発達障害ならではのお悩み「キャリアアップのためにどんな本を読むべき?」

~Kaien スタッフ&当事者会 キスド会レポート④~
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奇数週 土曜開催の在職者向けの当事者会「キスド会」では、様々なお悩みが寄せられます。発達障害*の傾向を考えながら、スタッフや参加者が知恵を出し合って答えていきます。今回のテーマは「どんな本を読めばいい?」です。

今回のお悩み:いつまでたっても賃金が低いまま

相談者(以下Aさん):私の簡単な経歴ですが、ホテル系の専門学校を卒業して1年間契約社員としてホテルのフロント業務をしていました。その後いくつかアルバイトを経て、現在はKaienの就労移行支援の待機中です。今まで働いてきた職場は単純労働が多かったです。このままだといつまでたっても賃金は低いままだし、スキルが身につかない。どうしたらもっとお金を稼げるようになるのか。

スタッフ鈴木(以下鈴木):キャリアアップをするための読書ですね?

Aさん:はい、そうなるとやっぱり勉強が必要になってきます。ただ勉強するにはすごく大きな目標も必要ですね。そうでないと続かないので。それで、目的探しで知識をつけると自分の興味の幅も広がって、その中でやりたいことがみつけられるかなと。なので本を読むのがいいのかなと思いました。

鈴木:今まで何か読んだ本はありますか?つけようとした知識であったりとか。

Aさん:最近、読んでいた本はマイクロソフトの社長が書かれた本です。How to本になってしまいますが。「本は同時に10冊読め」という内容ですね。

鈴木:「同時に10冊ですか」。

Aさん:しかもその読むべきジャンルがものすごく広いです。例えばイスラム系の宗教の話だったり、陶器の漆塗りの本だったり、ペットの写真集であったり。それからロンドンの新聞、ビジネス誌だとかです。

鈴木:ロンドンの新聞ですか?フィナンシャルタイムズとかでしょうか?

Aさん:そういった感じのですね。新聞を読んだ方がいい、ジャンルの幅を広く読んだ方がいいのだそうです。

鈴木:どういうキャリアプランを描いていらっしゃいますか?これによっても違ってくると思いますが。

Aさん:そのキャリアプランも今のところないです

鈴木:「雑談ができないから本を読まないといけない、趣味を持たないといけない。」という方がけっこう多いのですが、仕事の上でというのは珍しいなと思いました。人に合わせるために本を読むというのは多いかなと思いますが。

フロア:そうですね。キャリアアップのために読むのです。

Aさん:初めは雑談して他の人に合わせられるように本を読んだりテレビを見たりというのも考えていましたが、周りに合わせていたら個性がなくなって面白味がなくなってしまう。それよりはもっと突き抜けていった方が、自分で道を切り開ける人間になるかなと思いました。

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読書より資格勉強?

フロア:私は本を読んでも頭に入ってこないのですが、どうでしょう?本よりも興味のある資格だとか勉強をしたほうが知識は定着するのではないかなと思います。

鈴木:確かに。Kaienに来る人には、”耳で聞くと覚えるけど、読んでもわからない”、”マニュアルが理解できない”という方もけっこういます。資格だったら目的もあるし。問題集もあるし、そのあたりは考えていますか?

Aさん:はい。インターネットで検索すると“社会人が身に付けるべき豆知識”のようなものがありました。簿記、ITパスポート、漢検や国語とか。少し勉強すればとれるというのはいいかなと思っています。

フロア:働く上で必要な本というと難しい。だから、興味のあるものを手当たり次第に読んでいって10年後成長している、気になった本を時間をかけて掘り下げていくのでいいのかなと思いました。

フロア:『読んではいけない本』という本を読んでいます。著者いわく、「世の中では常識とされているけれど、時代遅れになってしまっているものもある」。そういったものを著者がざっと解説しているのを読んで、その中から興味のあるものを調べなさいという内容です。

フロア:ライフハックを読んでいます。昔からある名著だけに絞って読むようにしています。例えば『7つの習慣』だとか、カーネギーの『人を動かす』だとか。読み続けられているベストセラーだけに絞って読んだ方がいいかなと思いました。

鈴木:いわゆる今でいうところの自己啓発本の類になりますよね。カーネギーの本は100年くらい前でしょうか。今読んでも読みやすいですね。

読書とキャリア:経験を通して思うこと。

鈴木:例えでいうと、「筋肉をつけたくてこういうトレーニングをする」のようにキャリアはなかなかなりにくいです。資格はある程度は相関関係が見えますけれども、今好きなものをしっかりやっていくのが重要です。ただ、好きと言っても続く程度の好きでないといけません。

フロア:鈴木社長の場合はどうでしたか?

鈴木:私は大学3年生くらいのときに一年間ずっと日経新聞の全ての記事を読んでいました。当時は何の役に立つかよくわかっていませんでしたが、やはり後に活きていると思います。この仕事でも様々な業種がでてくるので、人材紹介の時など役に立っています。

ですので、将来こう役立つからというのではなく、自分が面白いと思ったものを量を読む、回数を読むという方法でいいかなと思いました。それから、数字が極端に嫌いでなければ簿記などを取っていくのも悪くないです。取らないとしても、会計系の本などを読むといいと思います。

フロア:キャリアアップと読書との関わりは実際どうでしょう?

鈴木:Kaienに来た方が30歳くらいでキャリアチェンジをしていける道はある程度限られています。営業の本を読んで営業になるというのもなかなか難しいし、いきなり医療の本に手を出しても放射線技師になれるかというと現実的ではありません。やっぱり一番多いのは総務、経理、人事あたりの仕事でそこそこ専門性のあるものだと思います。

そうすると、関係のある資格は税理士だとか、社労士が一番大きいです。関連した簿記等もですね。社労士になるのはすごく大変ですが、社労士が書いた本を読んだり、社労士をキーワードに面白そうな本をあたってみるというのは、その後の仕事を予想する上で良いと思います。

フロア:現状に合わせて現実的な読書をするほうがいいということでしょうか?

鈴木:はい。例えば野球選手のダルビッシュの変化球の投げ方を本に書かれても、誰もそのレベルにたどり着けないし、読んでもわからないですよね。マイクロソフトの社長が書いた本を読むのは、それに等しいと思います。そうしたら、もう少し多くのビジネスパーソンが読めるレベルの実学の方が私はいいと思います。すべての人に当てはまるわけではありませんが、広く浅く読むよりは、むしろ実学に近いところを読んだ方がいいと思います。

資格のための勉強もいいとは思いますが、私の経験から言って、資格を取ればすぐ就職できるだとか、その仕事に付けるというわけでもありません。ですので、「こういう所に何となく響けばいいな」、「こんな筋肉が何となくつけばいいな」程度でおもしろい本をいっぱい読む方がいいように思いました。

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関連リンク

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます