二次障害のある人とない人への支援の違い ~発達障害と二次障害シリーズ②~

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就労移行支援事業所、Kaien新宿スタッフの鈴木です。
「発達障害*と二次障害」シリーズの第2回は、第1回に引き続きKaien秋葉原サテライトスタッフの西河に二次障害のある人とない人への支援方法の違いについて話を聞きました。

前回は二次障害のある人とない人それぞれにどんな特徴があるか伺いました。二次障害のない発達障害の人は基本的に素直で、二次障害のある人は他人からの提案を受け入れることが難しい場合があるとのことでした。特徴の違いによって、支援する側の対応は変わりますか?

エピソードを聞きながら「人生の棚卸」をするのが基本型

二次障害のあるなしにかかわらず、私が初回個別相談やキャリアカウンセリングで心がけているのは、幼い頃から現在までのエピソードを丁寧に伺うことです。これまでどんな人生を送ってきて、どんなことを経験してきたかを共有してもらうことで、ご本人に「自分の話をしっかり聞いてくれる、自分のことを知ってもらえている」という感覚を持ってもらいたいと思っています。エピソードを聞いていくと、子供のころから楽しい経験がほとんどなかったり、ネガティブエピソードばかり話に出てくるケースがよくあります。そしてそういうつらい経験をしてきたことを誰かに話したり共感してもらうことも、これまでほとんどなかった方も多いです。お話を聞いた後には、私からはご本人の特性を踏まえた上で、どうしてそういうことが起こってしまったかという仮説をお話しするようにしています。こうしてご本人の「人生の棚卸」をしていくことで、「理解してもらえた、支持してもらえた」という気持ちを持っていただけるようです。

二次障害のない発達障害の人には「カーナビ」型支援が合う

二次障害のない人には、当社のスタンダードなキャリアカウンセリングがフィットやすいです。社内では「カーナビのように目的地(就職)への向かい方を示す」と表現しています。ご本人の現状や希望条件を把握し、それを基に実際の求人や実習で向いていそうなものを提案し、応募~選考~内定までのそれぞれの過程で必要なタスクを完了していけるかフォローしていきます。素直な方が多いので、ひとりではどうしたらいいかわからなくなってしまうという人も、今行うべきことは何かがわかれば前へと動き出せる人も多いです。

二次障害のある人は新しく人との関わりを増やすことが変化のきっかけに

二次障害のある方は、このような「カーナビ」型の支援に乗れないことがあります。前回お話ししたように、こう動いてみましょうというアイデアを提案しても、ご本人が納得しづらかったり、動きにつながらないことが多いからです。そのような場合には、まず訓練に来てもらい関わりを増やすことからスタートします。長い間引きこもっていたり、自分が信頼できると思える人以外との関わりを避け交友関係が狭くなっていると、考え方がどうしても固定化しやすくなります。本人としても今のつらい状況を変えたいという気持ちはあっても、自分から変わっていくのは難しくなりがちです。まずは少しでも多く訓練に来てもらえるように、カウンセリングで日々の生活の中でどこがネックになっているかを確認して、勤怠改善への糸口を探します。生活リズムが少しでも整い出席できる日が増えれば、訓練の中でできることや得意なことを見つけたり、訓練やキャリアカウンセリング以外でも他の訓練生やスタッフと連絡や雑談など会話をする機会を増やすことができます。新たな人間関係ができ、これまで触れてこなかった考え方を知ることで、こんな風に働くことができるんだ、自分も働いてみたいとイメージしやすくなります。職業訓練で勤怠を安定させることはとても大切ですが、それは働く時に必須だとか就活でアピールできるからとかいったこと以外にも、新しい環境や人間関係から自分を変えていくきっかけをつかむためでもあります。

これまでの人間関係の整理・調整も合わせて行う

一方で、家族などのキーマンになる人との関係がうまくいかず精神的に負担がかかりすぎているような場合は、関わりの量を調整することで負荷を減らすことができないか検討します。例えば親とそりが合わず家庭が落ち着ける場所でないとご本人が感じている時は、土日は外出して一人や友人と一緒の時間を持つことである程度解消できそうか、それともいずれは一人暮らしをしたほうがよさそうか、その場合はグループホームで支援を得ながら一人暮らしをするのが適切かなど、本人に対処できる範囲としきれない範囲を整理し、こちらで支援・介入できるポイントがあるかどうかも探っていきます。

当社が考える発達障害の二次障害についてはこちらもご覧ください。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます