発達障害グレーゾーンの方が障害者枠での就労を選ぶ理由

藤沢の医師会で発表してきました
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就労移行支援事業所Kaienの大野です。

以前から連携していただいているクリニックの院長先生からお声がけいただき、神奈川県下の心療内科の先生方が集まる勉強会で事例発表をさせていただきました。複数の精神科医や医療専門職の皆様を相手に「発達障害*のある方の就労」にテーマを絞りたっぷり2時間以上も意見交換させて頂き、滅多に頂けない貴重な勉強の場となりました。

障害者手帳を使って就労する目的は人それぞれ

たくさんご質問を頂戴したのですが、一番印象に残った質疑応答は「月収25万円以上も貰えるようなスキルを持った発達障害の方が、障害者枠を選んで就職する必要は本当にあるんですか?」というご質問でした。

Kaienの卒業生のなかには、少数ですが障害者枠就労でありながら月収25万円~35万円/月の月収を得ている方々がいます。精神障害者保健福祉手帳を持っている方の障害者枠就労の全国平均の所得が12万円~15万円/月という状況と比較すると、確かにそういった疑問は起きうることかと思います。

参考:Kaien修了生の全国平均を大きく上回る給与水準

Kaienではよくみられる比較的多い2つのパターンを、回答の具体例としてお伝えしました。

人間関係の隙間を障害者手帳が埋めてくれる

高収入につながるような専門性を持っていたとしても、職場コミュニケーションや人間関係でつまづいてしまい離職に至ってしまう。発達障害グレーゾーンの方にはよく見られるケースです。悪意を持って故意に相手を傷つける言動をしているわけではない。しかし、ほんの些細なコミュニケーションのズレや意図せず生まれる誤解が、一般枠就労ではグレーゾーンの方々にとって深刻な働きづらさにつながってしまうことがあります。

改めることが出来るのなら改めたい。それでも、意図せず起きてしまう職場コミュニケーションの溝を障害者雇用という働き方が埋めてくれている。だからこの会社では働き続けることが出来ている。そう感じている方がKaien修了生には一定数いらっしゃいます。

障害者枠という働き方が不安を解消する安心材料となる

発達障害のグレーゾーンにあたる方々によく見られるもうひとつの例。職場にいる大多数の人と自分を比較してしまう。ちょっとしたズレや違和感を敏感に感じ取ってしまい、過度とも言えるほどに自分を責めてしまい、自ら離職を選んでしまう、というケースです。

ほんの少しのズレによって生まれる「迷惑かけているかもしれない」、「私はここにいちゃいけないんじゃないか」。そんな不安や自責の念を、障害者枠という働き方が埋め合わせてくれることで、一カ所で安心して働き続けることが出来ている方々がいらっしゃいます。

スキルや強みが発揮され、評価につながる自分に合った選択肢を選んでほしい

この質疑で、私がお伝えしたかったことは3点あります。

ひとつは、発達障害のある方の「生きづらさ」「働きづらさ」は、発達障害特性の強弱に必ずしも比例するわけではないということ。

ふたつめ。「グレーゾーンの方が障害者枠を選んで就職する必要性」について、私の中に明確な回答があるわけではありません。しかし、働き方の選択肢として障害者枠に価値を感じている当事者の方々が実際にいるしそれによって安定就労の実績が生まれているということは事実だということ。

最後は障害枠という働き方を選んだとしても、業務で評価が得られているならば高い収入を得ることに何も矛盾はない、ということです。

Kaienでは一般枠でも障害者枠でも、利用者ご自身が希望している働き方の職場に就職できるように支援しています。大事なことは、選んだ働き方がどのようなものであろうと、それぞれ皆さんが持たれているスキルや強みがしっかり職場で発揮されること。それに見合った評価や待遇を得られること。それを実現するための手段の選択肢はあったほうがいいよね、ということだと思っています。

Kaienでは現在、就労移行支援の卒業生を対象とした新サービス「就労定着支援事業」を開設準備中です。単なる「職場定着」だけではなく、正社員を目指している方や給与アップのお力になれるようなサービスにしていきたいと思いっています。Kaienの就労移行支援や、定着支援事業にご興味のある方は、ぜひKaienご利用説明会からお越しください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます