いわゆる「発達障害のボーダー層」について

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ボーダー、グレー、スペクトラム、パステル。発達障害*は確かに虹色に存在するため、「傾向がある」という人たちについては様々な呼び方がされている。違う言い方をすると、誰もが「不完全な発達障害」であるのかもしれない。

というと、なんだかよくわからなくなってしまうので、どの医者が見ても発達障害と言われる人がある(パーフェクトな発達障害者がいる)と単純化して、その周辺?と思われる人たちの説明をしていきたい。ここでは代表的な 「発達障害っぽい」 2つのケースを考える。

グレーゾーン

専門家がよく使う言葉である。発達障害の特性があるにはあるが薄く、診断がされるかどうかは医者によって異なりそう。という場合を指す。文科省で「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒」リンクが全体の6.5%という数字が出たが、それはこのグレーゾーンとみられる子どもが多いと思う。4割は支援を受けていないということなので、その層と重なる可能性が高い。

グレーゾーンも年齢を重ねた場合は、多くの場合、2次障害(うつ)やひきこもりといった違う現象面で見えるケースが多くなるようだ。その場合、「学校は行けていた」、「他人への配慮ができる」、などとご本人や親御さんが判断し、「発達障害とは当てはまらない点もあるから」と、発達障害を遠ざけているケースが多いと思う。二次障害や引きこもりなど現象面で出ていなければ、もちろんわざわざカウセリングルームやクリニックに行かなくても良いと思うが、生きづらさが表面に出始めている場合は発達障害というキーワードの排除は自己判断しないほうが、後々の人生の組み立て易さにつながると思われる。

当社はもともとこのグレーゾーンをどうするか、というのが大きな問題意識としてあるので、創業当初から関わってきている得意分野ともいえる。なお、女性はさらに、グレーの色が薄く、見えづらい。

ボーダー

一般にはグレーゾーンと混同して使われているようである。つまり発達障害の傾向がうっすらとしている場合である。ただし、少なくとも僕の周囲の専門家は、ボーダーというと、知的障害も若干ある、という時に使うことが多い。(つまり発達障害としては診断はどの医者でもされるが、知的障害の診断はされない。ただし知的障害との「境=ボーダー」にあるということだ)

自治体によるがIQ70や75を下回ると療育手帳が取得できる。一方、75~90ぐらいの領域は療育手帳は出ない場合が多いものの、「知的に厳しい」面は多い。具体的に言うと、デスクワークは難しく、作業系の仕事が将来的には考えられるが、手先が不器用だったりこだわりがあったりして、実は一部の作業系に向かないケースもあるのである。

このため、語弊を恐れずに言うと「純粋な」知的障害の人よりも、作業系の仕事でパフォーマンスが低くなってしまう。行動面で大きな課題があるわけではないので、障害年金(6万円強/月)も得られない。仕事にも付きづらく、年金というサポートも受けにくい、という状態である。

このボーダーの問題は大きい。というのも、発達障害の中でこのボーダーといわれる層がもしかしたら一番多いかもしれないからである。Kaienとしては、秋葉原サテライト(秋葉原”2号店”)をこのボーダー層向けの就労支援機関として徐々に特化させたいと思っている。作業系の訓練を増やすなど、プログラムを練り始めている。(一方で、秋葉原”1号店”、新宿、横浜はボーダー層ではない発達障害者のためになりそう。)

【参考】1000人の支援実績 発達障害の方向けの職業訓練・就労支援

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます