グレーゾーン診断を受け止めて。デザイナー職で極めるプロの道「DTPデザイナー」専門スキル人材の活躍事例 サザビーリーグHR

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この記事のポイント

  • アパレルブランドのフライヤーなど、様々な紙媒体の制作を手掛ける西村さんの前職は雑誌編集者だ
  • 激務による体調不良で雑誌編集を退職、葛藤の末に西村さんはADHDの診断を受け入れた
  • 現在はDTPチームのリーダー職。自分の仕事で精一杯のときにはなかったやりがいを感じている

取材:Kaien 編集部


「入稿データの色調整をした上で、紙質や温度・湿度も考慮して印刷しています。品質は高い評価を受けています。また、店舗別の仕分けや封入作業など、印刷後のサービスも含めたトータルでの顧客満足度向上を目指しています。」

成果物について説明をしてくれているのは、DTPチームのリーダー西村さん(仮名)だ。

サザビーリーグHRは、生活雑貨・飲食のAfternoon Tea、セレクトショップのRon Hermanなど、約40のブランドを展開するサザビーリーグのグループ特例子会社だ。「DTPチーム」ではグループ内の各ブランドから発注のある紙媒体の印刷、カッティング、加工、納品までを西村さんを含むメンバー6名(いずれも発達障害の診断を受け、障害者雇用枠で勤務)で、一手に引き受けている。多い時には月で50件以上の案件をこなすこともあるそうだ。また、最近では動画編集技術を習得し、ショートムービーの制作依頼に対応するなど、職域を拡大している。

印刷所さながらの本格的な印刷機や裁断機が並ぶ

案件のボリュームもさることながら、その成果物のクオリティは「プロの仕事」だ。アパレル品やアクセサリーの展示会フライヤーや店内POP、飲食店のメニューの数々。どれも洗練されたデザインが並ぶ。

各案件の制作はメンバーで手分けをしながら行っているが、リーダーの西村さんはそのほぼすべてに目を通し、メンバーから相談を受けたり、アドバイスを行っている。技術面で悩んだら西村さんに相談すれば何とかなる。そんな信頼関係がチームに出来上がっているのだという。

やりがいを感じていた雑誌編集を退職、そして医師によるADHDの可能性の指摘

西村さんは前職は雑誌編集者だった。業務に活かされている、デザインの技術やセンスは一般枠での就労経験に基づいている。

制作物はアクセサリーブランドのageteや、‎Afternoon Tea TEAROOMなどの店舗に並ぶ

「小さい頃から本や雑誌が好きでした。デザインに関わる仕事につきたくて、ある業界紙の雑誌編集の仕事に就きました。編集や紙面レイアウトはもちろん、企画から撮影に至るまで、幅広く何でもこなしました。好きなことを仕事にしているやりがいや充実感はあったのですが、数十件の案件を同時並行するハードな職場でした。校了の前は、日付が変わるのが当たり前。会社の机の下で丸まって仮眠を取ることもしばしばでした。」

やりがいはたしかに感じていた。しかし日を追うごとに、苦しさと疲労が蓄積した。

「徐々にマルチタスクのコントロールが困難になりました。周囲の期待に応えたいと思って無理をして頑張りましたけど、最終的には体調を崩して兼業の契約社員として3年、その後正社員登用から1年ほどで退職に至りました。」

退職後、医師との問診の中で「不注意優勢型ADHD」の可能性があるとの指摘を受けた。「ADHDの人の中には、頭の中にアイディアが思い浮かぶとコントロールが効かなくなって注意力が散漫になったり眠れなくなってしまう人がいるね」という医師の指摘。言われてみると、たしかに心当たりがあった。西村さんは学生時代から長年にわたって睡眠障害に悩まされていた。もしかしたらそれも発達障害の二次障害だったかもしれない。

苦悩の末に障害者雇用枠でDTPデザインの仕事をスタート

主治医は、診断や障害者手帳についての説明を一通りしたうえで「西村さんが必要だと思えば確定診断を出しますが、どうしますか?」と、西村さんに意向を確認したという。いわゆる発達障害のグレーゾーンだ。西村さんは熟慮の末、障害者手帳を取得することにした。

華やかな世界で働いていた西村さんに、障害の診断を受け入れるうえでの葛藤は無かったのだろうか?

