NHKのクロ現で5年ぶりに「発達障害×就労問題」が取り上げられます

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前回「発達障害*と就労」がNHKクローズアップ現代で取り上げられたのが2013年3月(まとめ記事)。5年以上も前のことです。

この度、発達障害ブームとも言える中で雇用環境、就職状況がどのように変わってきているのかを、番組班が再度取材しています。2018年11月21日(水)に放送される予定です。【キャンペーン】発達障害ってなんだろうです。

※2018年11月20日追記
カルロス・ゴーン容疑者 関連ニュースのため放送日が延期になりました。
新しい放送日は11月26日(月)の予定です。

前回もKaienは取材協力し、実際に映像でも捉えて頂きました。今回も事前取材に協力しています。最終的にどういう番組になるかは当然わかりませんが、お伝えしたことをここに書いておきたいと思います。

人事すら発達障害を知らなかった5年前(2013年)

5年前は「発達障害ってこういうものです。ぜひ雇用して、戦力として可能性を感じてください」という状況でした。企業の人事担当者ですら発達障害を知らない人のほうが多かったと思います。当社も苦労して開拓したいくつかの求人にご紹介している状況でした。

発達障害は障害者雇用のフロントランナーに躍り出た(2018年)

それが5年で発達障害という一般的な知識は企業人事担当者には広く知れ渡りました。また当事者や家族の人数も増えましたし、発達障害を受け入れた上で働こうという人が増えてきています。受け入れる医療機関も多くなり、福祉関係者にも一般的な発達障害支援の知識・技術は広まった。

それゆえ雇用事例も多くなり、活躍している事例も増えています。具体的な例を挙げると、定着率は4障害(身体、知的、精神、発達)の中では最高レベル。特に一番低い精神に比べると年率20%も違います。精神障害の人が人口の3%程度(障害者手帳取得)とすると発達障害の手帳取得率は低いながらも人口の10%を超えるひとが診断基準に当てはまるというデータもあります。既に障害者雇用の中で最もうまく行っているとも言えますし、数年後には規模でもトップに躍り出る可能性すらあります。

入社はしても…働きながら特性ゆえに苦しむ人は急増している

ただし働けているものの苦しむ例はむしろ増えているかもしれません。人手不足もあり、また障害者雇用率の向上もあり、そして発達障害の認知の広まりで自分が発達障害と気づく人も増え、一般雇用でも障害者雇用でも働いている人たちの中で特性の苦手さが目立つ例が増えていると感じています。

もちろん失業状態よりは雇用状態のほうが良いでしょう。しかしまた別の苦しみ(上手に配慮してもらえない、自分の特徴を周囲が理解してくれない、自分も他人も長所の見つけ方活かし方がわからない)が今度は職場で吹き出している状態です。

一般的な理解と個別の理解は相当違うのを知ってほしい

なぜ発達障害の理解が広がっているのに、苦しむ人が増えているのか?それは一般的な基礎的な発達障害の理解と、個別の人の理解や特性への対応との間に、びっくりするほど大きな溝があるからだと思っています。

私も講演などの場面で発達障害の一般論を語るのはとても簡単ですが、質問で個別具体的な人への対策案を求められると難易度が急に上がるのを感じます。本やネットや講演でいくら学んでも、目の前の人の苦しみを解消できなかったり、あるいは当事者自身としては自分の良さを見つけられなかったりという現象が起きていると思うのです。

鍵は3つ「専門的アセスメント」「セルフアドボカシー」「合理的配慮」

それらを解決するのは、①まずは一般的な理解よりも深い理解をしている専門家によってご本人の得意・苦手・対策などのアセスメントを受けること。また②ご自身の特徴を理解した後、働く権利、とくに職場で力を発揮するために自らの特徴を伝え配慮を求める、つまりセルフアドボカシー(自己権利擁護)の意識を持つこと。(障害があるからこのように配慮してくださいというお願いではなく、戦力になるためのポジティブなアクションとご本人が自信を持てるかどうか)。最後に③合理的配慮の中でもいちばん大事なプロセスである、入社前、入社後の配慮事項のすり合わせが定期的に行えるかどうかだと思います。(合理的配慮と言うと一旦配慮をしたらOKと思われている方もいるかも知れませんが、この概念の味噌は時間の経過とともにご本人も環境も変わる可能性が高いので、常々最適なバランスを見つけていきましょうというところにあります。)

換言すると、まだまだこの3つが整っていないのが現代日本の「発達障害の就労事情」なのでしょう。
Kaienがこれから力を入れようと思っているのは、このような一丁目一番地と言うか、最も基本で最も難しい部分の支援を就労移行支援や人材紹介や学生向けのプログラムでしていくことです。番組でもここを取り上げてくれると良いなぁと思っています。

スーパー当事者は実在するが…

発達障害の長所をいかすと言うと、極端にレベルの高い、特異な才能を持っている人をイメージする人もいらっしゃいます。実際にそういうスーパー当事者というような方がはいらっしゃいます。そしてその方々も苦しみを感じていらっしゃいます。

ただし発達障害の就労で、得意を活かそうという文脈であっても、このような例外的な異才を取り上げてもあまり参考にならないのは注意が必要だと思います。(そしてそのようにNHKのディレクターに伝えています。)普通の人が野球をすると気に、イチローや大谷のバッティングフォームを見ても参考にならないように、普通の発達障害の人はスーパー当事者とは違う対策が必要になることが多いと思うのです。

※個人的には、起業家やビジネスエリートの中で苦しんでいる発達障害の人は多いと思うので、「ADHD起業/ビジネスコーチング」はしてみたいと思っています。(興味のある方はkaien@kaien-lab.comへ)

「地方の問題」と「二次障害(引きこもり)の問題」

また番組ではここまで辿り着かないかなぁと思いますが、地方の問題は大きいです。“普通”の範囲が広く、都会よりもゆっくりしていると思われますので発達障害の人にとって地方は住みやすい部分もあります。一方で求人自体が少なく、選べる職種も少ない田舎でどのように発達障害の人が働いていくかは大きな課題です。

都会に住むうっすらとした発達障害の人が蒸発するようにあっという間に就職を果たしていくことによって、過去の挫折経験から二次障害をこじらせ、引きこもりになったり、それに近い状態になっている人が多いことも注目されつつあると思います。以前から引きこもり対策は国が主体で行われていますし、福祉関係者の中では引きこもりと発達障害の関係は知られたものですが、そもそも二次障害の予防や、引きこもりになった人をどのようにスモールステップで就職に導いていくことが社会にとって大きなチャレンジになりそうです。

※個人的には、都会の求人と地方の発達障害の人をマッチングしたり、都会で疲弊した人を地方の職に引き合わせたりというのも、今後力を入れていきます。(興味のある方はkaien@kaien-lab.comへ)

放送日は…

発達障害と就労が再び特集される「クローズアップ現代+」はNHK総合で2018年11月21日(水)午後10時〜10時25分の予定です。ぜひご覧ください。

※【再掲】2018年11月20日追記
カルロス・ゴーン容疑者 関連ニュースのため放送日が延期になりました。
新しい放送日は11月26日(月)の予定です。

文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA) 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴社長ブログ一覧

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます