就労移行支援は多くの方が無料または少額で利用できる制度ですが、実際の自己負担額や収入条件、交通費や昼食代の扱いなどはあまり知られていません。実際のところ、いくらかかるかが分からず利用をためらっている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、就労移行支援の利用料や計算方法、補助制度の活用方法などを分かりやすく解説します。Kaienでの取り組み事例も併せて紹介していますので、就労移行支援の利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
就労移行支援の利用料金について
利用料は国と市区町村が負担する部分も含め、就労移行支援では利用者1人につき1日1万円前後、20日間利用すると10万円台後半〜20万円台ほどかかります。利用者が基本的に1割負担をする必要があるため1〜2万円程度の自己負担額が発生します。
ただし、前年度の収入に応じて下記のとおり自己負担上限額が設定されており、実際には約9割の方が無料で利用されています。
世帯(本人+配偶者)の収入状況 | 自己負担の上限月額 | 収入の目安 |
生活保護受給世帯市町村民税非課税世帯 | 0円 | 給与収入の場合おおむね年収100万円以下障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下 |
市町村民税課税世帯 | 9,300円 | おおむね年収600万円未満 |
上記以外 | 3万7,200円 | おおむね年収600万円以上 |
(参考:障害者の利用者負担《厚労省Webサイト》)
無料で利用できるのはどんな人?
就労移行支援を無料で利用できるのは、自己負担の上限月額が0円の条件に当てはまる人です。具体的には市町村民税非課税世帯であり、生活保護を受給している人や昨年1年間働いていなかった人などが該当します。
働いていて収入がある場合や配偶者が働いている場合でも、「給与収入の場合おおむね年収100万円以下、障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下」の場合は就労移行支援を無料で利用できる可能性があります。
ただし、利用料についてはお住まいの自治体の判断になるため、無料で利用できるかどうかは自治体の窓口に確認してください。
利用料が発生する場合
就労移行支援の利用料がかかるのは、市町村民税課税世帯です。例えば、「今は働いていないけど去年はフルタイムで働いていた」「自分は働いていないものの、配偶者の年収が100万円以上ある」といった場合は、就労移行支援の利用料が必要になると考えておきましょう。
具体的な金額は世帯収入や通所回数などによって変わりますが、利用料は世帯収入に応じた自己負担上限月額の範囲内になります。前年の世帯収入がおおむね600万円未満の場合は上限月額が9,300円、600万円以上の場合は3万7,200円が上限月額です。
就労移行支援は1回の通所ごとに利用料が発生するため、通所の回数が少ないと上限以下の利用料に収まるケースもあります。また、何回通ったとしても利用料が上限月額を超えることはありません。
就労移行支援の利用料の計算方法
就労移行支援の利用料がかかる場合、1回の通所につき約500〜1,200円が自己負担分の料金として発生します。実際の利用料は、以下の計算式で求められます。
- 月額利用料=1日の利用者負担額×利用日数
例えば、1日の利用にかかる費用が10,000円、月に20回通所した場合を想定して計算してみましょう。
まず、利用者負担は基本的に1割なので、1日の利用者負担額は1万円の1割で1,000円になります。20日通所すると、1,000円×20回で月額利用料は2万円です。
世帯年収に応じて自己負担の上限月額が変わるので、この場合実際に支払う金額は以下のようになります。
世帯年収 | 自己負担月額 |
給与収入の場合おおむね年収100万円以下、障害者は給与収入の場合おおむね年収200万円以下の場合 | 0円 |
おおむね年収600万円未満の場合 | 9,300円 |
おおむね年収600万円以上の場合 | 2万円 |
年収600万円以上の世帯は自己負担上限月額が3万7,200円ですが、上記の場合は月額料金が2万円で上限に達していないため、実際にかかった金額が請求されます。
就労移行支援の利用料以外に必要なお金