「正直、診断を受け入れることへの葛藤は強くありました。将来の選択肢が狭まってしまうのではないかという不安はありましたが、私は『細く長く働ける人になりたい』という思いが強かったので、職場の理解を得やすい障害者雇用という働き方を選びました」

実は西村さんには編集者以外にも数社の職歴があり、いずれも1,2年程度で退職している。どの職場でも何でもそつなくこなすように見える西村さんには「出来る人」という印象が付きまとい、ギャップに苦しんだ。周囲の期待に沿うように無理をして、限界が来る。その苦労の歴史があったうえでの決断だ。

それから約1年間のKaienの就労移行支援での職業訓練を経て、西村さんは‎サザビーリーグHRの本社オフィス立ち上げと同時に、DTPオペレーターとして勤務を開始。多少の紆余曲折はありながらも、細く長く働きつづけた。気が付けば入社して、今年で8年が経過していた。

入社4年でリーダーに。このメンバーだから、やってみようと思えた

西村さんがDTPチームのリーダーになったのは入社4年目の頃だという。DTPのオペレーターとして入社した西村さんは、職人的に技術を高めることに関心があったはずだ。リーダーのアサインには戸惑いはなかったのだろうか。

「そうですね。あまり人の前に進んで立つタイプじゃないから、リーダー職には少し戸惑いがありましたが、いまのこのメンバーだから、やってみようと思えたんです。入社した当初は『自分でやるのが一番早い』って思って案件をひとりで抱え込みがちだったんですけど、あるとき自分が持っている技術を教えたら、出来ることが増えたと嬉しそうにしている。その様子をみて、私も素直にうれしかったんです。その時から少しずつ、一緒にやってきたメンバーのことを前よりも多く考えるようになりました。」

DTPチームを統括している指導員の黒澤さんに、普段の西村さんの仕事ぶりを尋ねた。

「DTPチームの業務は、印刷数が比較的少ない印刷物に迅速に対応しています。案件によっては、ロットごとに微妙な違いがあったり、依頼内容が複雑になるケースも多いのですが、西村さんは依頼側とメンバーの「つなぎ役」として、作業と依頼にズレが出ないように伝達してくれています。デザイン技術はもちろんですが、メンバーとのコミュニケーションも円滑です。付き合いが長いこともあるのかもしれませんが、私たち指導員以上に、メンバー1人1人の特性を理解しているんじゃないかな、と感じるときがあります。指導員側もつい、あれもこれも任せてしまいそうになるのですが、本人にとって無理なく続けていけるペースを維持できるように調整しています。」

西村さんの直属上司である黒澤さん

自分に余裕ができたら、自然と仲間を心から信頼できるようになった

入社当初の「仕事のやりがい」は自身が制作した媒体が店舗に並んでいる様子を見たり、作品を人から褒められることだった。しかし、やりがいを感じる部分は徐々にメンバーの成長や、チームとしての成果に変わっていったという。

最後に西村さんに尋ねた。「サザビーリーグHRに入社して8年間で、自分が変わったなと思うところは?」

「人にやさしくしてみよう、と考えるようになったことでしょうか(笑)。仕事が安定するまでは、環境に慣れること、勤怠を安定させること、体調を整えること、自分が期待に沿う仕事をすること。自分のことで精一杯でした。でも、少し自分のことに余裕が生まれることで、自然と一緒に働くメンバーのことを心から信頼し、尊敬できるようになりました。一緒に働くメンバーが、昨日より少しだけ出来ることが増えたり、会社に行くのが憂鬱じゃない日々を作るうえで、すこし自分が役立つことができればいいな、って考えながら働いてます。前はこんな風には考えなかったですね。」

共に働くメンバーとの関わりについて話しているときが、一番笑顔が多く出ているように見えた。職場の人に「苦手なこと」を理解してもらいづらく長く働くことが難しく職を転々としてた西村さんが、障害を開示し、持続可能なペースで細く長く働くことで見えてきた新たな景色。それは得意なことも苦手なことも互いに認め合いながら、一つひとつやれることを増やし成長するチームの中で働く、新しい自分自身の姿だった。

取材協力

株式会社サザビーリーグHR

生活雑貨・飲食のAfternoon Tea、セレクトショップのRon Herman、アクセサリーブランドのageteなど、衣食住に関する“モノ” “コト”を通して、半歩先のライフスタイルを提案し、新たな価値を創造し続けるサザビーリーグの特例子会社。

2012年から国内でいち早く発達障がい者人材の能力に着目し、現在は約80名の発達障害人材を活用。WEBデザイン、システム開発、WEBアクセス解析などのIT領域や、ロジスティクス、DTPセンター、店舗支援など幅広い業務で、本業に貢献している。

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