一人ひとりへの配慮が、オムロン変革のきっかけになるオムロングループ

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京都府京都市に本社を構えるオムロングループは、IT領域や先進技術に強みがある精神・発達障がいの方をオムロンの研究開発・新製品開発の領域に積極的に雇い入れる「異能人財採用プロジェクト」に取り組んでおり、2022年4月から実際に雇用をスタートしています。

多数のメディアが「異能人財採用プロジェクト」の雇用事例をニューロダイバーシティ * の国内先進事例としてとりあげており、企業の障がい者雇用担当者や、研究者からの注目を集めています。

ニューロダイバーシティ:「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方

引用:経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html

Kaienは2021年のプロジェクトの発足当時から、この推進事業のパートナーとして伴走し、採用や雇用定着のサポートを行ってきました。本インタビューでは、プロジェクトリーダーの瀬川様と、オムロン本社ダイバーシティ&インクルージョン推進担当の宮地様に、ここまでの異能人財採用プロジェクトの振り返りと、これからの展望についてお話を伺います。

INDEX


社会貢献ではなく成長戦略

異能人財採用プロジェクトに取り組まれた背景をおしえてください

宮地)異能人財採用プロジェクトは、オムロンの障がい者雇用をより発展的なものとしていく取り組みのひとつとして発足しました。

これまでの背景を順を追って説明すると、オムロンが障がい者雇用を始めた1972年にさかのぼります。オムロン創業者の立石一真が日本パラスポーツの父ともいわれる中村裕博士の理念に賛同し、日本初の福祉工場であるオムロン太陽株式会社を設立。以来、障がい者雇用制度の対象の広がりと共に、身体障がい者、知的障がい者・精神障がい者・発達障がい者と、雇用対象の幅を広げてきました。

現在、グループの障がい者雇用率は3.1%と法定雇用率(注釈:2023年時点で、民間企業の法定雇用率は2.3%)を大きく上回り、製造業ではトップ水準にあります。 障がいのある社員の多くは総合職としていろんな職場で活躍しています。ただ障がいのある社員の約80%は身体障がい者であり、社会課題になっている精神・発達障がい者の雇用が進んでいない事、また高齢化が進んで、これから障がいのある社員の多くが退職を迎える事が課題です。そのため、特例子会社だけでなくより多くの職場で障がい者採用を進める事、しかも精神・発達障がい者の採用を加速する事を目指しています。異能⼈財採⽤プロジェクトは、その⽅針を実現する柱の⼀つと位置づけています。

オムロンの障がい者雇用に関する今後の方向性

瀬川)ひとつ付け加えると、私たちは異能人財採用プロジェクトを、「障がい者雇用の施策」ということだけでは捉えていません。

オムロングループが掲げている長期ビジョン「SF2030」において、人財戦略は「会社と社員が、“よりよい社会をつくる”という企業理念に共鳴し、常に選び合い、ともに成長し続ける」とし、ダイバーシティ&インクルージョンの加速によって、多様な人財をきつけ、個々人の能力発揮を促す人財施策をグローバルで実行していくとしています。

異能人財採用プロジェクトはこのような長期ビジョンに紐づく人財戦略の一つとして、グループ全体で推進しています。

異能人財採用プロジェクトで実際に雇用された方について教えてください

宮地)異能人財採用プロジェクトを通じて、2022年4月からAさんが入社しています。

Aさんは大学院で情報学を専攻したのち、就労移行支援事業所を利用中に異能人財採用プロジェクトのインターンシップに参加しました。Aさんは空間認識力に優れており、高い画像処理スキルを持っています。特に画像処理プログラミングスキルは、オムロンの技術開発を担う研究者たちが驚くほどのレベルでした。

一方で、苦手なこととして、意見や感想を口頭で述べることや、聴覚過敏による、特定の音域の音がある環境への適応困難があり、コミュニケーション面と環境調整にて一定の配慮を必要としています。

現在は画像認識技術を使った新規技術の開発プロジェクトチームに加わっています。先輩社員が新規技術開発に必要なソフトウェアの仕様をAさんに伝え、それを実装するのがAさんの役割です。完成までの期間は短く、出来上がった成果物の品質も優れています。開発チームにおいては、すでになくてはならないメンバーの一員として活躍をしています。

技術者だから気付ける才能や、技術者同士だから成立するコミュニケーションのかたちがある

採用プロセスではどのようなことに注意を払いましたか

瀬川)2点あります。ひとつは採用を予定している業務内容を明確にして、必要なスキル要件をしっかり定義して募集をすることです。もうひとつは数週間のインターンシップを行うことです。

たとえば、Aさんが技術インターン前に実施した事前面談では、「なぜ技術インターンに参加しようと思ったのか」「自分自身の強みについて説明してください」など、抽象度が高い質問に答えることが難しく、面談中は沈黙する場面が多くありました。しかし、Aさんが自分の技術を伝えるために準備してくれたポートフォリオの内容がとても高品質であり、開発部門の技術者の目に留まったことで、次のステップにつながりました。インターンシップではその才能を発揮されました。従来通りの面接でのコミュニケーションを重視した選考方法で進めていたら、その才能に気づくことは出来なかったかもしれません。

技術インターン後には、役員による最終面接を実施しました。それまでの選考プロセスで把握したAさんの特性を考慮し、質問内容をAさんに事前に示したうえで回答を書面で準備をいただき面接に臨んでいただく、という合理的配慮を実施しました。

日本各地の大学や支援機関には、Aさんのように高い技術や能力がありながらも、能力の凸凹により活躍の機会に出会うことができない方がたくさんいると聞いています。そのような方々に当社が必要としている技術領域のニーズを伝え、オムロンの事業成長の力になっていただく事例を今後も増やしたいと思っています。

雇用後のサポートはどのようにされているのでしょうか

宮地)Aさんが通所していた就労移行支援事業所の支援者や、Kaienの担当者に、Aさんとの定期面談を実施していただき、ご本人の体調の確認や、Aさんの感じていることを聴き取りしていただいています。

また、サポート体制は「連携」がとても重要だと考えています。数ヶ月に1度の頻度で定期的にAさんの上司、人事担当、産業医や保健師などの産業保健スタッフ、Kaienなどの外部支援機関が集まって「支援連携会議」を実施し、情報共有や、課題が見つかった際の調整をスムーズに行うことができる体制を作っています。

Kaienの支援者による定着支援面談の様子

瀬川)サポートとはいっても、そんなに特別なことをしているわけではありません。Aさんが入社わずか1年で目を見張るような高い成果を上げているのは、Aさんが元から持っていたスキルと才能によるものです。会社はその能力を発揮できる環境を整えただけで、然るべき結果がでていると捉えています。異能人財採用プロジェクトはそのマッチングの「機会」をつくったにすぎません。

Aさんの直属の上司も、「特別扱いはしていない」と言っています。口頭コミュニケーションの場面では、すこし応答に時間がかかることがあるので質問の仕方に工夫をしたり、会議の参加の仕方を工夫しているなどの配慮は行っていますが、業務上の指示や報告で困る場面はほとんどないそうです。

というのも、彼が業務で何を行おうとしていて、何に躓いているのか、ということは口頭のコミュニケーションに頼らなくても、技術者同士であれば彼が書いているプログラムのコードを読めば、ある程度把握することができるのだ、と言っていました。

技術者には、技術者同士のコミュニケーションのかたちがある、ということですね。新しい気付きの一つです。

一人ひとりの配慮のオーダーが、オムロン全体が変革するきっかけとなる

このプロジェクトの今後の展望を教えてください

瀬川)まずはAさんのように、強みを活かしてオムロンの先端技術の領域で活躍する「異能人財」の雇用事例の数を増やしていきたいです。日本国内に約1万人の従業員がいるオムロングループの全体から見れば、「異能人財採用プロジェクト」の雇用事例はまだ小さな波でしかありません。少し時間がかかったとしても、Aさんのような雇用事例を1件ずつ増やしていって、大きな波にしていきたいと思っています。

職場で開発業務に取り組むAさん

宮地)異能人財採用プロジェクトは、オムロンがより多様な人財が活躍する企業へと変革するきっかけになるものだと捉えています。

これはオムロンに限ったことではなく日本の雇用環境全体に言えることだと思いますが、職場環境や仕事の進め方、業務システム、マネジメント、どれをとっても、”多数派”に合わせて仕組みが設計されています。それは短期的に見れば効率的に見えるかもしれませんが、その結果、”少数派”が排除されてしまい、同質性の高い社員の集まりとなってしまう可能性があります。そのような組織ではイノベーションが起こりづらいと考えられています。

今後オムロングループは”多数派”も”少数派”も共に働きやすい、柔軟な職場環境や組織にしていきたいと考えています。しかし、”多数派”の目線では、どのようなところに”少数派”にとっての障壁があるのかを気付くことは難しいのです。

だからこそ、自らの特性を理解しオープンにして働く方を迎え入れることに意義があります。一人ひとりの配慮のオーダーが、オムロン全体が変革するきっかけになると考えています。

最後にどのような方にご応募いただきたいのかを、教えてください

瀬川)まず前提としては、募集要件に合うスキルを持っている方であることです。募集するポストごとに業務内容を明確にして、必要なスキル要件を明確に定義して技術インターンの参加者を募集しますので、大学やこれまでの職歴で培った経験や技術を活かすことができると思った方は、ぜひチャレンジしてください。

それと同時に、できないことや苦手なことがあれば、積極的にお伝えください。Aさんはエントリーする際に、8項目の「出来ないこと・苦手なことリスト」を書面で提示してくれました。

私たちは何をサポートすれば良いのかわかりましたし、一緒に考えることもできました。この異能人財採用プロジェクトで求めているのは、なんでもオールマイティにこなすことができる人財ではなく、お互いに「得意なこと・苦手なこと」を言い合って、相互に補完し合えることのできる「多様な人財」です。安心してご自身がいかに多様な人財であるかをお伝えください。

オムロン株式会社
住所:京都市下京区塩小路通堀川東入
URL:https://www.omron.com/jp/ja/

取材協力: 
オムロングループ ダイバーシティ&インクルージョン推進担当
瀬川 明子 様
宮地 功 様

聞き手:株式会社Kaien 大野順平


オムロングループ「異能人財採用プロジェクト」求人情報

フライヤーのダウンロードはこちら(PDF)

現在、「異能人財採用プロジェクト」で募集している技術ポストは以下の通りです。

① オムロンソフトウェア株式会社

主にIT開発職を募集。IT業界の実務経験や、それに準ずる知識や資格をお持ちの方を募集しています。

  • インフラエンジニア@京都:インフラ設計ネットワーク構築情報セキュリティ領域経験者
  • ソフトウェア検証@滋賀:鉄道システムのソフトウェア検証業務_IT経験者
  • ドキュメント設計@滋賀:鉄道システムのリバースエンジニアリング・仕様書集約_IT経験者
  • ドキュメント設計@滋賀:決裁システムのリバースエンジニアリング_IT経験者

② オムロン株式会社

主に研究開発職を募集。大学院や企業などで研究開発を行い、博士またはそれに準ずる専門知識をお持ちの方を募集しています。

  • センシング技術研究開発@京都府 木津川市:AIに学習させた信号処理の着目点を分析し、ルールに照らし合わせて解釈する。
  • 画像技術研究開発@京都府 木津川市:与えられたアルゴ要件を所定の実装環境で極限までメモリ削減・高速化した実装を行う。
  • エネルギーマネジメント技術研究開発@京都府 木津川市:論文に基づき電気回路をモデル化し、シミュレーションを実施し性能評価を行う。

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