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医師と語る 現代の発達障害 vol.2新津田沼メンタルクリニック 松澤大輔医師医師と語る

松澤 → 新津田沼メンタルクリニック 松澤大輔医師
鈴木 → 株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太

発達特性研究所や千葉大学で研究も

鈴木) 津田沼に用事があったときに、周辺のクリニックにご挨拶と思ったら先生のクリニック(新津田沼メンタルクリニックリンク)をネットで見つけて、「また新たに発達障害に詳しい医師を見つけられた!」と喜んで、そのまま訪問しました。残念ながらその時はご不在だったのですが、後で丁寧にメールを頂きありがとうございました。当社はご存知でしたか?

松澤) はい。当院の患者さんがKaien(就労移行支援)に通って就職した時に実は連携させていただいていました。お話を伺いたいと思っていたところだったので、ちょうど良かったです。

鈴木) クリニックは2015年に立ち上げられたとのことですが、実は今日はクリニックではなく、隣接の発達特性研究所に伺っています。こちらを立ち上げられた理由は何なのでしょうか?

松澤) 会社名はライデックリンクといいますが、発達障害の方が悩む脳の特性から来る困難への効果的なアプローチを考えたい、開発したいという思いから開設しました。普段の診療ではどうしても一人あたりの診療時間が短時間になることが多く、その中で薬物調整などしますと精神療法的な話をする時間がどうしても足りなくなります。例えば働けているADHDの方でも、生活や職場で苦労している人も多く、生活上、ないしは仕事をする上で工夫が必要で、かつ継続的なトレーニングが必要です。そういった部分への介入も含めて考えると医療の枠組みではどうしても足りないので、1人1人への支援に何かプラスαを加えたいと考えています

鈴木) 先生は臨床だけではなく、大学でも研究を続けていらっしゃいますよね。

松澤) はい。2007年から千葉大学医学部の認知行動生理学教室教員となり、精神疾患のメカニズムに関わる基礎研究に携わってきました。今年常勤職を辞しましたが、今も特任教員として籍を置いています。現在は、脳に弱電流を加えることで、脳機能を向上させることを狙った、径頭蓋電流電気刺激(tDCS)治療の可能性を探っています。発達障害の方の弱点としても多い、ワーキングメモリ機能を向上させる手段になればと願っています。

鈴木) 先生は研究と臨床の立場からブログで発信されていますよね。内容がものすごく専門的に思いますがわかりやすく、医療以外の人が深く発達障害を理解するのに役立つ情報が得られると思っています。当社でも”教材”として社内全体で共有させていただいています。

【参考】松澤医師の研究について → http://www.shintsudanuma.com/original5.htmlリンク
【参考】神経科学者もやっている精神科医のblog → http://neurophys11.hatenablog.com/リンク

発達障害ブームをどう感じているか?

鈴木) 当社は2009年に創業しました。10年ほどたって今は発達障害ブームとも言える状態だと思います。診断できる医者も発達障害を標榜するクリニックも増えていると思います。当社が行っている就労移行支援の業界でも利用者を奪い合うような状態になってきてしまい、事業継続をどうしようかと悩むほどです…。先生は今の状態をどのようにお考えですか?

松澤) 東京はそうなのかもしれませんね。千葉はまだそこまで事業者が奪い合いになっているとは感じていませんでした。発達障害特性のために困っていて、かつ支援が届いていない方はまだまだ多いという印象です。こちらのクリニックでも新規の受診を待たせてしてしまっている状態でもありますので。

ブームという点では、発達障害という言葉が先行しているのはあるでしょうね。医師も含めて発達障害の概念が個々人で異なっているのを感じます。自分が経験したこと、テレビで見たこと、などでイメージが固定されてしまうこともあるでしょう。アメリカの診断基準DSMも版を重ねるごとに診断基準が変わっていて、他の診断ではありえない状況です。そんな中では、発達障害について、概念的な理解やアプローチの仕方がなかなかコレというものが確立していない状況かなと感じています。

鈴木) 先生は現代の発達障害をどう捉えていらっしゃいますか?

松澤) 発達障害をお持ちの方と接する機会が多くなるに従って、捉え方は私の中でも随分変わってきたと感じています。「障害」や「疾患」とイコールで捉えることにも違和感を覚えます。発達障害の特性があっても、能力と環境によっては「障害」であることが無く過ごされてきた方、現在地位の高い職や職人さんとして活躍している方もいます。医師や研究者にも発達障害特性のある人がとても多いです。また、「疾患」と捉えると、じゃあ治すのか、と考えてしまいますが、実際には治療概念とは相容れない気がしています。特性そのものは治療するというよりも付き合っていくものでしょう。ただ、現実に困っている部分に対しては、二次障害も含めて、医療的アプローチが必要ですし、かつ医療だけでは支援が足りず、就労支援機関などを含めた医療以外のアプローチによる支援が絶対的に必要と考えています。持っている特性に応じて、支援手段が違う難しさがあると感じますね。幼年期から打てる良い対策はなんだろうと常に思っているんですが…。医療者も何ができるのか、誰と連携すると良いのかなど模索中です。

医療で出来ること、しづらいこと

鈴木) 受診している人はどういう人が多いですか?

松澤) 年齢としても状態としても様々な方が来られます。特性別で言うとASD、ADHD、LDなど様々です。

ASDの方はお薬が必要でない場合、医療で出来るところが限られています。このため診断とアセスメントをすれば、それこそKaienさんのような就労移行支援機関と連携することが必要になっています。ADHDの人はお薬も出ていますが、仕事はできるけれども生活面で難しいという人が多くいます。クリニックの隣に開設した研究所でADHDのグループカウンセリングや認知機能トレーニング(CTP=Cognitive Training Program)をしていますが、感情や認知を柔らかくしたいという方にはお勧めしています。個人的にいま注目しているのはLDの分野ですね。アセスメントも難しいですし、なにか効果的なことが当院や研究所で出来ないかと思っています。

鈴木) 認知機能トレーニング(CTP)とはなんですか?

松澤) 認知機能の柔軟性を高めたり、物の見方を大局的にするようなゲーム的なトレーニングをして、思考の柔軟性を高めていくものです。精神療法では認知行動療法(CBT)を思い出す人がいらっしゃいます。CBTは効果的ですが、宿題を設定してこなしていくような部分もあり、一定数キツイという方もいらっしゃいます。またどうしてもまだ認知行動療法的なアプローチが入っていかない、行動を変えていくには今の症状が強くて耐えられないという方がおられます。そういった場合に、認知行動療法に先行して、CTPをこなすと、負荷感無く、後々に認知行動療法を受けられる素地が作られていきます。CTPはゲーム的で楽しいですし、人とのコミュニケーションで何が必要かなと考えていくようなセッションもあります。例えば夫婦で受けてもらうと意思疎通の質が上がるのでは、とも考えています。

鈴木) 先生のところではお子さんも診ていらっしゃるのですよね。

松澤) クリニックでは元々大人の発達障害を対象にと考えていましたが、お子さんについての問い合わせがやはりあるのです。千葉県ではなかなか児童精神科への予約が取れず、半年待ちなども多い状況なので、専門ではないことを承知いただいた上で、子供も診るようにはなっています。小学生以下は、まずは行政に把握してもらうことが支援につながりやすいので、地域の療育センターへの連絡を優先してもらいますが、中高生の受診が増えてきました。また、研究所で、先にお話した認知機能トレーニング(CTP)は中学生以上が対象です。中学校以上になると使える資源が限られて来ますので、支援手段の1つになればと考えています。

鈴木) 先生のところと協業できる部分もあるかしれませんが、当社の子ども向けサービスTEENSは2019年に初めて千葉に開所予定リンクです。中高生や大学生向けの支援が薄いならばやはり当社はぜひそういうニーズに答えていきたいと思います。

松澤) 大学生や専門学校生は特に繋ぎ先に困ることが多いです。その意味でKaienのガクプロは一つの形ですね。いずれにせよ困り感が強い段階になってからクリニックを受診する人が多いのは変えていきたいです。早めにつながってもらえると対策も立てやすいのですけれども、二次障害などで問題が複雑になっていると時間がかかってしまいますから。気軽に受診して頂ける場所にしていきたいですね。

Kaienはどこに行く?

松澤) 私からも質問しても良いですか?Kaienはいくつも事業所を持っていますよね。どのように質をコントロールしているのでしょうか?

鈴木) 今反省しているところです。これまでは、アセスメントのプログラム、特性理解のプログラム、職業訓練のプログラム、そしてKaienの独自求人を100以上開拓することに専念してきました。つまりスタッフの質にそれほど左右されず、プログラムを通していけば結果が出る仕組みを作り上げたと思います。一方で、一人ひとりのスタッフの支援力を十二分にあげられたかと言うと疑問があります。また就活ルートを当てはめるような弊害が出始めてしまったりしているかもしれません。

ですから今年から一人ひとりの支援力をあげようと思っています。「こんな人も就職したの?」という風にクリニックの先生に言ってもらえることは今でもあります。そういう事例を増やしていきたいです。丁寧さ、プロフェッショナルさで、ご本人も医療関係者も「就職が困難だと思うケースこそ、Kaienに行こう、つなげよう」と思ってもらえるのが目標です。

松澤) やっぱりKaienは厳しいのですか?

鈴木) そういう面はあったかもしれません。職場に近い雰囲気なので、のんびりと通いたいなと言う人には最初違和感があったのだと思います。もちろん最終的には企業の雰囲気やルールにはある程度適応できるようにしていきたいですが、もう一段階、二段階、ゆったりとした雰囲気から階段をスモールステップで登って就職を目指すというご利用の仕方もできるようになりました。

松澤) 信頼できる就労移行支援機関はまだまだ少ないです。Kaienさんには今後も頑張って欲しいです。私としても働いている人へのアプローチを医療の分野からもっと関われないか考えていきたいと思います。

鈴木) ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

松澤 大輔 医師

2000年千葉大学医学部卒業。同年千葉大学医学部精神医学教室に入局。千葉大学附属病院精神・神経科での研修後、2001年より、千葉県立救急医療センター、同仁会木更津病院を経て、2007年より千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教室。2018年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター特任准教授。新津田沼メンタルクリニック副院長、株式会社ライデック代表。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。

新津田沼メンタルクリニック(精神科・心療内科・神経科)

JR津田沼駅北口より徒歩6分、新京成線新津田沼駅より徒歩3分。
◎発達障害の診察可
◎カウンセリング有
http://www.shintsudanuma.comリンク

株式会社ライデック (発達特性研究所)

◎ADHDグループカウンセリング、認知機能トレーニングプログラム、医療相談実施
https://tridc.co.jpリンク