発達障害 グレーゾーンを再定義する

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Kaien鈴木です。

Kaienを巣立っていった グレーゾーンの20代男性

今日はガクプロ(大学生や専門学校生向けプログラム)で個別相談。就職が決まり、社会に巣立っていった20代の男性の最後の個別相談でした。就職は今までのバイト先。フルタイム化が叶ったという次第です。

彼は発達障害*かと言うと微妙な、いわゆるグレーゾーンの人。医療にも繋がっていないしお薬も飲んでいません。ただし課題感はある。実際、大学を中退しています。その原因は起床を中心とした生活リズムや、やる気スイッチの入れ方に苦手感があるタイプです。

ADHDっぽい特徴は今も残っていますが、一般枠(つまり障害者雇用ではない)状態で働き始めています。

グレーゾーン Kaienはやや距離をおいていた…

当社は今まで「人口の1~2割の人には発達障害の傾向はある。そのうち、不登校、中退、就活不振、業務でのローパフォーマンス、離転職の多さ、そして時によって二次障害などの課題が見えた人が、その原因として発達障害にたどり着く。つまり発達障害とグレーゾーンは分かれるものではなく連続体で、課題が多くなり支援が必要になればこれまでグレーゾーンと言われていた人も診断を得られるはず」というような立場でした。

違う言い方をすると、グレーゾーンという響きにやや違和感を覚えていた、特性に向き合っていないことや、物事を曖昧なままに捉えすぎている印象を持っていたかもしれません。ご参考までに今までのKaienの「グレーゾーン」の定義は下記の通りです。

大人の発達障害 「グレーゾーン」や「傾向がある」の真意

 

グレーゾーンを積極的に再定義しよう

しかし、発達障害の定義が広がるにつれて、グレーゾーンを訴える当事者が増え始め、いちいちKaienの定義を押し付けていたり、曖昧な定義のグレーゾーンを否定したりしていても、意味がないような気がしています。むしろ困っている多くの人を取りこぼす恐れがあります。

そこで積極的に曖昧なままにグレーゾーンを定義しなおそうと思い直しました。

具体的には下記のような状態は全部グレーゾーンで良いのではないか。あとはこのグレーゾーンという定義で手を挙げてくれた人たちを、時には福祉につないだり、時には(障害者雇用ではなく)一般雇用で就職斡旋したりをしたほうが良いのではないかと考えています。

当社が今考えているのは下記の6つです。

  • ① 本人の気づきはなし、あるいは、うっすら。周囲は気づき困っている。
  • ② 本人の気付きはある。あるいは、発達障害という言葉ではないものの、なんだか本人がすでに困っている。
  • ③ 本人の気付きはある。ただしクリニックに行っていない
  • ④ クリニックにも行った。しかし診断が出なかった(と本人が認識している)。が、言葉の受け取り方の問題で実はほぼ診断は出ている 。
  • ⑤ 本人の気付きはある。クリニックにも行った。診断も懇願した。しかし診断は出せないレベルと言われた。
  • ⑥ 本人の気付きはある。診断も出ている。しかし何らかのことでクローズドで働いたり、学生生活を送ったりしている。

①についても家族などと繋がれますし、②~⑥はグレーのままでも当社サービスを使える場合もあります。(例えば、就労移行支援も、⑤は他の診断が出ていればですが、④・⑤・⑥は使えます。)

障害者雇用以外での可能性 グレーゾーン枠?

グレーゾーンの人が困るのはやはり就職の段階。障害者枠が不可能、あるいは避けたい場合、一般雇用で障害特性を伝えずに、働く可能性があります。冒頭のガクプロを修了していった彼も、自分の特性やガクプロに通っていたことは就業先には伝えないという判断をしていますし、当社もそれでOKだと伝えています。

しかし今後グレーゾーンの人が多くなっていく中で新たな働き方が必要になるかもしれません。具体的には、障害者枠と一般枠の中間とも言うべき、グレーゾーン枠が出てくるかもしれません。一般雇用だけれども障害や特性をオープンにしていく、ある程度配慮をしてもらいながら働く形です。

そんなことを許してくれる会社があるのか?思うかもしれません。しかし人手不足が極端な社会ですので、どんな人でも上手に働いてほしいという企業は肌感覚で非常に増えています。

かつ発達障害の特性をある程度自認しているということは、(どんな人でも得意不得意があるのに)勘違いしながら働いちゃっている”健常者”よりも、むしろ能力の活用の仕方があるのではないかと思います。

実際、卑近な例ですが、Kaienでもバックオフィス業務を中心に、障害者枠やグレーゾーン枠で多くの人が働いています。異常を発見する力や、定型の業務をスピード感を持って行ったりするだけではなく、何よりも不正をしない、成長意欲がある、というような点で大変信頼し戦力になってくれています。

障害者雇用、一般枠オープン(グレーゾーン枠)が「自己理解している人たち」のようなポジティブなイメージをより多く持ってもらえるように当社も活動していこうと思いますし、意識的にグレーゾーン枠を企業に提案していきたいと思っています。

イベントあります

ちょうどこのタイミングで、大阪のある企業からお話をいただきました。特別支援学校ではないけれども、通常の高校に通っている18歳の高校生に、実は診断があったり、それっぽい特徴があって、就職活動で立ち止まりやすい人達が多いという現状を打破するため、企業や高校の関係者を集めてイベントを開くということ。

グレーゾーンは、これまで当社が見ていた大学生や専門学校生、そして卒業後の20・30・40代以上の大人、だけではなく、高校にもちろんいるはずです。私が基調講演を頼まれました。二つ返事でOKをしたところです。詳細わかったら共有したいと思います。

今回のイベントを発達障害にこだわらず、グレーゾーンの人についても社会の戦力になるため、当社が役割を果たすための第一歩にしたいと思います。

参考:Kaien 今後予定している講演・研修

 

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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