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医師と語る 現代の発達障害 vol.1早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介医師医師と語る

益田 → 早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介医師
鈴木 → 株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太

不登校のお子さんからバリバリのビジネスパーソンまで

鈴木) ウェブサイトで院長自ら頻繁に日記を更新されていますね。【参考】院長ブログリンク

益田) 当院はカウンセリングを取り扱っています。が、実際に開院してみてわかったのですが、そもそもカウンセリングというものがどういうものなのか、患者さんには知らない方が多く、カウンセリングとはどういうものなのか、理解していただく必要がありました。HP(早稲田メンタルクリニックリンク)にあるような文章だけでは不十分で、様々な角度からの説明が必要と感じました。

 ブログではそういう、細かいニュアンスを伝えるために書き始めました。HPに書くと、多すぎてしまい、雑多になってしまいますからね。

 書き始めてみると、自分が当初想定していたよりも良いことがたくさんありました。例えば、大学生などの若い方が関心を持って読んでくれ、日常の臨床でも、カウンセリングに似た、情緒的な交流ができるようになりました。スタッフも読んでくれており、クリニックの理念を共有しやすくなりました。

鈴木) 発達障害の診察は多いですか?

益田) 大変多いです。「学校の成績はよいのに、落ち着きがなく、ミスが多い」というようなADHD優位の発達障害の方がよく来られます。そういう方には薬物療法が著効し、とても感謝されます。一方でASD優位なタイプでは、薬物療法よりもカウンセリングやKaienさんのような就労支援などのサポートが大事だと思っています。

 診療時間や土地柄、年齢層は大学生や社会人が多いのですが、学齢期の診察も受け入れています。幅広い年齢層の方に来ていただき、また様々な疾患、お悩みの方に来ていただきたいと思っています。やはり、専門に特化するよりも、様々な患者さんに触れた方が、医師も心理士も治療者として成長できると考えているからです。

 不登校のお子様には、発達障害が関連している方が多くいます。そういう方へのサポートはKaienさんでされているのでしょうか?

鈴木) TEENS(ティーンズ)という放課後等デイサービスで可能です。校長や教育委員会、またお住まいの市区町村がどう考えるかによりますが、柔軟なところは平日日中にTEENSに通ったことを学校の出席としてくれるところもあるほどです。

益田) やはり発達障害の知識があり、ノウハウが蓄積されているところは他の支援施設と違って、安心ですよね。子どもだけではなく、ご両親にも発達障害傾向があることも多く、そういう時にもわかりやすく説明してくれるので助かります。TEENSのパンフレット、ぜひおいていってください。

鈴木) そもそもKaienのことはどこで知ったのでしょうか?

益田) 先輩の医師に教わりました。「発達障害ではどこの支援が良いですか?」と聞いたら「Kaienが良いんじゃないか」と。それからクリニックのスタッフで実際にKaienさんのところも見学もさせてもらい、ここなら安心だなと思いました。

鈴木) 有難うございます。そうやって先生の間で口コミで広がるのはありがたいことです。

大人の発達障害には個別支援や通訳者が必要

鈴木) 今の発達障害の就労支援で感じられていることはありますか?

益田) 発達障害の中には仕事もでき、頭の回転も速く、ロジカルな方が多いですよね。なので、人間関係で仕事に躓いた後、就労支援を紹介しても、「普通の就労移行支援事業所でパソコンを勉強します」とかだと、物足りない人が多いです。

 彼らは職場に行くと、細かなやりとりで失敗をしているようですから、そのあたりへの支援が必要だと思っています。例えば朝仕事を指示されて、夕方まで何もコミュニケーション取れずにいたら、上司も不安になり、困ってしまいますよね。昼のタイミングで情報を共有したり、進行状況を把握するというようなこと…。このような支援は具体的に、そういう状況下でミスが起きてからじゃないと説明も難しいのではないかと思っています。発達障害以外の方からしてみれば、普通のことも、当事者たちは一つひとつのルールとして理解していかなくてはいけないことも多く…。でも、そういうのもどこまで理解しているのか、個々に違うので、全員に向け、一度に説明するのは難しいんですよね。もちろん、上司の人への理解も必要ですし。本当に、個々にやっていくしかないと思っています。

鈴木) なるほど。当社はどこまで出来ているかわかりませんが、Here and Now の考え方で運営しています。Kaienの就労移行では実際に、プログラミングやウェブ広告などの高度な業務が体験できます。その中で発生するコミュニケーションのズレを、「その場で(Here)、その時に(Now)」アドバイスするというアプローチです。いつ何が起こるかわからないですし、臨機応変に相手に伝わる言葉や表現で伝えないといけないので、支援者の力が試される支援手法なのですが…。

益田) Kaienさんは上司や同僚など周囲の人へのサポートはしないのですか? 橋渡しというか。適応できていない方の支援には相当時間もかかりますし、ご本人一人の力は難しいことが多いです。会社の上司に。上司の人にこうしてくださいと。

鈴木) 通訳のような仕事でしょうか?

益田) そうですね。橋渡しや通訳のような人です。クリニックだとなかなか職場に行くまで出来ないものですから。

鈴木) 就労移行支援を利用して就職した人には3年半に渡って定着支援を行っています。まずはそこで通訳が出来ていますね。そもそもKaienの独自求人は、発達障害に理解や関心ある人事や現場の上司がいる求人のため、不適応に繋がりにくいということもあるとは思います。

益田) 上司や周囲に発達障害の人との付き合い方のようなパンフレットは用意されているのですか?

鈴木) いえ、そういうものはまだありません。

益田) 最近では札幌市の「虎の巻」リンク が良かったですね。イラスト付きで分かりやすいのです。上司や同僚、部下など発達障害の知識がない人にとってもわかりやすいものだと思います。引用もルールを守れば使用できるようなので、ある患者さん家族にはパンフレットを印刷して渡しました。Kaienでも職場の人向けのものとか、パンフレットを作ってもらえるとありがたいですね。

鈴木) わかりました。宿題にさせてもらいます。

益田) 介護で働いている人にも発達障害の人は多いですよね。Kaienさんで支援していて、困っている方にはどのような問題がありましたか?やはり人間関係ですか?

鈴木) 3つぐらい考えられますね。一つは介護で働く人は心は優しいけれども、論理的に伝えることが苦手な人が多いようです。発達障害は心の病と言うよりも情報の混乱だと思っていますので、やりとりが理路整然としていないと上手くいかなくなる方が多いようです。2つ目は処理速度でしょうか?不器用さも相まって仕事が終わらない。3つ目は、気難しいおじいちゃん、おばあちゃんともめてしまって、臨機応変にその場を鎮火させることができずに、もめ続けて、他の職員から信頼をなくしてしまうタイプ。いずれにせよ、仕事が上手に理解できない、さばけないということで、人間関係を悪化するという風に見ています。なので、インテークなどでお話を聞くと人間関係とおっしゃいますけれども、実は仕事のパフォーマンスが影響していることが多いようです。

プログラミング、コンサルティングなど専門職での発達障害

鈴木) 当社では今後、クリエイティブコース(プログラミングやVBA、ウェブ広告やデザインなど専門スキルを学べるコース)を就労移行支援の中で展開予定です。障害者枠でもそういった求人が出てくると思いますし、一般雇用でも未経験歓迎のSE・ネットワークエンジニアの求職が多くなっていますので、ニーズが高くなってくると感じました。専門職についてはどうお考えですか?

益田) 良いかもしれませんが、ITやコンサルティングで働いていて、専門的なノウハウや技術があったけれども、1・2年でトレンドが変わってスピードについていけないと言う人もいますよね。そうするとどこまで積極的に専門職を勧めていいのかというのは議論があると思います。そのあたりをどう考えるか?

鈴木) たしかに一度学んだところでそのまま定年まで就職というのは難しいかもしれません。同じ業務が10年20年と変わらない職場が、特例子会社を中心に今後もあると思いますが、技術革新が速い職場は障害者雇用でも転職が必要になるのではないかなと思っています。ただし、そうであっても今出来るスキルを身につける職業訓練をすることは、転職や離職をせざるを得なくても次に繋がるだろう、それはその時また考え直そうと言う考えです。

益田) なるほど。それでは当事者の同士のつながりというのも大事になりそうですが、どう考えていますか?当院はカウンセリングを行ってそこでお話を聞くことも出来ます。ただし、仕事はできているけれども、どこか寂しさがある。今後、小さなコミュニティを少しずつでも、つくっていくことが、我々のような機関の使命だと思っているんです。

鈴木) 当社ではキスド会という在職者向けの当事者会をスタッフ付きで開いています。

益田) そのパンフレットはありますか?

鈴木) 1枚にまとめた資料がある程度ですが・・・。こちらです。

益田) お酒も出たりする懇親会なんですね。トラブルにはならないでしょうか?

鈴木) はじめにルールをしっかり決めておくのと、スタッフが常にいますので、今まで大きなトラブルは起きていません。そういったニーズの方も当社につないで頂いて問題ありません。(取材 2018年9月)

益田 裕介 医師

防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属

早稲田メンタルクリニック(心療内科・精神科)

東西線「早稲田駅」徒歩1分。
夜間・土日も診療。心療内科・精神科。自立支援対応
◎発達障害の診察可
◎カウンセリング有
https://wasedamental.com/

インタビュアー

Kaien代表取締役 鈴木慶太 長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS大学生向けの就活サークル ガクプロ就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA) 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴社長ブログ一覧