。
  • 大事な会議や約束も念入りに準備しても数分から数十分遅刻してしまう。

LD (学習障害)/ SLD(限局性学習症)のチェックリスト

LD があると読み書きや計算など特定課題に困難が生じます。
知的問題がないのに以下の複数にあてはまり、6か月以上続いている場合、LD の可能性が疑われます。

  • 文字や単語、文章を読むときに正確でなかったり速度が遅かったりする。
  • 読んで意味を理解することが難しい。
  • 文章が正確に読めていても文章に登場するものの関係性や意味理解ができていない。
  • 文字や文章を書くことが難しい。
  • 数の概念、数値、計算を学ぶことが難しい。
  • 数字やその大小、関係性の理解が弱い。

注意事項

チェックリストにすべて当てはまらずとも一定数の項目に当てはまれば診断を受けることが多いでしょう。
一方でチェックリストに数多く当てはまる時も、ご自身の過剰な意識・過度な不安であることもあります。

純粋な ADHD 、純粋な LD 、などというケースはほとんどなく、多くの場合は要素が重なっています。あくまで簡易版のチェックリストであることをご承知おきください。実際の診断は医療機関でしか受けられません。医療機関で診断方法は若干異なりますが通常は WAIS-3 などの心理検査( IQ 検査・知的検査)や成育歴などの問診があります。
疑いが強い場合は精神科のある病院・クリニックを受診することをお勧めします。

発達障害かもしれないと思ったら 相談機関 市区役所、保健所など

2005年に施行された「発達障害者支援法」によって、これからは子どもの頃に診断され、成人になる人が増えるでしょう。
しかし依然として、大人になってから「自分は発達障害かもしれない」と疑う人も多いと思われます。

発達障害は早い段階からそれぞれの特性に合わせた支援を受けることが大切だといわれています。
特性に気づいたら次の専門機関に相談しましょう。

専門機関に相談する前に

親の同席は必ずしも必要ではありませんが、過去の資料はできる限り持参しましょう。
生まれた後の成育歴(生まれてからのこと、言葉を話し始めたときのこと、保育園・幼稚園・小中高での状況)、大人になってからの課題感、そして家族との関わりなどについて文章などでまとめてから相談すると、専門機関でのやりとりが円滑になるでしょう。小学校から中学校までの成績表が残っていれば持参することもお勧めします

相談窓口のご紹介

市町村保健センター

発達障害に関わらず広く地域福祉に関して相談できる窓口です。
各市区町村に設けられています。お近くの医療機関への紹介もしてくれるでしょう。
お住まいの「自治体名」と「市町村保健センター」とウェブで検索してみましょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援法で設置された各都道府県・指定都市にある相談機関です。
ニーズに応じて福祉制度や医療機関の紹介をしてくれます。
お住まいの「自治体名」と「発達障害者支援センター」とウェブで検索してみましょう。

カウンセリングルーム

公認心理師が開設している民間のカウンセリングルームでも、発達障害の相談に乗ってくれるでしょう。
しかし医師と違って診断や薬の処方が出来ません。
一方で心の悩みを相談できる時間をたっぷり取ってもらうことができます。

大学の学生相談室

学生の方は大学に有る学生相談室に行くことも良いでしょう。
学生生活全般の相談だけではなく、発達障害や精神障害に関する悩みも受け付けてくれるところが多いでしょう。

医療機関(病院・クリニック)

はじめから医療機関に赴くことも可能です。
診断をしてくれるのは「精神科」・「心療内科」の病院・クリニックです。
最近では発達障害に詳しい医師が多くなっていますが、厚生労働省が提供しているウェブサイトで検索も可能です。
ADHD (成人)を相談できる病院検索

診断を受ける場合の具体的な医療機関

日本では、診断と薬の処方の2つは医師でないと出来ません。
このため、確定診断を受ける(診断書を取得する)場合は医療機関に赴く必要があります。
その際は「精神科」・「心療内科」となります。行こうと思っているクリニックのウェブサイトで「発達障害」という言葉が入っていると安心でしょう。
Kaienでも首都圏・近畿圏の発達障害に詳しいクリニックをご案内しています。

大人の発達障害の診断と治療

専門家による評価、診断を受けましょう

発達障害と向き合い、対策するための第一歩は専門家による評価、診断を受けることです。
上記「相談窓口のご紹介」で記載したように保健センターや支援センターなどで紹介してもらっても良いですし、直接専門の医療機関へ行っても構いませんので、まずは医療機関で評価、診断を受けるようにしましょう。

生きづらさや苦手感を、「ASD」「ADHD」「その他の発達障害」「後天的な失敗経験」などの要素に分解し、それぞれについて適切な対応を考えます。

以下に各発達障害の種類別の主な治療方法について紹介します。
※自己診断で下記治療法を行わないでください。必ず専門家の評価、診断を受けるようにしましょう。

ASD の主な治療方法

  • 自己理解
  • トレーニング

ASD の方は客観視が苦手で自分がどのように周囲に見られているのか一人ではわからないことが多いです。
同じような人がいればその人を見て自分のことを見返すことが出来ます。
概念化してもらえるように、家族や周囲の人に加え、医療機関やカウンセリングなどで自分の得意と苦手を把握しましょう。
自己理解を踏まえた上で、コミュニケーションや段取りの型を覚えるトレーニングを受けましょう。

ADHD の主な治療方法

  • お薬
  • 自己理解

ADHD の方には複数のお薬があります。ただし、お薬は効果が出る場合と出ない場合があり、また副作用もあります。必ず医師と定期的に相談し指示通りに服薬しましょう。
自己理解は ADHD の方にも有効です。自己理解(メタ認知)を踏まえた上で、コミュニケーションや段取りの型を覚えるトレーニングを受けましょう。

LD / SLD の主な治療方法

  • 苦手対策
  • 配慮

LD / SLD はアプリや治具(ハンディを補うための道具)を知り、自分にあったものを探すという対策が必要です。

二次障害の主な治療方法

  • お薬
  • カウンセリング

二次障害・後天的な生きづらさの対策は色々あります。もっとも重要なのは医療につながることです。
お薬で気持ちを整えたり、カウンセリングで過去の生きづらさを振り返ったりしていきましょう。

大人の発達障害 おすすめの仕事

発達障害の症状、特徴として他人とのコミュニケーションが上手でなかったり、うっかり忘れが多かったりするため、実際の仕事の現場で苦労されている方が多くおられます。
ここでは、大人の発達障害の方に多い ASD と ADHD の方の症状、特徴に合ったそれぞれに向いている仕事について紹介します。

ASD の方に向いている仕事

ASD の「グループ活動が苦手」であったり「こだわりに凸凹がある」といった特徴は良い意味で「周囲を気にせず、こだわりを持って仕事に集中できる」など業務を行う上で長所にもなります。
特徴を活かしやすい仕事につければ能力を発揮して活躍できる可能性が高くなります。

ルールやマニュアルがしっかりしている経理・財務、法務・情報管理、コールセンターなど
専門分野の知識を活かせるプログラマー・テスター、テクニカルサポート、電化製品等販売員など
視覚情報の強さが活かせるCADオペレーター、監視カメラのチェックなど

下記ページでは、ASD の方が得意な仕事・職業についてより詳しく紹介しています。よろしければご覧ください。
大人のASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

ADHD の方に向いている仕事

ADHD の「うっかりミスが多い」や「ソワソワして落ち着かない」などの特徴は、一つのミスが致命的な問題になってしまうような仕事や長時間集中しなければならない仕事にはあまり向いていません。
反面、ADHDの方には優れた発想力や行動力を持つ方が多く、ものづくりや研究の分野などで活躍されている方が多くいます。

ADHD の方に向いている仕事
自分の興味を発信できる仕事編集、記者、ディレクター、カメラマン など
もの作りに関わる仕事料理人、整備工、プログラマー、アニメーター、デザイナー など
専門分野に特化できる仕事研究者、学者、塾講師、教員 など

下記ページでは、ADHD の方が得意な仕事・職業についてより詳しく紹介しています。よろしければご覧ください。
大人のADHD(注意欠如多動症)

大人の発達障害の方の仕事術 困りごととその対処法

いくら自分の特性にあった仕事に就いたとしても実際の仕事の現場では困難に直面することも多くあります。
ここでは、大人の発達障害の方に多い ASD と ADHD の方に絞って仕事の現場で直面するであろう困りごとの一例を挙げて、その対処方法について紹介します。

ASD の方の仕事術 職場での困りごととその対処法

困りごと1: 抽象的な指示を理解できない

「いい感じにやっておいて」などの抽象的な指示を受けた場合、ASD の方はどのように動けばよいのかが判断できず困ることがあります。
また、「多めに発注しておいて」などの指示も「多めとは、何個のことだろう?」となってしまい理解することが難しくなります。

対処方法

抽象的で分かりにくい部分について具体的に上司や同僚に相談できるスキルが必要です。
また予習が大事で、新規の業務ではない場合、これまでの実施された同様の業務の例を思い出して参考にしてみるとよいでしょう。
可能であれば、具体的な数字や割合(%)を入れて指示してもらうように依頼しましょう。例えば、「〇月×日の△時までに〇〇個」などです。

困りごと2: 臨機応変な対応が苦手

仕事上では、その場その場で臨機応変な対応が求められることがありますが、「ASD」の方はそのようなことはあまり得意ではありません。

対処方法

「〇〇が起こったら××」というように場面ごとにどのような対応するのかあらかじめ書き出して対応マニュアルを作成しましょう。ただし、マニュアル化をしていくことにも限界がありますので、優先順位のつけ方や対応方法などを上司や同僚に確認する、というスキルがある程度必要です。

下記ページでは、上記以外の困りごと例とその対処方法について紹介しています。よろしければご覧ください。
大人のASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

ADHD の方の仕事術 職場での困りごととその対処法

困りごと1: 予定や計画の管理が苦手

ADHD の方は仕事の優先順位をつけることや複数のタスクを同時にこなすことができないことが多いため、予定や計画の管理が苦手な方が少なくありません。

対処方法

「予定や計画そのものに無理がある」場合は、タスクにかかる時間や優先順位づけを考え直す必要があります。
計画を実行するための時間が取れているか、優先順位は適切につけられているか、同時に複数のタスクをすることになっていないか、を確認しましょう。
優先順位をつける際は、締め切りが速いものや重要度の高いタスクの優先度を上げましょう。
可能であれば、第三者の意見を取り入れるようにしても良いでしょう。

「予定や計画は適切だが想定通りに進まない」場合は、都度計画の立て直しが必要になります。
最初に計画を立てる段階で、「〇月×日までに△△まで終わっていなければ上司に相談する」などの対応策を考えておきましょう。

また、職場では想定外の予定が入るなどして当初の予定が崩れていくこともあります。「ADHD」の方は目で見て情報を得ることが得意な方が多いので、タスクリストや作業の進捗を視覚的に確認できるように工夫し、常に重要度や優先度が意識できるようにしましょう。

一般的に、復習をすることが大事です。

困りごと2: 「うっかり」ミスが多い

「うっかり間違い」や「うっかり忘れ」は、ADHD の方の特徴の一つです。
日常生活の中であれば笑い話で終わったとしても仕事上ではそうはいきません。

対象方法

まずはどのような状況でミスが出やすいか確認、分析を行い、特にミスの出やすい状況になった際にどのような対策をすれば良いか考えましょう。
そして、考えた対策を箇条書きなどにしてチェックリストなどを作成して確認するようにします。
他の人にチェックをお願いできるようであれば早めにチェックをお願いすることも有効です。

自分がしようとすることを周りの人に事前に話しておけば助けてくれます。
またどのような順番で、なぜするのかを考える癖をつけるようにします。

完璧を求めすぎてもいけません。
「うっかり」を完全になくすことは、どんな人にとっても難しいことです。
うっかりミスを防止する工夫を考えつつ「ミスした後にどう対応するか」を考えておくとよいでしょう。下記ページでは、上記以外の困りごと例とその対処方法について紹介しています。よろしければご覧ください。
大人のASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)

大人の発達障害の人口比率、男性、女性の割合は?

人口比率

発達障害は最も有名な統計で6.5%(文部科学省 2012年)です。
通常学級にいる子どもについての統計ですが、発達障害は生涯にわたって特徴が残るため大人での割合も概ね変わらないと考えられるでしょう。

性別でみる発達障害の割合

一般的に、発達障害は男性の人口が多いと言われています。
ASD では男性:女性が4:1。
ADHD では男性:女性が2.5:1と言われています。

ASD の男女比
  • 男性
  • 女性
4
1
ADHD の男女比
  • 男性
  • 女性
2.5
1

スクリーニング方法や評価方法の発展・変更で今後変化する可能性はありますが、発達障害の方に男性が多いという現状は確かにあります。
Kaienでも、利用者の割合は男性の方が多いです。

発達障害の女性の方の特徴について下記ページで詳しく解説しています。よろしければご覧ください。
女性の発達障害の特徴

大人の発達障害の9割は「ASD」と「ADHD」

発達障害には複数の種類がありますが、大人の発達障害では、ASD と ADHD(注意欠如多動症)のいずれか、もしくは、その両方の診断をされている人が9割を超えます(当社利用者約300人へのアンケートより)。

周囲の方へ 大人の発達障害の方への対応方法

発達障害の特性のため障害者ご自身が生きづらさを感じているのと同様に周囲の方もどのように接すればよいのか悩まれる方も多くおられます。
ここでは、周囲の方がどのように接すればよいのか紹介します。

ご本人が気づいていない場合

周囲が「この人発達障害だろうな」と思ったとしても、ご本人がその特性に気づいていないことはよくあります。
ASD 傾向の方は特徴として客観視が難しいために気づきにくく、一方、ADHD の方も自分の努力不足と思っていることがあり、発達障害由来のためにミスが多いということに気づかないということがあります。

発達障害の可能性をご本人に気づかせたい場合は、診断名は言わずに「一生懸命しているのはわかるけれども、こういうところが不得意・特徴だね。」などと、事実を交えながら話していくことにしましょう。
なによりも本人の努力や真面目さを評価しつつ、何か他の要因があるのではないかと伝えることが良いでしょう。

その後、ご本人が自らその苦しさの理由を探し始めたら診断名を一つの可能性として伝えて良いかもしれません。
その頃にはご本人がテレビやネット、本・雑誌、新聞などで気づく可能性も高まるでしょう。

ご本人が気づいている場合(診断がある)

既にご本人が特性に気づいている、あるいは診断がある場合は、心のサポートはもちろん、ナビ的に情報を整理することが大事です。

伝え方の一例
  • 必要以上に情報を伝えず最低限にする(単純化)
  • 口頭のやりとりだけではなくメモに残す/1冊のノートにまとめてメモは捨てない(視覚化)
  • ダラダラと伝えるよりも箇条書きにする(構造化)
  • 一度でわかるとは思わず何度も伝える(反復化)
  • 出来る限り手順などをスモールステップで伝える(粒度の細分化)

オブラートに包む言い方だと混乱する人もいます。
単刀直入に、ストレートに伝えるほうが良いでしょう。発達障害の人は記憶が良いことが多く、矛盾したこと、一貫していないことは嫌がります。
信頼を勝ち得て、やりとりをするには、わからないことはわからないとはっきり伝えたり、以前から方針が変わったときはその理由を伝えたりして、「前と言っていることが違う」という後出しジャンケンの状態にならないようにしましょう。

「発達障害」から「神経発達症」へ

日本では「発達障害」という言葉が定着していますが、米国精神医学会が発行している「精神障害の診断と統計マニュアル」の最新版(DSM-5)では、「神経発達症/神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders)」に分類されています。
DSM-5は、日本においても精神疾患・精神障害を診断する際のマニュアルとして用いられています。

「神経発達症/神経発達障害」と言われるように発達障害は「しつけの結果」や「本人の努力不足」が原因なのではなく、神経の発達状況に起因する脳機能障害です。
今後は、より正確に表している「神経発達症/神経発達障害」と呼ぶことが増えるでしょう 。

参考文献 『発達障害の基礎知識』(宮尾益知・著/河出書房新社)

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます


監修者コメント

「発達障害」の特性による社会適応の問題は記事にある通り様々な点に及んでいる一方で、何が適応不全に繋がっているかは本当に様々です。記事中にある、ASD/ADHD/LDなどの特徴を見て、これもあれも自分に当てはまる、と感じる方はいるのではないでしょうか。医学的には当てはまる部分がある=診断、というわけでは無いのです。例えば米国診断基準DSM-5のASDの項目には「症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている」があり、問題を引き起こしていないのに診断することはしません。それに、いくつか当てはまるという程度であれば殆ど誰もが診断されてしまいます。そういう意味でも、「発達障害」を疑った場合、また何か特性的なものが自分や家族の社会適応に影響していると考えたときには医師と相談してみましょう。そして、それは早いほうがいいですね。良い環境で、良い体験が積めることは人格や能力形成に大きな影響を与えるのは確かだからです。尚、仮に幼少期に診断されても、支援が途中で不要になることがあります。「診断」が必ずしも一生当てはまるわけではないこともあるのです。


監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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