就労移行支援は多くの方が無料または少額で利用できますが、通所を続けるうえでは、どうしても自分で負担せざるを得ない費用も出てきます。
ここでは、日常的に発生する「昼食代」と「交通費」について、負担割合や制度の考え方、事業所ごとの対応などを紹介します。
昼食代
就労移行支援では、ほとんどの事業所で昼食の提供は行っておらず、利用者が自分で用意するのが一般的です。
昼食を提供していない理由は、食事の提供が金銭供与と同等の行為とみなされ、行政から禁止されているためです。ただし、設備や衛生環境など一定の条件を満たすことで利用できるようになる「食事提供加算」という制度を利用して、昼食を提供している事業所もあります。
Kaienもその一つで、2025年1月から無料のランチ提供を始めました。金銭的に通所しやすくなるだけでなく、毎日の昼食の準備がいらないというのも大きなメリットです。
交通費について
就労移行支援へ通うときの交通費は、基本的に自分で負担することになります。交通費が高いと通いにくくなってしまうため、事業所を選ぶ際には、実際にかかる交通費を踏まえて場所を選ぶとよいでしょう。
ただ、自治体によっては通所にかかる交通費をサポートする制度を設けている場合があります。補助制度の詳細については、後ほど詳しく解説します。
就労移行支援で給料や工賃は受け取れる?
企業から業務を受託している場合を除き基本的に工賃のお支払いはありません。
他の障害福祉サービスである就労継続支援A型や就労継続支援B型は一般企業への就労が難しい方に働く機会を提供することを目的の1つとしており、工賃も支払われます。
一方就労移行支援は一般企業への就労を目指すことが目的であり、基本的に工賃の支払いはありません。ただし企業から業務を受託し施設内外で当該業務に従事する場合には工賃が発生することもあるようです。(Kaienの就労移行支援では現在工賃のお支払いは行っていません。)
就労移行支援の利用方法
就労移行支援を利用するまでの流れは、以下のとおりです。
- お住まいの市区町村に本人から利用申請をする
- サービス利用計画を計画相談支援事業所などで作成する
- 市区町村で審査のうえ、利用可否を決定
まずご本人からお住まいの市区町村の障害福祉課等の担当窓口に就労移行支援のサービスを希望している旨をお伝えください。
次に、「就労を目指しているが1人では困難さがあるためこのようなサポートが必要」といったご本人のニーズを把握し、就労移行支援をどのような形で利用すれば課題の改善が期待できるかを検討します。同じ障害福祉サービスの1つである「計画相談支援」を利用して「サービス等利用計画」を作成し、市区町村に提出します。(いわゆる「セルフプラン」と言って計画相談支援を使わずに利用希望者本人が作成した計画も認めている市区町村もあります。)
(参考:計画相談支援における現状と厚生労働省の取り組み《厚労省セミナー資料》)
上記を受けて、市区町村がサービス支給の認定を行うかどうかを検討し支給可否が決定します。支給が決定したら市区町村から「障害福祉サービス受給者証」が発行されます。発行されたら就労移行支援事業所と利用契約を結び、利用開始の流れになります。
就労移行支援の利用料負担を軽減する補助制度
就労移行支援の利用で受けられる主な費用補助制度は、以下のとおりです。
- 交通費の補助制度
- 障害年金
- 失業保険
- 生活保護
就労移行支援に安心して通うためにも、経済的な安定は大切です。そのため、使える補助制度があれば積極的に活用しましょう。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
交通費の補助制度
自治体によっては、交通費の補助を行っていることがあります。当事業所の近隣ですと千葉県や埼玉県、神奈川県に多いですが、就労移行支援利用者の交通費を助成する独自制度を設けているところは少なくありません。たとえば横浜市で公共交通機関を利用する場合、その実費または定期代全額を支給しています。
こうした交通費の助成は、国の統一制度ではなく自治体ごとの取り組みのため、対象者の条件や申請方法、金額などが地域によって異なります。そのため、通所を始める前に、お近くの市役所や区役所などに確認しておくことをおすすめします。なお、Kaienでは市区町村での交通費助成がない方を対象に通所日数に応じて最大月1万円を助成しています。
障害年金
障害年金は、病気やけがなどの影響で日常生活や仕事が困難になった場合に、所得を補う目的で支給される公的な年金制度です。制度を利用できるのは、初診日の時点で公的年金に加入していた方のうち、医師の診断により、一定の障害があると認められた場合です。
制度には国民年金加入者が利用できる「障害基礎年金」と厚生年金加入者が利用できる「障害厚生年金」があります。障害の等級は1級から3級まであり、1・2級の場合は障害基礎年金と障害厚生年金が利用でき、3級の場合は障害厚生年金のみが利用できます。
なお、申請には医師の診断書や初診日を証明する書類などが必要なうえ、審査にも数ヶ月かかるのが一般的なので、手続きは早めに行っておきましょう。
失業保険
失業保険とは、仕事を失ってから再就職までの生活を支える保険です。以下の要件を満たしている場合に、給付金を受け取れます。
- 雇用保険に加入していること
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
- 離職後にハローワークで求職の申し込みを行っているが「失業の状態」にあること
対象者は正社員に加え、31日以上の雇用契約があり、週20時間以上働いているパートタイムの方も含まれます。
なお、給付期間は通常150日が限度ですが、障害のある方の場合は「就職困難者」という扱いになり、最大360日まで延長されます。
生活保護
収入が少なく、生活に困っている場合は、生活保護の利用も選択肢のひとつです。生活費や家賃、医療費など、健康で文化的な生活を送るための費用が必要に応じて支給されます。
支給される保護費は、地域の物価や世帯構成によって変動するものの、平均で6〜7万円+家賃2〜5万円が目安です。
なお、申請時には貯金や不動産などの資産、親族との扶養関係などの審査があり、それらを総合的に判断して支給の可否が決定されます。特に、資産の所有状況は地域性があるので、自治体の窓口でよく相談しておきましょう。
Kaienの就労移行支援
Kaienの就労移行支援では発達障害*のある方を中心に、自分の強みを活かしながら安定した就労を目指すためのサポートを行っています。対象は18歳以上65歳未満の就職を希望する方で、主な支援内容は以下のとおりです。
- 適職診断:自己分析を通じて、自分に合った働き方を見つける
- スキルの習得:事務、プログラミング、デザイン、生成AIなどの習得サポート
- 就職活動の支援:応募書類の作成、求人紹介、面接練習など
- 職場定着のサポート:就職後も企業との連携による継続支援を実施
Kaienの特徴は、特性や課題に配慮した個別の支援計画にもとづいてプログラムを進める点です。就労を通して「自分らしく働く」ことを大切にしており、安心して次のステップに進める環境が整っています。
Kaienの自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)とは、障害のある方が日常生活の安定や社会とのつながりを取り戻すための福祉サービスです。Kaienでは以下のようなプログラムを通じて、自立生活や就職前の基盤づくりのサポートを行っています。
- 日常生活スキルの習得:時間管理、金銭管理、健康管理など
- 感情コントロール:特性理解、ストレスや不安などの対処法など
- コミュニケーション訓練:相手との距離感の取り方やコミュニケーション手法など
自立訓練は、すぐに働くのが難しい方や、まずは生活リズムを整えることから始めたい方に向いています。特に一人暮らしや就職を目指している方にとって、無理なく社会参加への一歩を踏み出す機会になるでしょう。
就労移行支援の利用料負担は補助制度の活用を
就労移行支援は多くの場合、無料または少額で利用できますが、昼食代や交通費は支給されないことが多いです。もし金銭的に不安がある場合は、Kaienのように昼食を提供しているところを選んだり、補助制度を利用したりといった方法を検討しましょう。
就労移行支援の利用について不明点がある場合は、お気軽にKaienまでお問い合わせください。オンラインでの利用もできるので、あなたに合う通い方を一緒に探していきましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
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